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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1463/2001

千四百六十二話 秘宝〝知記憶の王樹の器〟の入手


 樹の洞の祭壇の中心の赤い球体の上部には複数の分厚い樹が何重にも絡みついている。

 洞の中にまで入り江のように浅い沼が続いているように祭壇の周りは浅い沼地。


 【頭部空中大庭園】の中心だから知記憶の王樹キュルハ様の脳が赤い球体でもあるんだろうか。

 赤い球体の上部に絡んでいる樹の群れが卵の殻に見えてきた。

 赤い球体の中身は赤い液体と<血魔力>のような魔力が詰まっている印象でキラキラと輝いていた。


 巨大な赤い球体が巨大な脳にも見えてくる。

 【頭部空中大庭園】は知記憶の王樹キュルハ様の脳に当たる部分だから正解か? そして〝知記憶の王樹の器〟と〝輝ける実〟があそこにあるのか、儀式に赤い球体が必要なのか。

 そして、知記憶の王樹キュルハ様の本体の頭部であり、庭か。

 ここにいる皆は巨大な知記憶の王樹キュルハ様となった場合の、頭部を守る兵士たちでもある?


 洞の樹の祭壇の内部と外側にかけて、細かな枝から電気が放電しているような無数の魔線が蜘蛛の巣を沼地の表面に張るように展開されていた。

 背丈の高い樹の幾つかと電線が繋がるように魔線が繋がっている。

  魔線の間には大きい豆電球のようなモンスターが幾つも誕生し、暗がりの祭壇周りを明るく照らしていた。

 樹が生えている沼地の色合いは電極のような影響を受け一部は蒸発し、奇っ怪な魔魚モンスターなどを生んでいた。一部の高い樹は避雷針の如く、雷を発生させている。沼に、その雷が槍の穂先のような形で突き刺さり、沼の液体が蒸発しては銀色の気体が発生し、その気体が雲と樹と気体が不可思議に鳥の形で融合している奇っ怪な大鳥、朱鷺(トキ)のようなモンスターが誕生していた。

 

 朱鷺(トキ)と言えば、国鳥として教わっていた朱鷺(トキ)がいつの間にかキジに変化していたように鳥の姿が違う鳥に変化している。


 世界の過去が変化しているマンデラエフェクトかと当時は鮮明に覚えていたな。為政者、時空改変の黒幕に都合が悪いから朱鷺から雉に変えたのかと……時空管理局のような存在が本当にあるのかも知れない。

 俺の転移もその辺が絡んでいたら、少し怖いな。旧神の名に時空連続体とか稀人とかあったから……が、今は今として認識しようか。


 そして、ここは【頭部空中大庭園】は面白い造りというか、生まれて初めて見るような光景だ。

 これも未知なる遭遇だな。

 知記憶の王樹キュルハ様が、俺たちの脳をサブリミナルや光学兵器で、認知と思考を操作して、視覚をジャックし、異なる幻影が造り出している可能性は……ないか。


 巨大な赤い球体が知記憶の王樹キュルハ様の巨大な脳だとして……人型の知記憶の王樹キュルハ様が巨大な知記憶の王樹キュルハを操作する時に入るコックピットかも知れない?

 

 赤い球体の前いる幽霊のような存在が魔樹大霊サーベデラッテアか。

 

 シャプシーのような幽体だが、知記憶の王樹キュルハ様の最強クラスの大眷属なのかも知れない。

 その魔樹大霊サーベデラッテアは白いローブを羽織っている印象で、体は半透明。

 半透明な腕から迸っていた魔力で宙空に魔法陣を生成し、巨大な赤い球体にその魔法陣を吸い込ませていた。と、赤い球体が目映い輝きを発していた。

 白いローブのようにも見えるが、半透明な体から出ているオーラのような魔力かも知れない。


 六本の腕から放たれている魔力のほうが体より濃い色合いだ。

 六本の腕の内、三本の掌が組み合った。

 合掌しながら巨大な赤い球体に向けて頭を下げている。

 と、半透明の体から漏れた魔力が『祈禱』の魔法文字を宙空に描いていく。

 合掌の仕種と似合う祈禱スキルを発動しているようだ――。

 その様子を見ながら――知記憶の王樹キュルハ様たちと共に【頭部空中大庭園】の中心に到着。

 【世界樹キュルハ】がある魔界セブドラの地方の絶景と水上スキーを楽しめた。


「――主、ここか!」


 と言いながらキスマリが背後から跳躍して傍にきた。


「おう」

「途中に首輪を付けた魔族と女性の魔術師がいたが、気になったぞ」

「あぁ、いたが、なるべく首は突っ込まない方向でいこうか」

「ふむ」


 キスマリが着地した地面の近くにも太い樹が沼から生えている。

 その太い樹は幹に髑髏の魔印と十字架と黒魔女教団の印が刻まれてあった。

 

 印から闇遊の姫魔鬼メファーラ様の魔力と光神ルロディス様の魔力が感じられる。


 十字架の部分だけメファーラ様とキュルハ様の魔力が非常に薄まっていた。

 光神ルロディス様の魔力が強いからだろう。

 

 メファーラ様とキュルハ様とルロディス様との絆。

 光神ルロディスとは相性が悪いと分かるが、それでも黄金都市ムーゴと暁の帝国の事情で、手を組む必要があったんだろう。


 先ほどの知記憶の王樹キュルハ様の態度にはくるものがあった。 

 

 そう過去の出来事を予想していると――。

 赤い球体の前にいる茨か葉をモチーフにした環を頭上に浮かせている幽霊のような存在が六本の細長い腕を振るいながら振り向いて、近付いてくる。


 内臓らしきモノがあるように見えるがすべてが半透明。

 沼地から、己の足のような幻影を吸い上げ続けている。

 意味が分からないが、沼地からエネルギーを得ているのか、魂が沼地にあるのか……不思議な存在だ。


 会釈をしてから、

 

「陛下とゲンザンにウェイジスにバニゴル――、ポイラーシュも久しぶりだ」

「はい、お久しぶりです、魔樹大霊サーベデラッテア」


 ポイラーシュの言葉に魔樹大霊サーベデラッテアが頷いた。

 ポイラーシュは髪をたくし上げ耳の孔から白い螺旋状の紐を伸ばす。

 魔樹大霊サーベデラッテアも幽体の体の一部が点々と黒ずむと、その点々とした黒ずみから半透明な繊維質を発生させ、伸ばす。

 ポイラーシュが耳の孔から再び白い螺旋状の紐を出す。その半透明な繊維質が空中で絡み合い巻き付くと綺麗な虹色の光を発して蠕動運動(ぜんどううんどう)を起こすように膨れては縮む。


 と、魔樹大霊サーベデラッテアとポイラーシュは頷いた。

 半透明な繊維質と白い螺旋状の紐は紐解かれる。

 ポイラーシュは直ぐに白い螺旋状の紐を耳の穴に収斂させた。

 魔樹大霊サーベデラッテアも幽体の体の黒ずみに半透明な繊維質を引き戻していた。


 幽体の体は不思議に柔らかそう。

 魔樹大霊サーベデラッテアの雰囲気は、どことなく、がらんどうの電車の赤い座席に少女と一緒に乗っていそうな印象を抱かせる。


 その魔樹大霊サーベデラッテアは、


「す、素晴らしい……姫魔鬼武装、髑髏武人ダモアヌン、髑髏魔人の再来に……し、四天魔女……陛下がここにきた理由か。陛下、知記憶の儀式が必要なのですね……」


 動揺している語り口調だが、エコー掛かった魔声なこともあり、威厳が感じられた。


「うむ。ポイラーシュたちの記憶に我の知見を合わせた<知記憶>、そのすべてが事実だ」


 知記憶の王樹キュルハ様の言葉に魔樹大霊サーベデラッテアは頷いて、


「……はい。では、四神の預言書マーモティニクスが成ったと」


 と発言したまま、俺たちを四つの眼で見つめてくる。

 頭部は薄暗い仮面に四つの目があるだけ。他はすべて透けている。

 二つの目は人族のような虹彩だ。残りの二つの目は血色に染まっていた。


 四神の預言書マーモティニクスとは?


 闇遊の姫魔鬼メファーラ様と知記憶の王樹キュルハ様と光神ルロディス様は分かるが、もう一人、黒魔女教団には関わっている?

 黄金都市ムーゴとの関連なんだろうか。


 知記憶の王樹キュルハ様は薄青色と金色が混じる髪を靡かせながら、


「成った。闇と光の運び手(ダモアヌンブリンガー)のシュウヤ殿と四天魔女のキサラ殿だ。既にキュルハとメファーラの宇内乾坤樹の欠片を持っている!」


 力強く語ると、魔樹大霊サーベデラッテアは四眼が縮みながら幽体の一部が小さくなり、沼地から己の幻影の足を吸い寄せていたように見せていた動きがピタリと止まる。浅瀬の上に浮遊したままの二本の細長い足も半透明だ。

 魔樹大霊サーベデラッテアは、


「はい、素晴らしい、陛下のセラへの想いの一つの黒魔女教団の救世主の伝承も成ったと……」

「その通り、情報共有でもう見て聞いたと思うが、我らの何千何万とした眷属たちを屠ってきた魔界王子テーバロンテと悪神ギュラゼルバンを倒したのはシュウヤ殿たちだ。悪神ギュラゼルバンを完全に滅したのは、シュウヤ殿が助けた魔皇メイジナ殿である」

「はい! 魔界と惑星セラの脅威が減ったことになります……そして……三神の大協定預言の言葉もまた真実であったと」

「そうだ」


 知記憶の王樹キュルハ様の言葉の後、ポイラーシュが、


「はい、シュウヤ殿は〝髑髏魔人ダモアヌン外典〟も闇遊の姫魔鬼メファーラ様から得ていますから」


 と発言。


「……うむ。光神ルロディス殿も【暁の灯火】で【見守る者】であり、古竜の匂いと神印と魔印を宿した者が現れるとも預言していた」

「はい」

「「……怪魔と怪夜の闇と光の運び手(ダモアヌンブリンガー)……」」

「「メファーラ祠とキュルハの根の犀湖にルロディスの黄金の輝きを与えんとす」」


 とポイラーシュさんと魔樹大霊サーベデラッテアがハモリながら預言のような詩を語る。

 

 知記憶の王樹キュルハ様と闇遊の姫魔鬼メファーラ様と光神ルロディス様の黒魔女教団への預言の文か。

 知記憶の王樹キュルハ様は鷹揚に頷いた。


「サーベデラッテア、これより我の〝知記憶の王樹の器〟をシュウヤ殿に一つ譲り渡す、輝ける実も〝知記憶の王樹の器〟にかけるぞ、準備はいいな」

「分かりました――」


 とサーベデラッテアは六本の腕を掲げながら前進。

 知記憶の王樹キュルハ様も頷いてから、


「シュウヤ殿、此方に、儀式の途中で、我が持っている〝知記憶の王樹の器〟に魔力を注いでもらいます。輝ける実は溶けるので〝知記憶の王樹の器〟だけで構いません」

「分かりました」

「皆さんも洞の中に入ってもらって構いません」

「「「はい」」」

「ん」

「わ、わたしも大丈夫なのですか」

「エトアさんも大丈夫ですよ」

「は、はいでしゅ!」


 エトアは緊張したように少し体が強張っている。

 知記憶の王樹キュルハ様から名を呼ばれるとは思わなかったようだ。

 その皆で洞の中に入る。

 前進すると、サーベデラッテアが六本の腕から魔力を巨大な赤い球体に魔力を注ぐ。


 ジィィィンとした音が巨大な赤い球体から響く。

 赤い球体を押さえていた樹が持ち上がったが、巨大な赤い球体は動かない。

 

 知記憶の王樹キュルハ様も懐から樹の器と輝いている実を取り出した。


 赤い球体の一部から大量の<血魔力>か不明な赤い液体が宙空に出ると、その膨大な魔力の影響で洞の時間が止まったような感覚をなった。


 赤い液体の魔力は様々な樹と花々が咲いている。

 液体に見えるが違うようだ。

 洞の祭壇の周囲の無数の細かな樹が浮きまくる。

 と浮いていた無数の樹を赤い液体の魔力は吸収し、サーベデラッテアの六本の腕から出ている魔力によって操作されながら練られていく。


 赤い液体の魔力から様々な植物と樹の幻影が周囲に発せられながら知記憶の王樹キュルハ様の前に移動する。


 知記憶の王樹キュルハ様は片眼から魔力を発した。

 懐から出した樹の器と輝いている実を、その赤い球体から出ている<血魔力>のような魔力に付ける。


 知記憶の王樹キュルハ様は樹の器と輝ける実を離した。

 刹那、知記憶の王樹キュルハ様の片眼が弾け飛び魔力粒子となって、赤い液体の魔力と樹の器の〝知記憶の王樹の器〟と〝輝ける実〟に降りかかった。


 キュルハ様の片眼は直ぐに再生させる。

 赤い球体と輝ける実と樹の器はまだ浮いたままだ。

 まさか、片眼を犠牲にするとは、それぞれの魔力の潤滑油になるように、そのキュルハ様の片眼だった魔力が〝知記憶の王樹の器〟と〝輝ける実〟と赤い液体に付着していく。

 

「シュウヤ殿、今です――〝知記憶の王樹の器〟が〝輝ける実〟が始まります」

「はい!」


 <闘気玄装>と<血液加速(ブラッディアクセル)>を発動――。

 <メファーラの武闘血>と<魔仙神功>を発動しながら――。

 全身から<血魔力>を〝輝ける実〟と〝知記憶の王樹の器〟に送った。

 〝輝ける実〟は俺の魔力を得て溶けた。その溶けた〝輝ける実〟の魔力が〝知記憶の王樹の器〟に降りかかると赤い液体をも吸収し、形を様々に変化させていく。


 神々と大眷属と合同のアイテム錬成か。


 クナがこの行為を見たら失神してしまうかもしれない――。


 サーベデラッテアが操作していた膨大な赤い液体と知記憶の王樹キュルハ様の片眼の魔力と俺の魔力を得た〝輝ける実〟を吸い取った〝知記憶の王樹の器〟は、最終的に大きい器に変化して俺の手元に飛来した。

 

「シュウヤ殿、それが〝知記憶の王樹の器〟です。魔力を込めれば、シュウヤ殿の記憶が入った液体に満ちる。更に、液体に手と<血魔力>を注げば、思念で見せたい記憶のコントロールも可能です。その液体を眷属か仲間が飲めば、記憶の共有が成されます」

「「おぉ」」

「分かりました、ありがとうございます!」


 知記憶の王樹キュルハ様の秘宝、〝知記憶の王樹の器〟を戦闘型デバイスに仕舞う。


続きは明日。

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コミックス1巻~3巻発売中。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 知記憶の王樹の器ゲット!見せたい記憶をコントロールできるのは良いですね。大量の記憶を見せるのもアレだし、人によって見せていい記憶と見せない方がいい記憶とが有るでしょうし。 (アイテム創造で…
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