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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1407/2000

千四百六話 峰閣砦に到着

2024年3月19日 23時16分 追加

 峰閣砦に向かおうとしたところでキサラとルミコが飛来してきた。

 キサラはダモアヌンの魔槍を跨いでいた。

 ルミコは魔靴の効果か飛行術で浮いている。

 魔技隊の隊員も飛行術が可能か。


「シュウヤ様、お帰りなさいませ、ヴィーネとモゴゼ大隊の分隊にレンたちは天守閣にいます。作戦会議中です」

「シュウヤ様、悪神ギュラゼルバンと恐王ノクターの眷属たちの討伐をありがとうございました」

「おう、天守閣に皆がいるのか、アキサダも一緒かな」

「はい、皆は天守閣か、その下の踊り場を兼ねた広場にいるかと思います」


 頷いた。

 

 アキサダの宝の件を進めたいが……。

 荒神イギラムアの魔精地下堂の遺跡だったな。


 そこには……。

 ミシャグジさまの大鏡石・乙。

 旧神エフナドの秘奥黒寿宮殿への道・地下大動脈層大図。

 神魔の大燭台。

 神魔の大蝋燭。

 古の義遊暗行師ミルヴァの仮面。

 古の義遊暗行師ミルヴァの防護服。

 古の義遊暗行師ミルヴァの短槍。

 古の義遊暗行師ミルヴァの神剣。

 古の義遊暗行師ミルヴァの靴。

 神魔シャドクシャリーの書。

 覇霊魔牛次元魂石。

 などの品があると聞いている。

 回収しておきたいアイテム類だ。


 とりあえず、キサラとルミコを見て、


「作戦会議中とは?」

「レンが〝秘鏡ノ大具〟と魔軍地図を使い、タクシス大砦に援軍を送り、【マセグド大平原】側で恐王ノクターの勢力と睨み合っている黒騎虎銃隊にも援軍を送るべきか、などの議論を行っていました」

「援軍って、やはり悪神ギュラゼルバンと恐王ノクターは攻めてきたのか、キサラの案は?」

「はい、シュウヤ様なら、タクシス大砦を救いに動くと思いますと、発言しときました。ヴィーネとビュシエも同意見でした。そして、【マセグド大平原】の野戦もシュウヤ様とロロ様なら確実に蹂躙可能とは思いますが、平原側の恐王ノクターの勢力の動きは、二つの砦を落としタクシス大砦を攻めている大部隊とは違い鈍い。ですから、その鈍さには何かの大きな魔神、恐王ノクターの思惑があるように思えます」


 キサラの鋭い意見に頷いた。


「【メイジナ大平原】側の軍の動きが鈍い理由は、悪神ギュラゼルバンや恐王ノクター側の本国に近いだろう領域の【マセグド大平原】側の戦いも不透明なところに起因する可能性があるな。順調だから軍を待機させているのか、順調ではないが【マセグド大平原】側で行われている戦いのため、あえて【バーヴァイ地方】と【メイジナ大平原】の国境沿いに軍を展開させている状況なのかも知れない。前にも言ったが、【マセグド大平原】では、テーバロンテの残党と魔傭兵が組んで、恐王ノクターの勢力と悪神ギュラゼルバンの勢力に対して、ゲリラ戦を展開している勢力もいると聞いている」

「「はい」」


 皆が頷く。

 ルミコは、


「恐王ノクターの勢力が押しているとも情報がありましたわ。ですので、悪神ギュラゼルバンと手を組むのも、ちょっとねぇ、とレンは言っていました。あたいも一時的に手を組んだだけと認識しているわ」


 ルミコの言葉に頷いた。

 悪神ギュラゼルバン様の大眷属のヴァドラ・キレアンソーと戦った時にも言ったが、まさに『一合一離』。


 ヘルメとグィヴァも頷いている。

 明櫂戦仙女のニナとシュアノ、巧手四櫂のイズチ、ゾウバチ、インミミ、ズィルは沈黙し話を聞いていた。


 ルミコに、


「で、前線に残るは【タクシス大砦】のみか」

「はい、【レン・サキナガの峰閣砦】の北の要衝【タクシス大砦】で拮抗中とのことです。モゼルダ、ゴイアン、ゼルタクスゼイアンの魔傭兵団に裏切りはなかったとの報告もありました」


 頷いた。

 モゴゼ大隊の本隊が【ララガべ砦】、【ベーシアン砦】、【タクシス大砦】での戦いの最中に裏切っていなくて、分隊長ゴザクラもほっとしているだろう。


「では、【レン・サキナガの峰閣砦】の破壊工作はすべて陽動……いや、俺たちの行動した結果か」

「はい、〝二刻爆薬ポーション〟解除など、未然にシュウヤ様たちが様々な事件を防いだ結果です」

「はい、他にも、狩魔の王ボーフーンの大眷属ジィリザール、魔人武王ガンジスの弟子ドヌガ、魔神ガンゾウなどの予定外な出来事もすべて順調に処理をしたシュウヤ様がいるから、僅かな被害のみで済んでいる」

「はい」

「そう言ってくれるのはありがたいが、ここは【レン・サキナガの峰閣砦】と【サネハダ街道街】と【メイジナ大街道】と【メイジナの大街】が連結している大きい街で、地下闘技場も幾つかある。強者が集まる街だ。それは、悪神ギュラゼルバンも恐王ノクターも知っていたはず……そこに混沌の坩堝を発生させてスパイスを混ぜれば、その混沌がどうなるか? ぐらいは考えていたはずだ」

「……はい」

「それは、そうですね」


 悪神ギュラゼルバンも恐王ノクターも、アキサダやオオノウチに、レンの首級をあげさせ自由にさせ【レン・サキナガの峰閣砦】の国民が消耗しきったところをハゲタカファンドの如く、【メイジナ大平原】やバーヴァイ地方の資源を根こそぎ刈り取るように、大軍を投入したかったのかも知れない。


 一方で軍を使わず、超限戦のように時間を掛ける方法も恐王ノクターは模索していたようなふしがある。


 内側から、じわりじわりと侵略すれば楽に済む。

 レン家の行政役人にレン家の者と瓜二つの第三国人を大量に送り込めば、スパイし放題だ。

 軍人と民間人の境界は非常にあやふやになる。

 表向きは普通を装った第三国の意向で動くスパイ機関の出来上がりだ。

 徐々に、そのスパイ機関が、その土着のレン家と関係の深い血筋を調べつつ、あらゆる方法で静かにその国民をジェノサイドしていく、とかな。


 地球の話で喩えるが……。

 インテリジェンス機関の高官に、外国人とマフィアにカルトと関わりの深い人材が表向きは真っ当なフリをして就任している可能性はあったからな。

 

 が、レン家側の砦攻略に踏み出た両勢力は、そうした時間を掛ける方法は失敗したと考えたってことだろうな。


 同時にアキサダ&オオノウチの謀反と眷属&魔傭兵の破壊工作に自信があったってことだろう。

 二重、三重どころではない作戦規模だったからな。


 そのことは言わず、


「では、アキサダの紅奠一族の暗殺仕事人は暗殺の仕事はしなかったんだな」

「はい、しなかった。魔傭兵団ゴイアン、魔傭兵団モゼルダ、魔傭兵団ゼルタクスゼイアンは、レン家側で戦っていたと、あたいの上草影衆の〝影読〟と、鳩連隊ソウゲンの〝魔金鳩〟と、そのアキサダの紅奠一族の〝陰蜘蛛司〟からも同様の報告があったから確実ですわ。レン家側として多数の死者を出しつつも生き残りのモゴゼ大隊は【タクシス大砦】にて奮闘中とのことです」


 頷いた。


「〝影読〟と〝魔金鳩〟〝陰蜘蛛司〟とは、それら組織の中でも諜報を専門にする部隊か?」

「うん、そうよ。そして、シュウヤ様が峰閣砦の街に潜伏していた大眷属と眷属の中隊を潰したことで、悪神ギュラゼルバンと恐王ノクター側の司令官は、雇いの魔傭兵を捨てたっことでしょう」

「あぁ、そうだろうな」

「そのモゴゼ大隊の分隊も天守閣に招いています」

「分かった。レンのところに向かう前に下の兵士たちのことだが」


 と下にいる神界側の南華仙院と魔犀花流派の人面瘡を有した鎧を着ている兵士たちを見る。


 俺たちの視線に合わせて挨拶の仕種を行ってくれた。

 南華仙院の方々は胸元に片手を当てている。

 魔犀花流派の方々は両腕をクロスさせながら、その両手を己の胸に置いていた。

 ルミコは、


「魔犀花流派と南華仙院の兵士ですね」

「そうだ、兵士たちが休める宿舎は用意できるかな」

「勿論。部下のルイトガたちに、北の尖塔屯所に案内させますわ」

「了解、頼む。ニナとシュアノに、イズチたちもいいな?」

「「「「はい」」」」

「「承知」」


 ルミコは直ぐに部下に指示を出す。

 頭部から布を垂らして顔を隠している魔技隊の数人が降下していく。

 キサラとルミコは明櫂戦仙女のニナとシュアノと巧手四櫂のズィル、インミミ、ゾウバチ、イズチに視線を向けた。


「血文字で聞いています、わたしは光魔ルシヴァルの<筆頭従者長(選ばれし眷属)>の一人、名はキサラです。よろしくお願いします」

「レン家のルミコよ、よろしく」

「南華仙院の大仙人ラジュラン様の弟子の一人、名はニナ、特務部隊を率いています。通称は明櫂戦仙女と呼ばれています、よろしくお願いします」

「同じく南華仙院の大仙人キメラルカ様の弟子の一人、名はシュアノです」

「皆、紹介はそこまで、天守閣に行こうか」

「「「「はい」」」」

「「承知」」

「「分かりました」」

「ンン、にゃ~」

「にゃァ」

「オゥウゥンン――」


 相棒が姿を少しだけ大きい黒虎に変化させると、銀灰猫(メト)が頭部に乗る。

 幻甲犀魔獣の犀花(サイファ)は、飛翔して、その二匹の後を追い掛けた。


 俺たちも相棒を追うように峰閣砦に向かう。


 ――天守閣の直ぐ下の階層の踊り場に到着。

 踊り場は広く端に昇降機が数台停まっている。


 その踊り場にキスマリがいた。


「主、もう作戦会議は始まっているぞ。我は主なら、戦場に行ってしまうんではないかと心配して、うずうずしていたのだ!! 〝魔犀花流槍魔仙神譜〟も読みたいぞ!」

「分かったから、暫しここでまて、キスマリが活躍できる戦場は無数にある。そして、〝魔犀花流槍魔仙神譜〟を読んでいる暇はない」

「おおぉぉ! 分かった!」


 六眼キスマリの四つの腕が交互に天を衝く。

 更に、二つの手に魔剣アケナドと魔剣スクルドを召喚しては、その魔剣でお手玉をやり始める。


 曲芸師ってな勢いだ。

 魔剣師が極まっているから手先が器用だな。


 他にも、キルトレイヤたち、ペミュラス、アキサダを拘束中の悠久の血湿沼ナロミヴァス、闇の悪夢アンブルサン、流觴(りゅうしょう)の神狩手アポルアがいた。

 

 ナロミヴァスたちは、早速、ニナ、シュアノ、ズィル、インミミ、ゾウバチ、イズチに挨拶。


 ニナとシュアノは皆との会話で、何回か片頬が引き攣っていた。 

 キッカとキルトレイヤとバミアルとキスマリと話をしているときはあまり顔色に変化がなかったが光魔ルシヴァルの眷属だから分かるが……。


 魔犀花流派の〝巧手四櫂〟のズィル、インミミ、ゾウバチ、イズチはナロミヴァスたちと普通に会話を行う。

 サシィとナギサと魔傭兵ドムラチュアのギリアムとも普通に挨拶していた。


 特務部隊を率いていた明櫂戦仙女の二人は、エラリエースを助けにきた神界騎士団の方々のように魔界の旅は慣れっこのはず、しかし、アンブルサンたちは俺の眷属で光属性も持つが悪夢の女神の三姉妹と関わっていた眷属たちで闇属性が濃厚だから勝手が違う?


 肌が合わないはあるかも知れない。

 が、現状の立場は受け入れてもらうしかない。

 そして、今は急ぎだ。魔神ガンゾウとの戦いからセラの時間にして半日、もう一日が過ぎている。


 会話を直ぐに切り上げて、皆で峰閣砦の天守閣へと進む。

 ゲストルームの大楼閣が真上にある天守閣もかなり広い。中央にはレンと側近部隊が並ぶ。

 ヴィーネとサシィとイモリザたちもここだ。


 手前にいたヴィーネが、


「ご主人様、お帰りなさいませ――」


 走り寄ってきた。

 頷いて、


「おう、ただいまだ」


 と手を握って天守閣を進む。

 エヴァたちもいる。


「ん、おかえり~」

「「シュウヤ様」」

「シュウヤ!」


 <筆頭従者長(選ばれし眷属)>のサシィは魔斧槍を翳す。

 <召喚霊珠装・聖ミレイヴァル>のミレイヴァルは聖槍シャルマッハの石突を床につけたまま待機。

 <筆頭従者長(選ばれし眷属)>のキッカは渋い魔剣・月華忌憚を俺に見せるように挨拶しつつウィンクしてくれた。

 サイデイルの冒険者ギルドマスターの時には、あまり見せなかった女としてのアピールが可愛い。


 三腕の<従者長>のラムラントはお辞儀をしてくれた――。

 <筆頭従者長(選ばれし眷属)>のビュシエは<血魔力>を発しながら宙空に血の剣の群れを召喚して浮いている。

 少し怖い。

 フィナプルスの夜会の魔女フィナプルスは白い翼を畳みながら近付いていたヴィーネと会話を始めていく。

 百足高魔族ハイデアンホザーのペミュラスは、そのヴィーネの背後で隠れながら百足の多脚を縮めている。

 巨人にも成れ俺の眷属になった古バーヴァイ族四腕戦士キルトレイヤと同じく巨人にも成れる眷属バミアルは、キスマリと豪快に腕を交差させて、周囲に衝撃波を発生させてナギサを吹き飛ばしそうになっていた。

 <光魔ノ秘剣・マルア>のマルアとアミラの魔槍具装甲のアミラとエトアは、両腕を合わせて〝ずいずいずっころばし〟と似たゲームをしている。


 復活、眷属となった悠久の血湿沼ナロミヴァス、闇の悪夢アンブルサン、流觴(りゅうしょう)の神狩手アポルアとアキサダが俺たちの近くに並んだ。 

 ここに古魔将アギュシュタンと光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスを出せば、壮観かもな。


 相棒と銀灰猫(メト)は端のほうにいるナロミヴァスの両足に猫パンチを行っている。

 幻甲犀魔獣のサイファはナギサとマルアの近くにいた。ナギサは龍をあやす能力もあるし、他の動物に魔獣と幻獣も扱えるかな。

 そして、大半の皆が、明櫂戦仙女の二人と魔犀花流派の四人を注視していく。

 六人の新参は少し緊張しているような面持ちとなっていた。


 すると、ココアミルク肌のイモリザが銀髪を立たせて、可愛い耳を露出させながら、


「使者様~砦が二つもあっという間に落とされたーサイデイルの門番長として、わたしが悪神ギュラゼルバンたちをぎったんばったんにする! と宣言しても止められてしまったのです!」


 と少し興奮しているようだ。


「動かざること山の如しだ」

「えぇー山になったら、ずっと防御しないとだめじゃないですか!」

「はは、そうだな、後で大暴れを頼む」

「はい♪」


 銀髪が一気に降りて前に見えなくなっているイモリザが面白い。

 そんなイモリザに寄るマルアとアミラは楽しそう。

 布で顔を隠している魔技班の数人がルミコを出迎えていた。

 ルミコはレンに「レン様、ただいまですわ」と挨拶し天守閣の奥に向かう。


 レンは俺たちに向け、


「うん、お帰り、シュウヤ様、待ってましたよ」


 そのレンに片手をあげて、


「おう」


 と言いながら歩いた。

 

 レンは、〝列強魔軍地図〟と似た立体的な魔地図を中央に置いて横に〝秘鏡ノ大具〟を置いている。


 レンの着物は前と同じに見えたが、レンの太股は隠れてシックなversionに変化していた。

 

 レンの背後には、朱色と漆黒が基調の鎧が渋い部隊がいる。

 力士のような方で右手にハンマーを持つ方々もいた。


 黒鳩連隊と黒き大魔獣ルガバンティを複数連れた魔銃使いと黒騎虎銃隊は左右に並ぶが数は少ない。


続きは明日。

HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1~20」発売中。

コミックス1巻~3巻発売中。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「動かざること山の如しだ」 >「えぇー山になったら、ずっと防御しないとだめじゃないですか!」 イモリザが理解してるだと!?w [一言] >モゴゼ大隊の本体が【ララガべ砦】、【ベーシア…
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