千五百十一 【闇の教団ハデス】のバフラ・マフディ
――<魔闘術>系統は維持。
<勁力槍>は消す。
背後から、キサラが
「ホフマン、油断はしませんよ! 後、そこの魔人! タフなようですが――<血烈叭槍>――」
と残響音が響いてきた。
ユイと相棒の気配もある。キサラは油断せずホフマンを睨み付けていたようで、しっかり見張りつつも、しっかりと【闇の教団ハデス】か【セブドラ信仰】の魔人を仕留めたようだな。
すると、紳士のコート服を着た魔人はステッキを前に突き出し、ケラケラとした嗤い声を響かせると、
「――【セブドラ信仰】のドゴンアムザンをあっさり片付けるとは、賞金額に報酬が桁違いなのも納得の強さだ――」
と発言し、ステッキから<バーヴァイの魔刃>と似たような魔刃を連発してくる。
コート服が複数の魔刃を生み出した影響で風を受けたように靡いていた。
魔刃は数にして数百か――。
<闇透纏視>の効果もあると思うが魔刃が発する明かりで通りが輝きに満ちて見えた――。
ユイと相棒とキサラは背後――。
この通りではなく建設現場の手前側の少し開けた場所でコレクター側と共に魔人たちと戦っていると、掌握察で把握しつつ、飛来してくる魔刃と魔人の居る路地の幅と奥行きを把握しながら飛来してきた魔刃に向け――。
<超能力精神>の衝撃波をぶち当てた。
無数の魔刃は一斉にあらぬ方向に弾かれつつ破壊されていく。
表面が罅割れて折れ曲がりながら弾け飛ぶ魔刃もある。
一部の魔刃は壁と床に転がっていた魔人の死体に突き刺さりまくったが<超能力精神>をすり抜けた魔刃もあった。
――俄に、< 星想 潰力魔導 >を発動――。
目の前に迫った複数の魔刃を星想の見えない手で掴むように破壊。
同時に左側に体を回転させながら魔槍ラーガマウダーの<豪閃>を繰り出した。
破壊を免れた魔刃の複数個を一度に一閃。
遅れて目の前にきた魔刃を魔槍ラーガマウダーの石突を突き上げガッツポーズの姿勢となるように破壊――。
そして<神獣焔ノ髭包摂>と<煉霊ノ時雨>を実行した。
瞬く間に、肌から半径の数メートルが光と闇を意味するような世界に変化をとげた。
天気雨のような魔力の雨と<血魔力>の雨が降り――幻想的な<血魔力>を有した火の玉が出現しまくる――魔力の雨と<血魔力>の雨と幻想的な火の玉が俺に飛来していた魔刃のすべてを溶かすように相殺していく。
――紳士のコート服を着た魔人は<煉霊ノ時雨>の効果を見て、
「……空気が熱く、水氣と<血魔力>もあり、重くなった感がある。このような魔の雨と血の雨に狐火をセラの次元に〝己の簡易領域〟として生み出せるとは驚きですね……吸血神ルグナド様との繋がりを噂されるのも分かる」
と発言し、ステッキをくるくる回し――。
背後に点々と跳びながら跳んだ地面をステッキの先端で突いて闇の霧を造りながら後退していく。
地面に落とし穴を作ったような、闇の霧の群れは見え透いた罠か。
魔人は路地で止まる。
誘うように片腕を泳がせてきた。
<血鎖の饗宴>を足下に展開させて、血鎖なら闇の霧の破壊も可能かな。
聖鎖騎士団たちとの戦いでは一瞬<血鎖の饗宴>を用いたが、なるべく使用を避けるか……。
裏に居る存在が<千里眼>的な能力で俺たちの行動を見ているかも知れない。
光魔ルシヴァルだから触れたら消える。
などで簡単に潰せそうでもある。
が、敢えて、罠に乗る気概で魔人を追うように前進した。
紳士のコート服を着た魔人は路地の通りを後退を続けた。
その魔人を追い掛けた直後、地面の闇の霧から巨大な魔刃が伸びてくる。読み通り――右手に召喚し直した神槍ガンジスで、足下の巨大な魔刃と闇の霧に目掛け<闇雷・飛閃>を繰り出した――神槍ガンジスの双月刃が下から上に弧を描く。
闇の霧と地面の表層と巨大な魔刃を真っ二つにした。
神槍ガンジスの双月の穂先から迸っている闇の稲妻を外に弾き出すように、双月刃の穂先の内側から蒼白い炎が吹き荒れていた。
神槍ガンジスには<闇雷・飛閃>の属性は相反している証拠だが、逆に高威力となっている?
構わず前進しながら闇の霧を<血龍仙閃>と<双豪閃>で体が独楽になった如く闇の霧を打ち払い切断しまくる。
直ぐに、後転して着地した直後、魔刃が飛来。
魔槍ラーガマウダーの石突で地面を突いて体を上げた。
紳士のコート服を着た魔人が繰り出してきた魔刃を避けた。
<闘気玄装>を強めながら――。
左足で地面を突いて反転し、魔人を追うように前傾姿勢で前進した。
魔人は此方を見ながら後退していたが、俄に前進してくる。
ステッキから銀の刃を出して連続的に突いてきた。
神槍ガンジスと魔槍ラーガマウダーで、魔人のステッキと十数合打ち合った。
フェイクとフェイントの応酬――。
十八合目――。
ステッキから溢れた魔力が光線となって飛来するが、風槍流『異踏』で軸をずらし、光線を避けながら<魔仙萼穿>魔槍ラーガマウダーで繰り出す。
「くっ」
と、驚いている紳士のコート服を着た魔人は、ステッキを傾け、<魔仙萼穿>を弾いた。
その魔人に神槍ガンジスで<夜行ノ槍業・壱式>――。
神槍ガンジスの初撃は――。
ステッキで防がれる。
※夜行ノ槍業・壱式※
※夜行ノ槍業流:上位槍舞※
※血槍魔流技術系統:独自上位突き※
※闇槍流技術系統:上位突き※
※光槍流技術系統:上位突き※
※水槍流技術系統:上位亜種突き※
※水神流技術系統:上位突き※
※風槍流技術系統:最上位突き※
※豪槍流技術系統:上位突き※
※悪愚槍流技術系統:上位突き※
※塔魂魔槍流技術系統:上位突き※
※女帝槍流技術系統:上位突き※
※獄魔槍流技術系統:上位槍突貫※
※魔竜王槍流技術系統:上位突き※
※豪槍流技術系統:極位薙ぎ払い系※
※独自二槍流技術系統:上位突き※
※独自三槍流技術系統:上位亜種突き※
※独自四槍流技術系統:上位突き※
※雷炎槍流、塔魂魔槍流、悪愚槍流、妙神槍流、女帝槍流、獄魔槍流、断罪槍流、飛怪槍流をより深く学ぶと<夜行ノ槍業・壱式>の威力と速度が上昇、八槍卿全員から技を学ぶと、自ずと夜行ノ槍業流は、魔軍夜行ノ槍業流へと昇華を果たすだろう。その時……※
※<滔天仙正理大綱>と<水神流槍武術・解>と<鬼神キサラメの抱擁>と魔軍夜行ノ槍業が必須※
※熟練度が増加し、八大墳墓の破壊、八槍卿の秘伝書、装備類、体、戦旗などを入手し続ければ<夜行ノ槍業・壱式>の威力は上昇するだろう※
続け様の魔槍ラーガマウダーの二撃目の突きもステッキで防がれる。
<夜行ノ槍業・壱式>の三撃目の神槍ガンジスの穂先がステッキを弾いて腕を穿った。
「ぐあっ」
魔人は痛がったが、直ぐに槍で穿った傷が回復。
四撃目の魔槍ラーガマウダーの突きをコート服から出た金具が防ぐ。
五撃目の神槍ガンジスの突きがステッキを弾いて左足を穿った。
魔人の着ているインナーが蠢いて伸びてきたが、最速の六撃目がインナーごと足をもう一度穿った。
「ぐっ」
魔人はステッキを防御に回し後退しようとするが、<夜行ノ槍業・壱式>の七撃、八撃のほうが速い。突いて、突いて、突きまくった。
<夜行ノ槍業・壱式>の連続槍舞の攻撃を防ぎきる魔人は強い。
「これが、槍使いの実力――」
とステッキを突き出して<刺突>系統の突き技を魔槍ラーガマウダーの柄で受けて左に往なすとステッキから縦長の魔刃が至近距離から放たれた。
その縦長の魔刃を魔槍ラーガマウダーで払うように横に弾いたが、途中で爆発。爆風の影響で後退した。
紳士のコート服を着た魔人も後退し足を止める。
と、ステッキで地面を数回叩いた。
紳士のコート服を着ている魔人はコート服ごと己の傷を一瞬で回復させると、両足が揺らぐ。
その揺らいだ足下から薄らとした紳士服のコート服を着た魔人の分身が二体出現した。
中央の紳士のコート服を着た魔人が、
「……ふむ、すべてが往なされ選択肢を少なくされつつ追い詰められる感覚は……今まで味わったことのない。まさに〝絶殺の夜気〟を扱う無双の槍使い……そして、風を扱う【天凛の月】の盟主の底が知れない」
〝絶殺の夜気〟か。
そして、風とは、闇と光の運び手装備のことも意味する?
この紳士のコート服のおっさんは相当な魔人、魔族か。
両手の魔槍を消し、ラ・ケラーダの挨拶をしてから、
「――貴方も相当な御方のようです、名を聞かせてください」
中央の紳士のコート服を着た魔人は黒い瞳を散大させて少し驚いていた。
が、直ぐに微笑んで、ステッキを消して丁寧に会釈を行い、
「私の名はバフラ・マフディです。【闇の教団ハデス】の幹部の端くれです。貴方が倒した東部リージョナルでの活動が多かった闇のブレジンスキーよりは、広範囲に活動させてもらっています」
「たしかにサセルエル夏終闘技祭で闇のブレジンスキーと衝突し、ぶっ殺して潰したな……」
「……」
バフラ・マフディは俺を凝視。
黒い瞳に銀色の魔法陣が展開されている。
そのバフラに、
「俺の名はシュウヤ・カガリ」
「はい、闇神リヴォグラフ様を怒らせた塔烈中立都市セナアプアでの活躍は知っています」
「魔人キュベラスの部下として、【御九星集団】と連携して動いているのか?」
「さぁ? キュベラスの誘いに乗ったまで――」
とバフラ・マフディはコート服の一部の金具を飛ばしてきた。
――金具を右手で掴む。
「これはなんだ?」
「【闇の教団ハデス】の定紋ですよ」
「鍵か? どうして俺に【闇の教団ハデス】の秘密がありそうな物を俺に渡す」
「シュウヤさんから光を感じますが、闇も感じた故ですよ……更に言えば、わたしは闇神リヴォグラフ様を信奉していますが、魔人キュベラスを信奉しているわけではない……七魔将でも魔界騎士でもないですから」
「……【闇の教団ハデス】も一枚岩ではないのか」
アイテムボックスに仕舞う。
new:聖槍キミリリス
new:闇の教団ハデスの定紋
と先ほど拾った聖槍の名が気になる。
「……今この迷宮都市ペルネーテに居る連中は纏まってますよ、キュベラスは昔からモテますからね……」
「あぁ、美人さんだったな」
「もう会ったのですか」
「おう」
「……【天凛の月】の盟主と言えど、あの美貌に魅了されたなら……最期……と、少し言い過ぎました。では、そろそろ本気を出させて頂きます……<コード・ディヴァニティ>と……銀朱螺旋槍ディヴァニティを使わせて頂きますよ」
バフラ・マフディは銀色の朱色が混じる魔眼を煌めかせる。
とコートを羽ばたかせるように後方に上昇しながら――長いステッキの先端に銀と朱が螺旋している穂先を作り出す。
長いステッキは螺旋魔槍でもあるのか――。
「――<闇神螺旋槍・一式>――」
バフラは闇色の膨大な魔力を体と螺旋魔槍から発しながら螺旋魔槍を突き出してくる。
漆黒色の魔力は魔元帥ラ・ディウスマントルや闇神リヴォグラフが放つ漆黒色の魔力と似ていた。
分身も同じ動作で俺を突いてきた。
<導想魔手>と<鬼想魔手>に持たせた聖槍ラマドシュラーと聖槍キミリリスで分身の螺旋魔槍の一撃を防ぐ。
左手に魔槍ラーガマウダーと右手に魔槍杖バルドークを再召喚しクロスさせて――。
螺旋状の穂先の<闇神螺旋槍・一式>の一撃を受け止めた。
<無方南華>で闇の炎のような魔力を得るが――<闇神螺旋槍・一式>は、かなりの威力だ――通りを背後に運ばれた。
「にゃご!?」
「シュウヤ様!」
「シュウヤが押された!?」
「「な!」」
背後から皆の驚く声が響く。
バフラの本体と分身の螺旋魔槍の螺旋の穂先から礫と刃が飛来――。
キィンッ、キィン、と細かな不協和音が俺たちから響く。
闇が濃い刃は吸収し物理属性が強い刃は<無方剛柔>ですべて弾き返した。
バフラ・マフディは分身が突きを強めつつ本体が少し後退。
<導想魔手>と<鬼想魔手>に持たせた聖槍ラマドシュラーと聖槍キミリリスでバフラの分身の突きを弾く。
バフラ本体のコート服の金具が光を帯びた。
そのバフラはステッキ状の螺旋魔槍を突き出してきた。
――<仙魔・暈繝飛動>と<水月血闘法・鴉読>を実行――。
周囲に白炎の霧と炎を発生させた。
――足下と周囲に無数の水鴉も発生し、<煉霊ノ時雨>の魔法の雨と火の玉と連動していく。
――バフラ・マフディの本体と分身の螺旋魔槍の連続突きを避けまくった。
※仙魔・暈繝飛動※
※仙王流独自<仙魔術>系統:奥義仙技<闘気霊装>に分類※
※使い手の周りに霧と白炎を発生させる※
※魔法防御上昇、物理防御上昇、使い手の精神力と体力の回復を促す※
※仙王流独自<仙魔術>の様々な仙技類と相性が良い※
※水月血闘法・鴉読※
※<水月血闘法>技術系統・上位避け技※
※霊水体水鴉の力を活かすように複数の水鴉が使い手を守りつつ分散。使い手の体を加速させつつ、回避性能を向上させる※
隙を発見――。
<コード・ディヴァニティ>を扱うバフラ・マフディは長いステッキを持つ右腕を前に突き出したままゼロコンマ数秒の隙がある――。
その隙を狙うように左に誘う。
壁際で背水の陣ではないが、そんな気概で足を止めて待った。
「魔力切れですか!」
とバフラ・マフディは本体と分身は突きスキルを繰り出してくる。
<導想魔手>と<鬼想魔手>に持たせた聖槍ラマドシュラーと聖槍キミリリスと両手の魔槍ラーガマウダーと魔槍杖バルドークを盾にしつつ先ほどの隙を待つ。
分身とバフラが前に出ながら螺旋魔槍を連続で突き出してくるが、すべてを往なす。
そして、隙ができたバフラ――。
その本体に<水極・魔疾連穿>を繰り出した。
※水極・魔疾連穿※
※水槍流技術系統:烈槍級独自多段突き。亜種を含めても極少数※
※水神流技術系統:神級独自多段突き※
※<刺突>系に連なる独自多段槍スキル。水属性が多重に付加され物理威力が上昇。水場の環境に限り体躯の踏み込み速度と槍突速度が上昇し、八連続の多段突きとなる※
※<水雅・魔連穿>完全上位で、使い手の修練の賜物と、相対相手の気概が使い手を<水極・魔疾連穿>へと誘った※
魔槍ラーガマウダーと魔槍杖バルドークの水属性の魔力が加わった穂先の連続突きが螺旋魔槍のステッキを上に弾くと、本体の胴体に決まる。本体を守るように寄ったバフラ・マフディの分身を魔槍杖バルドークが穿ち消す。
<水極・魔疾連穿>の魔槍ラーガマウダーが本体のバフラが持つ長いステッキから出ている防御の膜をも穿ち、魔槍杖バルドークでも穿つ、防御の膜は一瞬で穴だらけとなって消える。長いステッキを再び上方に弾く。
<水極・魔疾連穿>の魔槍ラーガマウダーと魔槍杖バルドークの穂先が、バフラ・マフディが着るコート服と胴体を穿ちまくった。
「ぐあぁぁ――」
コート服は一瞬で散り散りとなり、胴体は風穴だらけ、そのコート服と体は再生するが、再生は追いつかない。
傷孔から大量の血飛沫が舞うが傷の回復が速い。
穴という穴が瞬く間に渦を巻いたように塞がった。
そのバフラ・マフディは苦悶の表情を浮かべて後退しつつも長いステッキを手放さず、
「くっ、ぐはっ」
と血を口から吐きながら横に跳び壁を走りながら、その壁を蹴って跳び屋根に跳び移る。
その屋根にいるバフラ・マフディを見ながら<武行氣>を意識しつつ少し浮遊した刹那――<仙魔・龍水移>を行いバフラ・マフディの真上に移動した直後――。
そのままバフラ・マフディを狙うように魔槍ラーガマウダーで<鳳雛ノ翔穿>を繰り出した。
十文字の両枝刃から蒼炎が噴き上がる。
それは鳳雛の両翼を思わせる。更に螻蛄首と柄と石突から橙と朱の炎が吹き荒れて両枝刃の蒼炎を合わさっていた。
バフラ・マフディは<魔闘術>系統を強めながら俄に後退し、長いステッキから防御魔法を発動させる。<脳脊魔速>のような加速力は見事だが、魔槍ラーガマウダーの<鳳雛ノ翔穿>はバフラ・マフディの長いステッキから出た防御魔法を貫いて胴体を穿った。
「げぇ――」
バフラ・マフディは胴体の傷から血飛沫を発しながら足下の屋根と衝突、屋根を突き抜け、垂木と棟木に母家を破壊し、三階建てはある建物を真っ二つに貫く勢いで床と衝突。
塵が舞う。
炎に包まれていたバフラ・マフディは床を貫き地面を大の字に窪ませていた。
が、そのバフラ・マフディはタフか。
炎を消すと体の傷を瞬時に癒やし、背後に反転し、壁を突き抜けて路地に飛び出た。
そのバフラ・マフディを追うように建物を越えて通りに着地した。
「……」
バフラ・マフディの顔色はかなり悪い。
口から血が流れ続けている。
と、まだ持っていた長いステッキで地面を叩くと長いステッキから漆黒の霧を周囲に発生させた。
瞬く間に、通り沿いが漆黒の霧に覆われた。
<闇透纏視>でバフラの位置は把握済み。
<召喚魔槍・鳳凰ラーガマウダー>を意識。
鳳凰ラーガマウダーを召喚――。
膨大な<血魔力>を込めた魔槍ラーガマウダーから炎が吹き荒れる。
と、その魔槍ラーガマウダーの柄から二メートルほどの大きさの鳳凰ラーガマウダーが出現し、
「ギュアァァァ」
と鳴いた。
美しい炎の体から蒼と橙と朱の炎を発して、その炎の両翼を拡げている。
十文字の穂先が煌めきつつ柄から『飛翔:鳳凰ラーガマウダー』と魔法文字と薄らと炎の梵字のような印と鳳凰を意味する魔印が浮かぶ。
『……閣下が使役した火の鳥ちゃん!』
『『『おぉ』』』
<神剣・三叉法具サラテン>の沙・羅・貂も間近で、鳳凰ラーガマウダーを見て感動か。
その鳳凰ラーガマウダーはゼロコンマ数秒後、体から無数の炎の粒子が放出しながら突進――。
バフラ・マフディの生み出した漆黒の霧に、俺の<煉霊ノ時雨>の効果を吸収するようにすべてを焼き払いながら、「ぐあぁぁぁ」と叫んだようにバフラ・マフディを吹き飛ばしてから上昇し戻ってきた。
バフラ・マフディは「武装魔霊か幻獣をも魔槍に使うとは……」と言いながらステッキで地面を刺して衝撃を殺して立ち上がる。
その体は炎に包まれていたが、直ぐに炎は消える。
体と装備は一瞬で回復していたが、肩で息をして消耗度は高そうに見えた。
鳳凰ラーガマウダーに『こい』と指示を飛ばす。
飛翔してきた鳳凰ラーガマウダーは魔槍ラーガマウダーと左腕に炎の翼を絡めてくる。
バフラ・マフディを見据えた。
バフラはステッキを振るい、漆黒のサーベルを周囲に生み出していく。
無数の<魔闘術>系統に<血液加速>を活かしながら――。
鳳凰ラーガマウダーと共にバフラとの間合いを詰めた直後――。
左足の踏み込みから――。
突き出た漆黒のサーベルを右手の神槍ガンジスの<魔雷ノ風穿>で穿ち消し去る。即座に右足の踏み込みをせず左手の魔槍ラーガマウダーで<鳳雛ノ翔穿>を繰り出した。
鳳凰ラーガマウダーもバフラ・マフディに突進――。
鳳凰ラーガマウダーは<鳳雛ノ翔穿>の魔槍ラーガマウダーと融合しながらバフラ・マフディのステッキを外に弾いて胸元を貫いていた。
魔槍ラーガマウダーから鳳凰ラーガマウダーの炎の両翼が飛び出る。
バフラの心臓から脊髄から一気に体のすべてが燃焼していく。
ピコーン※<鳳凰ノ炎翔穿>※スキル獲得※
おお、これが魔槍ラーガマウダーの専用の『魔槍技』か。
即座に横に移動し、外に弾いたバフラ・マフディが使っていたステッキを回収――。
振り返って、ユイたちの戦っている建設現場に直行。
黒豹とキサラとユイとホフマンとアラギヌスとコレクターたちが聖鎖騎士団の重騎士を守りつつ、それぞれ対峙した魔人を倒していた。
シキは吸血鬼を助けるように前に出て、頭部が禿げている魔人と相対。左手に魔法の球と闇の渦を生み出したかと思うと、転移するように前進し、相対していた魔人の胸元を抉っていた、強い。
動きが微かに見えただけか、倒れた魔人の死体は魔法の球体と闇の渦の中に吸い込まれて消えている。
コレクターのシキが戦っているところは始めて見た。
聖鎖騎士団団長ハミヤもダクラカンの聖剣のスキルがありそうな剣術を使って倒している。粗方助けられたか。
ユイとキサラに、
「ここの敵は粗方倒したかな」
「うん」
「はい」
「にゃ~」
聖鎖騎士団の中からメイスを持っていた男性と女性が寄ってくる。
続きは明日。
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