千四百二話 戦神マホロバの恩寵と<無方剛柔>などの獲得
2024年3月15日 1時57分 追加修正
これが南華魔千樹なのか。
ニナとシュアノの魔杖槍南華を地面に置いた。
「にゃおお~」
「にゃァ」
「オゥウゥンン」
相棒たちも見上げながら南華魔仙樹に挨拶するように鳴いていた。
暫し南華魔仙樹を眺め続けた。
燃えている葉は形を崩さず、燃え続けている。
火の粉の散り具合がネズミ花火のようだが数分経っても葉の形は崩れていない。銀色の炎の勢いは一定だ。
形が崩れない銀色の炎から、ある種の哲学や信念を感じた。
銀色の炎の葉脈は黄金の炎。
しかも、擦弦楽器の音が響いてくるから、かなり神秘的だった。
神の葉か神の炎にも見えた。
その葉の形の炎は銀の火の粉を散らしつつ南華魔仙樹の枝から離れた。炎は舞い散るどころか俺の近くに飛来し、周囲に円陣でも構築するように回り始めると擦弦楽器の音楽も響かせてきた。
自然と<魔音響楽・梁塵>と<魔音響楽・王華>が発動していた。
銀色の炎が魔界の空間に干渉しているように揺らめく。
虚ろの異空間が炎の揺らめきの中に見えたと思ったら<闇透纏視>で凝視せずとも、その銀色の炎の中に南華仙院らしき建物と、その部屋の中で大きな琴か擦弦楽器を弾いている大仙人らしき女性が見えた。
――情緒を感じさせる音が大仙人らしき存在のいる空間へと誘惑されているような思いに駆られてしまう――。
この揺れる想いはなんだ――。
<魔音響楽・梁塵>の効果か――。
と、突如、音から不穏な雰囲気を醸し出されると大仙人の女性が俺を見やるように視線を向けてきた。
途端に、音波の攻撃が飛来した?
<魔音響楽・梁塵>の効果が切れる。
楽器を弾く大仙人の姿は消えた。
銀色の炎が見えるのみだが、膜となっている円陣の中身の炎が細かな弦にも見えてきた。
すると、葉の形の炎から弦と鳥の音が鳴り響く。
銀の火の粉が音符のように見えてきた。
音と鳥とは不思議すぎるが、既視感がある。
<無方南華>を得た直後に、魔杖槍犀花と〝魔犀花流槍魔仙神譜〟から音波を得たが、その時の感覚的に近いか。
「にゃ?」
相棒の周囲にも葉の炎が回り円陣が構築された。
炎は薄い膜状に拡がって油膜のような模様が形成されていく。
俺の周囲の葉の炎は縁から炎が膜状に拡がっていく。
ヘルメの《水幕》に囲われた時と少し似ているが基本は銀色の炎だから異なる。
銀灰虎と犀花には銀色の葉の炎は回っていない。
黒豹は体から橙色の燕の形をした魔力を放つと黒猫の姿に戻し、頭部を前に出す。鼻孔を拡げて窄めながら小鼻をクンクンと動かしつつ葉の形を維持し燃焼している魔力の匂いを嗅ぐ。
「ロロ、銀色の火の粉を吸い込むと痛いと思うから止めておけ」
「ンン」
黒猫は喉声のみ。
案の定、銀色の火の粉を鼻の孔から吸い込んでしまったようで、頭部を上下に振るようにクシャミをしていた。
言わんこっちゃない。
その黒猫は二、三回、頭部を右前足で掻くように擦ってから、その肉球をモグモグと噛むとエジプト座りに移行した。
つぶらな瞳を寄越す。
白髭は少し下がっている。
どことなく、文句を言っている表情に思えた。
「ロロ、戦神マホロバ様の褒美の一環だと思うから、大人しく待っててくれ」
「にゃお」
返事をしている黒猫の少し桃色掛かった鼻先を人差し指でツンツクしたい。が、今はしない。
すると、目の前に誕生したばかりの巨大な南華魔仙樹の魔力が強まった。
根っこから大地の魔力を吸収しているようにも見える。
幹の中心に紫紺と銀の花紋の魔印が現れて光を帯びると点滅していく。と、何かの信号のように点滅が速まりながら紫紺と銀の花紋が盛り上がった。普通の浮き彫りより高い。
分厚い花弁彫刻となった。
先ほどペグワースたちを思い出したが、まさにそんな彫刻師が造り上げたような一品に見えた。
巨大な南華魔仙樹の幹が蠢く。
樹皮が波打ち撓みながら盛り上がったばかりの紫紺と銀の花紋の内側へと吸い込まれていく――。
南華魔仙樹のすべてが紫紺と銀の花弁に吸い込まれた。
残ったのは、銀の火の粉を散らしている紫紺と銀の花弁のみ。
紫紺と銀の花弁は浮いている。
その紫紺と銀の花弁は急激に圧縮されたように小さくなった。
見た目が装身具か徽章にアクセサリーのようなアイテムに変化。
ポッと銀色の炎も発生した。
「「「「おぉ」」」」
「ングゥゥィィ」
俺もだが皆が驚いた。
肩の竜頭装甲もアピールしているから、たぶん、あのアクセサリーを取り込みたい?
が、あの装身具か徽章は戦神マホロバの品だと思うし、神界のアイテムを取り込めるようになったとはいえ相性は悪いように思える。
「南華魔仙樹が、見たことのない戦神マホロバの徽章に?」
大柄の南華戦士が語る。
ニナとシュアノは驚いたまま紫紺と銀の花弁を見続けている。
紫紺と銀の花弁は浮いたまま動かないから、そのニナとシュアノに、
「これは何か分かるか?」
と聞くと、二人は頷いて、
「推察ですが、大仙人ラジュラン、ミィンア、キメラルカ様が南華魔仙樹や北華魔仙樹などを利用した<戦神ノ樹式>と<戦神ノ褒章>の時と少し似ています……」
「はい、紫紺と銀の花弁は大仙人ラジュラン様が使う<原初ノ樹式>とも似ている。シュウヤ殿と神獣様の周りに発生している銀色の炎は<南華銀花>などのスキルや結界の法術に近い」
「たしかに、<南華銀霊>や仙鳥を活かしたスキルの効果にも近いです」
と色々と教えてくれた。
似たようなスキルはあるようだな。
二人に、
「そっか、ありがとう南華仙院に伝わるスキルは多彩なんだな」
ニナとシュアノは笑顔となって、
「「はい!」」
と元気に返事をしてくれた。
もう先ほどまでの殺気や鋭い視線はない。
巧手四櫂の四人も傍にきたが、明櫂戦仙女と南華仙院の戦士たちと争うことはない。
すると、浮いていた、紫紺と銀の花弁が飛来――。
思わず半身の姿勢で避けた――。
紫紺と銀の花弁は、俺の円陣の銀色の炎の膜を突き抜ける。
円陣の炎の膜と葉の形は、火の粉を撒き散らしたが、直ぐに炎として再生。
そして、火の粉の粒子が周りを巡る勢いが加速し、より円陣らしくなった。
と、生温かい風をどこからともなく感じた。
同時に琴か弦のような不思議な和音がまた響く。
風と音は戦神マホロバの意思か?
様々な鳥の声が響く。
鳥の音の声の主は、膜を突き抜けた紫紺と銀の花弁からか――と飛翔している紫紺と銀の花弁を凝視。
紫紺と銀の花弁は、銀色の炎の魔力を発している。
その魔力の形が、鶏か朱鷺か、鸞か、様々な鳥に変化していた。
羽は赤色から様々に変化。
紫紺と銀の双眸となる。
中身は紫紺と銀の花弁だから不思議だ。
紫紺と銀の花弁は鳥の造形の魔力を発して、俺の背後の斜め上空で弧を描くと、俺のほうに頭部を向けて、飛来してきた。
最初は避けてしまったが、鳥の造形の魔力を発している紫紺と銀の花弁を受け入れようか。
その紫紺と銀の花弁が、円陣の銀色の炎の膜と再び衝突。
今度は、火花を散らしながら紫紺と銀の花弁が消えてしまう。
刹那、鳥の鳴き声と鈴の音が響いた。
銀色の炎の膜が揺らめく。
と、その炎の中に、突如として、美しい世界が描かれた。
戦神マホロバ様が魔界と神界の大地を見下ろす。
そのまま万緑の山脈を飛行するような視点に移行した。
滝を下るように、森林を突き抜ける。
真夜の魔界の夜空で、大きく欠けた月のような巨大魔法を喰らって倒されている巨大な龍と似たモンスターが墜落していく。
下の森でもドラゴンと大きな蜂モンスターと大きな鳥モンスターと大きいな蝶モンスターが争い合う様子から、森で静かに暮らしている動植物を狙う猪やゴブリンのようなモンスターと魔族たちが見えた。
すると、和風の屋敷が集結している山寺のような場所となる。
そこで生活し訓練をしている少女と少年たちが見えた。
ニナとシュアノと似た女の子もいた。
その女の子たちが徐々に成長していく姿が走馬燈のように展開された。これはニナとシュアノの過去の記憶かな。
南華仙院の秘宝の奥義書は数種類あるようだな。
宝物庫には武器と防具はかなりある。
端正な顔立ちの方から<無方南華>の奥義書が魔族のガンゾウに盗まれたことを教わっている。
大仙人は老人だとイメージしていたが、違うのか。
かなり端正な顔立ちで、渋い男だ。あれはモテるに違いない。
ラジュラン、キメラルカ、ミィンア、の三人の内の一人かな。
場面が変わり、廃墟となった。
ニナとシュアノは、そこで坊主頭の黒い衣と灰色の長袖を着た者たちと戦う。魔犀獅子流か犀刻獅子流かな。
肩に人面瘡を鎧に擁した方々も現れた。
魔犀花流派だろう。
その人面瘡を魔鎧に持つ魔犀花流派は一人一人が、かなり強い。
ニナとシュアノが率いる南華仙院の戦士団は苦戦している。
が、戦力的にはほぼ互角か。
ニナとシュアノの二人は特に強い。
二人は四人の〝巧手四櫂〟と互角。
一人一人個別で戦えばニナとシュアノが押し込むことが多い。
二人は永く明櫂戦仙女としてがんばったんだな。
すると、二人の記憶を映していた銀色の炎と火の粉の魔力を纏った
紫紺と銀の花弁が鳥の造形に変化しながら俺の体に突入してきた。
体内に光属性の魔力が増えたと理解した刹那――。
体の皮膚の細胞が活性化した。
自然と蒸気的な魔力が皮膚から発生していく。
ピコーン<戦神マホロバの恩寵>※恒久スキル獲得※
※<南華魔仙樹>※恒久スキル獲得※
※<無方剛柔>※スキル獲得※
※<仙鳥・大鶴弦焉>※スキル獲得※
※<銀鸞赫焉鳥閃>※スキル獲得※
おお、<無方南華>の強化版、<無方剛柔>を得た。
思わず両手を見て、顔の皮膚を触るが、別段に変化はない。
が、<無方南華>自体も進化したと分かる。
<南華魔仙樹>を<破邪霊樹ノ尾>のように魔力を消費して、樹を放つことが可能か。
<仙鳥・大鶴弦焉>は召喚系か、仙鳥を呼べるが、楽器でもある。
<銀鸞赫焉鳥閃>は、戦神流の一閃、薙ぎ払い系のスキルだと理解できた。
武器はなんでも大丈夫と分かる。かなり使い勝手が良さそうだが……。
<魔狂吼閃>のほうが威力は上かもな、まだ感覚だけだから実際に使うか、ステータスで見たらよく分かるだろう。
ニナが俺を凝視して、
「シュウヤ殿は南華魔仙樹を……」
頷いて、魔杖槍南華を拾い、
「あぁ、取り込めたようだ。ニナとシュアノにこれを返す――」
と魔杖槍南華を渡す。
「「「おぉ」」」
南華仙院の方々が、驚く。
「南華魔仙樹だが、戦神マホロバ様の恩寵も恒久スキルで獲得したお陰だろう。戦神マホロバ様の幻影は褒美と言ってたからな」
「え」
「「「「……」」」」
またもニナとシュアノと南華仙院の戦士団の皆が驚いていた。
「「シュウヤ様――」」
「「「「シュウヤ様――」」」」
と、皆が、片膝の頭で地面を突いて頭を下げてきた。
続きは明日を予定。
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