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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1534/2029

千五百三十三話 ファーミリアとシキとミスティの活躍



 大きい黒虎の相棒に乗って宗教街に向かう――。

 <闇透纏視>を使いながら妖しい気配を探す。

 

「なんて乗り心地なのでしょう――」

「これが神獣ロロディーヌ……かなり速い!」


 振り向くとミスティの肩越しにファーミリアとシキがロロディーヌの背に抱きついているのが見えた。あのヴァルマスク家の女帝とコレクターのシキが神獣ロロディーヌに抱きついている。貴重な光景か、その二人の前で座っているミスティは、


「ふふ、ロロちゃんの加速に耐えられる二人はさすがね」

「あぁ」


 と振り向き直して血文字をエヴァたちに、


『エヴァとレベッカ、そちらはどうなっている?』

『店の近くで魔人たちと戦って勝った。今、ディーとリリィたちの冒険者と話をしていた』

『ベティさんは無事、というか暢気に寝ていた。起こしちゃったから、怒られちゃったけど、商店街の露店は幾つか潰されているところがあったの。魔人か帝国兵か不明だけど、衛兵隊と戦いがあったと分かる。けど、わたしたちの商店街は無事』

『はい、この辺りは平和です』


 エヴァとレベッカとキサラの言葉に頷き、


『了解した。ベティさんとディーたちを武術街の自宅に案内をよろしく頼む』

『うん、シュウヤは?』

『了解、シュウヤは?』

『はい』

『俺は相棒に乗って、宗教街に移動中。ミスティとシキとファーミリアを連れている』

『分かった、ファーミリアは大丈夫なの』

『ヴァルマスク家の女帝だと闇側の結界などに反応すると思うけど』

『俺が居るから大丈夫だ』

『それもそうね、そして、正義の神シャファ神殿に居る戦巫女イヴァンカさんの確認ね』

『おう、ヴィーネたちにも言ったが、もうじき朝だからミライかカザネの【アシュラー教団】が屋敷にきたら待っててもらってくれ』

『『うん』』

 

 背後に居るミスティはゼクスを小型化させて相棒の頭部に乗せている。

 一瞬で通りを二つ越えた。

 火の見梯子が並ぶ宗教街の通りを進むと前方で爆発音。

 火柱も起きた。火の見梯子が延焼し倒れていく。

 火災警報らしき鐘の音が遅れて響いてきた。

 この辺りは行政の機関がまだ働いている。


 同時に、通りの左右に宗教関連施設の商店街と多重塔の建物が増えてきた。


 と、幅広な大通りで魔人たちと争うオセべリア王国の衛兵達が見えた――。

 敵の数にして百は有に超えているか?

 衛兵隊の数は五十前後か。


 魔人の先頭の魔槍使いは衛兵隊の盾持ちを薙ぎ払うように倒していた。


 魔人は、長剣持ちと槍使いの衛兵と対峙し、一瞬で得物を弾くと前に出ながら下段に魔槍を振るい二人の衛兵の左足と右足を斬り、転倒させる。

 と、その転倒した二人を跳び越えて奥に居た長剣持ちの頭部を魔槍で穿ち倒す。

 その頭部を突き刺した魔槍を引き抜きながら側転で後退し、地面に着地。

 少し間が空いたが、即座に前進しながら、近付いてきた衛兵隊の前衛たちに向け魔槍を振るう。

 一閃で二人の魔槍使いを吹き飛ばすように倒していた。


 魔人たちの戦力は個々が強い。

 

 オセべリア王国の衛兵隊は分かりやすい魔法の明かりを後衛が灯している。国旗を掲げている方も居た。

 装備も見知っている。

 助ける側が分かると戦いは楽だ――。


 直ぐに「各自、自由に魔人たちを倒そうか――」と黒虎(ロロ)から飛び降りて――。


 ――<武行氣>を強めて低空から大通りを直進した。


「ンン――」

「「はい」」

「マスターとロロちゃんが速すぎる――」


 背後の声に応えるように右腕を少し上げた、その手に金漠の悪夢槍を召喚――。


 <血道第三・開門>――。

 <血液加速(ブラッディアクセル)>を発動。

 <闘気玄装>を発動。

 <煌魔葉舞>を発動。

 <滔天仙正理大綱>を発動。

 <龍神・魔力纏>を発動。

 <滔天神働術>を発動。

 <経脈自在>を発動。

 ――<生活魔法>の水を撒く。

 丹田を中心に複数の<魔闘術>系統が体中を行き交う。

 魔力操作を行い<武行氣>による魔力の噴出を維持したまま――《水流操作ウォーターコントロール》を発動し地面スレスレの低空を飛翔しながら通りを直進した。


『――ヘルメとグィヴァ、左右の魔人を殺せ、オセべリア王国の衛兵を助けるぞ――』

『『はい――』』


 左右の目から飛び出たヘルメとグィヴァを追い越す。

 双斧使いの魔人は衛兵隊の一人と戦っている。

 その魔人の背を狙う。


 左足の踏み込みから右手が握る金漠の悪夢槍を突き出す――<断罪刺罪>で双斧使いの魔人の背をぶち抜いた。


 片手剣に盾を持つ衛兵隊は、目の前の魔人の上半身が消し飛ぶ光景を見て、驚き、


「おぉ?」


 遠慮なく死体の血を吸い取りながら、オセべリア王国の兵士たちに、


「――俺は【天凛の月】盟主だ。そこのオセべリア王国の衛兵隊に助太刀をする――」

「「「「「「おぉぉ」」」」」」


 兵士たちの歓声を浴びるように前進。


「ンン、にゃごぉ――」


 と俺の前に駆け抜ける黒虎(ロロ)

 橙色の魔力の〝アメロロの猫魔服〟もとい、虎魔服が似合う。

 普段は可愛い腹巻きにしか見えないが、戦闘時となると鎧風に変化するのが、良い。


 その黒虎(ロロ)は首と胸元の毛が盛り上がると、そこから太い触手を二つ真っ直ぐ伸ばす、先端からは骨剣が出ていた触手骨剣が二人の魔人の足を貫く。

 その触手骨剣を収斂させながら駆けた。通りの右端に移動した黒虎(ロロ)は盾持ちの魔人目掛け左前足を振るう。と、盾ごと腕を左前足の爪で切断し、


「にゃごァァ――」


 と、口から紅蓮の炎を吐くと扇状に拡がる。

 その紅蓮の炎の噴出した勢いのまま空中を後退していく黒虎(ロロ)は宙空を後退していく。

 通りの右側に居た盾持ちの魔人と十人前後の魔人たちは紅蓮の炎に飲まれて炭化して消えた。


 相棒の触手も、己が吐いた紅蓮の炎の影響で一部が燃焼し、欠損していたが瞬時にムクムクッとした動きで瞬時に再生していた。


 触手は収斂されて黒虎(ロロ)の体内に戻っていた。

 その黒虎(ロロ)は降下し、通りの屋根に着地。屋根を少し駆けて、二人の射手を尻尾と触手で転がしてから、首に喰らう。


 相棒は強い!

 ――俺も駆けた。魔人の射手との間合いを詰める。

 射手は魔矢を連続的に飛ばしてきた。<速連射>だろう。


 風槍流『異踏』で横に体をズラし魔矢を避ける。

 続けて飛来した魔矢も爪先半回転で避けながら地面を蹴り、射手目掛け前進し加速する。

 右腕が握る金漠の悪夢槍を握る<握吸>で強めるがまま踏み込み、射手の胸元に目掛け<悪夢・烈雷抜穿>を繰り出した。金漠の悪夢槍が射手の体を突き抜けるがまま前進。

 痛みの声も発せず絶命した射手の横を抜けて、射手の背から出た金漠の悪夢槍を右手で掴みながら――前進。前に居た魔剣を持つ魔人が、


「しねぇ――」


 と言いながら魔剣を突き出してくる。

 構わず金漠の悪夢槍を左から右に振るう――。

 魔剣を真上に弾き――。

 魔人の胸を浅く斬り右腕を切断。

 直ぐに金漠の悪夢槍を振るい返す<血龍仙閃>を繰り出した。

 射手の右腹から胸を一気に両断――。


 その機動のまま爪先半回転を行う。


 皆が戦う位置と――。

 オセべリア王国の衛兵の位置と――。

 敵対している魔人たちの位置を把握しつつ――。


 左斜め前方に居た魔剣持ちに飛び掛かるように直進――。

 金漠の悪夢槍を振るう<刃翔刹閃>――。

 魔剣持ちの魔人の首を片鎌槍で薙ぐ。


 魔人の頭部が真上に吹き飛んだ。


 即座に右斜めに並ぶように立つ魔人たちを把握――。


 右足を後ろに退きながら――。

 半身を右斜めにいる魔人たちに体を向ける。


 そのまま呼吸を整え息を吐いた。

 <滔天内丹術>を実行。

 闇と光の運び手(ダモアヌンブリンガー)装備を展開させる。


 蓬莱飾り風のサークレットと額当てと面頬装備でいいだろう。

 <メファーラの武闘血>を意識、発動。

 

 右腕を腰に当てるように金漠の悪夢槍を引き、穂先越しに魔人たちの列を凝視――。

 

 即座に<血魔力>を発し、金漠の悪夢槍を左手に移し、右手に魔槍杖バルドークを召喚、そのまま魔槍杖バルドークに<血魔力>を込めつつ息を吐いて止めるイメージを行いながら――。

 <紅蓮嵐穿>を繰り出した――。

 丹田の腰ごと前に出るモーションの右腕が前に出た構えのまま秘奥が宿るごと次元速度で直進――。


 ――魔槍杖バルドークから魑魅魍魎の魔力嵐が吹き荒れる。

 体から出た龍の形をした<血魔力>もその魔力嵐の中に混じるや否や推進力が増した。


「「「「「げぇぁぁ」」」」」


 大通りを斜めに両断する勢いで、十数人の魔人を一度に屠る。

 直ぐに、魔槍杖バルドークを消して、左腕を上げる。

 正面の相対しうる魔人たちに向け、金漠の悪夢槍の穂先を差し向けた。


「……強力な<魔槍技>だ……お前が【天凛の月】の槍使い……」

「……ここでかよ、鳴りを潜めているとの情報はデマだったってことか」

「ハッ、トゲルゲ、お前のとこの情報は古すぎる」

「あぁ、神出鬼没の情報はあった、賞金額は上昇し続けている。十層地獄の王トトグディウス様も、あの首を強くお求めだ。正義の神や愛の女神に戦神以上に欲せられているのを忘れるなよ」

「それはお前たちの都合……【天凛の月】はセナアプアを本部にする動きはあったはずだ」

「セナアプアの下界の【血銀昆虫の街】を得た【天凛の月】だからな」

「あぁ、ペルネーテに、その盟主が居る……」

「ペルネーテ最大の脅威と出会うとは……」

「神王位上位クラスと言われている実力者だぜ……」

「キュベラス様のところに向かわないのかよ……」

「ふむ、アルケーシス様が居ても、魔族殲滅機関(ディスオルテ)たちも三人だけではないのだ。魔人ザープたちも居るのだからな」

「……弱気になるなザメルシスと【セブドラ信仰】の者たち」

「うむ。あの首を、十層地獄の王トトグディウス様に捧げたら、我らは【血印の使徒】の最高幹部になろう!!」

「「「「おう!」」」」

「俺たちは【セブドラ信仰】なんだが」

「ハッ、俺の傘下に入れば幹部に取り立ててやる。傷場から魔界に戻れば殲滅しやすい魔族ゲベル狩りを共に行えるだろう。そして、十層地獄の王トトグディウス様の完全復活は近いのだからな」

「「「おぉ」」」


 魔人たちは人数と実力から余裕の顕れか。

 べらべらと喋る。

 複数人の四眼四腕の魔族が居た。

 魔界セブドラとセラを結ぶ傷場からペルネーテにこられる算段があるということだ。


 と、そこに大通りの中央から左に移動したヘルメが見えた。


 常闇の水精霊ヘルメは<珠瑠の花>を使い複数の魔人の体を拘束すると、拘束した魔人たちに向け《氷槍(アイシクル・ランサー)》を繰り出し、着実にヘッドショットで倒していた。

 

 そして、左腕を氷腕剣に変化

 右手を闇の繭に変化させる。

 その闇の繭から蒼と闇の霧が発生し、魔人たちの頭上を覆うように展開された。が、その闇の霧は消えた。

 消えていたがヘルメは前進――。


 頭部から闇の霧が消えたばかりの魔人の首に氷腕剣を吸い込ませると、氷腕剣を煌めかせるがまま、魔人の首を切断し、後方斜め上空に跳躍し浮遊しながら、


「――グィヴァ、行きます――<滄溟一如ノ手ポリフォニック・ハンド>!」

「はい! ヘルメお姉様!」


 ヘルメの<滄溟一如ノ手ポリフォニック・ハンド>が複数人の魔人を一度に拘束。


 二人の四眼四腕の魔族も、腕と足が<滄溟一如ノ手ポリフォニック・ハンド>の無数の不思議な手に捕まり地面と繋がっている。


 そこに、グィヴァが放った<雷狂蜘蛛>が炸裂――。

 <滄溟一如ノ手ポリフォニック・ハンド>で体が拘束され、貫かれて、身動きが取れない魔人と魔族たちの体が一瞬でこっぱ微塵に破壊された。


 大通り左側の魔人たちの数が一気に減る。

 が、中央と右側の魔人と魔族たちは、まだまだ数が多い。

 それらの魔人と魔族たちはオセべリア王国の衛兵たちを次々に倒している。


「――中央の魔人たちはわたしたちが倒しましょう」

「はい、行きますわよ、ミスティさんとシキ!」

「ふふ、まさか、ここで皆と共闘するとは――」


 ミスティとファーミリアとシキが俺の左前に出た。

 宇宙的な強化外骨格ユニフォームが似合うミスティは、小型の魔導人形(ウォーガノフ)のゼクスを成長させたように大きくさせる。


 ゼクスの双眸(そうぼう)はフォークの先端が左右に並ぶ形で、そのフォークの溝の奥には合計六つの魔力の輝きがあり、一つだけ色が違うのが、イシュラの魔眼の欠片だろう。

 魔眼からしても迫力があるし、外骨格が渋すぎる。

 両手に光剣を生み出したゼクスは魔人の前列に突進し、両肩から吹き出した光の粒だけで、複数の魔人たちの体を蜂の巣にしていた。

 複数の死体を吹き飛ばしながら前進したゼクスは両手の光剣を振るい回し、一人、二人、三人、四人と連続的に斬り伏せる。

 斬った断面から蒼白い光が発生して、その蒼い炎に飲まれるように燃焼しながら倒れる魔人たち。


 試作型魔白滅皇高炉と聖十字金属とミホザの遺跡にあった金属とクリスタルバーとエセル界の品のお陰で、魔導人形(ウォーガノフ)のゼクスの武器と防具が全体的に大幅に強化されているようだ。


 そのミスティはゼクスの背後から手首を魔人たちに向ける。

 その手首には暗器械が嵌まっていた。

 そこからミニ鋼鉄矢を連続射出。

 ミニ鋼鉄矢の飛来を予測できなかった魔人たちは一瞬で貫かれていく。


 ミスティの前に居る魔人たちは盾持ちを中心に魔法防御の魔法陣を展開させて防御を意識した。


 ゼクスとミスティは少し退いた。

 そこに、ファーミリアが右に出た。

 右腕に血の魔剣を召喚。

 形状はツヴァイハンダーとフランベルジュが融合したような形だ。


 その血の魔剣を構えたところで姿がブレた。

 血剣の群れを自分の周りに誕生させながら直進。

 更に超加速したファーミリアが消えた。

 切り札の<脳脊魔速>を超えるような速度か。

 右端に居た魔人の魔剣師と背後に居た射手と魔杖持ちの魔人が「え?」と声を発したが、その声を発した魔人たちの体は消えている。


 頭部の魔人は地面に転がって、


「げぇぇ……ぬぐぁ……お前らハ……吸血神信仰隊……」


 と血を吐きつつも喋っていた。

 その魔人は首から無数の肉と繊維と骨を再生させるように出現させていた。再生力が高い、と、その魔人の頭部をファーミリアはヒール底で貫く。頭部は一瞬で「あべし」と言うように破裂していた。


 ファーミリアのヒールの底から無数の血の刃が飛び出ていた。


「――うふふ、シュウヤ様、見ていてくれましたか」

「あぁ、<紅蓮嵐穿>のような<魔槍技>か<武槍技>かな」

「はい、この血の魔剣はサンスクリットの血霊剣ですわ。<魔槍技>は、<血霊ちれい血剣大貫刃グランドソードブラッディー>の一撃です」

「素晴らしい一撃だ」

「――うふふふ、では、もっと見せましょう――」


 ファーミリアは前に跳ぶ。

 一瞬で、魔人に寄ったファーミリアはサンスクリットの血霊剣をぐいっと押し上げた。


 サンスクリットの血霊剣を胴と手足に喰らった魔人は持ち上がって宙空で派手爆発するように散った。

「相変わらずの<血魔力>の無駄使いよね――」


 シキの言葉だ。

 いつの間にかファーミリアを越えている。

 魔人の魔剣師に近づきながら蒼いドレスを装着すると左手の先に魔法の球体を生み出す。


 と、シキの体がブレた。

 その左腕を魔人の胸元に突き出していたのか、

 転移したようには見えないが、魔人の背後に移動していたシキは、左手にいつの間にか、握っていた脈動している心臓を見て、


「雑魚ね……」


 と言って握り潰す。血は吸収しない。

 蒼いドレスが形を変えながら血を弾いては魔力だけを吸収している。

 更に、足下に顕れていた闇の渦から方円を描くように闇が飛び出る。

 闇は、斜め前と複数の魔人たちの胴体だけを薙ぎ払っていた。

 指輪が嵌まっている手足と髪飾りが目立つ頭部を闇の渦に引き込んでいた。


「「「げぁぁぁ」」」

「なんだ、こいつらはぁぁぁぁ」


「シキは前と変わらない、シンプルのままね」

「うふふ、当然です……シンプルに勝利してこそ、至高の悦を得られるというものですよ、ねぇ、シュウヤ様? ふふ」


 とシキは浮遊しつつ頭部を斜め上に上げて俺を見下ろしてきた。

 高い鼻の孔も魅惑的に見えるほどに少し大きい唇が赤くテカっていた。

 長い髪の周りに色々な花々が浮かぶ。


 左腕に手首に嵌まる朱色の魔宝石が嵌まっている腕環が妖しく光る。

 首と襟元にかかる長い人差し指も揺らいでいた。揺らいで見えるのは、手自体が武器だということか、魔力が集積している結果だろう。


 シキも美しい。

 

「いけませんことよ、<魔美学ノ魅了>で、シュウヤ様を取り込もうとは!」

「え?」


 シキは俺の驚いた顔を見て微笑む。

 と、顔の皮膚から薄い桃色の魔力が放出されて皮膚の表面を刷く。

 魔力の効果か、肌の艶が良くなっていく。


 首チョークのコインの表面に宵闇の女王レブラを意味する魔印が浮かんでいた。


「シュウヤ様、シキを見続けていけません! こちらを見て」

「あ、あぁ」


 ファーミリアを見ると、頬を上気させる。

 可愛い。

 そのファーミリアは、


「<龕喰篭手>と――<血液魔防装具ブラッディ・プロテクター>――」


 とファーミリアの前方に頭部が怪物のガントレットを生み出す。

 更に、周囲に浮いていた血剣がファーミリアに刺さっていく。

 痛々しいが血剣は体内と衣装に吸収されて消えた。


 一瞬で、角を有した全身甲冑に様変わり。


 長い金髪が後頭部に靡いている。

 <アムシャビスの紅光眼兜>と少し似ているか。


 ファーミリアはサンスクリットの血霊剣を突き出しながら前進。

 ミスティとゼクスとシキを超えた。


 大通りの右に居る魔人集団に突っ込むファーミリア――。

 サンスクリットの血霊剣の串刺しになっていく魔人たち。

 頭部が怪物のガントレットにも殴られるように食べられていく魔人たち。

 ファーミリアの甲冑から迸る血剣の群れを浴びて全身がズタズタに切断される魔人たち。


「「「「げぇぁ――」」」」

「くっ、右が――」


 大通りの右に居た魔人たちは殆どが倒された。

 オセべリア王国の衛兵隊たちから「「「おぉ」」」と歓声が上がる。

 ファーミリアは周囲の血を吸い取っていたが、衛兵隊の歓声を聞いて、誤魔化すようにドレス衣装に戻して、ふらつきながら、通りの壁に寄り掛かっていた。


 と細長い左手を上げて、いつの間にか拾っていたオセべリア王国の国旗を振るって、


「――【天凛の月】の盟主様の言いつけ通り、右側の敵を倒しましたわ!!!」

「「「「おぉぉ」」」」


 衛兵隊は一気に活気づく。

 どう考えても吸血鬼(ヴァンパイア)だが、衛兵隊は【天凛の月】の噂は聞いているから、疑問に思わないようだ。


 女帝ファーミリアも咄嗟の演義だと思うが、上手い。

 残りの魔人たちは少数。

 

 オセべリア王国の衛兵隊と共に魔人たちを駆逐した。


「では、俺たちはこれで、宗教街の奥に向かいます」

「「「はい!」」」

「にゃおお~」

「皆、イヴァンカのところに行こうか、ヘルメとグィヴァは両目に」

「「「はい」」」

「行こう!」


 と黒虎(ロロ)と皆で駆けた。

 駆けながら傍に来た常闇の水精霊ヘルメと闇雷精霊グィヴァが両目に入った。

 ミスティはゼクスの肩に乗っている。

 ファーミリアは頭部が怪物のガントレットを大きくさせて、その上に乗っていた。

 

 幻獣でも使役しているのだろうか。

 あれも<血魔力>、<血道・なんとかのスキルなんだろうか。


 左の商店街の真ん中に移動した。

 神社の入り口に立つ門のような巨大な鳥居が新しく建設されている。


「あの左の通りの真ん中の門は、新設されたばかりよ、中心にはあの門から行けるから」

「了解」

「にゃお~」


 ミスティの言葉を聞いた相棒は先に直進。

 急激に左折し、後ろ脚が滑っている。

 俺たちも続いた。

 潜った先には、アリアの広場と御香が焚かれたエリアがあったが――。

 魔人たち【闇の教団ハデス】と思われる魔人集団らしき者たちと、ローブや法衣を着た者と戦士系の装備を装着している者たちが戦っているところに遭遇――。


「にゃお~」


 と黒虎(ロロ)は足を止めた。

 前回見かけた【黒魔女教団】たちは見当たらない。


「マスター、オセべリア王国の兵士だと分かりやすいけど、だれが敵か味方が分かり難い……」

「ここでも争いがあるとは、各神殿は襲われたようですわね」

「正義の神のシャファ神殿は、あの先です」

「皆、俺たちに向かってくる魔人のみ倒そうか、それ以外は無視して、正義の神のシャファ神殿に向かう」

「にゃお~」

 と、大きい黒虎(ロロ)の触手に捕まった。

 一瞬で、大きい黒虎(ロロ)の背に皆が乗る。

 そのまま加速した黒虎(ロロ)は戦場となっている広場と大通りを跳び越えて正義の神のシャファ神殿に到達。

 そこの階段前にはバリケードが構築されていた。

 中心には、


「異教徒たち……正義の神シャファ様はお怒りだ!」


 光り輝く金色髪の女、正義の神の戦巫女イヴァンカの姿があった。

 右手に光剣と左手に光盾を握っている。

続きは明日。HJノベルス様から「槍使いと、黒猫。1~20」発売中。

コミックス1巻~3巻発売中。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 神王位1位とシュウヤならどっちが強いのでしょうか?
[良い点] ベティさんやディーたちは無事で良かった。 >「――俺は【天凛の月】盟主だ。そこのオセべリア王国の衛兵隊に助太刀をする――」 >「「「「「「おぉぉ」」」」」」 衛兵隊のこの反応的に、天凛の…
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