千五百八話 魔人キュベラスと邂逅
レングラットは此方を見上げ、
「――おぉ、〝黄金聖王印の筒〟は本当に使われたのか――」
喜びの声を発した。
「はい! 聖者様、聖王様はここに!」
と聖鎖騎士団団長ハミヤが叫ぶが、レングラットは横に跳んだ。
背後から飛来した紫の魔刃を背に目があるように避けていた。
レングラットは路地の建物の壁を蹴って縦に上昇し、再び飛来した魔刃を避けながら壁を蹴り、三角跳びを行い、路地の反対側の屋根に身を翻しながら反撃の光の礫を、紫の魔刃を飛ばした路地にいる魔人に飛ばしながら着地、そこの前にいた光槍の二人組に近付いた。
坂の下にいた魔人は右手に持つ魔杖を振るい光の礫を切断。
紫色の魔刃の切れ味は高そうだ。ムラサメブレード・改のような光刃のブレードに似ている。プラズマ級の温度かな。
あの魔人がキュベラスか。顔だけは人族系の顔と分かる。
そのキュベラスはレングラットを追わず動きを止めた。
黒髪の毛は長い。
眉は細くて、黒と紫のアイシャドーが渋くて美人。
少し丸みのある瞳は結構キュート。
鼻筋は高く、アヒル口。
顎と首筋は細い、鎖骨もローブが胸元からはだけて見えていた。
炎を発しているインナー。
髑髏の形をした細かな魔力と<血魔力>を放出しているタンクトップ系の下着。
そんな下着の上着は魔法の衣で、フィースフィールドのような魔法の防御層もあるように見えた。そして、重要なおっぱいの膨らみも確認。
その美人さんのキュベラスが、俺たちを見やる。
「……驚いた。【天凛の月】の衣装を着ているけど、白銀の髪に、魔槍の形はダモアヌンだし貴女、四天魔女? でも変ね、死んだと聞いている。<英霊、英雄召喚>が可能な<召喚魔術師>が近くに居るのかしら――」
とキサラに驚いた魔人キュベラスが後退。
キュベラスが居た坂に、半透明な光の槍と光の礫が突き刺さって散る。
坂の下に移動した魔人キュベラスは斜め上の屋根を見た。
そのキュベラスに光の礫が再び向かうと、キュベラスは、俺たちにウィンクをして、
「――魔族殲滅機関もただ逃げているだけではなかったのね、ふふ」
後退したが、可愛い。ではなく、遊んでいるつもりか。
光の礫を繰り出したのは右の屋根の上にる光の十字架を扱うレングラット。
光の槍を繰り出したのは光槍を持つチャンヴァルにケキミラだろう。
その魔族殲滅機関組は、得物から《光槍の罰》のような攻撃と光の礫を連続として魔人キュベラスに射出していた。
坂の下にいるキュベラスは左右ジグザグに華麗に飛翔しながら《光槍の罰》と光の礫を避けた。
両足の魔法の靴から<血魔力>系の魔力が吹き荒れると、地面が切り裂かれているところがあった。両足の魔法の靴から放たれる<血魔力>系は要注意か。
――地面に突き刺さった《光槍の罰》と光の礫が坂の斜面を破壊していくが、《光槍の罰》と似た遠距離攻撃は自然と消えた。
<光条の鎖槍>の場合は、槍の後部がイソギンチャクのように成って、そのイソギンチャクのような物が光の網となって、刺さった箇所を基点に光の網が展開されるが、普通に消えただけか。
刹那、坂の下のキュベラスに向け遠距離攻撃をしていた屋根の上にいた魔族殲滅機関の三人に複数の魔刃が襲来した。
レングラットは横に跳躍し魔刃を避ける。
チャンヴァルにケキミラは光槍を盾にして魔刃を防いでから降下、坂道に着地。
そんな着地際を大きな鎌を持つ魔人が薙ぐ。
が、チャンヴァルとケキミラが光槍を掲げて大きな鎌の刃を防ぐ。
金属音が響いて、火花が散った。
と、二人組の男女は反撃の<刺突>のような突き技を繰り出した。
大きな鎌を持つ魔人は、大きな鎌で受けず浮遊しながら後退し坂道を降下していた。
そこに路地の建物から飛び出た、他の三人の魔槍と魔剣を持つ魔人が、レングラットとチャンヴァルとケキミラに襲い掛かった。
魔族殲滅機関の三人の動きを封じるように、二人の魔人が繰り出した魔刃と魔弾と青白い髑髏吹雪と火炎放射が吹き荒れる。
チャンヴァルとケキミラは魔法防御のスキルを発しながら守勢に回る。
更に、時空間に干渉しているような、異様な亡者たちが上下に行き交う凍てついた限定的な空間が発生。その魔法かスキルを繰り出した魔人は、片手の掌の複数ある眼球を翳していた。もう片方の腕には漆黒に燃焼している魔槍を持つ四眼の魔族。
その凍てついた空間にレングラットは嵌まり動きを封じられた。
刹那、転移してきた朱色の魔剣を逆手に持った魔人がレングラットの横に転移し、朱色の魔剣でレングラットを数回斬り刻む。火花と共に血飛沫が飛ぶ。
レングラットは傷を負い、魔族殲滅機関の戦闘装束を斬られていた。
血飛沫は無重力空間の浮いているように浮いている。
レングラットは死んだと思ったが、回復力は聖鎖騎士団の重騎士たちと同様に並ではないか。そのレングラットは光の十字架の剣を使用。
光の十字架の剣から、光の十字架の形をした魔力が衝撃波のように発生した。逆手持ちの魔人ごと凍てついていた空間を吹き飛ばした。
レングラットは反撃に光の十字架を振るいながら、片手の掌に眼球を擁した魔人、魔族に近付いて光の十字架の剣を振るうが、漆黒の炎の魔槍を斜に構えた四眼の魔族に防がれていた。
と、ローブを着た魔剣と魔槍を持つ魔界騎士風の男を見つけた。
その魔界騎士風の男は、聖鎖騎士団の重騎士の盾を魔槍で弾き魔剣で首を突く。
魔槍の奥義のような槍舞が重騎士に決まり、重騎士は吹き飛びながら絶命していた。
その重騎士と、俺の胸元の<光の授印>は黄金の光で繋がっていたが消える。
先ほどのファーミリアの言葉を思い出した。
『【御九星集団】のキーラと、その【御九星集団】最高幹部の盾使いコンマレと、他の最高幹部たちと兵士多数、更に魔人キュベラスと魔人アルケーシスに【闇の教団ハデス】の闇炎の串刺し公アルグロモアと魔公ディフェルの討伐依頼です。報酬もお約束致します』
あいつらが【闇の教団ハデス】の闇炎の串刺し公アルグロモアと魔公ディフェルかも知れない。そして、コレクター側の戦力ではないはずだ。が、こればっかりは不明なことが多い。
そして、聖王発見と集合の意味もあるだろう〝黄金聖王印の筒〟の信号弾の効果でもある黄金の光か……俺の胸元の<聖刻ノ金鴉>と<光の授印>と連動している。
<光の授印>から出ている黄金の光は、背後の踊り場にいる聖鎖騎士団の皆と繋がったままだ。坂の下に居る聖鎖騎士団の方々とも黄金の光は繋がっている。
黄金の光が次々と消えていく。
聖鎖騎士団の団員が命を落としている。
司祭と助祭の一団もどこかで魔人たちも戦っているようだ。
先ほど狂信的な聖鎖騎士団に喧嘩を売られたが、アメリを強引に拉致をせずに説得していた面を考慮して聖鎖騎士団も助けるか。
ヴァルマスク家の吸血鬼はホフマンの<従者長>と特別そうなアラギヌス以外はファーミリアたちの下に帰還したと思うが……魔人の他にも、聖鎖騎士団と戦っている可能性はあるから、混乱しそうだ。
が、魔人たちと戦っている者が大半のはず。
<光の授印>の黄金の道で繋がっている聖鎖騎士団たちも、ヴァルマスク家ではなく魔人たち、【御九星集団】か【闇の教団ハデス】のメンバーと戦っていると思いたいが、正直、ここからではいまいち判別はできない。
その思いで、踊り場にいる皆と、坂道の右路地に段差が下がったところにある建物の屋根の上に居る皆を見た。
――足下にいる相棒、メル、ベリーズ、ルマルディ、エトア、ヴィーネ、ラムー、アドゥムブラリ、ベネット、エマサッド、サラ、サザー、フー、ママニ、ラファエル、ビュシエ、サラ、ルヴァロス、アルルカンの把神書、ルシェル、クナ、ユイ、ベニー、ミスティ、キサラ、ヴェロニカ、ハンカイ、ブッチ、イモリザとヴァルマスク家のファーミリアと<筆頭従者>アルナードとルンスとホフマンと吸血鬼たちと聖鎖騎士団団長ハミヤと部下たち。
その踊り場にいる皆と、
「皆、俺たちはコレクター&ヴァルマスク家と魔人ザープ側であり、降伏した聖鎖騎士団側を守る側でもある。そんな流れから魔族殲滅機関も此方側の予定だ。ヴェロニカたちもいいかな」
と大声で説明してからヴェロニカにも語った。
ユイたちは頷いて武器を上げていた。
「いいわ」
「承知致しました」
足下にいる黒豹は俺を見ながら尻尾で俺の右足を叩いて、
「ンン、にゃご」
と鳴いてきた、頷いた。
相棒の鳴き声の意味は『わかっているにゃお~』だろう。少し気合いが入ってるから『そんなことはわかってるわよ、あいぼう! がんばるにゃお!』
だろうか。と考えてしまうと笑えてくる。
「ん、分かった。ここでエトアとラムーを守りながら、ついでに、ヴァルマスク家と聖鎖騎士団を守る」
「わたしも、ゼクスと一緒にエトアちゃん親衛隊を組むわ」
「はい」
とママニもか。
「わたしもエヴァさんの指示に従います」
「使者様、わたしもエトア親衛隊に立候補します!」
「は、はぅ、皆しゃま、よろしくでしゅ!」
注目を浴びて緊張しているエトアのきょどり方が可愛い。
皆、微笑んで頷いていた。
<光魔王樹界ノ衛士>ルヴァロスを見て、
「エヴァたちを守っておいてくれ」
「ハッ!」
アドゥムブラリも後退し、聖鎖騎士団の背の低い女性重騎士を見て、
「俺も空からここを守るか、先ほどの魔法の盾もあるから要らないかもだが」
と発言。女性重騎士は皆に向けワンドを掲げてから会釈したが、喋らず。
大柄の重騎士の背後に隠れた。人見知りか。
ルマルディが、
「そうね、先ほどの光神ルロディス様の幻影など生み出した大きい盾が味方と考えたら、頼もしいわ。ヴァルマスク家には酷だと思うけど、あ、わたしも空から吸血鬼たちと聖鎖騎士団たちを守りに入ります」
と発言。
近くにいるメルが、
「ファーミリアさん、【天凛の月】の、総長の庇護を受ける認識でいいのよね」
「勿論ですわ、うふふ。シュウヤ様に従います」
「「「……」」」
吸血鬼のヴァルマスク家たちは一斉に片膝の頭で床を突く。
<筆頭従者>ルンスとアルナードも、ファーミリアに向けて頭を下げている。
ただ一人、<筆頭従者>ホフマンもファーミリアに向け頭を下げているように見えるが、微妙に俺を向いている。
ファーミリアは気付いていない。
メルは頷いて、ヴェロニカとベネットを見やる。ルンスを一睨みしてフランベルジュを勢いよく地面に突き刺してから、両腕を組んで、「今は従うわ」と了承していた。
光魔ルシヴァルの<筆頭従者長>のヴェロニカだからな。
ルンスよりは格が上、そのような気概さを感じた。
ベネットは無言を貫く。
メルは頷いて、
「……信じられない思いだけど、了解しました。総長、分かっていると思いますが、坂の下の戦いでは、そのことも考慮してください」
メルの言葉に頷いた。
もう夜だから、フレンドリーファイヤーはあるだろう。
すると、レベッカが、
「シュウヤ、わたしもユイと一緒に坂のところから見るから」
「おう」
アルルカンの把神書もルマルディから離れて、
「意外すぎる展開で、心が浮つくが、俺もここにいるぜぇ」
「にゃ~」
「しんじゅう、お前はお前の相棒と共にいろ! 寂しがるな」
「――うにゃご!」
「――うげぇぇぇ、噛むなァ」
黒豹に噛み噛みされたアルルカンの把神書が嬉しそうに見える。
「「「ふふ」」」
皆が笑顔になったところで、メルが、
「基本踊り場付近にいる勢力が味方として、近付いてくる存在が、敵か味方の判断は難しいですね……互いに間違えて攻撃してしまう場合もある」
「そうですね、此方に寄ってくる聖鎖騎士団と吸血鬼も味方と認識しますが、魔人との区別が非常に難しいです」
「たしかに、臨機応変に対応しましょう」
「「「はい」」」
「「おう」」
「分かりました」
「ここは光球がいたるところにあるから分かるが、路地での戦いは中々な」
ハンカイの言葉に皆が頷いた。
そこで相棒とキサラとホフマンとハミヤを見てから、
「おう、では、相棒とキサラとユイも行こうか。ホフマンとハミヤも付いてきてもらうぞ」
「ンン、にゃ」
「「はい!」」
「うん」
「承知いたしておりまする」
ハミヤはダクラカンの聖剣を拾ってアイテムボックスに消した。
そのハミヤに相棒とユイとキサラとホフマンと共に坂道を駆け下りた。
レングラットたちが囲まれているところに向かう。
――走りながらハミヤが、
「――レングラットは聖剣ヴィーを扱います。チャンヴァルは聖槍ハリィラーン。ケキミラは聖槍シュクラを扱います。パーミロ司祭様とキンライ助祭も強者です、仲間と共に他の魔人と戦っていると思います」
「了解した――」
直ぐに紫の魔刃が隣の建物の壁を突き抜けた現場が見えてきた。
隣の建物の柱を幾つも貫いたのか、建物が傾けて崩壊が始まっては土煙が上がっていた。結構な威力だが、そこに住んでいる人々は巻きこまれたか。
続きは明日。
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