千四百七十話 惑星セラの宇宙次元と魔界セブドラの宇宙次元の差異
と血文字が目の前に現れた。
『シュウヤ、お帰り~いきなり<バーヴァイの魔刃>を得たんだけど、どういうこと?』
『シュウヤ、お帰り! もう転移陣を使ってサイデイルに移動したから、後、いきなり<バーヴァイの魔刃>を得たんだけど!』
『マスター、お帰り~六属性の魔宝石、通称、六属の空極のゼクス相手に実験中だったんだけど、にいきなり<バーヴァイの魔刃>を覚えたから、つい使ってしまって、ゼクスに<バーヴァイの魔刃>をぶつけてしまったわよ!』
『シュウヤ、<バーヴァイの魔刃>とは……』
『お帰りさね、いきなり<バーヴァイの魔刃>を覚えたが、とりあえず、帰還おめでとうと言っておこう。ルマルディと共に急いで魔塔ゲルハットに入ったところさ、サイデイルに行くよ、エヴァにも血文字を送ったが、また後で』
『ちょっといきなりシュウヤ、<バーヴァイの魔刃>ってわたし強くなったような、それとお帰り! サイデイルのもうキッシュのとこに着くから後でね、エヴァから少し聞いたけど〝知記憶の王樹の器〟は楽しみ』
『『シュウヤ様、<バーヴァイの魔刃>を……』』
<バーヴァイの魔刃>を獲得したと皆から血文字のメッセージの嵐が……。
「ん、シュウヤ、皆には伝えたけど……」
「はい、<バーヴァイの魔刃>のいきなりの獲得には混乱する気持ちは分かります」
「レベッカにも伝えましたが、サイデイルにもう転移しまくっているようですから、皆に〝知記憶の王樹の器〟のシュウヤ様の記憶が詰まった液体を飲んでもらいましょう」
エヴァとヴィーネとキサラの言葉に頷いた。
『総長、お帰りなさいませ。いきなりですが、わたしたちの能力が上昇し<バーヴァイの魔刃>という名のスキルを得たことは驚きましたよ、今、サイデイルに転移陣で移動しました、ユイとレベッカとキッシュのところに移動中です』
『おう、セラと魔界が狭間で阻まれている証拠、他の次元だってことだな。惑星セラの宇宙次元と魔界セブドラの宇宙次元の差異だ』
『はい、魔界との時差、セラ側の眷属だけの事象のようですね』
『そうだ。〝知記憶の王樹の器〟の液体を飲めば、俺の記憶を共有できるから一発で理解できる。その時に喋りでも、説明しよう』
『はい、でも記憶を共有とは畏れ入ります、確実に秘宝で神話級のマジックアイテムです』
『あぁ、知記憶の王樹キュルハ様の秘宝だ。<バーヴァイの魔刃>の説明だけでも、喋りだと長くなる』
『え! は、はい! 分かりました』
「あなた様は、知記憶の王樹キュルハ様と邂逅を……」
「凄い……<バーヴァイの魔刃>のいきなりの獲得にも驚きましたが」
ジョディとシェイルは今の血文字を見て、驚いている。
「おう、<バーヴァイの魔刃>についても、一発で理解が可能となる記憶を共有できる秘宝の〝知記憶の王樹の器〟を入手したんだ。その秘宝はサイデイルに移動して使う」
「「はい」」
「ジョディとシェイル、先に<光魔王樹界ノ衛士>ルヴァロスとエトアを紹介しておこう。ルヴァロスから」
「ハッ、我は主のシュウヤ様の眷属でありますが、知記憶の王樹キュルハ様の眷属でもあります。ルヴァロスです。宜しくお願いします」
「はい、ルヴァロス。わたしはジョディ、<光魔ノ蝶徒>ですよ」
「同じく<光魔ノ蝶徒>で、名はシェイルよ、シュウヤ様をあなた様と呼んでおります、あなた様は<光魔ノ蓮華蝶>を持つ。わたしたちと特別な縁で結ばれている、皆さんに命を救われて、今がある、お母様とお父様のお陰でもあるんです」
「承知した、死蝶人と似た種族を元にした光魔ルシヴァル独自種族だな」
ルヴァロスがそう語ると、ジョディとシェイルは胸元に手を当て、
「「はい」」
と返事をした。
「次はエトア」
「はいでしゅ、ぼ、ボ、ボクは、エトアでしゅ! <罠鍵解除・極>をもちましゅ」
と緊張していた。
初対面だとボクが出るのか?
「はい、エトアちゃん、わたしはジョディ」
「わたしはシェイルよ、これからも宜しくね」
「はいでしゅ!」
「次は、アドゥムブラリもジョディたちに説明をしたらどうだ」
「え? 俺か」
ジョディとシェイルはアドゥムブラリを見て、
「端正な顔立ちの方はもしかして、と思っていましたが、やはりアドゥムブラリでしたか、額にAがないのは残念ですか? ふふ」
とジョディが冗談を放つと皆が笑っていた。
イモリザも「あはは、額にエース! キュピーン!」と黒い爪を伸ばして、額から何かのビームを飛ばすような行動を取る。
「ンン――」
「きゃぁ」
黒豹の突進を体に受けたイモリザは黒豹と共に地面に転がったが「わぁ、ロロちゃん様~」と黒豹のお腹を抱きしめていくイモリザ。
黒豹はイモリザの顔などを舐めていたが「にゃごぉ~」と逆に苦しくなったようにイモリザを振り払って俺のほうに逃げてきた。
「あぁ~もう使者様に!」
追い掛けてきたイモリザから相棒を守るように左手を翳すとイモリザは足を止める。肩を落としていた、可愛い。
すると、ジョディがアドゥムブラリに、
「あなた様がサイデイルに帰還した時に武装魔霊だったアドゥムブラリが<筆頭従者長>として大復活をしたと聞いていましたが……」
と語る。
アドゥムブラリは両手を左右に拡げて、黒い翼をバタつかせながら、
「そうだ、主が俺に血肉に魔力を献身してくれた。そのお陰で……この姿を取り戻した」
「ふふ、はい。〝知記憶の王樹の器〟からその時の記憶を見れば分かりますが、楽しみです。そして、黒い翼はアムシャビス族と分かります。あの時の『……俺様は落ちぶれたとはいえ元、魔侯爵なのだぞ……』と喋っていましたが、本当でしたね。今は魔王級とも聞いていますよ」
「はい、単眼球の武装魔霊だった頃の姿は可愛かったですが、今の姿もご立派です」
とジョディとシェイルが語る。
アドゥムブラリは頷いて、
「おう、そうだ。魔王級、光魔騎士から光魔ルシヴァルの最高の<筆頭従者長>の一人として俺は大復活を果たした。しかも……更に幼なじみの復活も狙えそうなんだ。順調に情報は出揃いつつある」
「最高とは、癇にさわる言い方ですが……懐かしい」
「ふふ、記憶は曖昧なところがありますが、はい」
「はい」
シェイルは完全復活まで時間が掛かったからな。
シェイルを治療できて本当に良かったが、亜神夫婦の墓と重ねると、言葉が出てこない。が、幸せなことに変わりない。
そこで、皆を見て、
「皆にも、〝知記憶の王樹の器〟の液体を飲んでもらう」
「わたしたちもですか?」
ビュシエたちの言葉に頷く。
「そうだ、キサラもヴィーネもエヴァもだが、俺と微妙に離れている時期があっただろ、全員に俺の過去から、今までの記憶を体感してもらおう、どうせ、直ぐだしな」
「たしかに、それはそうですね」
「はい、シュウヤ様の記憶は嬉しいですが……わたしの歴史も皆さんに知ってほしくなりました……」
キサラの言葉に頷いた。
「それは、そうだな、皆の記憶も見られるようになればいいんだが……」
「ん、シュウヤ、今度キュルハ様にお願いしてみよう?」
エヴァは乗り気だ。
<紫心魔功>のことを気にしているんだろうか。
「あぁ、分かった」
「ん」
「わたしもキサラの過去が気になります、暁の墓碑の密使ゲ・ゲラ・トーの言葉は記憶に新しいですし、三神の大協定預言と四神の預言書マーモティニクスに蒼炎神エアリアル、レベッカのハイエルフとも繋がる……すべてが驚きでした。それにご主人様は神界側ですが<四神相応>を持ちますし、色々と繋がりある」
ヴィーネの言葉に皆が頷いた。
ビュシエも、
「皆さんはわたしの記憶も気になるはず、そして、キサラの記憶は、わたしも見たい。魔界セブドラではあまり考えられない神界セウロス側と魔界セブドラの繋がりの黒魔女教団が全盛期のようですからね」
と語る、皆が偉い勢いで頷いた。
ヴィーネは、
「はい、吸血神ルグナド様の<筆頭従者長>の歴史は貴重です。わたしもご主人様に過去を見てほしいぞ」
銀色の瞳は俺を真っ直ぐと捉えている。
ヴィーネの過去は色々と知っているが、見ていないこともあるからな。
「あぁ、皆の過去は少し見て知っているが、知らないことは多い」
「ん、わたしもそう<紫心魔功>は完璧ではない。シュウヤの記憶を見た時に、<紫心魔功>が少し進化したけど、それでも違う、あの体感は凄かった」
「はい、宗主の記憶を得た時、あまりの体感、自分の呼吸が苦しくなる、嘔吐さえ起きた、あの強い記憶の体感は快楽に近いかもですが、非常に貴重な体験です」
キッカの発言に皆が俺を見つめてくる。
それほどに強烈だったか……。
旧神エフナドの黒寿草に、黒兎ヂヂの狩りはがんばったからな。
キサラは、
「シュウヤ様の記憶もですが、ビュシエの過去を、もう少し知りたい」
ヴィーネも、
「そうですね、セラと魔界の<筆頭従者長>たちと、傷場のことは前に聞きましたが、吸血神ルグナド様の<筆頭従者長>だった頃の記憶を共有できるのは、今後、吸血神ルグナド様と敵対する可能性もある以上は、知っておきたいところです、他の<筆頭従者長>たちの情報は貴重です」
ヴィーネの言葉にアドゥムブラリたちも頷く。
キッカも、
「皆の過去にエヴァの過去も知りたいです」
「ん、わたしも皆に見てほしい、キッカも家族だから」
「はい」
とキッカとエヴァは頷き合った。
エヴァの過去は結構知っている、ドワーフたちと父と母に先生のクレイン……。
キッカはキサラを見て、
「ゴルディクス大砂漠の犀湖都市の記憶は興味深いですし、光魔ルシヴァルのわたしたちは宗主と同じ闇と光の運び手と同じ言えます。宗主の記憶を見たからもありますが、わたしの記憶も皆さんと共有したい気持ちが強まりましたよ」
キッカも塔烈中立都市セナアプアの冒険者ギルドマスターだから、相当な歴史だ。
「ん、キッカの吸血鬼ハーフのダンピールの歴史も気になる」
「はい、黒魔女教団の四天魔女として過ごしたゴルディクス大砂漠の時代にもキッカ・マヨハルトは生きていた。あの頃、どこかですれ違っていたこともあったかも知れません。そして、わたしも少し教わりましたが、あの血剣術は並大抵の経験では得られない、ヴィーネが嵌まるのも分かる」
ヴィーネはキサラの言葉に頷いていた。
「ふふ、皆が<光闇の奔流>と<ルシヴァルの紋章樹>に導かれたからこその光魔ルシヴァルですから、やはり、皆の記憶を見たくなりました」
ビュシエの発言に、
「「「はい」」」
「「「ですね」」」
「「あぁ」」
「はい、わたしも皆さんの記憶はみたいでしゅ」
エトアの歴史も興味ある、仙妖魔の血筋。
「今は出来ずとも主の成長や、皆が飲みまくれば、いずれは俺たちの記憶も皆が見られるようになるかも知れないぜ?」
「「「「はい」」」」
「それは、そうですね、ご主人様の<血魔力>は、<血道第六・開門>まで獲得している。〝知記憶の王樹の器〟は<血魔力>も作用していましたし、エクストラスキルの<ルシヴァルの紋章樹>系統樹などにも影響があるかもですよ」
「あぁ、あるかもな」
「はい♪」
とイモリザの記憶も少しだけだからな。
邪界ヘルローネにニューワールド。
だが、どんな異世界か、黄金芋虫として邪界の使徒に喰われたから細かな記憶が消えている可能性もあるのか……。
ツアンとピュリンも断片化されている可能性は否めないな。
が、過去は過去、<光邪ノ使徒>としての今があるからそれが大事だ。
ジョディとシェイルも黙って聞いていたが、
「やはり皆の語りを聞いていると、〝知記憶の王樹の器〟の体感が気になります!」
「……あなた様の記憶と一体化ができるような氣がする……凄まじいアイテムが〝知記憶の王樹の器〟……」
「はい、エヴァたちからも少し聞きましたが、驚くべき展開ですね、十二樹海の〝樹海道〟を利用する存在があなた様と皆様だったことも心底驚きましたが……」
シェイルとジョディが興奮しつつ語る。頷いてから、
「さて、そろそろ皆が待つサイデイルに行こうか、<光魔王樹界ノ衛士>ルヴァロスは飛べるのか?」
「はい」
「ンン、にゃ~」
相棒は黒豹に変化しながら、ジョディとシェイルの足に頬を寄せていた。
「ロロ様もとても元気で嬉しいです。あなた様と皆様をなんども救ったと分かりますよ、美味しい食事も楽しんだことも!」
「ふふ、神獣様のお髭ちゃんがくすぐったいです」
と姿勢を屈めたシェイルに黒豹は抱きしめられていた。
「ンンン」と鳴いた黒豹はそんなシェイルを押し倒して、シェイルの顔をぺろぺろと舐めていく。
「ふふふ、ロロ様、くすぐったいぃ~」
「わたしもまざりたい~」
とイモリザが銀髪の形を相棒とシェイルの顔に変化させながら傍に寄っていた。
髪で頭部を象るとは、しかも陰影が見事だし芸術性が高い。
イモリザは意外性に満ちている。
「相棒、先に行くぞ?」
「ンン――」
黒豹はシェイルから離れてイモリザを尻尾で叩くと、直ぐに神獣ロロディーヌに体を大きくさせた。
そこにロターゼの魔力がかなり近付いてきた。
見せたらびっくりすると思うが闇と光の運び手装備を意識して装備、そして、肩の竜頭装甲も意識し、砂漠烏ノ型も意識した。
蓬莱飾り風のサークレットと額当てと面頬装備が一瞬で、兜に変化――。
――兜の内側が右斜め上の視界を埋めてくる。
嘴のような鋭い形に変化しているんだろう。
「ん、シュウヤ、闇と光の運び手装備を皆に見せながら帰還?」
「おう、ロターゼを驚かしてやろうかと」
「ん」
「闇鯨ロターゼも元気そう」
「はい、ロターゼ……」
エヴァは大きい神獣ロロディーヌの横を浮遊しながらロターゼに手を振っていた。
「ロターゼもキサラと同じくご主人様を黒魔女教団の救世主だと言っていましたからね」「はい、たぶん、大変なことに……」
キサラは少し浮遊しつつ語る。
「その闇と光の運び手装備のご主人様を見たら、キッシュたちも驚くはず」
ヴィーネたちの言葉に頷いていると、闇鯨ロターゼが、
「おぉぉ、キサラァァが帰ってきた、救世主のシュウヤ! なな、なんだ、その甲冑は!」
と、どもった声を発して偉い勢いで急降下してくる。
「ンンン、にゃご~」
神獣が数十と触手を出したが途中で止める。
途中で動きを止めた闇鯨ロターゼが、
「おぃぃ、し、神獣……俺は触手骨剣の大きい的ではないぞ……」
と昔のトラウマを思い出したようだ。
キサラとの再会よりもトラウマのほうが強かったか。
「相棒――」
「にゃ~」
と跳躍し相棒の触手を掴みながら<武行氣>は使わず、風を操り、風に乗る。
飛行しながらロターゼに近付いた。
「よう、ロターゼ、久しぶりだな」
「あぁぁ、おおおい、その装備はもしかして」
「おう、分かるのか」
「分かるというか、<血魔力>に今の、その渋い甲冑は髑髏魔人ダモアヌンと似ているし……黒魔女教団の何かを見つけたのか?」
「おう、魔界セブドラで、闇遊の姫魔鬼メファーラ様と知記憶の王樹キュルハ様と邂逅を果たして、正式に、闇と光の運び手として認められた。その際に、闇と光の運び手装備を得た、魔槍杖バルドークも進化を――」
魔槍杖バルドークを右手に召喚したが、ロターゼは口から泡が吹かせて気を失っていた。
ロターゼの下腹部が膨らんで撓む。
とお尻からドット絵風の赤黒い四角形が次々生まれて散る。
四角いドット絵風のモノは、自ら肺呼吸をするように伸び縮みを繰り返しながらゆらゆらと動くと、ポニョポニョと音を響かせながら、次々と誕生していくと、気を失っているロターゼは自然と上昇していった。
下からきたキサラが、
「済みません、ロターゼも待ち望んでいた救世主の存在が本当だったことで、氣が動転してしまったようで……」
「泡が吹いているが、大丈夫か?」
「……タフですから、でも初めて見たので、様子を――」
とキサラはロターゼに近付くと、ロターゼは、「会いたかったぜぇ、キサラァァ」とフェイクだったのかユニコーン的な角を伸ばしながらキサラに突進していた。
「ふふ――」
キサラは笑顔を見せながら華麗に上昇してはロターゼの真上に移動した。
そのまま急降下すると、両足に厚底のブーツを活かすようにロターゼの頭頂部に、
「<邪重足霊蹴>!」
と両足の厚底戦闘靴で踏みつけていた。
「うぎゃぁぁ――が、俺はタフだ、そして、キサラぁぁぁ」
「ふふ、はい!」
とキサラは<邪重足霊蹴>を止めてロターゼに体を寄せた。
ロターゼは小さい目から涙を流している。
キサラの表情は見えないが、嬉しそうだ。
続きは明日。HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1~20」
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