千四百八十三話 レガランターラの故郷の話
「妾はなんという凄い御方の従者に成れたのだ……シュウヤ様は竜鬼神グレートイスパルから洗礼を受けている! 玄智の森にて大眷属の光魔武龍イゾルデを得てを神界セウロスに戻した……水神アクレシス様の約定、神勅を行った偉大な御方――」
「ん」
「龍族のレガランターラには、心にきちゃうのも分かる」
泣いているレガランターラを支えるエヴァたち。
そのまま少ししてから、レガランターラに、
「では、ちょいとアイテムに戻ってもらう」
「は、はい」
俺の記憶を共有したレガランターラに乾坤ノ龍剣になってもらい戦闘型デバイスに仕舞う。戦闘型デバイスの右腕の真上に、立体的に浮かぶアクセルマギナたちの周囲にアイテムのアイコンが無数に浮かぶが、新しく――。
new:乾坤ノ龍剣レガランターラ×1
とあった。戦闘型デバイスに仕舞える事も改めて確認。
デュラートの秘剣の<光魔ノ秘剣・マルア>とも似ている。
直ぐに乾坤ノ龍剣レガランターラを右手に出した。
「少し試す」
「「はい」」
皆の顔色を見てから右に低空を飛ぶように跳躍し地面に着地――。
精霊樹の根が叩いていた地面は硬い……重心を少し下げて右腕を突き出すように斜め右前に突きの<黒呪仙炎剣>を繰り出した。
と乾坤ノ龍剣レガランターラを引き<乾坤ノ龍剣レガランターラ使役>を意識して龍人の姿に戻るように念じる――。
と乾坤ノ龍剣レガランターラは直ぐに龍人の姿に戻って目の前に現れた。
和服が可愛いレガランターラは、「主様! ただいまです!」と会釈。
「おう」
和服の胸元には光魔ルシヴァルの模様がある。周囲には、陰陽太極図と似ている魔力の模様が浮き上がっていた。黒猫がその魔力の模様に鼻先を付けてフガフガと匂いを嗅いでいる。黒猫の鼻息で、前後に揺れる陰陽の模様が面白い。
ヴィーネは、
「デュラートの秘剣に変化をする仙妖魔のマルアを彷彿とさせますが、黒い髪を活かした変身方法とは異なります。レガランターラの龍族の角と綺麗な人肌の色合いが一瞬見えました」
と質問気味に聞いていた。
レガランターラは、ニコッと微笑んでから、
「はい、龍族は、仙人や仙女と似ているところも多い。ですが龍族には<龍言語魔法>もありますし、いずれは妾も龍に変身が可能……ですから、仙妖魔とは当然異なります。そして、乾坤龍族が得意な<剣化>と<槍化>も様々です。成長によっても多大に変化を遂げます」
「環境で変化か、龍族について質問がある」
「はい」
「神界と魔界の争いだが、セラもあるから龍族も多種多様と判断しているが、どうなんだろう、敵味方の区別のような、宿敵な存在はあるのだろうか」
レガランターラは、ビアのガスノンドロロクン様が宿る剣をチラッと見て、
「はい、龍族によってですが、あります。更に神界も一枚岩ではない、愛憎などの感情が絡むことがあるので単純ではないです」
なるほど。
頷いた。
「セラもあるし、二元論では語れない面もあるか」
「はい、神界と魔界に龍族は、人族と魔族と秘かな結びつきもあるんです。玄智の森の分離も元は恋バナです。うふふ、あ、でも上手くいったお伽噺は結構あるんですよ……」
「へぇ」
「ただし、恋人と愛し合う人族や魔族と神界の者が必ずしも上手くいくとは限らない……」
「それもそっか、魔界と神界の隔たり、狭間の隔たりはないと聞いているが……結構な間かな」
「そうですね、近いようで遠い場所もありますし、滅茶苦茶近く隣り合う場所もありますよ。ですが、黄金比を崩すような神の支配力が強くなっている地域となれば、当然に、〝神殺しの蒼き連柱〟や〝神殺しの紅蓮なる連柱〟に〝魔神殺しの蒼き連柱〟と〝魔神殺しの紅蓮なる連柱〟が発生する可能性も高くなる。その影響もあるので、争いが起きやすい運命にあるのは、未来永劫変わりません……」
……〝神殺しの蒼き連柱〟や〝神殺しの紅蓮なる連柱〟か。
「俺は〝魔神殺しの蒼き連柱〟を【バーヴァイ地方】で起こした」
「はい、主が神界セウロス側として魔界王子テーバロンテを倒した。魔界の神格を倒した証拠、神界側の勢力への恩恵が一時的に増した現象で、神界側の神の魔法力、式識の息吹が増して、作物や採取物に影響すると言われています。また、魔界と神界の次元界に作用し、黄金比を崩すような神の支配力が強くなっている地域ほど、主が起こしたような〝魔神殺しの蒼き連柱〟や〝魔神殺しの紅蓮なる連柱〟が起きやすくなるのです。そして、現在の【バーヴァイ地方】は、魔界王子テーバロンテが消えた反動で、神界セウロス側の神意力が、魔界セブドラの次元を傾けさせている現象と言えるかもです。更に再び【バーヴァイ地方】を起点とした周辺地域の支配をその宇宙次元ごと狙い環境と因果律を己の物に変えようとする神格持ちが現れない限り……〝永遠の均衡の黄金比〟が、その地方に安寧を齎すと言われています。永い目で見れば、徐々に均衡に戻る時間の真夜ですが、それでも、神界側では吉兆と言われていました」
様々な意味での吉兆だろうな。
「神界側では吉兆か……では、俺が神格を得て、【バーヴァイ地方】を起点とした周辺地域の支配を宇宙次元ごと狙った場合、その地域の環境と因果律は、俺のなすがままに?」
「はい、膨大な力が得られるでしょう、主のシュウヤ様なら、あっさりと魔界王子の一角を得られるかもですね」
「ひゅぅ~」
「グフフ」
「「「「「……」」」」」
アドゥムブラリとクナは分かりやすい。
ヘルメも喜ぶかと思ったが、どこか冷めた目で皆を見ている。
神聖ルシヴァル大帝国ですとか発言するタイミングだと思うが意外だ。
俺が乗り気ではないってのは分かっているからか、そして、冗談ではないほどに、今の俺ならやり切れる思いがあるからなんだろうな。
ヘルメは面白いが、この辺は頗る冷静だな。
「しかし、〝神殺しの蒼き連柱〟や〝神殺しの紅蓮なる連柱〟とは、何気に初耳のような……」
「神界セウロスの情報は少ないし、得ていなかったからな」
「「はい」」
「はい、神界側でも、魔界側と同じく黄金比を崩すような神の支配力が強くなっている地域で、その神を倒すと、〝神殺しの蒼き連柱〟や〝神殺しの紅蓮なる連柱〟が発生すると言われています」
「ほぉ、その〝永遠の均衡の黄金比〟を詳しく」
「魔界と神界の地域には地域の本来の世界があります。魔界の地方ならば真夜世界と呼び、神界の地方なら蒼空世界、太陽世界、龍世界、など乾坤ノ世界など様々です。それを〝永遠の均衡の黄金比〟と呼ぶ」
へぇ……。
「「「おぉ」」」
俺を含めた眷属たちは知らなかった情報で感心するように声を発していた。
ビュシエとアドゥムブラリたちは知っていたように頷いていた。
レガランターラとビュシエたちに聞くように、
「魔界王子テーバロンテは、〝永遠の均衡の黄金比〟を崩して、斜陽の世界を【バーヴァイ地方】に造り上げていたと」
「はい」
「はい、魔界では真夜の一言で済みますから、あまり黄金比とは言いません、神界側が好む言い方です。そして、己の支配力を他次元ごと侵食する意味もある。またそれは魔界セブドラや神界セウロスの神々が普遍的に認められている真理でもあります。己が因果律を決められる、神の魔法力、式識の息吹の影響を強めることも神々同士の戦いでは重要ですから、またそれを巡り、精神力を高めて削る争いが多岐に渡り重要となってくる」
「「「「へぇ」」」」
俺たちは知らないから感心するが、ビュシエの言葉にアドゥムブラリたちは知っているように頷いた。レガランターラは微かに頷く。
アドゥムブラリは、
「当然の真理と戦術だ。巨大魔法陣も攻守の陣地構築に必要になる時もある。主はセラを主軸とするから神格を嫌うが、魔界や神界では、己と眷属たちを強くするための支配力が、神格だ。傷場を占有したりすれば、それだけ魔界と神界の争いで生き残るために有利となる。セラに行けないだけだからな、黄金比を崩してでも得るのが普通、一つの戦術だな」
とアドゥムブラリが発言した。
「はい、神界と魔界も表裏一体なところがありますからね。神格を得て己と眷属たちを強める。神々にはやはり傷場の確保は重要です、セラに眷属を送り、信仰力を得られる、それは【テーバロンテの償い】がいるように凄まじい力となる」
キサラの言葉に頷く。
「「なるほど」」
「……はい、でも、わたしたちは惑星セラの住人ですからね」
ヴィーネの言葉に大半が頷いた。
神々には惑星セラがパワースポットのような感覚なのかも知れないな。
信仰力など色々なパワーが得られる便利な空間が傷場。
「そうさねぇ……その大本の一角、数千年と惑星セラの住民たちを苦しめていた魔神の一柱を退治してくれたのは、盟主のシュウヤだ……あぁ、感謝と……共に、また抱かれたくなってくるから困りもの」
と魔酒を片手に少し酔っているようなクレインは魅惑的すぎる。
「ん、先生、勝利したからっていきなり大量に飲んじゃだめ! ここには子供たちがいるんだから」
「子供たちもいずれは魔酒を覚えて、己を強める<魔闘術>に組み込めるようにならないとだめさね、ふふ」
とエヴァがクレインを引っ張るように少し離れた。
とりあえず、レガランターラに、
「話を切り替えるが、レガランターラの龍族と故郷に、そこで暮らしていた龍族などを教えてくれ」
「妾は乾坤龍族で【神霊龍珠魂の大森】が故郷で、乾坤龍族、百龍魔族、龍豪族、龍仙族、龍神族、仙人、仙女、仙王鼬族、仙武人、仙甲人、泡仙人、鴉天狗、白蛇仙人などです」
「「「へぇ」」」
「【神霊龍珠魂の大森】……」
ビュシエが少しボソッと呟いた。
乾坤ノ龍剣レガランターラは、そのままだな。
「故郷の名が【神霊龍珠魂の大森】か。そこを支配しているのは大龍王ペラデル様?」
「はい」
「一応、聞いておくが、血龍魔仙族のナギサは俺の眷属、レガランターラの龍族の血龍魔仙族と関係があるのかな」
「分かりません、乾坤龍族のすべてを知っているわけではないのです、龍の血を引く仙人、人族、魔族、多種多様のはず」
「名の知らぬ乾坤龍族が、魔界や惑星セラに渡っている場合もあるか」
「はい、その場合、ナギサ様たちと繋がりがあるかもです」
「へぇ、龍も様々か」
「そうです」
「魔界との争いでは、【神霊龍珠魂の大森】の故郷も関わりが?」
「はい、戦神の主神ヴァイス様が無数の戦神と武王龍神と戦巫女に戦乙女を率いて、魔界セブドラ側の神々や諸侯と戦っていた影響もあり、魔界側の諸勢力との争いに参加していました。乾坤龍族は多く亡くなって龍珠魂や龍樹魂に成れずに彷徨う龍の御霊が魔界セブドラの古戦場に出現すると噂があります」
「ほぉ~」
「「「「へぇ」」」」
「ふむ、神界も様々な生活がある。嘗てのフジク連峰と似ているか」
「我の蛇人族の故郷では、双蛇神様に、龍神様や、龍族は信仰の対象であった……」
ママニとビアが発言。
頷いてからレガランターラの傍にエヴァが戻る。
クレインはしっかりとした足取りで俺の横にきた。
エヴァは先ほどレガランターラの記憶を<紫心魔功>で体感しているからな。
レガランターラに、
「乾坤龍族とレガランターラの家族に大龍王ペラデル様の関係性を少し教えてくれ」
と俺の言葉の後、皆がレガランターラを注視。
皆も気になるか。ミスティはメモの準備を開始していた。
「父と母とお爺様とお婆さまレガランターラの継いでいた家族たちがいます。【神霊龍珠魂の大森】で妾は……神霊龍珠の掟を破り、龍の罰を受けたのです。そして気付いたら〝六幻秘夢ノ石幢〟の中でした」
「「「へぇ」」」」
「龍の罰……」
「「……」」
アリスたちは強張る。
「そして、偉大な武王龍神だった光魔武龍イゾルデ様のような知見は……妾にはありません」
と俺の記憶から、玄智の森で復活させた光魔武龍イゾルデの記憶も得たか。
「引け目を感じるのも分かるが、光魔龍レガランターラは俺の<光魔龍の従者>なんだからこれから成長していけばいい。それよりも龍族や仙妖魔のスキルと成長の仕方や、その変化具合の説明を少し頼む」
「はい! 白炎王山、三神山、仙鼬籬や各仙境に、師匠や学び舎の修業場所と育成環境の影響でスキル名は変化が起きる。因みに、妾は龍族において、花の十代の後半にあたります」
「「「おぉ」」」
と皆、俺もだが、興味を示しつつ声を発した。
花の十代の後半とは……。
イゾルデから少し聞いているが、レガランターラはまだ龍として幼いってことだな。
「スキル名も多種多様と分かるが、知っている範囲で教えてくれ」
「仙妖魔ですと<仙妖・剣化>、<仙妖・龍門槍>、<仙妖魔・剣鬼>、<仙妖魔・闘戦壱式>です。略して龍族でも異なりますが、<龍剣・レガランターラ>、<陰陽龍・覚剣>、<龍角・乱舞>、<龍槍・レガランターラ>など、スキル名が変化する場合もあります」
へぇ、面白い。
すると、ヴィーネが、
「乾坤ノ龍剣としてアイテムボックスに入る時は感覚はあるのですか?」
と聞くと龍人のレガランターラは、
「はい、主のシュウヤ様の精神と同調し包まれる感覚でした。その感覚は、妾は今までに感じたことがないほどの温もりとなります、アイテムボックスの中にいるのも正直気持ちがいいです」
と少し恥ずかしそうな表情を浮かべて答えていた。ヴィーネたちは、
「……ご主人様の戦闘型デバイスか、アクセルマギナとガードナーマリオルスも内包したナ・パーム統合軍惑星同盟の魔科学の技術が結集されたアイテムボックス……温かい感覚とは……それはそれで……普通に抱かれるよりも……」
と俺と腰のアイテム類を見ながら語る。
ヴィーネ的にアイテムとなって戦闘型デバイスの中にはいるのもいいかもしれないといった顔つきだ。キサラは、
「ミレイヴァルから前に聞いたことがありますが、アイテム状態の時でも外の光景は分かる時があるようですが、包まれるような感覚とは聞いていないので、違うようですからね」
頷いた。
ヴィーネは俺の腰にぶら下がるフィナプルスの夜会を見て、
「フィナプルスからも何度も聞いているが、フィナプルスの夜会は魔界四九三書で異世界です。ただのアイテムとは言えない」
と発言、頷いてからユイたちを見て、
「フィナプルスの夜会を管理する魔女の一人がフィナプルス」
「魔界四九三書は秘宝ですから比べること自体がオカシイですが、アイテムごとに様々で異なるということです」
ビュシエの言葉に皆が頷いた。
「はい、魔界四九三書のような書物に異世界があると、ただの石ころにも秘密があるように思えてくる」
キッカの発言にクナとミスティが大真面目に頷いている。
海岸沿いの砂粒にもミクロの小宇宙がある?
重力波のような周波数の波動で微妙に俺たちが知覚できない高次元と繋がっていると考えたら世界は無限大だよな。
すべては振動している物の集まりだ。
『我思う、故に我あり』のまま『思惟する精神』が己の心、意識と思われていたが、実はそうした多次元からの振動、波動が何気なく人々の脳の意識と連動していて無意識と自意識が、実は己の自我ではなく、多次元からの影響を受けたうえでの思考だとしたら? また、それを干渉しようとする勢力が……ナノ粒子を脳に集積させてナノボットやナノルーターなどとトランスヒューマン研究などと色々と予想はできる。
「あぁ」
「ん、シュウヤの左手の中に格納できる沙、羅、貂と似ているのかもしれない」
「精霊様と近い運用です」
「ですね、その<神剣・三叉法具サラテン>の三人組はやはり精霊様やシュレゴス・ロードと同じように優秀ですね。格納中にシュウヤ様と念話で会話が可能で、必殺の一撃になりつつ、今のように要所の防衛に貢献も可能です」
シュレゴス・ロードはキサラの言葉に礼をするようにお辞儀をしていた。
「そうさねぇ、盟主のシュウヤと離れるのは、本人たちには、寂しいと思うが、それだけ頼りにされている?」
と俺を見ながらクレインの言葉だ。クレインの寂しいという言葉の中に己の気持ちが込められていると直ぐに理解できたから、すまんの思いで、
「当然だ」
と言うと、クレインは微笑む。
そして、レガランターラに、
「【神霊龍珠魂の大森】で人気なことはなんだろう」
「本、書籍が色々と楽しかったです」
「へぇ、どんなの物語?」
「〝敬天仙魔物語〟は魔族の主人公が強くて仙女の恋人を守るお話です……他にも……〝杳然の仙歌娘〟、〝仙鯉ヒリューと魔王カシュアンの碑文〟は、実際に碑石が魔界の地にあると言い伝えがあります。〝大龍インと魔皇ランカの恋〟、〝愛を叫ぶ人恋い慕う龍大蛇〟、〝神魔と恋物語〟、〝魔皇メイジナの梨花一枝〟〝魔裁縫の女神ノ悲恋〟、〝神仙の愛譜〟、〝狭間に捕らわれた魔人騎士ヴェルゼイとアイラの恋〟など、色々な有名のお話は故郷で読みました、ですから、シュウヤ様の配下の光魔騎士グラド様と少し会話がしたいです♪ 本人ではないですが、関係者がいるなんて凄すぎる~」
と楽しそうに語る。
最後の〝狭間に捕らわれた魔人騎士ヴェルゼイとアイラの恋〟物語はセラでもかなり有名な本だ。
その物語と共通項を持つ光魔騎士グラドの存在は、当然、俺の記憶を見て知ったか。魔皇メイジナ様も本になるほどの逸話があるってことか、本人が知ったらなんて言うか……。
ヴィーネたちをチラッと見ると、
「ご主人様、神界セウロスにも様々な物語に本はあるのですね」
ヴィーネは未知の文化を知ることが好きだからな。
本も大好きだから、魔界に戻ったら【レン・サキナガの峰閣砦】の街にある本屋を調べてみるのもいいかもだ。
ペルネーテの地下オークション前に、セナアプアに行くから土属性と風属性と雷属性の魔法書を探索しにサキアグル・レタンチネスの魔道具店か、セナアプアの穴場の店を巡るのもいいかも知れない。
「セナアプアの穴場か、神界か魔界の街でもいいから本が売っている店に行こうか」
「はい!」
「お宝よね、探し行く!」
「ん、行く!」
「ンン」
ヴィーネ、レベッカ、エヴァは当然の如くの腕を出して手を合わせる。
いつぞやの、紅茶の誓いを再現していた。
相棒も混じっている。
キサラも「ふふ、これが紅茶の誓いですか、記憶共有していると、ふふ、楽しい♪」と声を弾ませながら参加している。
レベッカたちもニコニコしていた。
レベッカは楽しそうに「ふふ、うん、キサラもミスティたちも同じよ!」と言ってキサラの掌をぎゅっと握って恋人握りをしては、
「「ふふ――」」
「「賛成♪」」
ミスティとクナとユイもメルも女性陣が皆片手を合わせて『えいえいおー』の流れとなっていた。
相棒とルッシーが胴上げされていた。面白い。
その流れから、
「父さんたちも順調のようだし、わたしもシュウヤたちと一緒に魔界に行きたいけど、〝炎幻の四腕〟の魔王レンブラントの血脈探しに、サーマリア王国建国秘話と関係が深いアゼロス&ヴァサージの件も調べたいかも、買い物を兼ねて、サーマリア王国の豪商辺りを突いてみるのもいいと思わない?」
「ん、賛成」
「はい、わたしもそれは気になっていたので、どちらでも!」
「そうですね、【レン・サキナガの峰閣砦】にはバーソロンたちがいますし、バーヴァイ城には、<神剣・三叉法具サラテン>と魔裁縫の女神アメンディ様が守りについている状況ですから、魔界セブドラへの戻りは、〝炎幻の四腕〟を片付けてから?」
「あぁ、そうだな」
「骨鰐魔神ベマドーラーが、主を探しに、狭間を超えたらどうする?」
とアドゥムブラリが冗談を語る。
「はは、さすがにな?」
「「……ありえる」」
真面目にありえると語ったのは、クナとヴィーネだから、笑えなくなってきた。
ヘルメたちも、『え? そ、そうかも知れません』といった表情を浮かべ始めた。頷いてから、
「ま、さすがに、それはな、骨鰐魔神ベマドーラーは魔神だぞ?」
「あ、そうですわね」
「はい、ふふ」
とクナとヴィーネも冗談半分だったようで笑顔で同意してくれた。
クナの場合は、魔法に詳しいから冗談に思えない時がある。
続きは明日。
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