千五百六話 わたしたちは【天凛の月】! 退くなら退きなさい――
豪快な唐竹割りの直後、キスマリは体勢を沈めながら一歩早く前進。
やや遅れて黒虎とハンカイとブッチが左に出た。
前に出たキスマリに、
「「怯むな、押し戻せ!」」
「「「おおうッ!」」」
と、聖鎖騎士団の重騎士たちが集中する。
前方の三人の短く持ったハルバードの突き出しと、その背後から重騎士の間と間からハルバードが伸びる。
俄に魔槍杖バルドークを右手に召喚――。
魔槍ラーガマウダーの二槍流のまま前進し、魔槍杖バルドークに<血魔力>込めて前方のキスマリにハルバードの攻撃を繰り出している重騎士に<投擲>を行った。
キスマリは左右上腕の魔剣ケルと魔剣サグルーで己の頭部と背を複数のハルバードの斧刃から守りながら前進し、正面の重騎士の懐に潜り込む。正面の重騎士が持つハルバードはキスマリの体に押された影響で上がって胴体を晒す。直ぐにキスマリは右下腕の魔剣アケナドで重騎士の足の関節を貫き、左下腕の魔剣スクルドで胴を抜く。腹を裂いて倒した。
重騎士は回復力を示すように血肉が付いていくが、間に合わず。
直進した魔槍杖バルドークは重騎士の頭部を穿ち直進し背後の重騎士の盾と足をも穿って坂に突き刺さった。
その魔槍杖バルドークを拾いに坂を駆けてキスマリの横を越えて、キスマリに攻撃をした重騎士に近付く。
すると、<光邪ノ使徒>ツアンの光刀のようなククリが見えた、ククリが、キスマリを攻撃した重騎士のハルバードを横に弾く。
――魔槍杖バルドークを右手で拾い、キスマリを攻撃した重騎士に攻撃と思ったが、俺に近付いてきた正面に居る重騎士が、
「――喰らえや!」
と繰り出してきたハルバードの<刺突>系統の突きスキルに、魔槍ラーガマウダーの<魔雷ノ風穿>で迎撃するように左腕を突き出す。
十文字の穂先がハルバードを弾き重騎士の右腕を穿つ――。
腕を失った重騎士は「げがぁっ」と痛がる声を発した。
そんな重騎士に向け、少し跳躍しながら、背後の坂の下にいる重騎士をも狙いに定めて――右手が握る魔槍杖バルドークで<獄魔破豪>を繰り出した。
体から迸った<血魔力>は血の渦と成り魔槍杖バルドークごと体と<血魔力>が螺旋回転しながら直進し、目の前の重騎士の上半身を瞬時に破壊した魔槍杖バルドークの<獄魔破豪>は、坂の下に居た重騎士たちの上半身や頭部をスプーンで抉るように直進してから豪快に着地――。
腰にぶら下がる魔軍夜行ノ槍業が震えて、
『弟子、見事な<魔槍技>の<獄魔破豪>だ!』
『はい!』
獄魔槍のグルド師匠に返事をしながら背後の坂上に跳躍――。
『ふふ、御使い様の判断は見事、味方がいながらも隙のない直進系範囲技の獄魔流技術系統の奥義ですからね、見事です』
左目の闇雷精霊グィヴァの念話に、
『おう』
と応えながら状況を把握。
聖鎖騎士団の重騎士が並ぶ前衛の一角は崩したが、まだ坂の下には聖鎖騎士団が数百はいる。左右の路地のルンスとホフマンの戦いも、状況が変化しているように思える。
ハンカイとブッチは、
「「<猛襲打豪>」」
と斧のスキルを繰り出す。
金剛樹の斧と片手斧の連続的な振り払いが、相対した重騎士のハルバードと盾と衝突を繰り返し、ハルバードと盾が踊るように弾かれる。
防御が崩れ、重騎士の腕と腹と頭部に隙が生まれる。
ハンカイとブッチは、その頭部と腹を豪快にぶち抜いて防具ごと腹を破壊して重騎士たちを倒していた。
<光魔王樹界ノ衛士>ルヴァロスが、茶色の魔槍を古い二体の重騎士の足を払い倒すとサラとキサラが少し前に出た。
サラの両腕の紅い毛が増えて筋肉が盛り上がり巨大化すると、倒れた重騎士の一体を双反刀ラ・グラスで潰すように倒していた。
キサラは魔槍斗宿ラキースの<血烈叭槍>で重騎士の頭部を潰すように倒していた。キサラは直ぐに後退し、坂の上にいるファーミリアの横に付くと紙人形を周囲に撒いている。
ルヴァロスは、そんな二人に何かを叫ぶと、緑色が魔宝石のような礫で射手を牽制していた。
ハンマーフレイルのようなゲルサクの王樹球槌が、重騎士の兜ごと重騎士を潰す。
黒虎は、
「ンンン、にゃご――」
と鳴きながら少し跳躍を繰り返す。
同時に体から無数の触手を生み出し、その触手を前方に伸ばしながら先端から骨剣を生み出す。その触手骨剣で重騎士の体を攻撃していた。
無数の触手骨剣の連続攻撃は鎧や盾で防ぎきれない、首と庇の間から重騎士の体に突き刺さっていく、重騎士たちの体は吸血鬼並みの回復速度で直ぐに回復するが、黒虎が繰り出す触手骨剣の連続攻撃に防戦一方となった。
刹那、重騎士の盾に両足に触手が絡まった。
「ンンン――」
喉声を発した黒虎は触手を一気に引く。
複数の重騎士たちを坂上の引き摺られるように転倒していくとビュシエが、
「ナイスですロロ様! <血道・石棺砦>――」
と複数の石棺が、重騎士たちの頭上から急降下。
「ンン、にゃご~」
黒虎は嬉しそうな声を発して触手を体内へと収斂させた。
坂に転がっていた複数の重騎士たちは自らの体重の重さが仇となり、縦長の<血道・石棺砦>を避けられない。
「――ぐぇ」
「あひゃ――」
「あべし――」
と、次々に<血道・石棺砦>の石棺に下敷きとなった。
――前衛の重騎士の十数人は悲鳴も上げられず、
坂道に縦長の<血道・石棺砦>が敷き詰められ、瞬く間に石棺の平らな道が出来上がった。当然、坂にいた複数の重騎士は※石の中にいる※状態だろう。
ビュシエは石棺の<血道・石棺砦>を消すと窪んで血塗れの坂道が露出。
直ぐに左手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出し――。
まだまだ坂の下には聖鎖騎士団は多い。
「見事ですわ、ビュシエ様」
「ん、凄かった」
「うん」
「ふふ、皆さんの役に立てて光栄です」
クナとエヴァとレベッカはビュシエと笑みを交換。
ハンカイとブッチの近くにいた重騎士が目に入る。
直ぐに左手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出した。
背を<鎖>で穿ち倒す。
「まだ前衛の重騎士は元気ですね、数にして数百! 坂の下のヴァルマスク家たちには、やはり分が悪すぎる」
と、発言したヴィーネはラシェーナの腕環を使用。
そのラシェーナの腕環から無数の黒い小さい精霊が連なりながらキスマリを攻撃しようと近付いていた重騎士の一人に絡み付いては、拘束していく。
そこに、ルマルディが、
「はい、聖鎖騎士団の一人一人を倒し、諦めてもらうしか道はなさそうです――」
と<円速・虹刃>が、黒い小さい精霊で動けない重騎士の頭部を捉えて兜ごと縦に輪切りにし、胸の鎧も切断して倒していた。
<円速・虹刃>の切れ味は凄いな。
さすがの空極で<筆頭従者長>。
そんなルマルディに複数の魔矢が下から飛来。
アルルカンの把神書から出ている、巨大なピラニアのような魔魚が口を拡げながら魔矢と衝突し、複数の魔矢を喰らいながら爆発。相殺していた。
すると、ユイとサザーがヴェロニカに近づきながら、得物を振るって<投擲>されたハルバードを弾き飛ばしつつ、
「――ハミヤと呼ばれている団長は、ホフマンとルンスのどちらか集中している? そして、魔族殲滅機関の一桁の名はレングラットだったかしら」
ヴェロニカも、フランベルジュを縦に振るって魔矢を切断し、
「――たぶん、魔族殲滅機関の一桁の名は、うん、そうよ、意外に冷静な男」
「そっか、サザー、キスマリたちのフォローに行きましょう――」
「はい」
と、ユイとサザーは坂の下の重騎士の前衛に斬り掛かる。
ユイは瞳から白銀の魔力を発して<銀靭>を使用していた。
アゼロス&ヴァサージから神鬼・霊風一本に持ち替えていたユイは<銀靱・壱>の袈裟懸けで重騎士で斬り伏せた。
サザーは、
「キスマリ、魔矢が多すぎる! 屈んで、あ、背を貸して――」
と言いながらユイを越えて跳躍し、飛来してきた魔矢を切断し、「承知!」と、しゃがんでいたキスマリの背を片足で踏み台にして跳躍して、飛翔する。
宙空で身を捻ったサザーは、
「<飛剣流・笹落ち>――」
を、聖鎖騎士団の射手と重騎士たちに繰り出す。
両腕を振るい回しイスパー&セルドィンで射手と重騎士たち斬り刻む。
そこにヴェロニカが、血の大剣から離れ飛び、
「ふふ、見事な飛剣流――」
と言いながら己も両手に持ったフランベルジュを振るってサザーの横を飛翔しながら聖鎖騎士団の射手を薙ぎ払った。
坂の下にいる重騎士がハルバードと射手が弓を構えて光属性の魔力が内包された魔矢を射出しようとしているから、そいつに向け<鎖の因子>から<鎖>を射出――。ハルバード持ちと射手の一人を<鎖>で貫いたが、坂の下に居る聖剣を両手に持った聖鎖騎士団の重騎士に<鎖>が弾かれた。
直ぐに<鎖>を消す。
と、坂の下にいる聖鎖騎士団の魔銃持ちが、魔弾を射出。
激しい火花が発生――魔弾を避ける。再びマズルフラッシュ、魔銃から連続して魔弾を放つ。再び、横に移動、皆も左右に散るように移動した。
「――ヴェロニカお姉様も美しい血魔剣術です!」
「――ありがとう! <血白狐閃>――」
血の大剣に乗ったヴェロニカはサザーに返事をしながら前に出て、重騎士に近付いた。
重騎士の光属性の聖剣をフランベルジュで下に弾く。
と、乗っていた血の大剣を、庇ごと兜に衝突させた。
「ぐあ」
と血の大剣で頭部が揺らいだ重騎士は、闇雲に聖剣を振るう。
もうその位置にはヴェロニカはいない。ヴェロニカが乗っている血の大剣が直進し切っ先が重騎士の首の隙間を穿つ。
ヴェロニカは、その大剣から跳び降りながら右手のフランベルジュを振るう、弧を描くようにフランベルジュの刃が動いて重騎士のハルバードの下から叩く、ハルバードは上向いた。
「ぐおぉ」
と、ハルバードが上向いたは重騎士は隙だらけ、ヴェロニカは、重騎士の防具の隙間へとフランベルジュを振るった。
<血白狐閃>のフランベルジュの刃が重騎士の腋か腕の関節に吸い込まれる。
ヴェロニカは、重騎士の腕の関節部に突き刺さったフランベルジュを上向かせ、「ぐあぁぁ」と悲鳴を発した重騎士に脇腹に左手に握るフランベルジュの突き立てながら、重騎士の腕に刺さったフランベルジュを横に動かす。それは防具の閂を外すようにも見えた。
ヴェロニカは重騎士の腕を強引に切断するや否や血の大剣が自動的に一閃、重騎士の顎当てがズレた箇所に血の大剣が侵入すると、重騎士の首を刎ねた。重騎士の頭部が飛ぶ、首を失った聖剣持ちの重騎士は倒れた。
聖剣持ちの聖鎖騎士団の重騎士は強いと思うがヴェロニカの敵ではないな。
魔銃持ちの聖鎖騎士団に向け魔槍杖バルドークを<投擲>――。
「エイサーを、くそがぁ――」
「あいつは鮮血! 吸血鬼中の吸血鬼だ!!」
「――聖女に取り憑く、鮮血めが!!」
聖鎖騎士団の重騎士たちが騒ぐ。
魔槍杖バルドークは、魔銃持ちの前に出現した光を有した大きい盾で防がれた。光神ルロディス様の幻影と見たことの無い光を帯びた女性と男性の幻影が、盾の周囲に出現する。魔槍杖バルドークを<握吸>で引き寄せる。
騒いでいた前衛の重騎士たちがサザーとヴェロニカを襲おうと前進。
そんな重騎士たちの出端を挫くように<従者長>ママニが、
「聖鎖騎士団、素直に退け――」
と叫びながら大型円盤武器のアシュラムを<投擲>――。
先頭にいた重騎士は盾で大型円盤武器のアシュラムを防ぐ。
「ぐおっ」
と衝撃で背後の仲間の重騎士たちに寄り掛かった。
そこにママニは戻ってきたアシュラムを掴み直し、横回転しながら、また大型円盤武器のアシュラムを<投擲>する。
女性の虎獣人のしなやかな動きからのサイドスローは魅惑的。重騎士は盾を上げて下腹部と足を晒していた。
<血魔力>を有した大型円盤武器のアシュラムは、足に直撃。
足はあらぬ方向に曲がりへし折れた。
「げぁぁ」
と地面に倒れた重騎士は、左にいた盾を構えていた重騎士と衝突――。
すかさず元紅虎の嵐の<従者長>ベリーズが、「好機!」と言いながら<血魔力>を込めた金剛矢が、その衝突しあった重騎士の首と手足の関節に突き刺さり、手足が吹き飛ぶ。
金属鳥の金属の礫が、他の重騎士たちに降り注いだ。
ベネットが、
「背後と横道が心配だが、正面から突破もいいか!」
と言いながら、魔弓で聖十字金属の魔矢を射出する。
【天凜の月】の最高幹部が着る紅色を基調に二つ月のデザインが施された衣装が素敵。
聖十字金属の魔矢が、重騎士たちの足の関節に突き刺さりまくる。
そこにクレインとキッカとビュシエとサラとメルとアドゥムブラリが低空から前進し――。
ユイとサザーとママニとベネットたちが押し込んだ重騎士たちの腕と頭部を、皆の得物がそれぞれ捉えて切断、潰すように倒していく。
すると、聖鎖騎士団の重騎士前衛部隊のリーダー格らしき存在がぬっと仲間の死体を越えて現れる。
「これ以上はやらせぬ!」
と、リーダー格の重騎士が繰り出した聖槍の光を帯びた突きスキルを――。
「無駄さね――」
クレインが金火鳥天刺と銀火鳥覇刺を突き出して、聖槍らしき穂先を防ぐ。そのクレインの両腕がブレた。
<血魔力>を纏った<銀刺・金刺>の突き技が重騎士にヒット。
重騎士の胸と腹がドッと振動しては重低音が轟く。
と重騎士の鎧ごと胴体が弾け飛ぶ。
跳躍して、聖槍らしき槍を左手でキャッチして拾いながらサザーとユイの斬撃を防いだ盾使いの足を狙うように魔槍ラーガマウダーで<杖楽昇堕閃>で払う。
重騎士は右足が切断され左足があらぬ方向に曲がって吹き飛んだ。
クレインは、両腕と背中から湯気のような魔力を放出させている駆けていた――。
ユイたちを越えて坂の左の建物に壁を走る。
坂にいる重騎士がハルバードを突き出すが、クレインには当たらない。
クレインは、坂の下のヴァルマスク家たちがいた踊り場のような場所に到達。
そこで、金火鳥天刺の中段防御で複数のハルバードの突きを防ぐ。
と、同時に銀火鳥覇刺のトンファーを突き出しながら前進。
ハルバードを突きだした重騎士の胸を銀火鳥覇刺のトンファーが貫く。
続けざまに、金火鳥天刺で他の重騎士のハルバードを弾きながら突き出す。
強烈な<銀刺・金刺>だ。
クレインは前進し、<天引き蹴刀>を繰り出し、重騎士を転ばして吹き飛ばし、軽やかな動きで回転しながら立ち上がり、金と銀の金火鳥天刺と銀火鳥覇刺のトンファーを構えた。
ペルネーテにも、金死銀死の異名が轟くか。
クレインの過去を知っている方はペルネーテにはまだいるかもだが。
「「「「ぐあぁ」」」」
「最後のトンファー使いは強すぎる」
「「――なんだこいつらは!!」」
「「吸血鬼ではないのか! 強すぎる!」」
そこに〝セヴェレルス〟が連続的に火を噴いた。
前衛の重騎士が持つ盾と、〝セヴェレルス〟の杭の弾丸が衝突を繰り返す。
ベニーの〝セヴェレルス〟はブルパップ方式のP-90やFNF2000と似た魔銃で、ミホザの騎士団が残した聖櫃だ。
重騎士の盾は凹んでボロボロとなる。
「げぇ、バエサルの黄金の盾に光神の盾が頼りになるとは――」
と喋った重騎士の、兜の庇の隙間にヴィーネの翡翠の蛇弓の光線の矢が突き刺さった。
刹那、庇と反面頬の隙間から緑色の蛇の幻影の群れが出ると、その頭部は内側から破裂した、重騎士は倒れた。
「くそが!」
「今の飛び道具は魔界の神具か!?」
聖鎖騎士団の重騎士の前衛部隊は完全に崩れたように突進してくる者は少なくなった。
そこに後衛に居たレベッカの蒼炎弾とベニーの魔弾が向かう。
が、聖鎖騎士団の後衛を中心に坂の上にいる重騎士たちを守るように、光を有した大きい盾が出現。その光を有した大きい盾は、先ほどと同じく、光神ルロディス様の幻影と、見たことの無い光を帯びた女性と男性の幻影を出現させる。
――光を有した大きい盾は、皆の遠距離攻撃を防いでいた。
フーのバストラルの頬とドッドゲルマの鋼から放たれる土の礫も防いでいく。
あの数人の盾使いは厄介だが、連発は不可能か?
「げぇぁ――」
キスマリとユイとサザーとキッカがクレインのいる左ではなく、右の踊り場に出る。
キスマリは、「こやつらの魔力は我がもらう――」と前に居る重騎士が突き出したハルバードの突きを僅かに横に移動して避け、右横の重騎士がキスマリの足下に突き出したハルバードを軽く右の前に跳躍し避けて、そのハルバードの根元付近を右足で踏みつけながら、左上腕の魔剣スクルドで重騎士の左腕を突き、右上腕の魔剣サグルーで首を薙ぐ。右に横回転しながら疾風怒濤の如く四腕を振るいハルバードの攻撃を弾きながら重騎士の三体を四散させる。
ユイとサザーとキッカは頷きながら相対した聖鎖騎士団の重騎士を切り伏せた。
ハンカイとブッチも相対した重騎士を斧で殴るように倒す。
ハンカイはハルバードを金剛樹の斧で弾きながら、重騎士の懐に潜り、金剛樹の斧をかち上げて、重騎士の胸の甲を抉るように胸甲を削り、左斜めに体を回転させながら金剛樹の斧を振るい重騎士の肩から胸を薙いで倒した。
そのハンカイの左を守るようにブッチがバックラーの盾でハルバードの攻撃を防ぐ。
ハンカイは短い足を活かすように小さい跳躍からの<鬼颪>の振り降ろしで、重騎士の頭部をかち割ると、両足で、その死体に乗り倒す。
そのまま死体に乗って坂下を滑りながら、ハンカイは左右の重騎士たちのハルバードの攻撃を金剛樹の斧で弾き返しての振り上げから降ろしの反撃を重騎士たちに浴びせて、重騎士たちの左足と右足を切断しまくる。
ハンカイが、坂の重騎士隊の防御の列を一気に喰い破った。
が、さすがに突貫し過ぎだ――。
少し坂下に向け跳躍しながら左手首の<鎖の因子>から<鎖>を飛ばす。
ハンカイをフォローするように二体の重騎士の首を<鎖>の先端が穿ち倒した。
<鎖>を消しながら着地際の重騎士の死体を足下から出した<血鎖の饗宴>で消し飛ばす。
その<血鎖の饗宴>は拡げず直ぐに消す。坂は乱戦気味で眷属にハンカイたちは動きが迅速だ。<血鎖の饗宴>の無数の細かな血の鎖は範囲技で細かくコントールはできるが――もしもの場合に備えた。
相対した重騎士を魔槍杖バルドークの<断罪刺罪>で鎧ごと豪快に穿つ。
そのまま魔槍杖バルドークを下に傾け、坂を突き、体を魔槍杖バルドークで支えながら横にいた重騎士の頭部を魔槍ラーガマウダーで薙ぎ倒す。
ハンカイは後退しながら金剛樹の斧を振るい回す。
数体の重騎士を殴り倒すように吹き飛ばしながら戻ってきた。
代わりにブッチとサラとサザーが、出た。
ブッチも斧と盾を使い皿斬撃を喰らわせて吹き飛ばす。
その三人の横をユイとサラとキッカとサザーが出た。
やや遅れてビュシエが血のメイスを左右の手に召喚し、前衛組に加わって、相対相手の腕や頭部を的確にメイスで粉砕していく。
ビュシエ無双となって、聖鎖騎士団の顔色に怯えが見え始めた。
そこに、ユイが、
「わたしたちは【天凛の月】! 退くなら退きなさい――」
と言いながら左右のアゼロス&ヴァサージと口に咥えた神鬼・霊風を迅速に振るう。重騎士のハルバードを弾くと、一瞬で、その重騎士の腕と胴体が消し飛んでいた。
ユイは返り血を浴びずに左斜めに居た重騎士の肩を<黒呪咒刀衝鬼>ヴァサージで突いて鎧ごと肩を穿つ。
そして、サラが双反刀ラ・グラスを振るい、聖鎖騎士団の大柄の重騎士と軽装の戦士の頭と肩を両断して倒す。
「十番隊と八番隊に二十番隊までも全滅か……」
「なんたることだ……この強さ、本国のアンデッド魔族、死賢の絶対者リッチ・アブソルートを越えている?」
「本隊と団長たちに応援の連絡は出したんだな」
「あぁ、魔通貝でも連絡済みだが……」
「どうした?」
「あぁ、団長たちも複数の魔人たち遭遇して分断された。ハミヤ団長とパーミロ司祭様とキンライ助祭様は、強い魔人と対決しつつ本隊から魔人たちを引き離しながら、こちらに向かっているようだ」
「「「な!?」」」
「レングラット様もか?」
すると、俺をチラッと見た魔通貝を耳に嵌めているリーダー格の重騎士が、
「「「……あぁ」」」
と発言。
そこに聖鎖騎士団の増援が右手の路地から現れた。
「ハミヤ団長!!」
「「おぉ」」
「団長たちが来てくれた!!」
先頭にいる聖鎖騎士団は女性騎士で、団長なのか?
金髪の女性騎士は此方に寄ってきた。
俺はユイたちに目配せしてから、新手の女性騎士と聖鎖騎士団の前に出た。
黒虎も付いてくる。
その新手の女性騎士に魔槍ラーガマウダーを差し向け、
「……貴女が、聖鎖騎士団団長か。俺はシュウヤ、【天凛の月】の盟主だ。いきなり喧嘩を仕掛けられて戦ったからこの現状だ。貴女も俺たちと戦うか?」
女性騎士は蒼い双眸に魔力が集積、魔眼で俺たちを把握しようとしている。
同時に眉間に皺を寄せた。
「……そうよ、名はハミヤ……【天凛の月】は未知な吸血鬼集団だったってことか――」
聖鎖騎士団団長ハミヤは前進し、切っ先が輝いている聖剣を突き出してきた。
続きは明日。HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1~20」発売中。
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