千四百七十一話 サイデイルの皆と再会にシトラスの香り
闇鯨ロターゼはアドゥムブラリとも挨拶。
「よう、ロターゼ、俺が誰だが分かるか?」
「あぁ? なんだ? 金髪イケメンが! お前はだれだ、キサラに近付くなよ? キサラは主の大切な女の一人だ、主とは、いつもえっちなことしている仲ぐぇぇあ――」
キサラの肘鉄<光魔血凝肘槌>がロターゼの頭部に決まっていた。
角は無事だがキサラの右半身が見えないほどに、ロターゼの頭部の横にキサラがめり込んでいた。と、反転してきたキサラの生足とガーターベルト付きの黒パンティがチラッと見えた。
「ツッコミ役のようなキサラは久しぶりに見た氣がする」
「あ、すいません、昔の癖です」
キサラはそう喋りながら体勢を直すと、ロターゼの窪んでいた頭部はプクッと膨れて元通り相変わらずのタフだ。キサラは、
「ロターゼ、調子に乗りすぎです」
ロターゼはキサラをチラッと見て「すまん、だがな!」
と言ってアドゥムブラリに近付いたロターゼは、
「この、見慣れない金髪に眉目秀麗な男前の魔族は、主の眷属なのか! んん? 黒い翼かよ、あ、アムシャビス族か? げ、お前は、あの単眼球だった……アドゥムブラリか!!!」
闇鯨ロターゼの驚きようが面白い。チッコイ目が大きくなっていた。
アドゥムブラリは右腕を上げながら、
「おう、武装魔霊の単眼球だったアドゥムブラリだ。ロターゼ、久しぶりだな」
と発言。闇鯨ロターゼは「ひゅぅ~」と口笛的な音を発生させてアドゥムブラリの周りを一周し、
「――偉い出世だな、<筆頭従者長>になったと聞いていたが……本当に成ったか。身なりも魔貴族だしよ、紅玉環の表面からぷっくりと出ていた頃とは雲泥の差だ、しかし、感慨深いな……」
「おう、姿は超一流に戻ったが、気持ちはあの頃のままだぜ?」
「はは、そうらしいな」
「おう、それもこれも主のお陰だ、これからも昔と変わらず、命を懸けて主を支えてみせる……主の命令ならば、魔界やセラだろうとどこにでも行くつもりだぜ」
と偽魔皇の擬三日月を出現させる。
「……おぉ、その魔斧は、あの魔皇シーフォの偽ワッペンだった? ということは主?」
と、ロターゼは俺に聞いてくる。
「魔皇シーフォの祠にはまだ行っていない。〝列強魔軍地図〟には載っているから、いつかは向かう」
「そうなのか、てっきり祠にいってシーフォの武器でももらったのかと思ったぜ」
「あぁ、主忙しいんだよ、バーヴァイ地方のデラバイン族たちに、バードイン地方と【レイブルハースの霊湖】地方を救ったんだぜ、で、バーヴァイ地方の北側【古バーヴァイ族の集落跡】で人食い魔族たちとの対決があっては、【メイジナ大平原】出て、まぁ、〝知記憶の王樹の器〟の液体を見るべきか。とんでもない冒険の質だからな」
「ほう、サイデイルや塔烈中立都市セナアプアを救ったようにか」
「あぁ、そうだ。で、俺の話に戻すが、俺を復活させるために、主は己の体を痛めながらも血肉と魔力と神格など……能力を俺に分けてくれたからな……そのお陰もあって衣服と翼に印として残していた<武装魔霊・バムソウル>と<魔弓魔霊・レポンヌクス>に<魔矢魔霊・レームル>も完全復活を果たしたんだ。<魔弓魔霊・レポンヌクス>――」
と赤く光る魔弓を見せる。
背中に装着された壺やなぐいの矢筒を見せてから、複数の魔矢を周囲に浮かばせた。
「おぉ」
「「まぁ!」」
「ふふ~斧による接近戦も可能で、赤い魔弓を活かした複数の魔矢により遠距離攻撃が得意なのですね」
ロターゼが驚きジョディとシェイルが興奮している。
「おう!」
と、アドゥムブラリは武器を消した。
「ングゥゥィィ」
「お、ハルホンクか、魔界が故郷のお前のことだ、主と共に偉い成長していそうな雰囲気があるぜ」
とロターゼがハルホンクに聞いていた。
「ングゥゥィィ、ハルホンク、ロターゼ、ノ、マリョク、ホシイゾォイ!」
「ハッ、俺のかよ、いいぜぇ、盛大な屁の魔力をプレゼントぉ~♪」
「――まてい、尻を向けるな」
と逃げた。
が、直ぐに神獣が前に出て、
「にゃおぉ」
「げあぁぁ――」
神獣が数本の触手を向けてロターゼのお尻を連続的に叩いていく。
「あはは、ロターゼ、面白い~♪」
と黒爪を地面に刺して宙空に出たイモリザもロターゼに突っ込んでいく。ロターゼを抱きしめるようにイモリザは両手両足を拡げたまま大の字アタックしている。ロターゼも嬉しいのか、頭部らへんの皮膚を赤らめながらも、お尻からドット絵のような不思議な魔力を発しながら浮遊し続けていた。
「イモリザとロターゼに相棒よ、遊びたい気持ちは分かるがサイデイルに行こうか」
「おう!」
「にゃ~」
「はい♪」
と引き返してきたロターゼはアドゥムブラリに、
「いつかサイデイルの空軍も頼むことになるかもな」
アドゥムブラリは遠くを見やる。
「おう、幼なじみと一緒に見知ったここを守るのもいいかもな……」
態度から哀愁が漂ってきた。
長い金髪が風を孕んで靡いていた。
「ロターゼも皆が飲んでからだが、〝知記憶の王樹の器〟の液体を飲んでもらうか、見た目的に通用するか分からないが」
「了解したぜ、が、その名からして知記憶の王樹キュルハ様の秘宝かよ……キサラ……本当に、主は、あの闇と光の運び手なんだな……」
「ふふ、そうよ、ロターゼ……黒魔女教団復活です、救世主は正式に再臨されました」
「う、うぅ……」
「はは、泣くなよ、前から救世主と言ってたじゃないか」
「……あぁ、だからなんだよ! 真顔で……あぁ……うぅ」
ロターゼは充血していた鯨らしい目から涙を流していく。
元気になってもらおうと、
「はは、ロターゼとキサラとジュカと何れはダモアヌン山を共に目指し、メファーラの祠と犀湖都市にも向かうことになるんだ、泣くなよ、そして、黒魔女教団の新しい聖典の〝髑髏魔人ダモアヌン外典〟も闇遊の姫魔鬼メファーラ様から頂いた」
「……え、聖典……」
「おう、だからもうサイデイルの樹海の空は守らなくてもよくなる。ずっと待っていただろうダモアヌンの空を守れるようになる」
「主……これ以上俺を泣かせるなや……」
「はは、泣き虫ロターゼだな、ダモアヌン山についてから泣けよ、だいたい、まだまだ先なんだぞ?」
「んなことは分かってる!」
「あぁ」
と闇と光の運び手装備の砂漠烏ノ型を活かすようにロターゼの横に寄って、黒光りした肌を触ると自然と闇と光の運び手装備から魔力が溢れ出た。
左手からキュルハとメファーラの宇内乾坤樹の欠片も出る。
黄緑色の風の魔力と、橙色と茶色の土の魔力は俺の手と指に浸透しながらロターゼの黒光りしている肌の表面に浸透していく。
キュルハとメファーラの宇内乾坤樹の欠片も黄緑色の風の魔力と橙色と茶色の土の魔力に混ざりながらロターゼの黒い肌に触れた直後、俺の手形の魔力痕がロターゼに皮膚に刻まれる。
温かい血の繋がりを得たような気持ちとなった。
元々が家族のような感覚だから、より親近感が高まった。
「まぁ! 繋がりを感じます……ふふ、シュウヤ様――」
キサラが驚きながらも嬉しげに俺の隣に来るとロターゼの皮膚に己の掌を当て<血魔力>を送っていた。
※ピコーン※<闇大鯨クリスラブルの大頭領の資格>恒久スキル獲得※
おお。ロターゼは大きい頭部を震わせてから、
「おぉ、風の縁で俺を使役しやがるとは、くぅ、ふはは、しかし、本当に主は、救世主なんだな……」
と言いながら闇鯨ロターゼは風の魔力を纏う。
そして、大粒の涙を流し始めると俺を見ては遠くを見て、
「……あははっはは、はは……おっかぁとおとうちゃん……いもうとたちよ、俺はぁぁぁ」
と、本当の鯨のように頭頂部の孔から水煙のような魔力を噴出させながらサイデイルのほうに飛翔していった。
ロターゼには、お母さんとお父さんに妹たちがいたのか。過去を思い出したようだ。
俺も家族を得た感覚となったからな。すると、キサラは、
「ふふ、使役は闇と光の運び手のシュウヤ様ですから当然の結果です。そして、ロターゼがあそこまで嬉しさを表すなんて非常に珍しいですよ」
「たしかに、あんな風に泣く姿は初めてみた。そして、スキルも<闇大鯨クリスラブルの大頭領の資格>を獲得した」
「はい、ロターゼの種族名も闇大鯨クリスラブルです。おめでとうございます!」
キサラとハイタッチ。
ヴィーネも、
「ロターゼとキサラは一緒でしたし、黒魔女教団ですからね」
「「はい」」
「ん、ロターゼが可愛い~」
「「ふふ」」
「キュルハとメファーラの宇内乾坤樹の欠片と闇と光の運び手装備もあると思うが、<煉土皇ゴルディクス・ララァの縁>と<砂漠風皇ゴルディクス・イーフォスの縁>の作用もあってロターゼを使役できたようだ」
「風属性はロターゼも持ちます」
キサラの蒼い双眸がキラキラと輝いている。嬉しさに溢れていた。ロターゼと離れていて淋しい素振りは見せなかったが、淋しさはあったようだな。
砂漠烏ノ型を解除しつつ言葉に頷いた。
「ンン、にゃ~」
掴んでいた神獣の触手が収斂。
自然と神獣の巨大な頭部に移動した。
隣に触手が体に絡んでいるヴィーネとエトアも運ばれてくる。
左腕を伸ばして、ヴィーネの左手と握手し体を引き寄せてから、その皆でサイデイルを目指した――直ぐにルシヴァルの天眷と神性を帯びたルシヴァルの紋章樹が見える。
ルシヴァルの紋章樹は血色に輝いているし、巨大なクリスマスツリーにも見えるから目立つ。血飛沫が宙空に飛んでいく。ルッシーもいる。
サイデイルの周囲の溝が深い隘路が見えた。
城のような濠があるからオーク帝国などが押し寄せても跳ね返せる。
西と東に北と南にも高台に砦が構築されてあった。
紅虎の嵐たちが利用した痕跡がある。
塹壕もサイデイルの街を囲うように拡大されていた。
街の内部はもう色々な建物が増えているから冒険者たちも多そうだな。
ナーマさんがいる逸品居はたしか……ここからでは分からない。
相棒がゆっくりと降下していく――。
直ぐにルッシーたちが宙を泳ぐように出迎えてくれた。
サイデイルの街の上空に到着だ。
モニュメントの周りには、子供たちが<霊血の秘樹兵>を追い掛け回して遊んでいる。リデルはそんな子供たちに注意をしているようだ。
子供の中心はルッシーとアッリとタークだ、懐かしいな。
あ、ドワーフの博士とミエさんがキッシュの屋敷に入っていく。
ムーはキッシュの屋敷の中かな。
キッシュの屋敷は拡張されている。皆の住まいと水車も殆どが同じ。
畑は拡張されている。オフィーリアとツラヌキ団たちにドワーフの農業担当のドナガンががんばっているようだ。
左にある小山とログキャビンの自宅と訓練場に、その訓練場を囲う柵に中心のルシヴァルの紋章樹に綺麗な花壇は昔のままだ。
ロターゼは近くで待機している。
そのロターゼが、
「下に皆が待ってるぜ、俺はここにいる」
「了解」
「にゃおぉ~」
神獣は先端を平たい台にした触手にエトアたちを乗せると先にキッシュの屋敷の前に降ろしてあげていた。
俺たちも跳躍して急降下――。
――サイデイルの大地を噛みしめるをように両足で着地した!
「やった、なんか帰ってきたぁ~って感があるよなぁ」
「ふふ、たしかに!」
「「はい!」」
「にゃごぉぉぉ~」
と黒猫の気合い声。
その黒猫はモニュメントの天辺に立って、頭部を上向かせて、俺たちと同じ気持ちを表すように鳴いていた。
「「「あぁぁぁ~」」」
「「「「「神獣様だぁぁぁ」」」」
「「ロロちゃん~~」」
「「イモちゃんもいる~~~」」
「「「わぁぁぁ」」」
ついでにゼメタスとアドモスを呼ぶか。
シンプルな指輪に変化している闇の獄骨騎を触り、ゼメタスとアドモスを呼ぶと黒い糸と赤い糸が闇の獄骨騎から飛び出て地面に付く前に光魔沸夜叉将軍らしい閃光を放ちながら出現した。
「閣下ァァ」
「閣下、我らの出番ァァ」
「ゼメタスとアドモス、ここはサイデイルだ。」
「え、シュウヤ兄の声だ。あのごついのシュウヤ兄ちゃんなの?」
「血鎖鎧を着ている危ないシュウヤ兄ちゃんかもしれない!」
「「ヴィーネ姉ちゃんもいる!」」
「「キサラもだぁぁぁ」」
「「「わぁ」」」
「知らないごついのもいるー」
「綺麗なお姉ちゃんがいるー」
「ちっこいのもいるぞー」
「ボクは、エトアでしゅ!」
「エトア~?」
「「おぉ!?」」
「「ゼメタスとアドモスも出たぁぁ」」
「「「「わぁぁぁ」」」」
アッリとターク以外にも子供たちが増えているような……。
とりあえず、子供たちを見ていたリデルに、
「リデル、久しぶり、当たり前だが、元気そうだな」
「は、はい! その魔法の鎧は凄いですね、あ、久しぶりです、勿論元気ですよ、あ、切り分けたリンゴパイが少し余っているので、どうですか?」
「お、いただこう」
「ンンン――」
黒猫が天辺から降りてきては、リデルに向け『ごはんくれ』というように、両前足を上下させていた。
「ふふ、はい、神獣様も久しぶりです、小さいですが、はい、あげますね」
と懐かしいリンゴパイの切れ端をゲット。
直ぐに一口で食べた、外がさくさくして、中身がふわふわとトロッとして湿っているような甘いリンゴが絶妙に美味い……。
なんか嬉しいな……。
「にゃぁ……」
相棒もリンゴパイの一切れを食べきった。
嬉しいような声を発していた。
あれ、片眼から涙を流している。
はは、黒猫も懐かしいのか。
皆は、キッシュの屋敷に入らず、子供たちの相手をしていた。
リデルが、
「シュウヤさん、今日もキッシュに? 皆さんがキッシュの屋敷の中に集まっていました」
「そうだ。大事な記憶を共有できるアイテムを入手したから、会いにきたんだ」
「まぁ!」
「では、会ってくる、リンゴパイ美味しかった」
「は、はい!」
とヴィーネとキサラとアイコンタクトしながらキッシュの屋敷の扉を開けた。
――いい匂いが漂う。
――ホワイトムスクとシダーウッドの香り。
砂漠烏ノ型をまた展開させて蓬莱飾り風のサークレットと額当てと面頬装備に変化していたのを兜状態に移行させた。
そのまま皆が集まっている奥の間に向かう。
直ぐに、
「――シュウヤ! ふふ、って、それが闇と光の運び手装備か、雰囲気が渋い……」
キッシュの言葉に頷いた。
「「「「「「「――シュウヤ様!」」」」」」」
「「――吸血王!」」
「「――我が光魔ルシヴァルの主!」」
「ソレグレン派の偉大な吸血王!」
「「「シュウヤ~」」」
「あ、シュウヤ!」
「シュルル~シュウヤ様!」
「ばぶぁ」
「ぷゆゆ!」
「ネームス!」
「……っ」
「シュウヤ、お帰り~」
「あ、シュウヤ! エヴァとヴィーネにキサラもお帰り!!」
「マスターと皆、お帰り~」
「魔英雄様のご帰還じゃ!」
「それが闇と光の運び手装備!」
ユイ、レベッカ、ミスティ、クナ、ネームス、モガ、ルッシー、フー、ムー、サザー、ママニ、ダブルフェイス、エルザ、ルシェル、サラの赤髪は綺麗だ。舌が伸びているビアとビアが抱く赤ちゃんは少し大きくなっている。ヴェハノと琥珀を抱きしめているぷゆゆ。
なんで琥珀が、嫌がっていない魔法の小虎の獣ちゃん。
爆乳のベリーズ、いぶし銀の獣人ブッチ、尻尾が可愛いオフィーリアとツラヌキ団のメンバーたちは小柄獣人だ。
バング婆、ナナとアリスはパル爺の傍、
ドミネーター、軍師のトン爺、ナーマさん、ドナガン、渋いバーレンティンは片膝で床を付いたままだ。イセスも頭を下げている。
服作りが得意なドココは昔のまま。
涙を流しているジュカ、ドミドーン博士とミエ、ヒナとサナは南マハハイムの言語は結構学べたかな。
エブエも片膝を降ろして頭を下げていた。スゥンさんは渋い。サルジンは昔のままで、モヒカンだ。ロゼバトフも片膝の頭は床についている。樵のマウリグはマッチョ、マウリグの奥さんのスゥさんは細身。ソロボとクエマはムーの傍だ。
レネとソプラも元気そう、眷属の皆は<血魔力>を体から出していた。と階段から上がってきたクレインも表れた。
「先生!」
「お、エヴァも今到着かい」
「ん――」
とエヴァとクレインが抱き合う、自然と心が温まる。
はは、光魔ルシヴァルの眷属たち。
「「「「――陛下!」」」」
シュヘリアとデルハウトは片膝の頭で床を付いた。
既に立っていたキッシュと皆に、
「皆、只今だ。そして、これが闇と光の運び手装備でもある」
と、喋りつつ砂漠烏ノ型を解除して、闇と光の運び手装備を仕舞う。肩の竜頭装甲を意識して、ラフな格好に戻した。
そのままキッシュに近付いた。
「はは、その格好がシュウヤらしい、そして、お帰りだ」
「おう、ただいま――」
血の炎が縁取る冠と司令官の衣装が似合う。
蜂式光魔ノ具冠は健在で、まさに女王としての威厳があった。
が、薄緑色の髪に翡翠の宝石を思わせる双眸は昔のままだ。
透き通った肌もだ。なんども愛し合った記憶を駆け抜けてくる。
その愛しい友のキッシュは机を両手で叩くと跳び箱を越えるように机を跳び越えた。抱きついてきたキッシュ――。
トレードマークのシトラスの香りがキッシュから漂う。
「――シュウヤ、会いたかった」
「あぁ、俺もだ」
キッシュの背に回した両腕に力を込めるとキッシュも俺をギュッと力を込めてくる。女王として<筆頭従者長>の力は増しているキッシュだから、少し痛かったが……嬉しかった。
互いにハグを繰り返してから体を離す。
「〝知記憶の王樹の器〟の話は血文字で聞いていると思うが――」
と戦闘型デバイスのアイテムボックスから土産を出した。
クーラーボックスのようなアイテムボックスを横にどすんと置く。
「シュウヤ、その箱が〝知記憶の王樹の器〟なのか!」
「あ、これは土産だ。アイテムボックスで、中身は〝二刻爆薬ポーション〟に極大魔石が大量に入っている」
「「「おぉ!?」」」
続きは明日、ステータス回を予定。
HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1~20」
コミックス1巻~3巻発売中。




