千五百十七話 凄腕暗殺者たちとの戦い
――あれはガルキエフか!
立ったままのガルキエフには魔素がない、死んでいる。
なんてことだ――周囲の血溜まりと死体の数も尋常ではない。
「――なんてこと!」
ユイの悲痛な叫び声が心を衝く。
――だが屋敷の中にはまだ生きた魔素がある。
しかも見知った魔素は四つ、それ以外は敵か――。
「ユイ、中にはまだ生きた魔素がある――」
「――うん!」
触手を振るい回して飛来してきた魔矢を防いでいる相棒から離れながら――<闘気玄装>と<武行氣>を発動。
<闇透纏視>と掌握察を使用し、敵の魔素を把握――。
<召喚魔槍・鳳凰ラーガマウダー>を発動。
「「新手の敵だ――」」
庭に居た黒装束を着た連中が一斉に俺たちを凝視。
左手に魔槍ラーガマウダーを召喚し、血溜まりを滑るように飛翔しながら魔槍ラーガマウダーの柄で飛来してきた杭を弾く――。
また杭刃が飛来――速い――。
魔槍ラーガマウダーを左に上げると、柄と杭刃が衝突し、キィンと弾く、また飛来した杭刃を柄でキィンッと弾いた。
衝突した柄から火花が散り硬質な音が響く。
金属の杭刃を<投擲>してきた黒装束は強者だと分かるが、投げるタイミングを逃さない――。
二腕二足で人族か魔人の黒装束が金属の杭を投げるの前の筋肉の動きは予想できる。
低空から膨大な<血魔力>を込めた魔槍ラーガマウダーを<投擲>――。
直進する鳳凰ラーガマウダーから蒼と橙と朱の炎が噴出し、<投擲>モーションに入っていた黒装束の右腕と十文字の穂先が捉えるがまま腕を裂いて胴体を貫き、背後の地面に突き刺さって止まった。
その魔槍ラーガマウダーから蒼と橙と朱の炎が鳳凰の翼のように噴出し、その炎の翼に飲まれた金属の杭を<投擲>してきた黒装束は一瞬で炭化、炎は羽ばたくように拡がって他の射手たちにも炎の翼に触れると体が燃焼して、次々と燃え移っていった。
「「げぁ」」
「「消してくれ――」」
直ぐに<握吸>で魔槍ラーガマウダーを引き寄せる。
クロスボウと弓を持った射手たちが放った魔矢が飛来してきた無数の魔矢を見ながら――。
『羅、<瞑道・瞑水>を使う――』
『はい――』
半透明な帷子系の和風防具<瞑道・瞑水>を瞬く間に纏う。
三叉魔神経網が活性化するのを感じながら<超能力精神>の衝撃波を発動し、複数の魔矢を吹き飛ばした。
――ユイと相棒と庭を駆けるように直進しながら、
『アクセルマギナ出ろ――』
と戦闘型デバイスと闇の獄骨騎を触り『来い、ゼメタス、アドモス――』と呼ぶ。
戦闘型デバイスから銀色の粒子が背後へと迸っていく。
屋敷に向かいながら壊れた窓の数を把握。
芝生と敷松葉の上を低空で飛翔し――クロスボウを持つ射手に近付き魔槍ラーガマウダーで<豪閃>。
射手は僅かに反応しているが遅い――。
<豪閃>の十文字の穂先が射手の首を薙ぐがまま死体を見ないで横回転しつつ周囲を把握――。
俺の左から屋敷に向かうユイを見て、
「ユイ、左の窓から、俺は右の窓から突っ込む――」
「了解――」
庭では神獣ロロディーヌが体から触手を伸ばしていく。
周囲の射手の体を触手骨剣が穿っていた。
屋敷へと向き直すまま<武行氣>の飛翔で低空を飛翔しながら前進し、腰ベルトに括られた銀チェーンと朱と銀のゼブラの金属杭と十字架に魔力を送り、<召喚霊珠装・聖ミレイヴァル>を呼ぶ――。
「「閣下の敵はそこかァ――」」
「「「――げぁぁ」」」
「新――」
「ぐぇっ」
背後の庭からゼメタスとアドモスの叫び声が聞こえた。
背後の庭の何処かで出現しているアクセルマギナも魔銃をぶっ放している。
ミレイヴァルが、ユイの背後の庭の右に誕生。
聖槍シャルマッハを持つミレイヴァルは直進し、魔剣師の魔大剣を受けてから返す石突の<豪閃>を浴びせて吹き飛ぶ魔大剣持ちへと右腕ごと槍になった如くの<一式・閃霊穿>を喰らわせて仕留めていた。
――腰ベルトに繋がっているフィナプルスの夜会に手を当て魔力を送り『出番だ――』と念じた。
フィナプルスの夜会の書物から白い翼を擁したフィナプルスが顕れながら真っ直ぐ屋敷に直進し、ユイを越えて、破壊された窓の前に居た黒装束の一人を黄金のレイピアで穿ち倒すと魔剣師の剣を黄金のレイピアで弾きながらリポストで胸を突き続けざまに<飛剣・柊返し>と似た剣術で胸の上部から顎に頭頂部まで一気に裂いて倒した。
ユイは左の窓の前に居た魔剣師を神鬼・霊風の二太刀で、腕から首を斬り捨て倒している。
「にゃごぁぁ――」
背後で黒虎が紅蓮の炎を吹いたと理解。
ハルホンクを意識し、牛白熊のラフな格好を闇と光の運び手装備に変化させた。
半透明な帷子系の和風防具<瞑道・瞑水>も自動的に<姫魔鬼武装>の闇と光の運び手の甲冑に合うように半透明な防具が形を変えていた。
蓬莱飾り風のサークレットと額当てと面頬装備を光魔矛ノ型に変化させる。
と、無数の紅色の薄い髑髏の印が出現し、髑髏の印が黒装束たちと重なると体を紅色に縁取った。
魔槍ラーガマウダーを振るい飛来してきた魔矢を切断――。
お返しの<光条の鎖槍>を三発返す。
<光条の鎖槍>の機動は見ないまま破壊された窓硝子から室内に突入――。
ファルス殿下は生きていた。
半透明な魔法の馬から金を基調とした銀と赤の防御層のような魔力が覆われている。フランとキリエもその中に居た。
暗殺者たちが、その魔法の馬の姿をした防御層に激しい攻撃を加えて防御層が半分以上削られていた。
げ、レムロナは部屋の左で暗殺者の一人に背後を取られ、首に刃を付けられている。
ユイは左に居る。
「「「「な!?」」」」
「外のバサラはどうした!」
「シュウヤさん!」
「シュウヤ!」
「おぉ、シュウヤ! 良いところにきた!」
寝室から地続きの宝が飾られてあった部屋はボロボロ。
老人の暗殺者は逆手の魔剣か。
女性は腕先から鎖と繋がる鉤爪を伸ばし、その鉤爪で魔法の馬の防御層を削っている。
短剣使いか不明だが、その短剣の刃を首に当てられ人質に取られているレムロナを見ながら――。
十八番の<血道第三・開門>――。
――<血液加速>。
――<水月血闘法>を発動。
<水神の呼び声>を発動――。
――<経脈自在>を発動。
――<魔闘術の仙極>を発動。
――<ルシヴァル紋章樹ノ纏>を発動。
――<滔天神働術>を意識し、発動。
<滔天仙正理大綱>も使う――。
※滔天仙流系統:恒久神仙技<神仙霊纏>に分類※
※水の法異結界と大豊御酒に<魔闘術>系統と<魔手太陰肺経>の一部と<闘気玄装>と<召喚闘法>と<経脈自在>と<羅仙瞑道百妙技の心得>と<仙魔奇道の心得>に高水準の魔技三種が必須※
※霊獣四神と玄智の森の恵みが詰まった大豊御酒を飲んだことで水属性が強化され、新たな魔力活力源を獲得、滔々と流れる大河を心に宿した者、それは滔天仙流の開祖の証しだ※
※魔技三種の能力が上昇※
※近接と<投擲>の武術技術系統が向上※
※大豊御酒と水の法異結界を得ている使い手は<霊仙酒槍術>など様々な酒から功能が得られ、<霊仙酒豪槍鬼>などの戦闘職業が得られるようになるだろう※
――<光魔血仙経>を発動。
――<霊魔・開目>を発動。
※霊魔闇神流<霊魔>系統:闇神闘技<闇迅霊装>に分類※
※<魔力纏>技術系統:極位※
※霊纏技術系統:上位<闘気霊装>※
※<霊魔闘刹>と<霊迅雷飛>を纏った闇神アーディンから魔槍雷飛流のあらゆる攻撃を<経脈自在>を持つ使い手が喰らい続けた結果、神々の纏さえ視ることが可能となる魔点穴が開通し、一瞬で昇華、才能が開花したことにより<霊魔・開目>を獲得※
※霊魔系高位戦闘職業と<魔人武術の心得>と狂怒ノ霊魔炎と<魔闘術>系系統など、色々な効果を高める※
※闇雷の槍使いの戦闘職業には必須※
――<煌魔葉舞>を発動。
※煌魔葉舞流<煌魔闇雷>系統:闇神闘技<魔闘術>に分類※
※魔人格闘術技術系統:上位技術※
※<魔力纏>技術系統:極位※
※霊纏技術系統:上位<闘気霊装>※
※魔界セブドラ実戦幾千技法系統:二十四魔氣練魔舞術※
※悪式格闘術技術系統:上位技術※
※魔槍雷飛流を扱う闇神アーディンから直に闇神闘技の<煌魔葉舞>を学び得た存在は希少※
※近接戦闘能力が上昇※
※<霊魔・開目>があると効果が上昇※
――<水の神使>を発動。
――<龍神・魔力纏>を発動。
※龍神・魔力纏※
※九頭武龍神流<魔力纏>系統:奥義仙技<闘気霊装>に分類※
※使い手に龍の魔力が宿り、周囲に無数の細かな龍の魔力が展開※
※<白炎仙手>などの仙王流系統の<仙魔術>と相性が良い※
※龍韻を刻む心、<脳魔脊髄革命>、<魔雄ノ飛動>、魔技三種、<白炎仙手>、<水神の呼び声>、<光魔武龍イゾルデ使役>、注連縄を腰に巻くデボンチッチの魔力と汗が必須※
※水神アクレシスと白蛇竜大神インと神人万巻、小精霊たちが見守る中、仙王の隠韻洞に溜まっていた白蛇聖水インパワル、聖水レシスホロン、アクレシスの清水の玄智聖水の中で〝武王龍神イゾルデ〟の復活&契約を果たし、九穴八海などに住まう龍族・龍神族・九頭龍族を治める武王龍神族家ホルバドスの秘奥義を獲得した者は他にいない※
<魔仙神功>はまだ使わない。
<脳脊魔速>を使った――。
<鎖型・滅印>を発動。
両手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出――。
更に<魔布伸縮>を繰り出しながら前傾姿勢で<雷飛>――。
同時にレムロナの体を<魔布伸縮>で包む。
<鎖>が「あっ――」と声を発した短剣使いの短剣を持つ手と腕を貫き胸を貫く。
レムロナの体を<魔布伸縮>で引き寄せながら<闇雷・一穿>で短剣使いの頭部を穿った。
レムロナは驚きまま<魔闘術>系統を強めていたのか、少し体が動いて、「シュウヤ!」と抱きついてくる。
そのレムロナを抱きながら爪先半回転――。
半身のまま飛来した短剣を避けてから<魔布伸縮>で胸を包んでいるレムロナを解放させた。
まだ<脳脊魔速>中だが、
「――何者か」
と<魔闘術>系統を強めて加速状態だと思われる老人が反応。
<銀靱・壱>などを発動しているユイは老人に神鬼・霊風の<黒呪仙剣突>から逆袈裟斬りと突きの連続攻撃を繰り出していたが、逆手握りの魔剣に防がれている。
「――くっ、槍使いと言えば、【天凛の月】」
王子を攻撃していた女性は俺に向け短剣を<投擲>。
それを余裕の間で避けてから<神剣・三叉法具サラテン>を意識――『沙、あの女をぶちかませ――』――。
『器、使うと信じていた――』
と、左手の手の平から女性に突進した<神剣・三叉法具サラテン>の神剣の沙が、女性の胴体をぶち抜く。
「がっ――」
と声を上げた女性の頭部を前に出ながら振るった魔槍ラーガマウダーの<龍豪閃>で潰す――。
<脳脊魔速>が切れる。
老人はユイの連続斬りを巧みに防ぎながら後退を続けた。沙は王子の無事を確認しては、廊下の先と俺たちが突入した窓の外を見る。
ファルス殿下は、
「おぉ、助かったか」
「……」
「凄い、あの鉤爪の暗殺者をあっさり」
「はい、あ、王子、前に出ないでください」
「ふむ」
唖然としているキリエに、フランとレムロナとファルス殿下の無事を確認しながらユイの神鬼・霊風の攻撃を凌いでいる老人に近付く。
部屋の隅に追い詰められた老人は、
「……ぬかったか……」
と発言。
老人の体からオーラのような魔力が噴き上がる。かなりの凄腕だ。
「もはや……」
と老人から殺気を感じるまま<滔天魔瞳術>を発動。
「ぐぉ!?」
驚いているが、老人の体はまだ動けている。
――<滔天魔瞳術>を防いだか。
老人が凄腕暗殺者なのは確実。
逆手の魔剣の切っ先をユイに向け、牽制。
<メファーラの武闘血>を意識し発動。
老人の体がブレて超加速――。
合わせ、<仙魔・桂馬歩法>で前進し、右手に魔槍杖バルドークを召喚し<握吸>で握りを強めながら老人の一閃、二閃の薙ぎ払いを魔槍杖バルドークで防ぐ。
左に風槍流『右風崩し』の構えを見せる。
フェイクに掛からず老人は少し後退し、壁に背を付けたが、「太古の魔神フームと恐王ノクターよ……」と何かのスキルを使用し、影のような魔力の足下に消える。
と、斜め前に移動し、ユイに逆手の魔剣を一閃、ユイは神鬼・霊風で防御し、後退――。
老人は左手の逆手の魔剣を振るい、俺に<投擲>、否、魔剣から赤い魔刃を繰り出してきた。
<滔天魔経>を発動。
加速し、赤い魔刃を半身で避けながら――。
胴金のような場所に六浄短槍ベギリアルを装着させる。
更に<魔仙神功>を発動――。
老人の暗殺者は両手の逆手握りの魔剣を振るい回している。
魔剣から複数の赤い魔刃を繰り出してユイと俺を攻撃してくるが――。
ゆらりと前に動き、飛来してきた赤い魔刃を避ける。
即座に皆の位置を把握したまま――<紅蓮嵐穿>。
魔槍杖バルドークを持つ右腕が前に出る構えのまま秘奥が宿る魔槍杖バルドークごと次元速度で直進――。
――魔槍杖バルドークから魑魅魍魎の魔力嵐が吹き荒れた。
体から出た龍の形をした<血魔力>もその魔力嵐の中に混じるや否や推進力が増す。
老人の暗殺者は反応し横に移動するが、その老人の半身を魔槍杖バルドークの紅矛と紅斧刃と胴金に嵌まっている六浄短槍ベギリアルで穿ちきる。
そのまま部屋の壁を突き抜け、廊下に散らばる死体ごと王子の屋敷を貫きながら直進。
振り向くと、老人の暗殺者の半分の体から血飛沫を迸っているのを確認。
その老人の体から影のような魔力が噴き上がるが、それが蒼白い閃光を放ち爆発して散る。
よっしゃ――。
「「「――おぉ!!」」」
ユイは、神鬼・霊風を口に咥え三刀流に入っていたが、神鬼・霊風を消し、「やった!」と喜んでいた。
続きは明日。
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