千四百八十九話 ルマルディたちと記憶の共有
「それを飲めば俺と記憶を共有できる」
と〝知記憶の王樹の器〟をルマルディに渡して、
「ワォォン!」
「グモゥ~」
足下にきた銀白狼と子鹿を抱き上げる。
「――元気にしてたようだな」
と言いながらとシルバとハウレッツをむぎゅっと抱きしめた。柔らかいし、体の温もりと獣の匂いがたまらない――二匹の荒い呼吸も可愛い。
心臓の鼓動も激しかった。そんな二匹を<導想魔手>の上に載せて交互に撫でてから<導想魔手>を消して床に降ろす
そのシルバーフィタンアスとハウレッツに異界の軍事貴族仲間に、
「今、メトは魔界の【レン・サキナガの峰閣砦】にいる。ナロミヴァスを連れてくる時に銀灰猫をここに戻すかも知れない」
と銀白狼と子鹿と皆に言うが、記憶を共有していない皆はまだ分からないことだらけだろう。
「にゃァ~」
「にゃォ~」
足下に連続とした肉球パンチを繰り出してくる黄黒猫と白黒猫も抱き上げて、急ぎ<導想魔手>を再発動、その上に載せた。
<導想魔手>上で自然とゴロニャンコする二匹。
そんな頭を撫でて片耳を引っ張る。
前足の肉球のマッサージをしながら、お腹を吸う。
ついでに腹と背中を撫でて後ろ脚の肉球をチェック。
最後に、また腹の猫吸いを行った。
「連続の猫吸いが出た!」
「面白い!」
「はは、久しぶりだからな!」
「にゃァ~」
「にゃォ~」
黄黒猫と白黒猫は『もっと撫でろにゃ~』という態度だったが、<導想魔手>から飛び降りた。
黒猫と銀白狼と子鹿が下りてきた黄黒虎と白黒猫の頭を舐めていく。
黄黒虎と白黒猫も黒猫の体を舐めてあげていた。アメロロの猫魔服が、体から時折出現するからハウレッツが驚いて転けている。面白いが、グルージングは家族愛だ。
「――神獣ぅ! 俺にもハグさせろ~」
アルルカンの把神書は開いて黒猫を出迎えるように突進。
銀白狼と子鹿が横に退いた。
黄黒猫と白黒猫から離れた黒猫もアルルカンの把神書に向かう。
とアルルカンの把神書が開いた頁と頁に挟まれるように抱かれるまま大人しくしていた
「ンン、にゃ、にゃ~にゃごぉ――」
「ぬごぁぁ」
途中から、厚い表紙を噛む。
歯磨きをするように噛み噛みを行いつつアルルカンの把神書を押し倒して、表紙の出っ張りを噛みながら、表紙を引っ張りあげるようにアルルカンの把神書を宙空で振り回す遊びを始めていた。
相棒は己の頭部を回している。
アルルカンの把神書は宙を回りながら「ぬあぁぁぁ、これだ、これなんだァァァ」と遊ばれることを期待していたような奇声を発していた。と、床に落ちたアルルカンの把神書はバタリと倒れた。
その上に乗った黒猫が「にゃ、にゃごぉ~」と鳴いてドヤ顔を俺たちに向ける。
「ふふ、ロロちゃんの勝ちですね~」
「はい♪」
「ふふ、楽しそう~」
エトアも皆と打ち解けた様子だ。
「アルルカンの把神書、あっさり倒されるのまき」
「ちげぇ、神獣の肉球の感触を得ているだけだ」
アルルカンの把神書はの発言通りに本の表紙に肉球が生まれていた。
「にゃ、にゃお~」
相棒の前足にポンポンと叩かれていくアルルカンの把神書は「ハハハ、神獣よ、もっとリズムに乗るのだ」と楽しそうだ。
「ンン、にゃおぉ~」
相棒も嬉しそうだ。
ルマルディはまだ〝知記憶の王樹の器〟の液体を飲んでいない。
「皆、転移陣のルームに集まってもらって悪いが、少し手狭だろう、下のリビングで寛ぎながら、その〝知記憶の王樹の器〟の液体を飲んでもらおうか」
「あ、はい、〝知記憶の王樹の器〟を飲めば知らなかったシュウヤさんのことが分かる……」
ルマルディは記憶の共有に少し躊躇しているようだ。
シウたちは、
「楽しみ~♪」
「「はい」」
「「承知」」
転移陣ルームからペントハウスの二階の渡り廊下に出て振り向く。
と、まだルマルディたちは転移陣ルームの中で〝知記憶の王樹の器〟の中の不思議な液体を眺めている。
「ルマルディ、中身の液体は下で飲もうか」
「あ、はい、皆も下のリビングで飲みましょう」
「「「はい」」」
「おう」
「不思議な液体だな!」
「了解~♪」
「はい~♪」
皆、転移陣の部屋を出た。
振り向き直して渡り廊下の手摺りに手を当てながら、硝子の外を見やる。
植物園は変わらず、内と外にも色々な植物が植えられた鉢が置かれてある。
法魔ルピナスとヒューイがいるのが見えた。硝子の前でゆっくりと飛んでいる。
廊下から飛び降りて斜め下のペントハウスの出入り口に向かった。
硝子を開けると、法魔ルピナスとヒューイは直ぐに寄ってきた。
「パキュルルゥ――」
「ピュゥゥ~」
ヒューイはルピナスの上に乗っていた。ルピナスは俺に突進。
灰銀色の波のような魔力を俺に送ってくれたから、俺もお返しに血魔力を送るとルピナスは頭頂部を寄せてきた。
マンタのような大きさだから結構迫力があるが、可愛い。撫でながら、
「――ヒューイとルピナス、元気にしてたか?」
「ピュゥ~」
「パキュゥ♪」
法魔ルピナスの頭頂部の小さい二つの突起が周りに回る。
二匹を連れて、リビングのソファがあるところに集まっている皆に、
「ナミに、ハンカイにカットマギーでもいいが、ゲンガサやルシエンヌたちはここにはいないのか」
「ゲンガサたちは、はい、地下です。まだしばらくは掛かりそうです。ルシエンヌたちは闇ギルド、十二大海賊団や他の海賊の連中の雑魚の掃討と、ハイゼンベルク商会の魔調合師が残した売人たちの調査と、他国のスパイ組織の繋がりなどの調べもあって、直に、ここに戻ってくるはずです。トロコンたちは用心棒と見回りで、忙しいです。現場の現場です」
「そっか」
皆、それぞれに役割があるか。
現場での叫びは、若い警官がマイク片手に映画の名台詞にもあったな。
「……ドミタスたち裏仕事人たちと【魔塔アッセルバインド】のリズちゃんたちも、ここにはいないよ、ボクは誘ってるんだけどね、【ペニースールの従者】と組む仕事があるとか、つれないのさ」
とナミとカリィから報告を受けた。
カリィは、リズが好きなのか?
相棒が乗っているアルルカンの把神書の表紙に肉球の印が付いている。
前にもあったな。
「では、シュウヤさんの記憶を得ます。〝知記憶の王樹の器〟の液体を飲ませて頂きます……」
「おう」
蒼い双眸には決意のような覚悟がある。
男の性の多少記憶にはモザイク処理を施したつもりだが……。
まぁ、すべてを楽しんでくれ、という気分でアイコンタクト。
ルマルディは微笑むと、深呼吸を行う。
思わず、頷いた。ルマルディは瞳だけで『はい』と俺に言ったような笑みを見せてから〝知記憶の王樹の器〟の皿に口を付けて、液体を飲んだ。
と、直ぐに恍惚とした表情を浮かべながら倒れそうになった。
そのルマルディに寄り添う。体を支えてあげた。
両手で持っていた〝知記憶の王樹の器〟が震えていたから器を持った。
〝知記憶の王樹の器〟をビーサに手渡した
ルマルディは、
「……あっ、あぁ……喉が乾いて黒寿草と 水の発見は凄い嬉しそうでした。ロロちゃんとアキレス師匠の出会いに修業の毎日に冒険者として闇ギルド、魔槍杖バルドークがここまで成長するのは古代竜の魔竜王の素材が良かったのもありますが、ザガとボンの腕も……なるほど……小さなジャスティスがシュウヤさんの心根でもあるのですね……それが皆さんの心にも正義を宿らせている……」
と俺を見ながら呟くルマルディは泣きながら、どこか虚ろげとなった。
一瞬、片目が煌めいて、ヘテロクロミアとなってから、また、虚ろとなった。
気を取り直すのに少し時間が掛かるか。
ハンカイと相棒乗せたまま浮遊しているアルルカンの把神書にも、
「これで記憶共有が可能だからな」
「うむ、ルマルディの瞼が震えているが」
「あぁ、ルマ、大丈夫なのか?」
「……平気と、言いたいけど、今は静かにさせて」
と俺の記憶の流入が激しいかルマルディはアルルカンの把神書を払うようにふらふらと前に出て、そのまま近くのソファに倒れ込むように座る。
「よっほどの体験か」
「うん、魔酒を飲めば落ち着く」
とルマルディは、机の魔酒入りのコップ口に運んで飲んでいた。
「では、次はわたしが」
「おう」
<筆頭従者長>のビーサが〝知記憶の王樹の器〟に口を付ける。俺の記憶入りの液体を飲むと後頭部の長細い三つの器官から桃色の粒子が噴出した。
と、俺を見ては数回頷くだけで落ち着いている。
「……なるほど、これが選ばれし銀河騎士マスターの歴史ですね。槍使いのマスターのマスターは<導魔術>の使い手でもあると……強そうです。ゴルディーバの里の周囲の施設も面白いです、古のドワーフが造り上げた品々に【修練道】……そして、クナとの出会いは劇的ですね……ゼン・ゼアゼロが持っていた戦闘型デバイスがここからとは、そして、迷宮都市ペルネーテの地下オークションからの入手……この惑星セラに辿り着いたゼン・ゼアゼロは、ペルネーテの迷宮に挑んだ結果なのか……それとも邪界ヘルローネに転移していた結果なのか謎です。そしてマスターらしく魔界王子テーバロンテを討伐に、<血道第五・開門>と<血道第六・開門>をおめでとうございます、更に光魔武龍イゾルデと姉妹になりそうな乾坤ノ龍剣レガランターラの入手に〝樹海道〟を利用した<樹界烈把>が可能な眷属の<光魔王樹界ノ衛士>ルヴァロスは素晴らしい……」
とハキハキと色々なことを語る。
俺も記憶では、戦闘型デバイスはちょくちょく弄っていたから気になるか。
ビーサに、
「眩暈のようなものはないようだな」
「はい、記憶の共有は慣れています」
なるほど、さすがは銀河戦士の超戦士ビーサ・ファガル。
「質問だが、銀河帝国やナ・パーム統合軍惑星同盟の魔科学技術による記憶共有はあるかのかな」
「はい、ハード、ソフト、スキル、なんでもありです」
なんでもありか。
「詳しく聞かせてくれ」
「記憶改変はポピュラーで、記憶の他に脳機能を向上させるようなナノスパイスのドラッグ系統は、どこの星系でも流行っていました。有名な記憶入りナノスパイス魔薬などの売買が多いですね、ナノスパイスも様々ですが、得意分野を恒久スキルにすることが可能なナノ神経も売買されていましたよ」
「へぇ、俺が導入した遺産高神経のような神経も売られているのか」
「マスターが対応できた遺産高神経はかなり特別です……他にはないはず」
「そっか」
「はい、技術者も相当高レベルを求められる。高度研究所で秘密裏に開発されていた神経系統は非常に高価ですね……帝国や同盟の軍人でも、特殊な神経が埋め込る場合は稀ですから」
「へぇ、記憶改変、記憶改悪に人権侵害などもありそうだな」
「はい、様々に。広大な宇宙ではナノセキュリティが普遍的に拡がっていた&常にアップデート&ダウングレートする流れがあったのであまり意味がないですが、危険なのは、渡航が厳しく禁止されている星系内です。銀河帝国やナ・パーム統合軍惑星同盟の政府や国際組織が、不正規に国民を弾圧するための社会実験を無断で行う星系がありました。そういう星系が外の星系に洩れたら、ただちに罰せられますが、銀河帝国やナ・パーム統合軍惑星同盟の支配力が及ばない地域もあるので、そういう場合は悲惨ですね」
「へぇ」
アクセルマギナも同意するようにビーサ専用のBGMを流す。
宇宙文明の情報はビーサとアクセルマギナから時々聞くが、面白い。
続いて、カットマギーも〝知記憶の王樹の器〟の液体を飲む。
「……セラの地下も広大か……が、やはり槍使いの根幹はここか。アキレス師匠とゴルディーバの里があるから、今のわたしたちがあるんだねぇ……冒険者として槍使いが大成していく記憶は実に面白いよ、あ、ユイから聞いていたが、ヒュアトスの組織を一日で潰したんだねぇ、ハハ、サーマリア王国もどうなるか……」
「おう」
「戦闘型デバイスと連動した、遺産高神経も先ほどの会話から分かるが、ナ・パーム統合軍惑星同盟と銀河帝国の組織が空、宇宙にいるってのも不思議だねぇ……盟主の記憶を見ると、狂言教の奴らが異常に小さく思えてくる」
「あぁ、カットマギーもくるか? ペルネーテに」
「いくさ」
「了解」
と次にペレランドラが飲む。
「あぁ……なんて経験なの……シュウヤさんは<鎖>を最初がんばってたのですね……」
と呟くと、<血魔力>を全身から発して自然と浮く。
「……地上に出て冒険者に……あぁ、なるほど……シュウヤさんとエヴァたちにあぁ……地下にまた……神獣ロロディーヌ様の偉大さが分かります。魔造虎ちゃんたちはここで、あっ……このセナアプアにくるまでに相当の……」
と言いながら<血魔力>で色々な魔魚のようなモノを幾つも生み出していた。
陰陽太極図のような円盤の武器も幾つか浮いている。
とペレランドラは背筋を伸ばし体を痙攣させて「あ、あぁ……」と豪快に失神。
オシッコがじょばじょばと心配になるほどだった。
「お母さん!」
俺もだがドロシーも直ぐにペレランドラに寄った。
ペレランドラは、俺を見て、「あぁ、シュウヤ様……良かった……シュウヤ様の記憶入りの液体を飲み得て……わたしは<魔念大魚>と<魔殺方魚>と<洗脳魔魚・声>を得ましたわ……」
「「「え!」」」
俺もだが、皆が驚く。
ペレランドラは〝知記憶の王樹の器〟の俺の<血魔力>入りの記憶を体感してスキルを得た。
<従者長>のペレランドラは今までの戦闘タイプではないのことも関係がある?
「おめでとう、ペレランドラ、交渉などに使うスキルだろうか」
「はい、色々と、<魔念大魚>は、血魔力の大きい魚を衝突させることもできますし、透明化させながら操作も可能で、その<魔念大魚>の視界と共有し、<魔念大魚>で見た相手を暫く追跡も可能になります。更に、<魔念大魚>で追跡した相手を<魔殺方魚>で攻撃もできる。<魔殺方魚>は血魔力の結界術のようなスキルです。<洗脳魔魚・声>はそのままで、スキルを発動したら、わたしが発した言葉に<血魔力>が影響し、様々なプラス効果が望める。交渉時では、わたしの交渉が有利になります」
「なるほど、素晴らしい、上院評議員ペレランドラなだけはある。明日行われる地下オークションでも使えそうかな」
「たぶん、しかし、カザネたちとの付き合いもありますし、多分弾かれるような仕組みが施されるはずですよ」
「あ、そりゃそうか。はは」
「ふふ、スキルありなし関係なく出席予定でしたのんで、後ほど向かいます」
「了解した」
そうして、皆順番に〝知記憶の王樹の器〟に入った液体を飲んで記憶を共有していった。
ザフバンとフクランのドワーフ夫婦は、大泣きとなって、俺に魔塔ゲルハット内にある【アグアリッツの宿屋】で特別なご飯を作ると宣言。
カリィも片眼から涙を流して、「ボクとの出会いがこんな変態に思われていたなんて……うぅ……心外だァ。でも、ボクたちを、受け入れてくれた……嬉しい……」と発言、涙を流していることに皆が驚いていた。
隻眼のビロユアン、ラタ・ナリ、ラピス、クトアンも、それぞれに涙を流しながら、
「カリィ殿は、シュウヤ様と戦って生きて、眷属化ですからね、めずらしい場合と理解しましたぞ。そして、シュウヤ様の槍使いとしての経験は魔竜王バルドーク討伐が、ほんの序章とは」
「「「はい……」」」
「「……」」
「天凛堂の戦いに絡むハンカイ殿とシュウヤ様の絡みには、こういう理由が……」
「あぁ、しかし、シュウヤも深いな。槍武術は毎日努力しているからの今の<刺突>があると分かる」
「……闇遊の姫魔鬼メファーラ様との邂逅を体感できるとは!! 茶トラのリックン、ラン、トマーをシュウヤ様の眷属にしてもらいたい!!」
「自分ではなくて、愛猫をかい!」
「あぁ、愛しているからずっと生きていてほしいんだ」
「「……」」
「そうね、ビロユアンの気持ちは分かるわ」
「……ふふ、うん、分かる」
「はい、わたしも」
ディアとドロシーに皆も納得したように頷いている。
「にゃ~」
ビロユアンの愛猫を思う気持ちは相棒も同意したように鳴いている。
それは、俺もだ。ゴロゴロとした響きとお腹の温もり、猫それぞれに個性、性格、意識がある。
ビロユアンは、
「それに皆もシュウヤ様の記憶に見ただろう、闇遊の姫魔鬼メファーラ様の周りにいた魔猫たちの集団を! あの魔猫たちは皆、神格を持っているような魔猫集団にちがいない、スーパーCat集団だった! シュウヤ様も、<砂漠風皇ゴルディクス・イーフォスの縁>と<煉土皇ゴルディクス・ララァの縁>を得られた、魔猫様を特別に眷属にする能力をいつか、闇遊の姫魔鬼メファーラ様から授かるかもしれない!」
そして、アルルカンの把神書の番となった。
飲む際に、表紙に口のような物を幾つか出している。
その中に液体を注ぐと、アルルカンの把神書は、「オォォォ――」と表紙の口が消えて眼球が幾つか出現し口から得体の知れない物体が出現しては消えていた。
そのアルルカンの把神書は、俺を見るように眼球を表紙に生み出して、
「まさに、主じゃねぇか!」
「おうよ」
「ここに来る直前に、サイデイルで何かの祭りが行われたフシがある、怪しいぜ。で、<魔音響楽・王華>を楽しんでは、戦神ツユキラ様の<戦神流・厳穿>を獲得とか、やることが普通じゃねぇ!」
祭りとは、プライバシーに配慮した面だな。
だいぶ消したからなぁ。
「はは、ついさっきの出来事だ」
「あ、あぁ、では、闇と光の運び手装備を見せてみろ!」
「おうよ」
闇と光の運び手装備を展開させる。
砂漠烏ノ型から光魔矛ノ型に切り替えて、蓬莱飾り風のサークレットと額当てと面頬装備に戻した。
「おぉ、兜が変化を外から見るのとは記憶で分かっているのでは、違うな。キサラに皆の顔が驚きに満ちていたのも納得だ。そして、古の救世主伝説が本当だったとは……」
「ですね、黒魔女教団の闇と光の運び手の伝承は本当でした」
「はい、三神の大協定預言の闇遊の姫魔鬼メファーラ様と知記憶の王樹キュルハ様と光神ルロディス様。更に、四神の預言書マーモティニクスでは、蒼炎神エアリアルとも繋がりがある。キサラ様とレベッカ様はそれに関わっている」
「凄すぎるお話、わたしはキサラ様とレベッカ様ともよくお話をさせて頂いてましたが……ちょっと恐縮してしまいます」
「あぁ」
アルルカンの把神書は、少し浮遊し、
「何より凄いのは、黒魔女教団の伝説を本当に行える。それを行える立場ってのが凄すぎるんだよ」
「「「……」」」
皆、頷く。
「それもだ、闇遊の姫魔鬼メファーラ様の手助けをしてだぜ?」
「二カ所の傷場だな。どちらにせよ闇と光の運び手だ」
「あぁ、メファーラの祠か、黄金都市ムーゴか、彩湖都市の地下にあるだろう傷場の防衛よりも、主たちは魔界側の闇遊の姫魔鬼メファーラ様と狩魔の王ボーフーンが争っている傷場の争い参加する予定のようだからな。勝利すれば、その傷場からセラの魔境の大森林に出られる」
頷いて、
「おう、傷場の支配権は闇遊の姫魔鬼メファーラ様に譲るから神格も大丈夫だ」
と発言した。
「神格が肥大しても、すでに、その神格でさえコントロール手段の算段が付いていることもすげぇ……」
「まだまだ先のことだがな、で、ハンカイを<筆頭従者長>に誘っていることだが」
「分かってる。勿論、なるぞ。が、今はナロミヴァスを優先していい、公爵が光魔ルシヴァルとなれば、第二王子ファルスよりもナロミヴァスのほうが重要になる」
「了解した」
「地下オークションに皆が出るなら俺たちも先にペルネーテに行っておこう」
「はい」
ハンカイとルマルディもペルネーテに来るか。
そのルマルディに、
「ルマルディ、両親の仇だが、無事に解決して良かったな」
「はい!」
「その件に【天凛の月】が貢献できたことは嬉しく思う。だが、個人的には、その戦いに参加したかった」
「その気持ちだけで十分です。魔界セブドラ側も予断を許さない状況でしたから、それに、シュウヤさんは【天凛の月】にユイやレベッカにクレインたちを残してくれました」
「あぁ」
「評議員ヒューゴ・クアレスマと敵対関係だった上院評議員テクル・ホーキスルの戦力は、わたしとアルルカンの把神書だけでは絶対に崩せない戦力でしたから。そんな両親の敵は空戦魔導師ベナトリクに【運び屋・イチバル】のメンバー以外にもいた。そんな面子を、誰一人として逃さず、すべて果たせたのは、【天凛の月】のお陰です。感謝しています」
「おう、良かった」
そこにエレベーターの扉が開くように浮遊岩からルシエンヌたちが現れた。
イフアンに副長テアルビたちも一緒だ。【天凛の月】のユニフォームが似合う。
聖剣も腰に似合う。
「あ、シュウヤ様!」
「よう、早速だが、〝知記憶の王樹の器〟の液体を飲んで、記憶の共有をはかりたい」
「あ、はい!」
と、一人前に出たルシエンヌが、〝知記憶の王樹の器〟を受けとる。
闇遊の姫魔鬼メファーラ様の言葉に出てきた夢魔の杖についても情報共有もできるだろう。
続きは明日。
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