千五百十六話 パーミロ司祭と聖鎖騎士団のバーミィに第二王子邸へ
相棒がジッと見ている暗がりを<闇透纏視>で凝視――。
魔素が多すぎて炎極ベルハラディの気配は読み取れない。
すると、
「あの聖槍は……八番隊隊長の……なんたることか」
「バエサルたちは無事のようですが、ロマレスは聖者様と戦ってしまったということでしょう」
発動したままだった<導想魔手>と<鬼想魔手>が持っていた聖槍ラマドシュラーと聖槍キミリリスを見ていた聖鎖騎士団のパーミロ司祭とキンライ助祭が語る。
兜を外し、魔煙草を吸う聖鎖騎士団の団員たちも、
「八番隊か、二十番隊もだが、発狂するように邪界の眷属や魔族を殺すことばかりに執着していたからな……宗義があるとはいえ、子供を守っていた魔族までも、容赦なくぶちのめしていたし、やりすぎなんだよ」
「それをお前が言うか……」
「「「ふっ」」」
「ハッ、皆も同じ気持ちでは? だいたい、あいつらは聖者様の近くでは大人しくしていたが変わり身が早いんだよ、ヴァルマスク家、吸血鬼は光がモロに効くから狩りやすいこともあって、嬉々として団長たちを置いてヴァルマスク家を追い掛けたからな」
「……おぃおぃバーミィ……司祭様たちの前で言葉を慎めよ」
「ハッ」
バーミィはパーミロ司祭とキンライ助祭に向け、胸元に手を当て頭部を少し下げてから直ぐに頭を上げていた。悪ぶれもしていない。
「「……」」
パーミロ司祭は眉を顰めていたが、沈黙をしている。
大きい双眸に魔力が溜まり、右腕が少し膨れて、大きい鉄球のメイスの柄巻からミシッと音が響く。ヤヴァ、怖いが大丈夫か?
と、そのパーミロ司祭と目が合うと、直ぐに和やかな表情を浮かべるように大きい口を拡げて真っ白い大きい歯と歯茎をこれでもか見せてくる。
パーミロ司祭……アイムフレンドリーを意識したが……何か得体の知れない恐怖をパーミロ司祭から感じた。実は魔族殲滅機関の一桁なのでは?
と考えてしまうのは失礼か。
他の聖鎖騎士団はそれを尻目に、
「バーミィ、それは教皇庁中央神聖教会に睨まれる発言だな」
バーミィと呼ばれた渋い中年の聖鎖騎士団の団員は片手に持っていた魔炎煙草を口に運び、すうっと魔炎煙草を吸って、ふぅと吐いてから「ふっ、ここは異国だぜ?」と笑顔を見せてから唇に魔炎煙草を咥えようしたが咥えずに「……俺はペルネーテに染まっちまったのさ……」と、遠くを見ながら語る。
ふと、バーミィの背後にゴルディクス大砂漠を越えた先の宗教国家ヘスリファートの光景が見えた氣がした。
「「「……バーミィ」」」
「バーミィ、聖鎖の仲間が死んだんだぞ、そのままでは、いずれ狂気の王シャキダオスに誘われるぞ?」
仲間の忠告にバーミィは両手を拡げて、『さあな』と返事をしていた。
他の団員もホフマンたちを見て、
「……吸血鬼だろうとも落ち着いて団長たちを待っていれば、ロマレスたちも命を失わずに済んだだろうに」
「たらればだが……〝黄金聖王印の筒〟が反応し、夜が昼に成るという〝聖王降臨〟・〝聖者降臨〟の現象を起こした聖者様たちに戦いを仕掛けた結果でもある」
名の知らぬ聖鎖騎士団のイケメンもバーミィと同じ気持ちのように語ると皆が頷いた。
そのイケメンの団員は俺をジッと見て頬を朱に染めている。
そりゃどこの世にも居るか。魔神の拳の冒険者に、魔界では、ヒビィとテパウゴの厳ついおっぱいポロリ野郎軍団を思い出すと、怖すぎるから無難にスルーしよう。
すると、大柄の聖鎖騎士団のパーミロ司祭が、
「皆さん、ロマレスたちを攻めてはいけません……聖者様に果敢に挑み憤死したロマレス。その憤死と勇気は、偉大なる献身と言えましょう。また、私たちに大いなる教訓を齎して下った……その偉大な行為に感謝をして、セウロスに至る道を辿ったロマレスたちへと祈りを捧げましょう、アーメン……」
「アーメン」
「「「「「アーメン」」」」」
「「「「「「……」」」」」」
聖鎖騎士団団長ハミヤ以外の皆がお祈りを行い黙祷を捧げていた。
ホフマンの頬が引き攣っている。
昔の自分を思い出したか。
アラギヌスという美人さんの射手が、ホフマンの背を撫でていた。
そして、ロマレスが聖槍キミリリスを使っていたリーダー格の重騎士か。
少し不用意だったか。
<導想魔手>と<鬼想魔手>を消し、聖槍キミリリスと聖槍ラマドシュラーを仕舞った。
ハミヤは耳に指を当てながら頷いている。魔通貝で仲間に連絡していた。
そのハミヤは、
「此方は、あぁ無事だ、聖者様とユイ様は強い魔人を倒してくれた。闇のバフラ・マフディを倒してくれたのだ。我らも魔人たちを倒したぞ、そちらはどうなのだ、うむ、大司教様の血筋の方はご健在なのだな? うむ、それなら良い」
ハミヤは頷いて片耳に当てていた指を離す。
刹那、冷たい風を感じた――嫌な予感がする。
すると黒豹はクラッキング音を止めた。警戒を解いた。その黒豹に、
「相棒、炎極ベルハラディの妖しい魔素を察知したのなら、突っ込んできていいぞ」
耳をピクッと動かし振り向く。
つぶらな瞳で俺を見て「ンン、にゃ」と鳴いていた。路地には行かない。
怪しい気配に対して狩りに動かないのは、反応が遠いだけではないだろう。
神獣の嗅覚でも追えない追跡者なら、かなりの強者。
先ほど少し戦うところを見たがシキも強い。
そのシキたちが逃げるほどの相手が炎極ベルハラディだ。
先ほど戦ったステッキ持ちのバフラ・マフディも強かった。
<闇神螺旋槍・一式>は、初見では学べなかったが、目には焼き付いているし、ステッキは回収済み。
炎極ベルハラディか不明だが、神獣の嗅覚を混乱させるように、思考を妨げ眠りを誘うガスに電磁波のようなスキルなど、<嗅覚>系のスキルに対抗しうるフェロモン系スキルなど、色々とあるだろうからな。
更に<無影歩>のようなスキルで気配を絶ったなら追跡は難しいか。
……遠くに感じられていた数十の魔素も消えている。
が、ここは人口密度も高く人々が多く暮らしている迷宮都市ペルネーテだ。
家屋の中にいる魔素は、元々の住人たちのはず。
消えた魔素の一つが、シキたちを追っていた炎極ベルハラディかは不明だ。
炎極ベルハラディが遠くから此方の様子を見て取れるスキルを持ち、群衆に紛れながら、バフラ・マフディとの戦いと、相棒とユイやキサラの動きを見て、撤収を決めたか?
――逃げたか、それとも別のところに向かったか。
そう考えてから闇と光の運び手装備を頭部に再展開させた。
蓬莱飾り風のサークレットと額当てから砂漠烏ノ型を展開させた。
『メル、ファルス殿下への増援だが』
『はい、まだこれからです』
『了解、俺とユイと相棒もファルス王子のところに向かう』
『分かりました、合流しましょう』
『おう、王子側に寄越す人材は任せるが、武術街の自宅に皆を誘導してくれるか?』
『分かりました、ヴィーネとベリーズとクレインとベニーとピュリンとルマルディで向かいます。武術街までレベッカとエヴァたちに任せます』
『了解した、レベッカ、キッカ、エヴァ、アドゥムブラリ、ビュシエ、キスマリ、ヴェロニカ、サラ、ママニ、ルシェル、エマサッド、ブッチ、ラムー、クナ、ベネット、エトア、フー、ミスティ、ルヴァロスは、女帝ファーミリアのヴァルマスク家たちと聖鎖騎士団たちを守りながら武術街の自宅まで誘導を頼む』
『任せて』
『承知した、戦いとなったらすべてを斬る』
『『『『はい』』』』
『では、俺とユイは相棒と共にレムロナたちに挨拶がてら王子に挨拶してくる。後、ナロミヴァスには、謝っておいてくれ。眷属化は事が収集するまでお預けだと伝えてくれ』
『ん、大丈夫』
『『はい』』
『あぁ、あいつも悪夢の女王ヴィナトロス様、いや、光魔騎士ヴィナトロスたちと共に血の龍となった主に噛まれながら血の眷属としての復活を果たしているんだかな、多少前後する程度だから、大人しく待つだろう』
とアドゥムブラリの血文字に頷く。そして、キサラに、
「キサラ、皆を頼めるか」
「はい、キーラ側はファルス殿下をも殺そうとしていると?」
「まだ分からない。何もなきゃイイがってぐらいだ」
「はい、幸い貴族街ですから直ぐ近く」
「おう」
ユイとキサラと相棒を見てから頷き合う。
シキたちとコレクターと、聖鎖騎士団団長ハミヤとパーミロ司祭様とキンライ助祭とホフマンとアラギヌスと吸血鬼たちを見て、
「皆さん、と言う事で、一時、俺の屋敷に集まってもらっていいでしょうか」
「「「「「「「はい、聖者様!」」」」」」」
「承知致しました」
ホフマンも承知した。
「「「「はい」」」」
「承知いたしましたわ」
「「ふむ」」
「フム……槍使イノ世話ニナル」
シキの部下の霧で体が構成されている方だ。
完全に魔界の魔族だ。隣に居るゴルディーバ族のアロマが、
「シュウヤ様のお家ですね、実は知ってますが」
と笑顔で発言。当然、コレクター側も【天凛の月】の所在は調べるか。
コレクターの他の部下たちも俺に頭を下げてきた。
ホフマンとアラギヌスたちは納得している。
その皆に向け、
「では、シキとハミヤとパーミロ司祭とキンライ助祭にホフマンたちの皆、これから武術街に戻る通りや路地のどこかで【闇の教団ハデス】や【セブドラ信仰】を主力とした【闇の枢軸会議】の大枠の連中と戦闘になるかも知れません、その場合、各自連携して戦ってもらうことになります。聖鎖騎士団の皆さんも吸血鬼たちとの共闘は、マジで、あり得ないと思いますが……聖者の言葉として、言いますが……決して、ヴァルマスク家の吸血鬼とは戦わないようにお願いします」
と一瞬だけ闇と光の運び手装備を解除し、肩の竜頭装甲を意識した。
「ングゥゥィィ――」
とぬけ感が強い七分袖バージョンのラフな格好に衣装を変化させた。
胸元の<光の授印>を露出する。
「「「「「「「「「オォォ――」」」」」」」」
「「「「――ハッ」」」」
「「「「聖者様――」」」」
「「「「――聖者様のお言葉に従います――」」」
「――はい、聖王様のお言葉に従います」
「はい、シュウヤ様の神印の輝きは絶対だ――」
良かった。先ほど坂で戦った時の聖鎖騎士団の方々とは異なる。理解が速い。それなりにペルネーテで過ごしていた期間があるから当然か。
それに主義はそれぞれだが共通の敵の前では団結できる。
また、それは敵の魔人、魔族側にも言えるか……。
しかし、シキたちに、ヴァルマスク家の吸血鬼を自宅に招くことになるとは、まったくの想定外だが、仕方がない。
そして、それは聖鎖騎士団とヴァルマスク家とシキたちも同じ事。
そこで、<ベイカラ>の瞳でシキたちを見ていたユイと俺の右足に頭部を当てて甘えている相棒を見ながら、
「ではユイも行こうか。相棒、ファルス殿下のところまで連れて行ってくれ――」
「にゃご――」
黒豹は鳴きながら黒虎の大きい姿へと体を変化させる。
体長は四~五メートル前後程か。俺たちを乗せて移動も速そうだ。
「――魔人キュベラスが近くに来たら倒しに掛かるからね」
「あぁ、その判断は任せよう」
「うん――」
とユイは走り始めたが直ぐに黒虎の触手に捕まっていた。
ユイたちを追い掛けるように<武行氣>を発動しながら飛翔した直後、
「ンンンン――」
と喉音を響かせていた相棒の触手が飛来した。
その触手を避けずに掴むと一気に背に運ばれる。
スーパー加速状態の黒虎の背にユイと共にしがみついた――。
ここは貴族街だ。一気に第二王子ファルスの屋敷に――。
いきなり、周囲に魔素が増えた、視界に数十とした黒装束の兵士たち、オセべリア王国の衛兵隊の死体があちこちに転がっている。
屋敷の外と内にも魔素の数が多い――
射手たちが魔矢が飛来してきた。駆ける相棒には当たらない――。
と、通りの手前から屋敷の壁を超えた――。
え?
続きは明日。
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