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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1410/2026

千四百九話 タクシス大砦に向け、突撃! の前に北の屯所へ

 エヴァは四眼四腕の魔族の肩に手を当て、


「バーソロンを狙った理由は?」

 

 と聞くと四眼四腕の魔族は殺氣を発し寒光の視線をエヴァに向け、


「あの炎狂鬼バーソロンだぞ、狙われるのは当然だろうが」


 と発言、エヴァは四眼四腕の魔族の気持ちを直に感じ体をビクッと動かす。瞬きを繰り返し「ん」と微かに息を乱した。優しいエヴァに殺気を当てやがった。ゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡の片方を守る古魔将アギュシュタンも右腕から<血魔力>を噴出させているのが見えた。


 暗殺者の職業柄、粋がるのは分かるが……四眼魔族に近寄り、


「お前たちが狙ったバーソロンだが俺の<筆頭従者長(選ばれし眷属)>だ。その大切なバーソロンに喧嘩を売った以上は覚悟はできているんだろうな? で、その依頼者はだれだ」


 と四眼四腕の魔族を睨む。その四眼四腕の魔族は、俺を見て顔色を変えると四つの眼を少し逸らした。周囲は静まりかえる。

 

「ご主人様、双眸が……」

「あぁ、すまん」

「ん、シュウヤ、少し怖い顔だった」


 ヴィーネとエヴァの指摘に頷きつつ目を瞑り元に戻し、四眼四腕の魔族を見る。四眼四腕の魔族は体を少し弛緩させて項垂れると、


「……依頼者は大魔商人ラシカラと、怪冥漁会ダバトカとラカンの兄弟だ」


 素直に吐いたか。

 バーソロンを見ると、そのバーソロンが、


「ラシカラとダバトカとラカンか、なるほど」


 と発言した。

 レンとルミコとサシィとアキサダとギリアムにコセアドは知っているように視線を合わせていた。

 レンの配下たちも知っているようにざわついた。

 大魔商人ラシカラと怪冥漁会ダバトカ・ラカンたちは結構有名か。


 レンは、


「ルミコ少し脅してあげて」

「うふ♪ うん♪」

 

 ルミコは振り返る。振り袖が揺れた。

 すると、左右後方にいた背の高い顔を布で隠す魔族たちが会釈して、右腕を振るう。持っていたハンドベルのような鈴を鳴らした。

 すると、大柄の処刑人らしき人物がぬっと前に現れてルミコたちに会釈してからバーソロンたちに近付く。ルミコたちに、


「待った」


 とルミコに指示を出す。


「指の数本を飛ばすだけですわよ?」

「それでも拷問は待て」

「ルミコ、シュウヤ様の言う通りに」

「はい」


 四眼四腕はルミコを見て顔色を青ざめた。

 監獄主監の噂は知っているようだな。

 とりあえず、バーソロンに、


「大魔商人ラシカラと怪冥漁会ダバトカ・ラカンの三人から恨みを買う覚えが?」

「はい、あります。百足魔族デアンホザーの歩兵隊、蜘蛛魔族ベサンの部隊、デラバイン族の輸送部隊などが一人残らず殺された。それ故一時期炎狂鬼バーソロンなど無数の渾名が付くほど、そいつらを追い回し調べては、見つけ次第殺戮を繰り返しました……」


 レン家の者たちがざわついた。

 レンと監獄主監ルミコも頷いている。

 バーソロンに話を促すように視線を向けるとバーソロンは頷いて、


「ラシカラたちは、老若男女問わず人身売買や臓器売買などを行なっていた。信仰する神々は様々ですが赤霊ベゲドアード団と似たような連中です。そのラシカラとタバトカ・ラカンの兄弟は諸侯並みに強いのも厄介で深い繋がりを持つ配下も少数で表に出ること少ない。配下を捕らえ拷問しても、拷問途中に謎の爆発を起こして死ぬようなこともあり……とかげの尻尾切り状態だったのです」

「地下で暗躍か」

「はい、【メイジナ大街道】と【メイジナ大街】や【サネハダ街道街】は広いですから」


 頷いた。そして、四眼四腕の魔族を見て、

 

「バーソロンが【レン・サキナガの峰閣砦】に近付くことを知っていたのか? どこで情報を得た、大魔商人ラシカラと怪冥漁会ダバトカ・ラカンからの報酬は?」

「ラシカラからだ。バーソロンの魔力に反応する〝闇神リヴォグラフノ赤目札〟も渡されていた。そして、事前に前金で極大魔石を十個をもらった。殺せば更に極大魔石三十が上乗せされる。任務を成功の暁には、魔太刀キクシゲ、魔甲落首、〝馬獣帝銀札〟と〝馬獣帝金絶比札〟持ちの血統書が付いた大魔獣ルガバンティと黒馬バセルンと黒馬ドールゼリグンをも得られることになっていた」


 エヴァは頷いた。この四眼四腕の暗殺者の言葉は嘘ではない。

 ありきたりだが、装備と極大魔石の金目当ての仕事か。

 そして〝闇神リヴォグラフノ赤目札〟でバーソロンの追跡か、過去バーヴァイ城の城主として活動していたバーソロンに闇神リヴォグラフが絡んだことがあった? 魔界王子テーバロンテと闇神リヴォグラフが衝突したことは聞いていないが、あ、眷属同士の小競り合いなら無数にあり得るか。

 

 しかし、暗殺を生業としているのなら、今の俺たちの状況は耳にしているはず。金や装備目当てとはいえ、俺たちを倒せる自信があったってことかな。暗殺者側の心理を気にしても仕方ないか。


 四眼四腕の魔族に、


「大魔商人ラシカラと怪冥漁会ダバトカ、ラカンの三人は、悪神ギュラゼルバンと恐王ノクターの勢力か?」

「分からない」


 エヴァは頷いた、藤色の眼は真剣だ。そのエヴァは二眼二腕の魔族の肩にも手を当てて、


「依頼者は、四腕の魔族と同じ?」

「そうだ」


 二眼二腕の魔族の暗殺者も肯定。

 エヴァは、その魔族の肩から手を離した。

 エヴァは瞬きをせず、バーソロンに視線を向けるとバーソロンは頷いて、


「はい、同じことを言ってました」

「ん、この暗殺者たちの言っていることは本当」

「エヴァ、ありがとう」

「ん!」


 天使の微笑も最高だが、つくづくエヴァがいて良かったと思える瞬間だ。が、これからは戦場だ。


「バーソロンとアドゥムブラリとグラドに、ケーゼンベルス、俺は、キスマリ、ヴィーネ、キサラ、ビシュエ、イモリザを連れてこれからタクシス大砦に向かうところだった。タクシス大砦に入るか、直ぐに悪神ギュラゼルバン側の陣地に殴り込みを掛けるかは不明だが」

「「はい!」」

「おう、手伝うぜ」

「ウォン! そのようだな、我も行くぞ! 悪神ギュラゼルバンと恐王ノクターを蹴散らしてくれるわ!」

「にゃお~」

「にゃァ」

「オゥ~ン」


 相棒と銀灰猫(メト)犀花(サイファ)がケーゼンベルスから離れた。

 <魔皇ノ嗅覚>でチェックを終えたか、<魔皇ノ匂力>の効果か不明だが、犀花(サイファ)の周りにケーゼンベルスの毛がいくつかふわふわと浮いて風が吹いているように見えた。生暖かい風なら、日本的に、神風か?


 魔皇獣咆ケーゼンベルスは神格を有しているスペシャルな狼だからな。

 犀花(サイファ)は、「オゥ~ン」と鳴いて、馬と犀に似た頭部を上向かせる。

 喉元の毛が靡いた。毛の下の皮膚は硬そうだ。犀花(サイファ)は、バーソロンとアドゥムブラリとグラドに寄っていく。

 

 そして、グラドの馬魔獣ベイルが見えないが、ベイルの魔素は下の踊り場にあると分かる。

 さすがにグラドは、騎乗したままここには入ってこなかったか。

 と、バーソロンの肩に乗った黒猫(ロロ)が、バーソロンの頬にちゅっとしていた。と、直ぐに跳躍して、グラドの足下に向かう。


「ふふ、ロロ様、素敵なキスをありがとうございます」

「ンン、にゃ」


 とバーソロンに尻尾を揺らしながら応えている黒猫(ロロ)さん。

 そのままグラドの右足に頭突きを行う。

 尻尾が傘の尾のように立っている。

 くねくねとした魅惑的な尻尾ちゃんだ、同時に、俺たちに菊門を見せていた。


 ピンクなお尻ちゃんには、うんちさんはこびりついていない。と、自然と笑ってしまう。


 リラックスしてから、アドゥムブラリたちに、


「で、そこの魔地図にもあるように、ここから右上、マセグドの大平原とバーヴァイ地方の境目あたり、恐王ノクターの勢力の軍が、レン側の北方マニア馬兵団と黒騎虎銃大隊と睨み合っている」

「では、俺たちの戦力も分散すると……敵の狙いか」

「そうだな、入念な侵略準備、魔界王子テーバロンテを倒すか、倒された後の戦略は、両陣営とも最初から想定していたということだろう」


 頷いたアドゥムブラリは、


「アキサダとオオノウチの謀反に、見張りと工作任務の悪神ギュラゼルバンと恐王ノクターの眷属たちの暗躍を聞くと納得できる」

「あぁ」

「それと、狩魔の王ボーフーンの大眷属ジィリザールの襲来、否、見張りか、そして、魔人武王ガンジスの弟子ドヌガと魔神ガンゾウなどの遭遇戦も、血文字で聞いているぜ。で、そこの仙女たちと魔犀花流派の四人がそうなんだな」


 と、アドゥムブラリは南華仙院の明櫂戦仙女のニナとシュアノと巧手四櫂のイズチ、インミミ、ゾウバチ、ズィルのことを指摘。

 新参の六人は、アドゥムブラリたちにそれぞれの仕種で頭を下げた。


「そうだ、戦力分散の話の続きだが、先ほどのキスマリ、ヴィーネ、キッカ、キサラ、ビシュエ、イモリザに、今指摘した魔犀花流派の高弟の四人たち、通称、巧手四櫂のイズチ、インミミ、ゾウバチ、ズィルと魔犀花流派の兵士たちを連れていく。エヴァ、サシィ、ミレイヴァル、ラムラント、ヴィナトロス、フィナプルス、エトア、マルア、アミラ、古バーヴァイ族だった四腕戦士キルトレイヤと四腕騎士バミアルは、【レン・サキナガの峰閣砦】の守りだ」

「<筆頭従者長(選ばれし眷属)>が二人と、<召喚霊珠装・聖ミレイヴァル>のミレイヴァルにフィナプルスが居れば、守りは十分だな、では、俺も主と出陣組に交ざろうか」

「おう」

「ウォン! 我も攻めるぞ!」

「了解した」

「陛下、わたしもお供したいですが、守りにつきます。三腕のバリィアン族の王でもあるパセフティとの会合内容はサシィたちにも血文字で送っていましたが、レンにはデラバイン城を任されているわたしの情報を直に伝えたほうが今後の連携の話もスムーズに進むかと思いましたので」

「ん、バーヴァイ城、バリィアンの堡砦、源左砦の連係は大事」


 バーソロンとエヴァの言葉に皆が頷く。


「あぁ、それはそうだな。その件では、バリィアンの堡砦にいるアチと血文字で連絡を取った」


 バーソロンは頷いて、レンとサシィを見る。


「はい、レンさんとサシィ、よろしくお願いしますよ。あ、レンさん、源左の呼び方に合わせてサキナガ家と呼んだほうがいいのでしょうか?」

「ここではレン家が浸透しているので、レンのままでお願いします。私が【源左サシィの槍斧ヶ丘】に移動した時は、サキナガ家としての名が付いてまわると思いますから、その時はサキナガ家でもいいです」

「分かりました」

 

 すると、光魔騎士グラドが、


「陛下、俺も<筆頭従者長(選ばれし眷属)>バーソロンと、光魔騎士ヴィナトロスと共に【レン・サキナガの峰閣砦】の守りに就きます」

「分かった、細かな指示はエヴァにサシィに、レンから聞いてくれ」

「ハッ!」


 敬礼してくれた光魔騎士グラド。

 魔軍夜行ノ槍業の飛怪槍のグラド師匠と名がかぶるが、俺の重要な必殺技の壊槍グラドパルスをよく知るイケメン男だ。

 そのグラドはアドゥムブラリと会話をしてから、キスマリたちと会話をしていく。

 

 アドゥムブラリの幼馴染みの件などを含めた新人六人とレン家の皆との話し合いは、タクシス大砦の城主の間の様子を見ながら暫く続く。

 その間に、ゾウバチが、一旦、北の尖塔屯所に向かった。

 魔犀花流派の兵士に直ぐに戦場に向かうと知らせに向かうためだ。

 北の尖塔屯所についての蘊蓄を、レンとルミコから聞きつつ、【サネハダ街道街】を通るように、【ララガべ砦】、【ベーシアン砦】、【タクシス大砦】の方角に向かう街道の名を幾つか聞いていく。

 侍の名が付く街道とモンスターが沸く墓場のエリアが気になるが、空から行くから鳩のマークの目印を幾つか覚えただけにした。


 そして、途中から南華仙院のニナとシュアノと魔犀花流派のゾウバチとズィルとインミミとイズチに質問が増えていく。

 

 ◇◇◇◇


 団欒を終えると、タクシス大砦に向かう者たちが、自然と俺の周りに集結。


「ご主人様、準備は万全です」

「シュウヤ様、行きましょう!」

「オゥ~ン」

「ンン、にゃァ」


 銀灰猫(メト)に乗ったヴィーネと犀花(サイファ)に乗ったキサラ。

 魔杖槍犀花を持たなくても行けるようだ。


「にゃごぉ~」


 と黒虎から大きい黒猫に変身してアドゥムブラリに「うひゃぁ」とのし掛かっている黒猫(ロロ)さんが面白い。

 

 そのアドゥムブラリと黒猫(ロロ)を軽く叩いてから、皆に、


「エヴァたち悪神ギュラゼルバンの勢力をぶちのめしてくる。では、皆、行こうか――」

「「「「「はい!」」」」」

「行こう!」

「がんばるぜぇ」

「皆さん、ご健闘を祈ります」

「「「「――祈ります!!」」」」

「「「おう、ご勝利を!!!」」」

「「「「「――はい、皆様の勝利を祈ります!!!」」」」」

「「戦神マホロバの加護を!!」」

「「「「シュウヤ様ァァァ」」」」

「ん、がんばってね、シュウヤとロロちゃんたち!」

「おう!」

「ンン」

「「行きましょう!」」

「「「はい!」」」

「「「「えい、えい、おう!」」」」

「ウォォォン――」

「「承知!」」

「レッツゴーゴー♪ <魔骨魚>ちゃんたちも行きましょう~」



 と、一足先に駆けた。


「あっ――」


 銀灰猫(メト)に乗ったヴィーネの気配が直ぐ背後に感じる。

 そのまま廊下を駆け抜け階段を一気に跳躍し踊り場の床を滑るように前進――レン家の方々が多い踊り場を駆けて跳躍――。

 <武行氣>を活かして空を飛翔――。


 よっしゃ――。


「ンンン――」


 背後から相棒の気配を感じ取ると触手に捕まった。

 ぐわんっと視界が背後に引っ張られるまま相棒の背に乗せられた。

 黒猫(ロロ)の気合いを感じるがまま首に二つの触手手綱の感覚を得る。


 <神獣止水・翔>の感覚共有スキルが<無方南華>と融合していく感覚は奇妙だと、相棒の筋肉と黒い体毛が動くと自然に黒猫(ロロ)は大きい黒猫から黒馬に変化させた。相棒の馬に近い背に跨がった。

 黒い毛の感触は柔らかく気持ちいい――。

 その下の最長筋と中臀筋に広背筋などにはゴツさがあるが、不思議な軟らかさもある。この硬軟さは少し癖になるほどのフィット感。

 金玉と一物に合わせて凹んで自動的に動いて守ってくれるのが良い!


「にゃごぉ~」


 と気合いが入った黒馬(ロロ)

 あはは、相棒は、あの時を思い出しているな……。

 【邪神ノ丘】、迷宮都市ペルネーテの二十階層の時を。

 ペルネーテの二十階層は邪界ヘルローネの異世界で別の大陸だった。


 そこで邪神シャドウの軍勢と魔界セブドラの轟毒騎王ラゼンの軍勢が衝突していた。そんな軍勢相手に俺と相棒は一騎駆けを行なったんだよな――と、黒馬(ロロ)の腹を足で少し叩く。


「ンンン、にゃおぉぉ」

続きは明日。

HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1~20」発売中。

コミックス1巻~3巻発売中。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アドゥムブラリとケーゼンベルスは攻勢組。バーソロンとグラドは守勢組に別れましたか。このタイミングでこの人員の戦力アップはありがたい。 [一言] >「大魔商人ラシカラと怪冥漁会ダバトカ、ラカ…
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