千五百七話 <聖刻ノ金鴉>の獲得
一先ず勝利だが、爆発音が響きまくる。
踊り場の端に移動して、地続きの路地を見た。
――激戦となっていた。聖鎖騎士団には後続もいたのか。
外套を着たイケメンは狂騎士と似た武器を持つ。
魔族殲滅機関だ。
光槍を扱う方々も魔族殲滅機関かな。
その魔族殲滅機関と戦っている魔人の数が増えていた。時間帯も夕暮れから夜になった。
すると、空からルマルディとキサラが、
「シュウヤ様、魔人は紅のアサシンではないと思いますが、魔人たちは敵と思っていていいんですよね」
「聖鎖騎士団と魔族殲滅機関たちと戦う魔人たち……魔人は三人、四人とまた増えている、【セブドラ信仰】など【闇の枢軸会議】の枠の中にいる、地下オークションに参加していない複数の闇ギルドたちも暗躍している?」
その発言に頷いた。
「あぁ、魔人は敵か。キサラの予想は当たりかもな……」
「だな、警戒しようか」
「はい」
とルマルディとキサラとアドゥムブラリが路地側に移動し、ユイの上空を旋回していく。
ヴィーネが、
「ご主人様、わたしも空から見ておきますが、魔人たちは、わたしたちと接触してくると思いますか?」
「どうだろう。あるかもだ、此方側からの先制攻撃は無しでいこう」
ベリーズが、
「了解、わたしも空から警戒する」
「魔人たちの数が増えたのはきな臭い――」
ベリーズとベネットも飛翔して、ユイたちの近くに着地。
キッカも、
「ですね、魔人に魔族たちならば、聖鎖騎士団の中に吸血鬼ハンターが味方としているかもです」
と言うとアドゥムブラリと合流して共にユイのところに向かう。
すると、聖鎖騎士団団長ハミヤの行動を見た聖鎖騎士団の重騎士たちは武器を地面に置いていた。降伏してくれそうだ。
「うふふ、勝利♪」
ツアンからイモリザに変化していたか。
イモリザの横に移動していたサザーは、
「まだ坂の下に魔人たちがいますよ」
と言いながらイスパー&セルドィンの魔剣を振るって、踊り場の端のほうに移動して周囲を見回している。
坂の上にいたラファエルも、
「魔人たちならボクたちの得意分野だけど、一先ずの勝利かな?」
と発言しつつ駆け下りてくる。
魂王の額縁から出したであろう妖怪『ぬりかべ』と似た『ゼットン』などを引き連れていた。
「ちょっと、ラメラフルとピグマは戦闘に使っては、だめって言ったのに」
「あぁ、ごめん、状況的に少し危機だと思って、慌てて出してしまった」
「「「ふふ」」」
ミスティに責められている。
ドッドゲルマの鋼を仕舞うフーにラムーとエトアとエマサッドとビュシエとクナとルシェルとエヴァは傍で笑っていた。
そのエヴァとメルとレベッカとクナとビュシエに、女帝ファーミリアと<筆頭従者>のアルナードと吸血鬼たちが、俺たちのいる踊り場に下りてきた。
「ん、シュウヤ、一先ずの勝利?」
エヴァの言葉に頷いた。
クレインも寄ってきて、「――エヴァッ子! やったさね」エヴァと「ん! 先生――」とハイタッチをしてからハグしていた。
師匠と弟子の絆はほっこり。
エヴァのワンピースに普段隠れているおっぱいの膨らみが顕わになるぐらいにクレインが、ぎゅっとエヴァを抱きかかえている。
「ん、先生、少し苦しいー」
「あ、ごめんごめん」
とクレインは笑いながらエヴァを降ろしてあげた。
エヴァの黒髪が揺れている、項が魅惑的。
そのエヴァに、
「坂の下は激戦模様だから、まだまだ戦いは続きそうだ」
エヴァは頷いた。
クレインも、
「然もありなん、が、今は勝ちは勝ちさ、しかし、シュウヤの言うように、路地の坂下の戦いは拡がっている。地下オークションを前後する日々の夜は歓楽街も静かなことが通例なんだがねぇ……」
と、昔を思い出すように語るクレイン。
クレインは冒険者の六大トップクランの一つ【天鳥サウラン】に所属していた。
そのクレインは踊り場の端に移動し、ユイたちに向け手を振りながら、
「――オセべリア王国の衛兵隊に、青鉄騎士団も動くかもさ」
と発言。
「【アシュラー教団】が押さえていると思うが、そうかもな。そして、ナロミヴァスの眷属化を急ぎたいところだったか、俺たちの夜はいつもこんな感じだな」
「そうねぇ」
「ふふ、狂騎士たちとの戦いを思い出しましたよ」
メルの言葉にペルネーテの【残骸の月】組が数回頷いていた。
レベッカも微笑んで、
「ふふ、一先ずは勝ちだけど、ユイの下に行ってくる」
「おう」
「ん」
レベッカはエヴァとも微笑み合うと踊り場から離れた。
屋根の上に居るユイたちのところに向かう。
キサラとアドゥムブラリとルマルディたちと会話を始めていた。
そこの屋根に居るユイが、上の踊り場にいる俺に向け神鬼・霊風を上げて、
『ここから一応、下の戦いを見とくから』
と血文字を寄越した。
『了解』
と血文字を返す。すると、近くに居るファーミリアが頭を下げた。
頭頂部にある白銀色のティアラが可愛い。
「シュウヤ様、ご依頼を受けていただいた上に、今回のご助力、感謝致しますわ、このご恩は忘れません、ビュシエ様とキサラ様も本当にありがとうございました」
「はい」
「ふふ、はい」
ビュシエとキサラがファーミリアを助けた戦いがあったのか。
聖鎖騎士団には射手に魔銃持ちも居たからな
「シュウヤ様、ありがとうございました。しかし、本当に……」
と深緑色の髪の毛が渋いヴァルマスク家<筆頭従者>のアルナードが、聖鎖騎士団の方々を見て呟く。
女帝ファーミリアも頷いて不安そうに聖鎖騎士団を見ては、
「まだ眷属たちが戦っている聖鎖騎士団共は許せないですが……シュウヤ様との縁もあるような雰囲気ですから……アルナード分かっていますね?」
ファーミリアは蒼い双眸は鋭い。
顔色も美人で、険しいが、少しドキッとするぐらいに美しい。
ファーミリア・ラヴァレ・ヴァルマスク・ルグナド……吸血神ルグナド様の<筆頭従者長>の一人か。仲良くなれて良かった。
そのファーミリアの<筆頭従者>の一人アルナードは俺に向け会釈してから、その配下の吸血鬼たちと共に、一斉に胸元に手を当てながら俺に頭を下げて、
「「「「「ハッ」」」」」
と、返事をしてきた。
踊り場にいるエヴァとクレインとフーとハンカイとブッチが拍手。
ハンカイとブッチが女帝ファーミリアと複数の吸血鬼たちを見て、
「シュウヤならマジで帝国と王国などの戦争を終わらせることが可能な氣がしてきた」
「ですね……」
と発言してきた。
<従者長>ブッチも今回の戦いではサラ以上に活躍してくれた。
片手斧の技術は向上していた。
更に片手の魔機械の盾も使いこなしていた。
サイデイルでの経験がブッチをより成長させたと分かる。
そのハンカイたちが聖鎖騎士団を見やる。
注目されたのは大柄の盾持ちではない。
魔銃持ちと、背の低い重騎士が注目を受けていた。
魔銃持ちは何人もいるが、一番注目されているのは、背の低い重騎士かな。
チェインコイフをかぶっている。目がくりくりとしている。
髪の毛は兜で見えないが、女性か? 修道女のような存在かな。
背の低い重騎士さんは、光を有した大きい盾を召喚し、光神ルロディス様の幻影と光を帯びた女性と男性の幻影も出現させていた。
あの女性が聖鎖騎士団の団員で魔術師でもあるってことだろう。
光を有した大きい盾は、見た目以上に広範囲の物理属性の防御と魔法の防御もあるようだった。
翡翠の蛇弓の光線の矢に、レジーの〝セヴェレルス〟の弾丸。
ラファエルの『トルーマン』の魔弾。
フーのドッドゲルマの鋼とバストラルの頬の魔法に烈級:土属性の怒破刃潰なども防いでいた。
ベリーズの聖十字金属の魔矢による<絶剛矢>。
ベネットの聖十字金属の魔矢の<影弓>。
なども防いでは、俺の魔槍杖バルドークの<投擲>をも弾いてきた。
最高クラスの魔法の盾の使い手かも知れない。
聖鎖騎士団団長ハミヤは、そんな聖鎖騎士団たちを見ているファーミリアたちを見ている。
そのハミヤに、
「ハミヤと聖鎖騎士団の方々ヴァルマスク家への戦いは止めたと思っていいんだな?」
ハミヤは頷いて、
「はい、聖者様……聖王様に従います。皆の者、聞いたな――」
「「「「はい!」」」」
「「「「「おおう!」」」」」
と円陣で守りに入っていた聖鎖騎士団たちが返事をした。
聖鎖騎士団団長ハミヤと共にやってきた聖鎖騎士団の重騎士たちと合流しては聖鎖騎士団の重騎士たちは俺の前に整列し、「「「「「聖者様――」」」」」と片膝の頭で地面を突く。
ハミヤは俺を見て、
「【天凛の月】を率いている聖者様で聖王様、この聖鎖騎士団団長ハミヤ・ラーガマルトンは、聖鎖騎士団たちと共に降伏致します。それに伴い周囲の皆にわたしの降伏と聖王復活を知らせるため連絡を取っていいでしょうか」
聖王復活か……。
「了解したが、まだ魔人と戦っている魔族殲滅機関たちに聖鎖騎士団の団員と司祭や助祭の志気に関わるんでは?」
「はい、しかし、私たちの降伏を知らない<筆頭従者>の一族を追う部隊長たちは、まだ戦いを続けている」
ファーミリアたちも頷いた。
「了解した、知らせていい」
「はい、それと、今から出す物にシュウヤ様に触って魔力を込めて頂きたいのです」
と、ハミヤは懐から筒を出した。
筒には、太陽の印と、三本足の鴉に光神ルロディス様の中性的な神様が描かれてあった。
女神様なのか、男神様でもある?
ハミヤと筒を見ながら、
「その筒は信号弾か、それに俺が魔力を込めればいいのかな」
「はい、これは〝黄金聖王印の筒〟……。聖者・聖王発見の際に用いられる教皇庁五課聖者・聖王探索局が聖鎖騎士団が授けてくれていた貴重な照明弾です」
「へぇ……教皇庁五課聖者・聖王探索局か、初耳だ」
と筒を受け取った。
「はい、教皇庁中央神聖教会と教皇騎士団に第二課防衛局が宗教国家ヘスリファートの本国では主力ですから」
頷きつつルシェルを見やると、ルシェルも頷いていた。
筒に魔力を込めると、筒が光を帯びる。
筒から光神ルロディス様の小さい幻影が顕れて、黄金の鴉の幻影も出現した。
その幻影は筒の表面に吸い込まれると、筒の模様が少し変化し、明滅しては輝いている紐が伸びていた。
「「「「「お”おぉ」」」」」
と聖鎖騎士団の全員から地響きのような歓声が響く。
ハミヤに「これでいいのか?」と言うと、ハミヤは、
「はい! やはり、シュウヤ様は聖者様で、聖王様で在らせられる!」
と背を反らす勢いで背筋を伸ばして返事をしている。
「お、おう。では、この筒を返そう」
「ハッ!」
とハミヤは俺から恭しく筒を受け取る。
その少し手が震えていた。
ハミヤは、皆に会釈をしてから少し離れ、先ほどホフマンとルンスが率いる吸血鬼たちと聖鎖騎士団たちが消えた路地の真上辺りに筒先を向けた。
「では、この〝黄金聖王印の筒〟を使わせていただきます!」
と宣言。
近くにいるキサラたちが踊り場に戻ってきた。
ハミヤは片耳を片腕の二の腕と肩で押さつつ筒の後方から伸びていた輝いている線を引っ張った。その直後、筒先から光り輝く魔弾が飛び出ていく。
ぴゅぅ~と音が響き、ボオォォン!
刹那、〝黄金聖王印の筒〟も光の粒子となって俺に飛来――。
胸元の<光の授印>に衝突。
エクストラスキル<光の授印>の派生スキル条件が満たされました※
ピコーン※<聖刻ノ金鴉>※恒久スキル※獲得※
おぉ、恒久スキル獲得!
胸元の<光の授印>の印が少し変化。
更にイギルの歌が自然と脳内で響いたような気がした。
霊廟のような微かな幻影も……
どうやらこの<聖刻ノ金鴉>は、聖戦士たちの遺跡に反応するようだな……そして、胸の<光の授印>には<光条の鎖槍>の証明の鎖が絡んでいる絵柄だったが、新しく背景に黄金の鴉が印された壁画の模様が刻まれている。壁画はどこか霊廟を思わせる。
驚きだ……。
『閣下! 聖刻の担い手の意味が?』
『御使い様は聖槍アロステを持ちますからね!』
『あぁ、あるかもだ、イギル・フォルトナーたちも関連がある』
『イギルの歌の聖戦士ですね』
『あぁ……』
と花火的な轟音が響く。
〝黄金聖王印の筒〟から出た魔弾は、人工太陽的のような光の球に変化していた。
宙空に三本足の黄金の鴉も出現すると、それは黄金の光となって四方八方に散る。
発煙筒どころの輝きではないような……夜だったが、昼になったような印象だ。
女帝ファーミリアが「ヒッ」と小声で怖がって寄ってきた。
そのファーミリアの乳房の感触を得て嬉しかった。
「す、すみません、このような<天孫降臨>や<太陽奇跡>などの奇跡的な現象は、久しぶりに見たので」
と発言して、ファーミリアは少し恥ずかしかったのか、離れる。
黄金の光は、俺の<光の授印>とハミヤの体に当たっていた。
踊り場にいる聖鎖騎士団の重騎士と射手に魔銃持ちたちにも当たって皆、光を帯びていた。
俺と聖鎖騎士団の団長ハミヤと皆とも黄金の光が繋がって、不思議と聖鎖騎士団の団員がどこにいるが瞬時に理解できた。
昼となった現象は直ぐに終了。
俺とハミヤと繋がっている黄金の光は健在。
黄金の光は、坂の下にいるだろう聖鎖騎士団の団員たちがいるところに直進していた。
と、周囲でヴァルマスク家と戦っていた聖鎖騎士団の重騎士と射手と魔銃持ちの方々が集結してくる。
坂の下で戦っている聖鎖騎士団以外は全員が集まったか。
数百人以上はいるから踊り場と坂の下のほうにまで先ほど以上の重騎士たちの列となった。
そこにルンスとホフマンが率いていた吸血鬼集団が飛翔するようにやってきた。
ヴェロニカがルンスを睨み、
「やっぱり生きてたのね」
と発言。
ルンスはファーミリアに向けて頭を下げるように片膝の頭で床を突く。
ホフマンも同様に女帝ファーミリアに頭を下げていた。
ファーミリアはルンスを見て、
「聖鎖騎士団への対応は褒めておきますが、長年の禁忌ヴェロニカ様たちへの攻撃は、ヴァルマスク家を陥れることに通じる。その不名誉に関わる処罰は大長老会議にて話し合いを行うことにします、理解しましたか」
「え……は、はい」
ルンスの配下の吸血鬼たちはざわついた。
女帝ファーミリアはルンスと、ルンスの眷属たちをキッと睨み、
「……これでも甘いのですよ? 先ほど、光十字の極刑剣の名が出ました」
「……そ、それは」
ルンスは顔色が真っ青だ。
「……そうだとも、今は静かにしておけ」
「ぷっ」
「くくっ」
<筆頭従者>アルナードの言葉とアルナードの<従者長>たちに嗤われたルンスはアルナードと<従者長>たちを苦々しく睨み付けていた。
ヴェロニカとメルもルンスを睨んでいる。
恨みも強いと思うが、女帝の顔を立てているんだろう。
すると、ホフマンはそっと俺に近付いて、
「……それよりもシュウヤ様、下の戦いにはアラギヌスたちも参戦しておりまする。後ほど共に戦いませぬか?」
ホフマンは、キサラも見やる。
キサラは頷いて、俺も頷いてから、
「……戦うかもだが、ホフマンたちが、他の吸血鬼ハンターに追われるはめになったら、放っておくぞ」
「それは構いません」
キサラは無言だが俺の傍に寄って力強い視線で、『共に』とキサラの声が聞こえたような気がした。信頼の目と表情に嬉しくなって頷く。
すると、ハミヤが、
「聖王様、聖鎖騎士団は、聖女を連れてくる証明書の、銀印教皇勅書もあります。ここに魔力を送っていただけませんか」
「拘束的な縛りはないだろうな」
「はい、そのようなものはありません。私の団長が仕事をした成果となる代物で、神聖教会の施設など、通行手形にもなる。聖者の証明が入ると、それだけで神聖教会の関係者は態度を変えます」
とハミヤは、高級そうな紙の巻物を拡げた。
銀印教皇勅書か、色々と書かれているが、特に制約はない。
<闇透纏視>で凝視しても魔法の力はあまり感じない。
教皇ノスタリウス三世の字が、少し黒く滲んでいる。
怪しい。
ハミヤの言葉は信じられると思うが、一応。
「エヴァ、頼めるか?」
「ん」
「ハミヤ、エヴァが手を触れるが、氣にするな」
「はい、どうぞ」
ハミヤは銀印教皇勅書を拡げている両手を向けた。
エヴァはそのハミヤの手を触り、
「ん、今の言葉は本当?」
「はい、すべて本当です」
「ん、シュウヤ、聖鎖騎士団団長ハミヤはシュウヤを聖王の再来と心酔している。銀印教皇勅書にも疑問を抱いていない。けど、これは、ラムーに後で鑑定してもらったほうがいい」
「了解した。ハミヤ、銀印教皇勅書はまだ持っていてくれ」
「了解しました」
ハミヤは銀印教皇勅書を仕舞う。
ラムーは少し前に出たが、
「ラムー、鑑定は後で頼む」
「はい」
踊り場にいる皆を見て、振り返る。
近くにキサラとホフマンもきた。
踊り場の端からアドゥムブラリたちごと、坂の下のほう見やった。
近くにいるメルに十字路で起きている激戦に腕先を向け、
「――メル、あの魔人は知っているか?」
「紫の魔力は、魔人キュベラスかもですね、あ、遠くに父さんたちの魔素も感じました」
「魔人ザープか……義賊ホクトに盗聖サウラルアトも魔人だとしたら、裏武術会と【セブドラ信仰】の連中と戦っているかもしれないのか」
「はい」
すると、坂の下の乱戦から抜け出た魔素たちが近付いてきた。
「ハッ、魔族殲滅機関も、逃げ足だけか――」
と魔人が叫ぶと大きな鎌を振るわずに鎌から魔刃を繰り出すのが見えた。
魔刃は前を駆けている三人に向かう。
三人は加速して魔刃を避けると光槍を持つ男性と女性は左右斜め上に跳躍した。
外套を着た人物は路地の緩やかな坂道を上がってくる。
魔人の片方が、
「――無理もないわ、相手は八大使徒ではないし、わたしたちの背後にはスレーたちもいるから」
と言いながら魔杖を振るうと、魔杖の紫の光刀から紫の魔刃を前方に飛ばした。
外套を着た人物は振り返りながら光の十字架の剣を振るい、飛来した紫の魔刃を横に弾くと、バックステップから素早く身を捻って階段を上がっては坂道を駆けた。
すると、近くに居る聖鎖騎士団団長ハミヤが、
「魔族殲滅機関の一桁はレングラットとチャンヴァルにケキミラです。その仲間と戦っているのは魔人の一人はキュベラス!」
続きは明日。
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