千五百二十話 第二王子邸の通り前の修業と戦い
2024年7月11日 15時06分 加筆修正
第二王子ファルスの屋敷の庭の血溜まりはもう消えている。
皆が血を吸収しまくったようだ。その少し乾燥気味な庭をヘルメとグィヴァと皆で駆けた。屋敷を囲う壁はそんなに高くない。
その壁と地続きの正門付近では衛兵たちが倒れていた。
悪いが埋葬をしている時間はない――水神アクレシス様に祈るように南無と祈りながら<水神の呼び声>を再発動――。
石灯籠に石幢の彫られてあった正義の神シャファ様にも祈りをしてから跳躍し――屋敷の壁を跳び越えて大通りに着地。
――<武行氣>と<闘気玄装>は維持。
――<魔闘術の仙極>を発動させる。
―― <経脈自在>を発動。
――<血脈冥想>を発動。
光と闇の運び手装備で砂漠烏ノ型を展開させた。
一瞬で、蓬莱飾り風のサークレットと額当てと<霊血装・ルシヴァル>のような面頬装備が兜の形状に変化した。
兜の先端は大形猛禽の嘴と似ている。
キサラは砂漠鴉がモデルと言っていた。
黒魔女教団の象徴の〝暁闇を刺し貫く飛び烏〟は何度か聞いている。
右斜め上の視界は、兜の先端部、嘴の形状に変化した影響で埋まった。漆黒の鎧に風の魔力が発生したかのように視えると思う。
風が周囲に漂い風を纏う――。
周囲の風が視えるのも良い。
風に乗り加速力と速度も上昇する。
そして、<無方南華>や<火焔光背>があるから、微妙だが周囲の風をも己の魔力にも変換可能だ。
闇と光の運び手装備のまま周囲を見渡した。
――大通りでは人の気配は少ない。
――さすがに今夜の騒ぎは普通ではないからな。
げ、通りの中央で貴族を乗せていたであろう高級馬車が複数転倒していた。馬と御者の人族の死体が見えている。
死んでいる方は貴族かどうかは不明だが、まさかペルネーテで市街戦の展開になるとは。
あの貴族がオセべリア王国の要人だったとしても、俺には民間人にしか見えない。
右の大通りの奥の魔素の気配は増えているが、歩みは遅い。
沙が左斜め上空を飛翔し、周囲を警戒していく。
俺の右斜め上を飛翔していくルマルディとアルルカンの把神書は向かいの貴族の屋敷を空から見るように旋回してから此方側の通り沿いに戻ってくると横回転をしてからホバーリングを行い通りを見やる。
ベリーズとベニーとピュリンは俺の背後の壁の上に着地し、壁の上を走る。右の視界の端に確認したところで三人は通りに射線を作った。
通りに面している王子の屋敷を囲う壁は遮蔽にも利用できるだろうからな。
敵を待つ間に――。
<導想魔手>も発動し――。
〝ゴルディクス魔槍大秘伝帖〟と〝髑髏魔人ダモアヌン外典〟を取り出した。
表紙のイラストには……。
ドラゴンライダーのような方々の渋い絵柄が描かれてある。
ドラゴンの装飾に地上の軍勢が着ている鎧と武器と旗印は黒魔女教団だろう。
その奥義書と聖典を黒魔女教団に入信する想いで読みながら――。
左手に<滔天内丹術>を実行――。
※滔天仙流系統:恒久独自神仙技回復上位スキル※
※戦神イシュルルの加護と<水神の呼び声>と<魔手太陰肺経>の一部が必須※
※玄智の森で取り込んだ様々な功能を活かすスキル※
※体内分泌などが活性化※
※<闘気玄装>、<魔闘術の仙極>、<血魔力>の魔力が呼応し効果が重なる※
※回復玄智丹、万仙丹丸薬などの分泌液と神経伝達物質が倍増し、それらが全身を巡ることにより飛躍的に身体能力が向上し、<魔闘術>と<闘気霊装>系統も強化され、魔力回復能力も高まる※
※<経脈自在>で効果倍増※
――体力と魔力を自然に回復させる。
<導想魔手>に〝ゴルディクス魔槍大秘伝帖〟を持たせながら<鬼想魔手>で〝髑髏魔人ダモアヌン外典〟の頁を捲らせる。
読んでいると自然と<姫魔鬼武装>と<メファーラの武闘血>が発動した。
体に熱さと涼しさを同時に味わう。
――聖典の内容は、ゴルディーバ族の歩み。
巨大な梵鐘と寺院の建物の絵が芸術だ。
黄金の飾りが付いた大鐘獏魔もあった。
修道服と似た服装は黒魔女教団の訓練兵たちかな。
法衣にも少し似ているが、最初からこういう系統の衣服だったのか。
闇遊の姫魔鬼メファーラ様と光神ルロディス様と知記憶の王樹キュルハ様の眷属たちと眷属でもあった髑髏武人ダモアヌンさんの物語……。
精巧に描かれた様々な魔道具、法具とも呼ばれていたようだ。
それを、俗に暁の魔道技術か。
この時代の技術力はかなり高度だ。
魔機械のロボットたちも居る。
魔導人形と似ているが、どうなんだろう。
ミスティもこの絵柄を見たら興奮するかもだ。
そして、暁の魔道技術と目される技術は多岐に亘って当時のゴルディクス地方を発展させていたのか。義手や義足に強化外骨格などはナ・パーム統合軍惑星同盟や銀河帝国の技術にも視えてくる。
と、黒魔女教団の結成当初からある訓練に<飛式>を受けながら教団用の槍を数千回振るい突くってのがあった。
ダモアヌン山とダモアヌン総本山を駆ける訓練もある。
お遍路さんのような修行もあるようだ。
仲間たちと模擬戦を合間に挟みながら長い階段をひたすら上下していく修業か。
大鐘獏魔を持ち上げる訓練もあり、大鐘獏魔を得物で叩き持ち上げたりする高度な訓練もあるか、両手に大量の水が入った樽を持ちながら上下する訓練もあるんだな。
木人、丸太、縄網、を使った激しい訓練もある。
【修練道】と似た訓練方法だ。
中国武術の『瘋魔棍』と似た棍棒術――。
風槍流『中段受け』と似た受けもあるし、握り方も似ているが微妙に異なる。ラ・ケラーダの想いがどんどんと高まる。
戦闘が近付いていると分かるが、奥義書を読むごとに槍の神髄を得ている気分となって胸が躍る。
突いて振るいつつ上下に動かす技術スキルもあるようだ。
黒魔女教団の天魔女流〝天魔女流白照闇凝武譜〟の座学もある。
内容は複雑だが、ある程度理解できた。
スキル化はナシかな。女性専用なのかも知れない。
十七高手同士の模擬戦にも幾つかルールがあるようだな。
短剣術の記述もあるが……学べないか。
更に、王家の谷は元々が小さい砂漠か。
この砂漠を活かす修業に、砂漠に渦が起きて、渦に吸い込まれることを利用し、砂漠だけでなく土砂に埋もれながら、その渦から槍スキルで脱出する修業か……。
普通なら渦に吸い込まれて死んでしまう内容だ。
これは中々きつそうだが、王家の谷には地下があるのか。
ペイークの壺が要らずとも巨大ワームや巨大ガヴェルデンを操作できるようになる〝水霊の深淵〟に〝魔声霊道〟の記述もある。
ダモアヌンは古代ムリュ族と交流が深かったようだ。
その修業場所が記されてあるが、ゴルディクス大砂漠となったところが多いから現在も残っているかは不明だが、ここに行けば、古代ムリュ族の〝水霊の深淵〟に〝魔声霊道〟を得られる?
槍武術の記述を見ていく――。
奥義書の〝ゴルディクス魔槍大秘伝帖〟を読むことに集中――。
ピコーン※<ゴルディクス魔槍大秘伝>※恒久スキル※獲得
※<暁闇ノ歩法>※恒久スキル※獲得
※<闇光の運び手>※恒久スキル獲得
※<刃翔刹穿>※スキル※獲得
※<刃翔刹閃>※スキル※獲得
※<刃翔鐘撃>※スキル獲得
※<暗行ノ歩法>※恒久スキル※獲得
おお、ゴルディクス魔槍流を少し学べた――。
髑髏魔人とゴルディーバ族たちが残した魔槍に関する技術。
ダモアヌンブリンガー用のスキルの初歩か。
黒魔女教団の四天魔女の天魔女流の槍武術を学べた。
キサラから何度も浴びていたが、〝ゴルディクス魔槍大秘伝帖〟と〝髑髏魔人ダモアヌン外典〟を見ることが重要だったか。
と興奮したが修業はここまで。
<導想魔手>と<鬼想魔手>を消した。
奥義書の〝ゴルディクス魔槍大秘伝帖〟と〝髑髏魔人ダモアヌン外典〟を消す。
大通りの向こう側から魔矢が飛来。
左手に魔槍ラーガマウダーし、弾き切る。
威力がある魔矢だったが――。
――遠くからの狙撃か。
ここからでは判別が不可能。
敵が多くて<闇透纏視>を使用しているが中々見つけにくい。
……ラドフォード帝国の黒髪隊のタケバヤシのような連中が、ペルネーテに乗り込んでいるんだろうか。
冒険者側も王国側の傭兵として貴族街で奮闘している情報もあるからザガ&ボン&ルビアが心配だ。
メルやヴェロニカにベネットのことだからぬかりはないと思うが、迷宮の宿り月の宿屋&酒場も狙われる可能性がある?
アメリを守るため白猫が使われているようだから宿り月の防御はカズンさん、蟲使いゼッタ、剛拳カズン、惨殺姉妹、剣客ロバートか、人魚のシャナにも用があるし、後で向かうか。
ポルセンとアンジェはカルードと烏たちと一緒にホルカーバムだが、呼び寄せるか?
『羅と貂出ておいてくれ』
『分かりました』
『はい』
――羅と貂の神剣が左手の運命線のような傷が開いて、そこから飛び出ていく――。
神剣状態の羅と貂は仙女の女人に変化を遂げた。
「ひゅぅ~」
と口笛を吹いたのはベニー。
沙・羅・貂を傍に見る機会は少ないからな。
デュラートの秘剣も戦闘型デバイスから取り出した。
――<光魔ノ秘剣・マルア>を意識し発動――。
一瞬で、デュラートの秘剣から黒髪が大量に噴出。
そこからマルアが誕生する様は、結構なホラーテイストだが、顕れたのは美少女的なマルアだから素敵すぎる。
そのマルアはデュラートの秘剣の切っ先を大通りに向け、
「デュラート・シュウヤ様、敵はどこに!」
「おう、この通りの右だ。まだ遠くから射手が此方を狙う程度。で、左を進むのは巨大な相棒で乗っているのは王族だから速度はゆっくりだ。前後にユイたちが守りについている」
「分かりました。もしかして劣勢な状況なのですか!」
「俺たちは大丈夫だが、世話になっているオセべリア王国が劣勢だな」
「分かりました!」
「明日の朝は地下オークションだが、それもどうなるか分からない」
「え! はい」
「今は相棒が載せている第二王子ファルス殿下たちを守りつつ、俺たちも狙われている側でもあるようだから、降りかかってくる敵を殲滅していこうか、あえて、魔人キュベラスの陽動に乗るのもいいかも知れない」
「ふっ、主らしいですな!」
とベニーの発言だ。
環双絶命弓を持つ<従者長>ベリーズも、
「ふふ、たしかに!」
と発言。
既に聖十字金属の魔矢を番えている。
<光邪ノ使徒>のピュリンも<光邪ノ尖骨筒>を発動させて左腕の銃口を通りに向けていた。
「使者様たちを攻撃する者たちに正義の鉄槌を――」
と発言しながら骨弾を射出。
「――やりました! 使者様を魔矢で狙った射手の頭を撃ち抜きました!」
ピュリンは喜ぶ。
「おう、よくやった!」
「「はい」」
「ピュリンの狙撃はすげぇな、」
ルマルディとアルルカンの把神書も声を合わせてきた。
一方、左の大通りでは巨大な黒猫ロロディーヌがゆっくりと歩いている。右の剣呑とした雰囲気とは正反対の雰囲気だ。
もっと速度を出したほうが良いと思うが、乗っているのは第二王子ファルスとメイドたちだからな。
気絶しないように気を付けているんだろう。
ふと、そんな大通りをトコトコと巨大な黒猫が大通りを歩いていく姿を見てジオラマの街を疾走する模型電車に戯れ付くような黒猫に見えてきた。
真っ昼間だったらテイマーの多いペルネーテだったとしても少しは騒ぎになっただろう。
すると、右の大通りから……ぞろぞろと黒装束とローブを着た連中が現れた。軍隊かよ、大通りの横幅を占めるほどの人数で最低でも二百以上は居そうな印象だ。
ラドフォード帝国の残置諜者も加わっているか?
魔剣、双剣、魔槍、斧、弓、斧、チャクラムは普通だが……。
網の<投擲>武器は比較的に珍しいか。
古代ローマの剣闘士が持つような武器だ。
鎖鎌と、ハンマーフレイルも居た。
皆、武器は血濡れている。貴族街で暴れていた証拠か。
先頭集団の中央の魔人は両手持ちの短い魔杖。
魔力を込めたのか、魔杖の先端から目映いオレンジ色の魔刃が伸びていた。
距離があるから魔杖から発生している光刃のようなエネルギーブレードからブゥゥンと音は聞こえないが……煌々と輝くオレンジ色のエネルギー刃は夜間なこともあり、かなり目立つ。
ムラサメブレード・改の鋼の柄巻と似た武器か。
キサラとヴィーネも持つ。
お陰で、左右に居る魔人たちの顔が見えた。
その左右に居る魔人たちもローブを払うように得物に魔力を通す。
右の魔人は、四眼四腕だから魔族で確定だ。
右上腕と右下腕に魔槍を持つ。
左上腕の手はメイス、下腕には短槍を持つ。
左の魔人は得物は双剣で、人族か魔人か、その判別は不可能。
すると、右の壁の上に向け魔矢が向かう。
そこにはベニーが居た。
ベニーのカウボーイハットの帽子と魔眼が煌めく。
跳躍しながら射手たちに〝セヴェレルス〟をぶっ放す。
金属のマズルフラッシュが渋い。
先ほどから、魔矢を射出している射手の眉間を撃ち抜いていた。
ベニーは宙空で横回転を繰り返し、俺の横に着地。
「主、遠慮無く暴れてくださいよ、俺は後方からちびちびやりますんで」
「ハッ、元【七戒】、何がちびちびだよ、お前も遠慮無く、前に出ていいぞ?」
「旦那、そりゃ勘弁――」
と後退したベニーは〝セヴェレルス〟を敵の後衛に放つ。
前衛の魔人集団の背後には、まだ射手が居る。
黒装束を着ている連中の一人が、魔剣を俺たちに向け、
「情報通りだな、王子が生きているのなら、殺せ!」
「「「「「「「おう!」」」」」」」
一斉に魔人たちが襲い掛かってきた。
即座に「皆、好きに迎撃していい――」と発言し、前傾姿勢で前進――右手に魔槍杖バルドークを召喚し<握吸>を実行。
左手の魔槍ラーガマウダーの握りも<握吸>で強める。
更に<勁力槍>を意識、発動。
※獲得条件に<塔魂魔突>と<空の篝火>が必須※
※槍の一撃が強化される※
※<刺突>や<豪閃>に<魔槍技>にも流用可能※
※意識して<勁力槍>を使うと、より『勁』と『力』が槍の武器に宿り、強力な『一の槍』を繰り出せる※
前に出た四眼四腕の魔族が反応し魔槍を突き出してきた。
それを受けず軽く跳躍――。
<血道第三・開門>――。
<血液加速>を発動――。
加速しながらも、ふんわりと魔槍の穂先を踏みながら両手を突き出す<断罪刺罪>――。
四眼四腕の魔族は左上腕のメイスと下腕の短槍を掲げようとしたが遅い。
魔槍ラーガマウダーと魔槍杖バルドークの穂先が「ぐっ――」と痛みの声を発した魔族の胸と背を突き抜けた。
鎧ごと胸が消し飛ぶ。
四眼の頭部が乱雑に回転し、
「――うごぇぁ!?」
と血を吐きながら叫んでいた。四眼四腕の魔族の下半身は露出した脊髄から血を噴出させながら倒れていく。
魔槍とメイスが宙空を舞った。
「――バルアが倒されただと!」
と叫びながら両手の槍を突き出している俺を狙うように――。
オレンジ色の魔刃を突き出してきた魔人――。
――分かりやすい行動だ。
腕を捻りながら魔槍ラーガマウダーの柄でオレンジ色の魔刃を弾く。
覚えたばかりの<暁闇ノ歩法>を発動――。
空間の闇を足で掴むように斜め前に加速移動し、オレンジ色の魔刃を発生させている魔杖を持つ魔人の側面を取る。迅速に魔槍杖バルドークで<刃翔刹閃>――。
魔人は加速に合わせて速度を上昇させると、魔杖を横に傾け、<刃翔刹閃>を弾いてきた。
魔槍ラーガマウダーに魔力を込めて牽制を兼ねた<魔仙萼穿>を魔人の胸元に繰り出す。
魔杖を傾けてオレンジ色の魔刃で十文字の矛を防ぐ。
<髑髏武人ダモアヌン武闘術>を意識し、発動し魔槍杖バルドークで<刃翔刹穿>――。
「――ぐっ」
魔人は魔杖を胸元近くに構えオレンジ色の魔刃を盾に何とか防ぐ。
<血魔力>を込めた魔槍ラーガマウダーでもう一度<勁力槍>を強めて<刃翔鐘撃>――。
魔人は押されながらもなんとか魔杖から伸びたオレンジ色の魔刃で防ぐ。
と、魔槍ラーガマウダーの十文字の穂先から蒼と橙と朱の炎が噴出。
その鳳凰の炎に頭部が飲まれたようにも見えた魔人は「――ぐあぁ」と悲鳴を発して構えが崩れた。
すかさず、<雷飛>――から横に寝かした魔槍杖バルドークの紅斧刃で<刃翔刹閃>――。
ジュバババッと血飛沫が蒸発する音が響く。
魔人の右腕と脇腹を魔槍杖バルドークの紅斧刃が捉え、切断した。
オレンジ色の魔刃を放出させていた魔杖が宙空に跳ね上がる。
更に魔人に相対し右足の踏み込みから左手で握る魔槍ラーガマウダーで<魔仙萼穿>――魔人の首に直進した十文字の穂先が、その首を穿つ。
強者だった魔人の頭部が真上に跳ねるように吹き飛ぶ――。
「おぬれがぁぁ――」
「闇神リヴォグラフ様よ、俺に力を――」
と、左右の斜め前から他の魔人が叫びながら――魔槍を突き出してきた。
すかさず、左手と右手の得物を消しながら両腕を引き、即座に両手に再召喚させた魔槍ラーガマウダーと魔槍杖バルドークで<魔手回し>を実行――。
二人の魔槍の穂先を魔槍ラーガマウダーと魔槍杖バルドークの螻蛄首辺りで引っ掛け上向かせる。と両手を離しながら<光魔血仙経>と<無方剛柔>を実行――。
加速し前進しながら二人の胸元へ<滔天掌打>を送る――。
「「ぐぇ――」」
二人は胸元を掌の形に窪ませながら吹き飛ぶ。
背後に居た魔人の射手たちと衝突し、魔人たちが跳ね上がっていた。
<握吸>で魔槍杖バルドークと魔槍ラーガマウダーを両手に引き戻す。
前の射手目掛け――前進。
「ひぃぁ――」
怯えながらも魔矢を連続射出できるのは強者だ。
左手の魔槍ラーガマウダーを動かし、柄で上に下に飛来してきた魔矢を連続的に弾きながら魔槍杖バルドークで<刃翔刹穿>――。
射手の頭部を魔槍杖バルドークの紅矛が穿った。
ピコーン※<血刃翔刹穿>※スキル※獲得
――おぉ、スキルが進化。
と、喜んだ束の間、左右から魔人が迫るが、その二人の頭部が消えていた。
頭部を失った魔人たちは、首痕から血飛沫を噴出させている。
斜め後方に転がった頭部には、ピュリンと骨弾と聖十字金属の魔矢が貫いたような大きい穴があった。
「一瞬で、バルアたちがあの世かよ……なんて強さだ!」
「あいつが【天凛の月】の槍使い!」
「数で仕留めろ!」
「「「「おう!」」」」
正面と右から魔人か魔族が帝国兵も混じっているのか、まだまだ多い――。
ヘルメの<珠瑠の花>の数本の輝く紐が魔人の一人を拘束するように絡み付いていくとグィヴァが「ヘルメ様、ナイスです――<雷雨剣>」が、その<珠瑠の花>で体が拘束されて身動きが取れない魔人の体を穴だらけにしていた。
続いて横一列に並んでいた沙と羅と貂が直進し<御剣導技>を披露するように魔人たちの足を刈り上げては、急激に上昇し、散った沙・羅・貂たちは対面した魔剣師の人族に<御剣導技・風梛>を喰らわせていた。
続きは明日。
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