千四百九十二話 峰閣砦の皆と記憶共有
峰閣砦の天守閣は広い。
俺の帰還に合わせて大楼閣の大広間にいた峰閣守衛隊たちが一斉に斧槍を掲げた。渋い。左右の柱の横の階段から弧を描くような形の階段から先は大楼閣のゲストルームに続いている。あの中にはまだ怪しい魔道具が設置されているんだろうか。
「ウォン! 主たち!」
魔皇獣咆ケーゼンベルスだ。
ゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡から出てきた俺たちをキラキラとした瞳で見ては、舌が出て息が荒かった。長い尻尾を左右に振って少し前に出ている。
それは大きな犬が仕事から帰った主人を〝待て〟の姿勢で待つ忠犬の仕草と似ていた。
「――ウォォォン! 聞いているぞ! 友と主よ! ギュラゼルバン討伐に成功し! メイジナが心配だが、闇遊の姫魔鬼メファーラと知記憶の王樹キュルハと肝胆相照らすとはな! 見事な魅力と外交だ!」
「おうよ、記憶を共有したら一発で理解できるが、メファーラ様のペットたちから<砂漠風皇ゴルディクス・イーフォスの縁>と<煉土皇ゴルディクス・ララァの縁>を得て属性も得た」
「ウォォ~ン」
ケーゼンベルスは頭部を上向けて遠吠えのような声を発した。
「「「「おぉ」」」」
「「――属性を得る!?」」
侍の格好をした峰閣守衛隊に、黒鳩連隊と【煉極組】の方々が驚いていた。
煉極組の組長ヨシタツと黒鳩連隊の隊長ソウゲンさんもいる。金色の鳩の印が付いた部隊もいた。
見たことがなかったが、黒鳩連隊の隠密部隊だろう。
監獄主監ルミコと上草影衆たちもいた。
面子的に会議中か。 細い煙管から煙を吸っていたレンは驚きながら、バーソロンたちとアイコンタクト。
サシィと光魔騎士ヴィナトロスと光魔騎士グラドとラムラントとリューリュとパパスとツィクハルたちは、帰還を祝福するように拍手していたが、各自、頷き合う。
明櫂戦仙女のニナとシュアノと、魔犀花流のイズチ、インミミ、ズィル、ゾウバチと、四腕戦士キルトレイヤと四腕騎士バミアルとアミラも拍手をしてくれていた。
マルアとエトアと光魔騎士グラドと光魔騎士ヴィナトロスにパリアンテ協会のコセアドもいる。
その皆の前には魔地図が中央に置かれた机がある。
レンたちも駆け足で寄ってきた。
峰閣守衛隊と黒鳩連隊に【煉極組】は近付いてはこない。
アキサダを連れているナロミヴァスたちも寄ってくる。
魔傭兵ドムラチュアの連絡役ミツラガにギリアムは拘束されていないから、ドムラチュアから俺たち側に付いたということかな。
「――にゃおぉぉ~」
「にゃァァ~」
相棒がケーゼンベルスに駆け寄る。
と、ケーゼンベルスの近くから銀灰猫が先に前に出た。
黒猫と銀灰猫が先に鼻キスを行う。
黒猫と銀灰猫は己の頬と頬に、片耳と片耳を合わせるように頭部と体もくっつけ合うと、互いの足を交互に前に出して、体を寄せ合ったままラブラブに歩く。
尻尾でハートマークを造れば、もっとラブリーだったが、そんなことはない。
そのままケーゼンベルスの近くに移動するとケーゼンベルスが体を小さくさせて自らの鼻を突き出す。相棒と銀灰猫はケーゼンベルスの鼻に自らの小鼻を付けた。
――三匹の鼻キス。鼻キスの誓いか?
紅茶の誓いのレベッカたちから、桃園の誓いの劉備と関羽と張飛の三国志……。
更に、三匹が斬るの時代劇を続けて思い出す。
「ニャァ~」
「ニャオ~」
「ピュ~」
「パキュゥ」
魔造虎の黄黒猫と白黒猫もトコトコと歩く。
銀白狼と子鹿も黒猫と銀灰猫の背後からトコトコとケーゼンベルスたちに近付いて体を寄せていた。
ルピナスとヒューイも、ケーゼンベルスたちの回りを旋回してから近付くと銀白狼と子鹿は、
「ワンッ」
「グモゥ~」
と挨拶をしていた。
ケーゼンベルスは皆を見て、シルバーフィタンアスとハウレッツを凝視し、鷹揚に狼の頭部を前後させてから、
「ふむ、アーレイとヒュレミは猫のようだが、魔造虎か。そして、話に聞いていた異界の軍事貴族のシルバとハウレッツだな、飛んでいる召喚魔獣と鷹も主が個別に使役していると分かる! 我はケーゼンベルスだ、今後ともよろしく頼む!」
「ワンッ」
「グモゥ~」
「ニャァ~」
「ニャオ~」
「ピュ~」
「パキュゥ」
「ンン、にゃおぉ」
「にゃァ~」
皆が、鳴き合い返事をして、体の匂いを嗅ぎ合い肉球タッチをしてはじゃれあう。
「ケーゼンベルス、浮遊しているマンタのような動物は法魔ルピナスだ。サセルエル夏終闘技祭で優勝した時に、大魔術師ケンダーヴァルでもあるフクロラウド・サセルエルからもらった。鷹は荒鷹ヒューイで大本は、ヒューイ・ゾルディックだった。東邦のサザナミで大暴れし、島と海を荒らした災厄級だったようだ、属性は水と闇だったが、眷属化の際に変化したかもな、で、<荒鷹ノ空具>を使えば、俺や皆の翼になれる」
「ウォォン! 分かった。ルピナスとヒューイ、よろしく頼む――」
「ピュ~」
「パキュゥ」
ヒューイはケーゼンベルスの背に乗った。
ルピナスは小さい二つの頭を回しつつゆっくりと体をケーゼンベルスに寄せていた。
銀白狼と子鹿は、
「ワンワォォォ~ン」
「グモッグモゥゥ~」
「にゃアァァ~」
銀灰猫との再会を喜ぶようにはしゃぐ。
互いに爪は出さない肉球と柔らかい毛と体を活かしたプロレスグルーミング合戦が始まると微笑ましさに溢れた。
ルピナスはケーゼンベルスから少し離れるように宙空を浮遊しながら「パキュ♪」と鳴いて、皆に水系の魔法をかけて癒やしてあげていく。ルピナスはマンタの体の端を前後に動かしながら、皆のことを抱くような仕種を繰り返していた。
そんなルピナスの頭部に銀灰猫が乗っては、地肌をペロペロとなめてあげていく。
ケーゼンベルスは「ウォン! 皆、我をモフるのだ――」と体を少し大きくさせながら横たわると、その大きい腹に皆が寄って、黒い毛の中へと突入していく。
黒毛と柔らかいお腹の反動を楽しむように、黒毛から頭部を出す黒猫と黄黒猫に白黒猫と銀白狼。やや遅れてハウレッツが頭を黒毛からぴょんと出していた。皆で、頭を出し入れしては、肉球で、頭をパンパン叩いていく。
ヒューイはケーゼンベルスの翼に変化しては鷹に戻ってを繰り返し、皆の頭部を突く遊びを行う。
ルピナスはケーゼンベルスの背に乗ってまったりしていた。
そういえば、ケーゼンベルスが雌ならおっぱいがあるかな。
動物たちの運動会は、ずっと見ていられる。
「シュウヤ様、ギュラゼルバンの討伐おめでとうございます」
「「おめでとうございます!」」
「おう」
レン・サキナガは、前と同じ、黒色が基調の着物ドレス。
腰の帯留めと帯揚げの太い紐にぶら下がる三つの魔刀は渋い。
薄紫色の布地の帯と白色の太い腰紐といい、露出している太股は魅惑度が高い。
やや遅れて、書類とポーションと魔酒を持つレン家の召使いたちも近付いてくる。
アキサダを連れているナロミヴァスと闇の悪夢アンブルサンと流觴の神狩手アポルは、鏡の前で片膝で床を付いた状態で整列していた。
銀灰猫は皆から離れて、俺の片足に頭をぶつけて甘えてきた。
その銀灰猫の腹を右手で掬って「ンンン」と肩に乗せる。
ゴロゴロとした喉の音に癒やしを得た。
さて、皆に、
「皆にも〝知記憶の王樹の器〟の液体を飲んで、俺の記憶を得て、情報共有をしてもらう。ナロミヴァスもだ、ケーゼンベルスもだな」
「「「「「「はい」」」」」」
「承知しました」
「分かっている、我は順番を待とう――」
とケーゼンベルスは香箱スタイルで待ちのスタイルに移行した。
頷いてから戦闘型デバイスから〝知記憶の王樹の器〟を取り出した。
「それが……」
「「「「おぉ」」」」
レンとバーソロンにサシィに、レン家の方々から、また歓声があがる。
「おう、記憶の共有が可能な秘宝。知記憶の王樹キュルハ様の秘宝を、正式に頂けた。対価は、俺たちと知記憶の王樹キュルハ様の勢力の同盟というよりは……闇と光の運び手の件で、昔から同盟以上の関係性が決まっていたのかも知れないな、では、操作するから暫し待ってくれ」
「「はい!」」
〝知記憶の王樹の器〟に<血魔力>を込める。
と瞬く間に器の中に神秘的な液体が満ちた。
その液体へ指を漬かすように入れて<血魔力>を送ると指先から出た無数の<血魔力>が俺の脳と直結しているようなミクロの神経網となって、神秘的な液体との融合が始まった。
――神秘的な液体の中に海馬のような模様が一瞬出る。
――脳のマッピングが神秘液体に投影された。
――記憶と記憶を結ぶマインドマップ的なモノが視界をジャックする。
セフィロトの木回路的で、樹状図的――。
自意識が無理に細断されたような感覚は慣れない――。
しかも、変な言語と不可思議な光景も混じるからな。
更に意識も連続的に神秘的な液体のミクロの中にダビングされたように飛び飛びとなる。
様々な記憶と匂いが連鎖していく、脳内の連合野と繋がっていると分かるが……。
無数の記憶と意識が、宇宙の銀河図地図を示すように樹状突起された神経網の枝先に紐付けされては展開されていく。神経網を紐解き伸ばしては、CRISPR-Casで切断しては、記憶と記憶を新たに結びつけるマインドマップ的な回路を整理整頓させる操作をスムーズに行った。
こうした記憶の操作は――俺を成長させているような感もあった。
〝知記憶の王樹の器〟はすげぇ。
このままだと、ラムラントの父のパセフティ件が知れてしまうから、どうするか。
が、いっか。
ポイラーシュたちが記憶の共有に使用していた器官の先端から伸ばしていた無数の繊維を互いに付けて絡み合わせて記憶を融合させていくやり方も、少し理解できたような気がしてきた。
が、俺が俺で……ないような……魔界セブドラの大地に根付くキュルハ様に関連した集団の意識と、個の自意識が綯い交ぜに成っている世界と融合してしまったような……いかん、俺は俺。
エヴァたちのおっぱいを思い出そう――よし、俺は俺だ、エロパワー強し――。
さて、〝知記憶の王樹の器〟に満ちた神秘的な液体を見つめ続けると取り込まれそうだからここまでにして――。
「バーソロンから順に――」
「はい!」
バーソロンは〝知記憶の王樹の器〟の液体を飲んでいく。
一瞬でバーソロンは<血魔力>に包まれた。
「あぁ――」
と血の炎に燃えているようなバーソロンの体を支えた。
「陛下……地下世界でがんばったのですね、神獣ロロディーヌ様の前身が神獣ローゼス様……血の契約の黒き環のお話は、世界の根幹を意味しているような氣がしてきました……」
頷いたが、バーソロンの頬の炎の印が強まっている?
気にせず、
「あぁ黒き環は惑星セラに幾つあるのか不明だが、幸であり不幸なモノ」
「……そして、闇遊の姫魔鬼メファーラ様と魔皇メイジナ様が体の一部を犠牲にし闇と光の運び手の装備を生み出し、魔槍杖バルドークの進化を促した……」
バーソロンはそう発言すると、また胸元に顔を押し付けてくる。
そのバーソロンの背を支えている片手の掌で、背中をマッサージ、ゆっくりと肩甲骨を撫でてあげていった。
「……あぁ」
感じたバーソロンは仰け反って、胸元を突き出す。
悩ましい表情を浮かべたままキスを求めるような表情を浮かべてから、ハッとして、慌てて両足をばたばたし始めていたから、ゆっくりと姿勢を元に戻してあげた。
そのバーソロンは、
「……あ、ありがとうございます、そして、つい先ほどですが、<筆頭従者>のノノたちにも〝知記憶の王樹の器〟で陛下の記憶を得て非常に嬉しかったと血文字がきました。わたしが直に迎えいれた眷属の<筆頭従者>のノノたちですが、陛下の記憶を得たことで正式に光魔ルシヴァルの一員に成れたと感じたようですね。わたしも陛下の記憶を得たので、心が躍る気持ちとなっています、うふふ」
「あぁ、俺も嬉しい」
記憶があろうとなかろうと、光魔ルシヴァルなら家族だが、そんなことは言わずもがなだな。
「ふふ」
と、まだ寄っかかったままだが、バーソロンに、
「バーソロン、立てるか?」
「あ、はい」
「では、次、サシィから順に頼む」
「了解した」
バーソロンに「パキュゥ~」と法魔ルピナスが挨拶するように寄っていく。
サシィは〝知記憶の王樹の器〟を受けとり、俺の記憶入りの液体を飲む。
「……あっ」
サシィも全身から<血魔力>を発した。
眩暈をしたように倒れかかったところを前に出て、サシィを抱っこするように抱きしめた。
「シュウヤ……」
サシィは陣羽織は着ていない。
単衣で程よい大きさの乳房をダイレクトに胸に感じて嬉しかった。
もう一枚羽織っていた衣服は、俺に合わせて脱いでいたので、俺に合わせてくれたんだろう。おっぱいは好きと分かってくれている。
サシィの鎖骨の窪みもくっきりと見えているし、体の温もりを得て嬉しかった。
サシィの熱い眼差しから、キスを求められていると分かるが、そのサシィも直ぐに周囲の視線を感じてハッとして妖艶な雰囲気を打ち消す。
黒髪に<血魔力>を纏わせるとパッと自然と髪形が整った。
あの辺りはキッカ的だ。
そのサシィの体から放出されている<血魔力>の中には、蛍と龍がくっきりと出現していた。
<筆頭従者長>に成ることで、<源左魔闘蛍>が<魔闘血蛍>に進化したが、その時よりも<魔闘気>系統が進化したかも知れない。
源左の戦旗と同じ九曜紋系統の<血魔力>が扱えるようになったかな。
俺は<血道・九曜龍紋>は使えるが……。
そのサシィは、
「……皆と同じ感想になってしまうが、凄まじい歴史と戦闘の連続だ。セラだけでも途方もない経験を積んでいる。バーソロンも注目していたが、魔槍杖バルドークの進化が気になるな……私的に魔斧槍源左と合う……のもあるが……」
とサシィの語りに槍の勝負をしたいといった雰囲気が感じられた。
サシィと勝負も、たしかに楽しそうだ。
更に、源左の<魔闘術>系統、<魔闘気>系統の一端は知りたいとは思っていた。
侍大将の玲我さんと武蔵さんの<魔闘気>は月のような紋様の魔力と日本風の『月読』『月冴』の文字が左の前方に浮いていた。
あれは格好良い。
山籠もりだろうと修業をしてマスターをしたいが……私欲は後回しだ。
「では、次は<従者長>ラムラント、〝知記憶の王樹の器〟の液体を飲んでもらう」
「うふふ、はい!」
ラムラントの笑顔が良い。
四眼に三腕のラムラントは、バリィアン族。魔族バリィアンだ。
サシィから〝知記憶の王樹の器〟を受け取ったラムラントは器に口を付け、器を少し傾けた。細い喉が動いてゴクッと音が聞こえた刹那――ラムラントを抱く。
背中の三腕の腕もだらりと下に垂れていた。一応根元のマッサージしてあげていく。
〝知記憶の王樹の器〟を片手で掴み、隣にいるヴィナトロスに手渡す。
ラムラントは数回体をビクッビクッと震わせていた。
そのラムラントに「起きているんだろ?」と耳元で呟いたら、「ひゃん――」と感じていたような恥ずかしさが出たような返事の声を寄越してくれた。
可愛い、そのラムラントに立ってもらった。
「シュウヤ様と神獣様の血の契約は、神秘的です。黒き環は、魔界セブドラにはありません。セラは、特別ながんせきわくせいなのですね」
「あぁ、特別は特別だろうな、魔界、神界、邪界、冥界、エセル界、と他の宇宙次元と近い星を有している宇宙次元自体が特別かもだ」
「……はい、魔塔ゲルハットなど魔塔が沢山存在しているセナアプアは、神々の神の魔法力、式識の息吹が薄まっていますし、超巨大な浮遊岩が無重力のように浮いている。ビーサさんとアクセルマギナさんの会話も少し興味を覚えました」
「あぁ、セナアプアはたしかに。空島などはまだ行ったことがないが、魔塔ゲルハットがある上界は、巨大な浮遊岩だからな」
「はい、皆さん、まったく気にしていませんが、ですから、そこで働く方々が少し心配です魔塔ゲルハットには、ペグワースとシウちゃんたちがいます」
ラムラントは結構優しいな。
「あぁ、たしかに。だが、たぶん、大丈夫なはず」
「ふふ、はい。そして、〝闘霊本尊界レグィレスのネックレス〟と〝旧神法具ダジランの指具〟を使用した後の物語が凄かったです、〝闇遊ノ転移〟の入手に闇と光の運び手装備の入手も驚きの連続でした。まだ見ていない、四神蓬莱ノ型と闇光影運ノ型が気になります」
「いつかは、その型を披露しよう」
「ふふ、はい!」
ヴィナトロスに視線を向けると頷いてから液体を飲んでいく。
直ぐにそのヴィナトロスに寄った。
ヴィナトロスも同じく倒れ掛かった。
「ヴィナトロス――」
を片手で受け止めながら〝知記憶の王樹の器〟を右手で受け取り、エトアに渡した。
「……はい、<血魔力>入りの記憶は濃密です……。そして、皆と同じ感想となりますが、やはり、三神の大協定預言が気になります」
頷きつつヴィナトロスに<血魔力>を送り立ってもらった。
「あぅん……」
そのヴィナトロスと目を合わせて、「大丈夫だよな?」
「は、はい」
と頬を朱に染めているヴィナトロスとジッと見つめ合った。
ヴィナトロスは内股でモジモジし始めて、「シュウヤ様の黒い瞳を見ると切なくなります……」
「すまん」
「あ、見ていてください」
「あぁ、こうか? 三神の大協定預言に四神の預言書マーモティニクスは気になるよな」
「ふふ、はい、わたしたち悪夢の女神の三姉妹の大いなる敵の一つが光神ルロディスですが、もう敵ではないですね。そして、古い蒼炎神エアリアルの登場にも驚きを覚えましたよ、その件で、ヴァーやベラには悪いですが、闇遊の姫魔鬼メファーラ様に軍配があがったように思えます。魔槍杖バルドークと闇と光の運び手装備はシュウヤ様に似合う、完璧に近い。獲得なされた召喚魔槍・鳳凰ラーガマウダーも素敵すぎる……」
ヴィナトロスは召喚魔槍・鳳凰ラーガマウダーが好みか。
魔槍ラーガマウダーだけでも炎系のスキルが充実しそうだし、使っていきたいところではある。
そのことではなく、
「闇遊の姫魔鬼メファーラ様は光にも通じていた。更に光神ルロディス様と蒼炎神エアリアル様とも今後絡んでくるだろうし、ヴィナトロスにも、光魔騎士として受け入れてもらうしかない」
「勿論です。光魔ルシヴァルの眷属として光側も受け入れている。シュウヤ様にはヴァーもベラも、分かっていて付いたのですから……ですから、いずれは、悪夢の女神の絆が<聖夢祝>に変化するかもですよ」
「え、悪夢の女神は悪夢の頂点のような印象で、セラの悪夢が、ヴァーミナたちの力になっているとかあるんではないか?」
「はい、ありますが、夢という名があるように悪夢だけではないのです。それに夢魔世界という異次元世界もありますからね? ですから光魔ルシヴァルの存在で悪が消え聖か、性? 淫夢や孕みの女王など、うふふな変化が魔界セブドラの女神の称号名を変化させるような事象が起きるかも知れませんよ」
思わず、笑うが、
「はは、しかし、孕みの部分で、お腹を触るのは、止めてくれ」
「ふふ、え、シュウヤ様の御子を狙う眷属は多いのですよ?」
そのヴィナトロスの言葉に、全員が俺を注視してきた。
「子供か、できたら嬉しいが、今のところはできない」
「光魔ルシヴァルの宗主の立派な一物と抜群の精力に似合うだけの……性器に卵もまた特殊に準備を重ねなければいけないのかも知れませんね、クナが色々と仕込んだようですが、それでもまだまだ足らないようです」
「ま、いつかだろう、俺もやることがあるからな」
「はい、黒魔女教団の救世主の闇と光の運び手。更に<光の授印>を持ち、隠天魔の聖秘録とも合います。しかし、それは、魔界神界の一神教に近い勢力や考えを持つ方々から敵視される。戦神は勿論ですが光神教徒の連中も同じ大変な道のりが待っている」
「あぁ、がんばるさ、闇と光の運び手としてな、そして、ヴァーミナ様たちを助けられる時間になったら助けに行く」
「あ、はい!!」
そこでエトアからリューリュとパパスとツィクハルと明櫂戦仙女のニナとシュアノたちが〝知記憶の王樹の器〟の液体を飲んでいく。
ケーゼンベルスにも飲んでもらった。
「ウォォォン! セラとは! 面白そうである!! ウォォォォ~ン」
と吼える言葉が多くて聞き取りずらいし少しうるさいから、皆の感想が聞こえないことが多くなった。泣いている悠久の血湿沼ナロミヴァスは、ずっと俺を見たままだ。
闇の悪夢アンブルサン、流觴の神狩手アポルアも、
「閣下の槍使いとしてのフィロソフィーは凄まじい!」
「我らは閣下に最大限の幸福を!」
彼女たちも忠誠度MAXか。
期待に応えられるようにがんばろう。
そして、魔犀花流のイズチ、インミミ、ズィル、ゾウバチと四腕戦士キルトレイヤと四腕騎士バミアルとアミラとマルアと光魔騎士グラドが飲んでから、各自、凄まじい勢いで感想を述べていく。
体が震えているナロミヴァスに、
「では、戻る準備はできているな。アキサダはレンたちに預けてもらう」
「はい! 閣下と共にオセべリア王国を御してみせましょう」
「おう」
エトアたちを見て、
続きは明日。
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