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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1535/2033

千五百三十四話 正義の神シャファ神殿の前の激戦

 正義の神の戦巫女イヴァンカは生きている。

 ――良かった。

 安堵感を覚えたがバリケードの階段を上がってイヴァンカの近くに居る魔人と魔族は明らかに強者か。


 が、そんな強者の魔人と対峙しているアーバーグードローブ・ブーがいた。

 大きな鉄棒を振り降ろし魔人の頭部をかち割っている。

 四腕の魔族が吠えて怒りを露わにしていた。

 それを見ながら、


「イヴァンカ!」

「あ、シュウヤ、来てくれたのか! が、そこの四眼四腕の魔族と階段の下に居る連中は強い、ただの魔人集団ではないぞ!」


 イヴァンカの下に居るアーバーグードローブ・ブーが四眼四腕の魔族の攻撃を往なして、大きい鉄棒を突き出しては四眼四腕の魔族を階段の下に後退させている。


「了解した!」

「にゃごぉ~」


 黒虎(ロロ)が駆ける。

 階段下に居た頭部に角を有した魔剣師に飛び掛かると魔剣師は逆手持ちの魔剣を黒虎(ロロ)目掛け振り上げた。黒虎(ロロ)の両前足の爪と逆手持ちの魔剣が衝突――。

 魔剣師は見事に爪の攻撃を防いだに見えたが、黒虎(ロロ)は口を拡げている。


「にゃごぁ~」


 と口から吹き出た紅蓮の炎を角ありの魔剣師の魔人はもろに喰らった。

 一瞬で、その魔剣師と背後の魔導師たちが魔杖ごと紅蓮の炎に飲まれて炭化し消えた。

 その黒虎(ロロ)を襲おうとしている魔族の槍使いと斧使いと背後から魔導師たち目掛けて《連氷蛇矢フリーズスネークアロー》を無数に放った。


 金漠の悪夢槍の穂先の先から腕程の大きさの《連氷蛇矢フリーズスネークアロー》が一瞬で数十と生成されて直進していく。


「今度は氷の連続魔法か――」

「無詠唱だが、セラの水属性の言語魔法に過ぎない、恐るるに足らず――」」

「おう、闇属性などが主力の俺たちだ、魔法防御の盾で十分!」

「氷の矢は烈級程度か! そこの魔獣の炎に気を付けろ――」

「「「「「おう」」」」」


 やや遅れて《連氷蛇矢フリーズスネークアロー》に紛れて<鎖>も射出した。


 魔人か魔族たちは偉そうに語ったように槍と斧と魔剣を振るいつつ、鋼の盾と魔法の盾を前に出しながら複数の《連氷蛇矢フリーズスネークアロー》を防いでいる。


 更に魔杖持ちの魔導師は、半透明な魔法陣の盾を己の前に複数個生成し、俺が連続的に繰り出している《連氷蛇矢フリーズスネークアロー》を防ぎながら前進して黒虎(ロロ)と俺に向かってきた。


 が、そんな《連氷蛇矢フリーズスネークアロー》に気を取られた魔人たちは、<鎖>のピュラドロップ型の先端に気付かない。


 次々と<鎖>の先端が魔人か魔族の頭部を捉えてぶち抜いていった。

 無数の頭蓋骨と脳漿が宙空に散る。


 一気に十人前後の魔人か魔族を倒した。 

 そんな弾丸的な速さで宙空を動く<鎖>は警戒される。


 岩で構成された大きい腕を持つ大柄魔人の腕に捕まった。

 その岩の魔人は<鎖>に干渉するように細かな魔法陣を幾つも<鎖>に付着させてきた。

 岩の肌に無数の眼球を擁している。

 直ぐに<鎖>を収斂させた。


 <鎖>を掴んでいた魔族を引っ張り上げて黒虎(ロロ)の前に運んだ。


「にゃごぉぉ~」


 と黒虎(ロロ)は俺を褒めるように鳴いた。まさに、まな板の鯉か。

 黒虎(ロロ)は板前になった如く――。

 その魔人の岩の肌の魔人に両前足の爪を突き刺した。

 が黒虎(ロロ)はそんな板前なわけがなく「ガルルゥ」と唸り声を発しながら口を広げる。


 キラリと光る歯牙を岩の魔人の頭部に突き立ててはガブッと両顎を閉じての丸齧り。

 魔人の岩のような頭部を頬張るようにすべてを喰らうと、奥歯で噛み砕いていた。

 カリカリの餌を食べているようにしか見えないが、さすがの神獣ちゃんだ。

 すると、ミスティが、


「――マスターとロロちゃんに皆! わたしとゼクスは、階段の左側と、通りからやってくる魔人か魔族たちを倒すから!」

「了解した」


 ミスティはゼクスの肩から飛び降りる。

 直ぐに左腕を掲げた。

 俺が<鎖>を射出するポーズに似ているかな?

 と、その左腕に嵌まっている渋い暗器械から<血魔力>を帯びた礫が射出された――。

 かなり速い血の礫は、階段の左壁の灯籠が並ぶ高台に居た射手の眉間を貫いていた。

 射手は絶句したまま階段側に落下していた。

 あの暗器械はかなり使えるな。

 そこに、


「――私たちを見ても退かずに、立ち向かってくる蛮勇は認めましょう!」


 <血魔力>を噴出させたファーミリアだ。

 細い右腕の手が握るサンスクリットの血霊剣を突き出しながら直進し――。

 相対した魔族の短剣をサンスクリットの血霊剣で下から上に弾くと、サンスクリットの血霊剣を突き出し、短剣使いの胸を貫き倒す。


 ファーミリアは止まらず――。


「なにが蛮勇だ、吸血鬼(ヴァンパイア)めが!」

「潰せ、吸血神信仰隊のならず者だ!」

「「――潰せぇぇ」」


 ファーミリアは、


「吸血神信仰隊? 私はヴァルマスク家……いえ、【天凛の月】の新参ですわ!」


 と可愛く喋ると、サンスクリットの血霊剣を下に傾けながら魔人に向け加速、前進――。


 階段下の右に居た魔人が、


「ヴァルマスク家に【天凛の月】だと!?」

「何が新参だ、ヴァルマスク家の高祖吸血鬼(ヴァンパイア)が!」


 と魔剣を突き出してくる。


「高祖? 吸血神ルグナド様の<筆頭従者長(選ばれし眷属)>の一人ですが――」


 と喋りながら、「なに!?」と驚いている魔人の魔剣をサンスクリットの血霊剣で払い上げると、俄に魔人の足を斬り、胴を抜く。


「――げぁぁ」


 と、魔人の体は上半身と下半身に分かれた。 

 輪切りにされた死体の傷口から血飛沫が迸る。


 それを吸い取るファーミリアは長い金髪が煌めいた。

 角を有した全身甲冑の溝の漆黒が鈍く輝く。


 渋くて素敵だ。

 そのファーミリアは甲冑の一部を開放させてドレス風の防護服に変化させながら振り返り、


「――シュウヤ様とシキにミスティさん、階段の右側とこの神殿に押し寄せる【闇の教団ハデス】などの【闇の枢軸会議】連合の敵は私が担当しましょう!」


 と宣言。


 先ほどの<龕喰篭手>の頭部が怪物のガントレットを生み出して階段の下の広場を直進させると、怪物のガントレットの頭部が口を広げ、俺たちを無視するように階段を上がっていた魔人の頭部に直進し、側頭部に喰らい付いていた。

 側頭部を食われ抉られた魔人は回復せず、そのまま壊れた人形のように倒れた。


「おい! 皆、階段を上がるな、まずは、あの金髪のヴァルマスク家の吸血鬼(ヴァンパイア)を狙え――」


 と、神殿の階段前の広場に居る魔人が叫ぶが――。

 ファーミリアがサンスクリットの血霊剣を横に寝かせる構えを見せたと思ったらファーミリアは超加速――。


 一瞬で、サンスクリットの血霊剣を左に振るい返し、右に移動したサンスクリットの血霊剣を再度左に振るっていた。その魔人は頭部と上半身が三つに輪切りにされていた。


 三回斬りか。スキル名が気になる。

 最初のサンスクリットの血霊剣の剣を横に構えたのは渋かった。


 すると、


「――ふふ、ファーミリアに負けません! <溯源刃竜のシグマドラ>出なさい――」


 シキは両手から魔法球と小さな水晶時計の幻影を発生させる。


 それらが重なった瞬間――。

 そこから見知らぬ異世界が映し出された。

 その異世界から体長二メートル前後の異界の獣、怪物が召喚される。


「グオォォ」


 魔法球と水晶時計の幻影が消える。

 溯源刃竜のシグマドラか。

 その溯源刃竜のシグマドラの見た目は……。

 上部は象牙か金属の刃だけで構成されている。


 鰐の頭蓋骨か、不明な形容しがたい頭蓋骨が複数集積し融合した上部。


 その下部には幻影を発している複数の布と繊維質の群れがあり、ユラユラと揺れていた。

 幻影を発している布と繊維質は複数の脚か。

 蛇腹機動で忙しなく蠢きつつ溯源刃竜のシグマドラは動いていた。蔓脚のようにも見える不思議な繊維な足の群れはウネウネ動いていた。


 総じて獅子舞のような印象もあるが、溯源刃竜のシグマドラは奇怪すぎる。

 シキは、その奇怪な溯源刃竜のシグマドラを直進させた。


 溯源刃竜のシグマドラの上部の頭蓋骨の群れから、無数の刃が飛び出る。


 無数の刃は強力で、階段の右下に居る魔人、魔族たち得物の一部を弾くと、得物ごと魔人の体を貫いていた。


 ショットガン系の攻撃か。


「「「「――げぇ」」」」

「刃の群れとか、盾を出せ、盾を!」


 溯源刃竜のシグマドラの頭蓋骨のような上部には無数の刃が備わっている。


 シキは両手を拡げて蒼いドレスを靡かせながら浮遊し、


「宵闇の女王レブラ様は【セブドラ信仰】と【闇の教団ハデス】を許しません、お前たちに死を――」


 と言うと、右手から禍々しい頭蓋骨を生み出す。

 それを直進させる。


 禍々しい頭蓋骨は宵闇の女王レブラ様の幻影を発した直後、閃光を発して大爆発。


 右側の階段を占領していた魔人たちの数人がこっぱ微塵となって、体だったものが散る。


 まだ生きていた手前の大型の魔族の頭部に転移していたシキは、片足ブーツの底から生み出した螺旋状のドリルで突き刺すと、一気に、その頭部から股間までを両断し突き抜ける。

 着地をせず、体がブレる。


 水晶の幻影を周囲に生み出しながら、俺の右後方に転移していたシキ。蒼いドレスは血濡れていない。


 コレクターこと、シキも強い。

 宵闇の女王レブラ様の眷属、大眷属か。


 更に、コレクターという渾名を持つだけに様々なアイテムを自分の周囲に浮かばせる瞬間があった。


 俺の戦闘型デバイスと似た機能を持つアイテムボックスを持っているんだろう。


 更に<溯源刃竜のシグマドラ>は形容しがたい頭蓋骨をブルブルと震わせる。


 と頭蓋骨の一つを、斜め前方に飛ばした。

 形容しがたい頭蓋骨は、コレクターが<投擲>した頭蓋骨手と同じく破裂し、爆発を起こす。


 爆発に巻きこまれた魔人たちは階段から転げ落ちる。

 下に居た魔人たちを巻きこんでいった。


 バリケードの一部も頭蓋骨爆弾の影響を受け破壊されてしまうが、イヴァンカと戦っている階段上部に居た魔人たちの数は激減した。


 だが、階段の下部にはまだ魔人たちが居る。


 階段と階段の下の大通り付近から新手の魔人たちが流入していた。


 先ほどのアリアの広場と御香が焚かれたエリアに居たであろう【セブドラ信仰】と【闇の教団ハデス】連中だろう。

 それらが正義の神シャファ神殿に押し寄せてくる。

 ――帝国兵は少ないように思える。


 そんな新手を階段の左側の敵を倒し尽くしたミスティとゼクスに右の階段下の広場の魔人を倒し尽くしたファーミリアとシキと溯源刃竜のシグマドラと黒虎(ロロ)が出迎えるように、次々と魔人たちを倒していく。


 と、皆の攻撃を掻い潜って階段を上がった素早い魔人が居た。


 イヴァンカに魔刀で斬撃を――。

 ――<鎖>を繰り出す。


 <鎖>がその魔刀を防いだ。

 直ぐに魔刀の斬り下げを、イヴァンカに向ける。

 その魔刀の斬り下げはブーさんらしき存在が突き出した鉄棒で防いでいた。


 そんな魔人の背に、シキが繰り出した土と雷の礫と相棒の触手骨剣が向かう。


 魔人は斜めに跳ぶ。

 階段の横壁に足を付着させると、その壁をシュタタタと重力を無視して駆けていく。

 身軽な忍者のような強者か。すると、階段の下に居る魔人が、


「【天凛の月】がここにくるとは聞いていない!」


 と叫ぶ。そいつに<鎖>を射出――。

 <鎖>は、その魔人が持つ魔法の盾に防がれた。

 <鎖の念働>で<鎖>を操作し、再度その魔人の頭部を狙うが、魔人が右手に出した幅広の魔剣で防がれた。そのまま魔人の胸を狙うが、その<鎖>の動きも、左手の魔法の盾によって防がれた。


 <鎖>を消した。

 左手に白蛇竜小神ゲン様の短槍を出現させる。

 即座に右手の金漠の悪夢槍と共に<勁力槍(けいりょくそう)>を発動させた。


 ――<龍神・魔力纏>を発動。

 <闘気玄装>などの<魔闘術>系統を再発動。

 <水神の呼び声>と<滔天神働術>なども連続的に意識を強めて再発動。

 闇と光の運び手(ダモアヌンブリンガー)装備の蓬莱飾り風のサークレットと額当てと面頬装備を砂漠烏ノ型に変更させた。

 ――<水月血闘法>を意識、発動。


「――皆、正義の神殿を守るぞ」

「うふ♪ シュウヤ様の闇と光の運び手(ダモアヌンブリンガー)装備が素敵すぎる……」

「ファーミリア、余所見しない!」

「マスター、女殺しを発動しない!」

「にゃ、にゃおぉ~」


 皆の声に応えたいが、身軽な魔人はバリケードを越えて踊り場に到達し、イヴァンカに向かうのが見えていた。

 イヴァンカも強いが、心配だ――。

 まずは魔法の盾を扱う魔人目掛け――<雷飛>――。

 一瞬で、その魔人との間合いを詰めた。

 左手の白蛇竜小神ゲン様の短槍と右手の金漠の悪夢槍の<双豪閃>――。

 魔人は僅かに反応するが遅い。


 右から左へと向かう白蛇竜小神ゲン様の短槍と金漠の悪夢槍の穂先が魔人の両腕と胸を一気に抉るように両断した。


 魔人の右手の幅広な魔剣と、魔人の左腕と魔法の盾が宙空に待った。


 俺の加速に合わせるだけの実力者だったが、タイミングの差は顕著だったな。


 幅広な魔剣と魔人の左腕を回収――。

 戦闘型デバイスに入れた。


 new:エヴィオスの魔広剣×1

 new:グィアルヌグの左腕×1

 new:エイジスの腕輪<外門・魔法盾>×1


 グィアルヌグという魔人だったか、階段を上がる。

 黄金の環を頭部に持つ神界戦士のブーさんが階段を上がろうとしている四眼四腕の魔族に太い鉄棒の振り下ろすのが見えた。


 四眼四腕の魔族は太い右上腕が握る魔剣を掲げ太い鉄棒を受け止める。


 その四眼四腕の魔族の左右から、階段の壇を駆けている戦神教の剣師と槍使いが見えた。


 頭が禿げている剣師と槍使いの前後から挟み撃ち――。


 剣師は両手持ちの片手半剣を突き出し魔族の胸を狙う。


 槍使いは<牙衝>で魔族の足を狙った。


 四眼四腕の魔族は、左下腕と右下腕の魔剣で胸の剣突と足下の<牙衝>の攻撃を防ぐ。


 と、太い鉄棒を防いでいた右上腕の魔剣を右から左と振るい上げ、アーバーグードローブ・ブーの鉄棒を跳ね返しながら魔剣を剣師と槍使いに向け左下腕と右下腕が持つ魔剣を振るい回す。


 左右の剣師と槍使いの三合打ち合うと剣師の片手半剣を弾き、その剣師の右手首の籠手ごと手首を斬り捨て左足の内を斬る。

 続けざまに右下腕の魔剣が宙に乙の字を描くと槍使いの両太股が裂かれたように散った。


「「ぐあぁ」」


 あの四眼四腕の魔族は強い。

 最低でも、キスマリか、ルリゼゼクラスか。


 階段の上に居るアーバーグードローブ・ブーらしき存在は「オ前、何者カ!」と叫ぶ。

 力なら力と、というように太い鉄棒で連続的に四眼四腕の魔族を突いていく。


 上から下への振り降ろしに近い攻撃を下の四眼四腕の魔族は四腕に握る魔剣で正確に防ぎきった。


「我は、パリマリル。永劫のパリマリルと呼ばれることが多い――」

 パリマリルは斜め前の左足を動かしながら左上腕の魔剣をアーバーグードローブ・ブーに差し向けた。

「――ヌ」

 アーバーグードローブ・ブーは太い鉄棒を少し下げて魔剣の斬撃を防ぐ。

 パリマリルは、

「魔人キュベラス様の最高の僕であると自負がある――」

「――【黒の預言者ブラック・プロフェット】ノ直ノ配下トイウワケカ!」


 アーバーグードローブ・ブーらしき存在は連続とした魔剣の突きを払い、逆に、<刺突>系の強力な連続突きを三度、繰り出した。永劫のパリマリルは四腕の魔剣を防御に回して<水雅・魔連穿>のような連続突きを魔剣で防いでいく。


 四眼四腕のパリマリルは勢いに押されて階段を下りていたが体幹が強い。


 と、その四眼四腕のパリマリルは<魔闘術>系統を強めると速度が増した。


 体から朱色のオーラのような魔力を噴出させながら怒濤の四連撃をアーバーグードローブ・ブーらしき存在に繰り出す。


 アーバーグードローブ・ブーらしき存在が持つ大きい鉄棒が揺れまくる。

 と、アーバーグードローブ・ブーらしき存在に隙が生まれた刹那――。

 腹に魔剣の斬撃が入った。


「グォ――」


 アーバーグードローブ・ブーらしき存在は右に吹き飛んで、階段の横の壁に激突。


 永劫のパリマリルは階段を上がり、素早い魔人と戦っているイヴァンカに向かう。

 直ぐに白蛇竜小神ゲン様の短槍をグローブに変化させて左手に神槍ガンジスを召喚し、<握吸>を実行。


 階段を駆け上がる。


 永劫のパリマリルの四眼四腕の魔族の背後から金漠の悪夢槍で<断罪刺罪>を繰り出した。


 永劫のパリマリルは背後に目があるように振り向く。

 左右の上腕が持つ魔剣を構えながら半身で金漠の悪夢槍の<断罪刺罪>を受けつつ背後に跳ぶ。

 靴の裏で壁を捕らえ蹴って三角跳びから、


「我に向かってくるとは――」


 と左右の下腕が持つ魔剣を宙空から繰り出してきた。

 その迅速な宙空からの突きスキルを金漠の悪夢槍の螻蛄首で受け止めて、傾けながら、片鎌槍の枝刃に魔剣の片方を引っ掛けての<魔手回し>を実行。更に、もう片方の魔剣を金漠の悪夢槍の螻蛄首に乗せて時計回りに金漠の悪夢槍を回しながら左手の神槍ガンジスで<血刃翔刹穿>――。


「チッ――」


 四眼四腕の永劫のパリマリルは左右の上腕の魔剣で神槍ガンジスの<血刃翔刹穿>を防ぐ。

 が、勢いに押されて少し後退。

 永劫のパリマリルは左右下腕の魔剣を消した。

 金漠の悪夢槍の<魔手回し>を防ぐと、


「ぬ――」


 方天画戟と似た穂先は振動し、左右上腕の魔剣の剣身を削るように火花を散らした。

 刹那、方天画戟と似た双月の穂先から<血刃翔刹穿>の無数の血刃が永劫のパリマリルに降りかかり突き刺さっていく。


「ぐぁ――」


 痛みの叫び声を発した永劫のパリマリルだったが、回復は速い、俄に後退し――。

 <魔闘術>系統を強めて左の階段を上がりながら左右下腕に召喚し直した魔剣を「<業魔剣突>――」を突き出してくる。

 その魔剣を金漠の悪夢槍と神槍ガンジスで防ぐが更に「<業魔剣突二重双>――」と急激に魔剣が重くなる連続攻撃を繰り出してきた。<無方剛柔>を意識、発動させながらも押された――。


 永劫のパリマリルは「先は見えたぞ、槍使い! <愚皇・業魔剣乱>――」と連続突きから剣舞を繰り出してきた。


 神槍ガンジスと金漠の悪夢槍で防御に回る。数十合を防ぎきった――。

 わざと、疲弊したように両腕を下げて、<血道第一・開門>を発動――。

 頭部と両足と両腕から血を流す。階段の壇が俺の光魔ルシヴァルの血に染まる。

 同時に砂漠烏ノ型が血濡れ、血の視界となった。


「そこだ――<闇神・業魔剣把翔>――」


 と、<魔剣技>らしき大技を繰り出してきた。

 <砂漠風皇ゴルディクス・イーフォスの縁>と<仙魔・暈繝飛動(うんげんひどう)>を発動――。

 ――周囲の風に乗る。


 ※仙魔・暈繝飛動※

 ※仙王流独自<仙魔術>系統:奥義仙技<闘気霊装>に分類※

 ※使い手の周りに霧と白炎を発生させる※

 ※魔法防御上昇、物理防御上昇、使い手の精神力と体力の回復を促す※

 ※仙王流独自<仙魔術>の様々な仙技類と相性が良い※


 <水月血闘法・水仙>を発動――。

 ※水月血闘法・水仙※

 ※独自<闘気霊装>:<水月血闘法>系統:奥義加速避け※

 ※霊水体水鴉などの<血魔力>で本体を追尾する幻影、または分身を作る※

 ※熟練度の高い<魔闘術>が必須で、<水月血闘法>と<水月血闘法・鴉読>も必須※


 風に乗りながら階段の段差を活かしつつパリマリルの衝撃波を伴う魔剣の連続攻撃を分身と血の分身で避けまくる。

 わざと前に出て風槍流『風流(かぜなが)し』を行い右下腕の魔剣を斜めに流すと同時に――。


 <黒寿ノ深智>を発動――黒寿の力を得る。

 黒寿の幻影が周囲に発生。

「ぬお!?」と動揺したパリマリルを見ながら<破壊神ゲルセルクの心得>を発動。

 <光魔血仙経>を発動。

 金漠の悪夢槍の柄と神槍ガンジスを押し出しながら強引な力で四腕の魔剣をパリマリルの体に押し付けた。


「ぐぉ……風の如きかと思いきや、幻影に魔王の力――」


 そのまま金漠の悪夢槍と神槍ガンジスをパリマリルの体に預けるように手放した。

 即座に<玄智・陰陽流槌>――。

 霧状の水飛沫が両腕に集結しつつ陰陽太極図と似た水の紋様へと変化を遂げる。

 陰陽太極図と似た水の紋様が両腕に付着しながらも、左右の肘の連続した猛打撃をパリマリル体に交互に喰らわせた。

 衝撃波のような陰陽太極図の水飛沫も両腕の周囲に拡がり散る。


 ※玄智・陰陽流槌※

 ※玄智武王院技術系統:上位肘打撃※

 ※<玄智・明鬯組手>の体感が必須※

 ※陰陽を水で表すように両腕の肘の打撃を繰り出す。他の打撃系スキルと連携が可能※

 ※<光闇の奔流>があると威力が上昇※

 ※己心の弥陀と似た心根と組手系スキルに高い格闘センスが求められる※


「ぐぼァァァ――」


 パリマリルは血を吐き体にめり込んだ金漠の悪夢槍と神槍ガンジスごと吹き飛んだ。

 回復はさせない、両手に<握吸>で引き寄せる。

 そして、そのまま両手の<暁闇ノ歩法>を実行し、暁闇を踏む踏み込みから――。

 吹き飛んだパリマリルに近付いて連続突きの<水極・魔疾連穿>を繰り出した。


 パリマリルは、まだ動かせる右上腕が持つ魔剣を下に構え、柄で連続突きを数回受けた。

 が、<水極・魔疾連穿>は受け切れず――。


 パリマリルは体が蜂の巣になる勢いで穴だらけと成りながら壁に押し付けられた。


 体が再生し四腕に違う武器を召喚し防御を取るが、<黒寿ノ深智>を再度実行。


 パリマリルは、「なぇ!?」と幻影に嵌まる、体が弛緩したように前のめりに倒れ掛かった。


 そこを金漠の悪夢槍の<悪夢・烈雷抜穿>で、パリマリルの頭部ごと胴をぶち抜く。

 壁に金漠の悪夢槍が突き刺さった。


 パリマリルは頭部と心臓を失うと再生が止まる。

 金漠の悪夢槍に残りの体がぶら下がったまま死んでいた。


 ピコーン※<暁闇ノ幻遊槍>※スキル獲得※

続きは今週。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自称キュベラスの最高の僕パリマリル逝く。黒寿ノ深智は幻影による混乱作用も有る様子。そしてまたまた新スキルゲット。黒寿ノ深智と暁闇ノ歩法の合わせ技かな? [一言] >「吸血神信仰隊? 私はヴ…
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