表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
槍使いと、黒猫。  作者: 健康


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1397/2033

千三百九十六話 <魔音響楽・王華>と<幻甲犀魔獣召喚術>の獲得

 八眼魔王ガンゾウに変化か。

 ガンゾウはベルアンを抱きしめると二人は螺旋回転しながら上昇し、周囲の蒸気的な魔力を吸収していくと、愛を感じさせる風靡で重厚な音楽が〝魔犀花流槍魔仙神譜〟から流れてきた。

 

 ベートーベンの交響曲第三番と第五番とも似ている。

 ピコーン<魔音響楽・王華>※スキル獲得※

 

 おぉ、正義のリュートや楽器で使える曲スキルの一つ。

 <魔音響楽・梁塵>と<魔音響楽・半霊>も同様だ。

 <魔音響楽・半霊>は半霊の探知、追跡、収集が可能になるスキルだと分かる。

 

 ガンゾウは不思議な沼の辺に足を付けて着地。

 ベルアンを御姫様抱っこしながら浮遊し前進して、大きい切り株の下までベルアンを運ぶ。

 ベルアンは「ここで大丈夫だけど、煙霞の魔力が凄い、八眼魔族エイゾンの王族の力を継承したのね」と聞いていた。


 ガンゾウは「おう」と手を離して切り株の上に腰掛けさせた。


 ガンゾウは、そのベルアンに、


「継承したと分かるが、ベルアンはなんともないんだな?」

「わたしは平気、それよりもガンゾウの体でしょうに! 浸透していた猛毒ガビィスの刃は!」

「大丈夫だ、このように無事に取り除けた」


 と両腕を広げる。

 頭部は八眼となっているが、他は二眼二腕の魔族と変わらない。俺と同じ黒髪だしな。


「うん! 八眼魔族エイゾンの伝承は本当だった! あ、ガンゾウ、目の数が……」

「あぁ……」

 

 ガンゾウはベルアンに指摘を受けて、己の八眼の瞳を上下左右に動かしながら自らの手で顔を触ると、


「これが八眼魔族エイゾン……」


 とボソッと言いながら十三の穴を確認するように目と鼻と口と耳を触っていく。

 ベルアンはそんなガンゾウを見て、


「見えている? 継承したと言ったけど、本当に八眼魔族エイゾンへの魔族転生に成功したのよね?」

「あぁ、見えているとも! 転生に成功だ。しかも魔王級! ベルアンの王族の魔力も<魔公転生>のお陰で倍化しての急上昇だ、そして、この八眼の視力と視界に膨大な煙霞の魔力は凄まじい」


 ガンゾウは己の体から煙霞の魔力を噴出させる。


「ふふ、やった!! 八眼魔族エイゾンの伝承の【エイゾンの強壮毒魔泉】は、本当の本当だった!!」

「おう! 一か八かだったが、大正解だ!」


 八眼を輝かせているガンゾウとベルアンは嬉しそうだ。


 ベルアンの八眼はガンゾウとは異なる。

 小さい眼球もあった。睫毛がキュッとしている。

 眼球は上下左右に均等に並んでいるし、鼻と口は小さくして可愛らしい。

 笑窪もある、顎と首のラインもシュッとしていて魅惑的な女性だ。


 髪は銀色と金色が交じっている。右耳近くに山の形と花の形の髪飾りがあった。

 そんなベルアンは、


「少ない手掛かりだけで、【エイゾンの強壮毒魔泉】を見つけられて良かったわ」

「そうだな、サイカルの眷属たちめ、仇として倒せたのが救いだが、資料と地図を焼かれて奪われては、仲間たちも殺された時は非常に悔しかった」

「……うん」

「そして、心配をかけて済まなかった」

「そうよ、ガンゾウは目が潰されて猛毒ガビィスも浴びていた。最初見た時、混乱したんだから。大事な<根源の魔泉>も作用しない猛毒ガビィスは恐怖しかない。回復ポーションもすべての属性の回復魔法も効かなかったし……」

「……」

「わたしを残してガンゾウは死んでしまうところだったのよ、<魔魂回生>があるから数回は生き返るけど、毒があるから無駄に死んで復活を繰り返すのみ」

「あぁ」

「だから【エイゾンの強壮毒魔泉】に入れて、魔族転生のお陰もあるけど、傷と毒がすべて消えて良かったわ」

「そうだな。死にそうだったが、その経験があるから、今がある」

「結果論だけどね、でも、盗みを終えて逃げずに、わざわざ魔神サイカルと放浪魔神ハカサトの争いに乱入するのはどうかと思う」

「……言い訳だが、その二神は仇なこともある」

「……」


 ベルアンは微かに頷いたが、納得はしていないと分かる。


「ごめん、あの時は秘宝を取り返した時点で直ぐに逃げるべきだった。だが……ラガムたちが死んだ時の光景が蘇ってな……」


 ガンゾウが過去を思い出しながら語る。

 ベルアンは八眼が揺らいで涙が零れていく。

 ベルアンは数回納得するように頷いていた。


 ガンゾウも静かに頷いてから、


「サイカルとハカサトは暴虐の王ボシアドとの争いで眷属が減り、己も消耗しつつの争いだ。そんな神々の漁夫の利を突ける絶好機は早々ない……」

「ラガムたちの仇を取れる絶好機、実際に眷属を倒して仇の何人は取れた」

「あぁ、次は、魔神サイカルと放浪魔神ハカサトにリベンジだ。俺は秘宝を得て八眼魔王になったんだからな」

「うん」

「それもこれもベルアンのお陰だ」

「ううん、皆のお陰……」


 ベルアンは視線を下げながら語る。

 と、二眼から涙を流す。上の二眼は揺らいでガンゾウを見ていた。もう二つの瞳は、宙空を懐かしそうに眺めるような眼差しとなっている。もう二つの瞳は瞬きをしながら涙を流している。


 八眼魔族エイゾンか、感情表現が豊かだ。

 普通の人族にはない表情筋と眼の動きと皮膚の色合いの変化で、綯い交ぜとなった感情を表しているように見えた。


 ガンゾウは、


「そうだな、皆がいたからだ……ラガム、カサイ、オロン、トメイチガの貢献は計り知れない」

「うん、仲間たちと会いたいよ……」


 八眼魔族エイゾンたちか。

 眼勝寺の牢屋から離脱した時は結構な人数がいたが、今はベルアンのみ。


 ガンゾウは、

 

「……俺も会いたい」

「うん」


 と、沈黙が続くが、二人の表情には味がある。

 刺繍は高度なアニメーションで、そんな二人を描いてくれていた。

 素晴らしい。


 ガンゾウは、


「八眼魔族エイゾンの仲間たちの復活は厳しい。魂を吸収されずに魔魂玉となっていない」

「分かってる。オロンは<塊魂>を持っていたけど直ぐに潰されてしまった……」


 ベルアンは泣いていく。

 そのベルアンの肩に手をかけたガンゾウは微笑んでから、


「あぁ、とにかく皆の資料と知見がなればここには辿りつけなかった、皆に感謝しよう」


 と発言。


「うん、【エイゾンの秘術】と【煙霞八眼ノ血玉】の知識と資料は膨大で読み解くにも時間が掛かったから、ガンゾウが無事に八眼魔族エイゾンに転生できて良かった」

「あぁ、<八眼呪仙功>と<魔公転生>に<魔封呪穴改>を獲得済みだったのが大きい」

「だけど、死にそうだったし、一か八かだった」

「だな」

「うん、ガンゾウの命には代えられないから、本当に成功して良かった」


 ベルアンの言葉に満面の笑みを浮かべるガンゾウは右腕を上げて、


「これからは魔王級の最上位としてベルアンたちを守りながら、魔犀花流を極めながら魔神を目指す! そして、魔界セブドラの何処かにいる八眼魔族エイゾンたちを探し出して、エイゾンの永住の地を作ろう」

「うふふ、うん、ありがとうガンゾウ!」


 〝魔犀花流槍魔仙神譜〟を捲ると――。

 煙霞八眼魔王ガンゾウがベルアンと共に魔界セブドラの各地を旅する場面となる。

 ガンゾウとベルアンは、諸侯ジトスアの大眷属ホベンが支配するマリカム村を救っていた。

 極魔鉱という魔石類などが採れる鉱山に大量にマリカム村民が送られ苦しめられていたが、ガンゾウとベルアンは大眷属ホベンを協力して倒し、村民を解放、諸侯のジトスアは追撃の兵を出したが、二人は村民と協力してすべての兵を撃退し、マリカム村に魔傭兵を集めて警護させながらジトスアの居城レジアルスル城に単身乗り込み、ジストアを撃破、レジアルスル城を破壊していた。


 煙霞八眼魔王ガンゾウはマリカム村の魔英雄となった。

 集まった村人たちと魔傭兵たちに極大魔石を無料で分けていたガンゾウとベルアンは、


「天地の正に乗じて、動いただけ。俺たちには俺たちの目標がある、然らばだ」

「うん、皆さん元気で!」


 マリカムの村民たちは拍手喝采の歓喜踊躍となっていく。

 それを見たガンゾウとベルアンは笑顔を見せ合ってから踵を返す刺繍となる。


 すげぇ、格好いいじゃんか、ただの奇怪な爺ではなかった!


 とか考えていると、神殿内に変な風が吹く。

 気のせいだな。


 次の頁では、ガンゾウとベルアンは魔龍山の魔念泉の畔と呼ばれている地名に到着。

 ガンゾウは、周囲にいた犀と似た猛獣を捕まえて魔杖槍犀花に格納? 閉じ込めていた。


 え? 幻獣なら分かるが……。

 と、ガンゾウは魔杖槍犀花から、再び犀のような猛獣を召喚。

 

 猛獣は、角が生えているトリケラトプスに似ているが、角は伸縮がある程度可能で、歯牙もある。

 胴回りは太いが、足も犀より長く馬のよう。小回りも利きそうだ。


 幻獣には見えないが、犀のような猛獣の召喚も可能なのか。


 ピコーン※<幻甲犀魔獣召喚術>※スキル獲得※


 おぉぉ、俺もスキルを獲得できた。

 同時に即座に<幻甲犀魔獣召喚術>を理解できた。


 同時に、〝魔犀花流槍魔仙神譜〟と共に浮いている魔杖槍犀花の魔力が増大。

 柄の中部から後部の太い舟を進めるための櫂にあるような場所と石突に犀と花の魔印が新たに刻まれていた。

 

 魔杖槍犀花から幻甲犀魔獣を召喚できる。後で試すか。

 

 〝魔犀花流槍魔仙神譜〟の頁を捲る。

 ガンゾウの腰に煙霞八眼ノ血玉と見られるアイテムが増えていく度に、ガンゾウは強くなっていた。


 ガンゾウとベルアンに、黒い衣と灰色の長袖を着た坊主頭たちが襲い掛かる場面となった。

 ガンゾウは弓を持つベルアンを守りながら前衛として、魔杖槍を振るい、坊主たちを次々倒す。

 

 降伏した坊主たちが、


「煙霞八眼魔王ガンゾウ様、参りました!!!」

「参りました~」

「降伏は一度だけ受け入れよう。だが再び俺たちに弓を引いたら、お前たちの顔は覚えたし、必ず殺しにいくからな」

「「「は、はい!」」」


 すると、


「ガンゾウ様は魔犀獅子流や、犀刻獅子流よりも上です!」

「媚びるな、調子がいい奴らだな――」


 魔杖槍犀花を振るったガンゾウに、降伏した坊主たちが恐怖したように立ち竦む。

 ガンゾウは、


「びびってんじゃねぇぞ。槍にせよ、刀にせよ、腕に覚えのない奴らが、流派の傘に入りたがる! お前らは男だろうが! 腐ってんじゃねぇ、ましては上に命令されて、へーこらへーこら魔石のために動いてよ、お前らの心根に意思はねぇのかよ、アホどもが! かっこ悪すぎだろ、ということで、最強なのが魔犀花流だ、覚えておけ!」

「「「「はい!」」」」


 と、俺まで「はい」と言ってしまった。

 レベッカたちがここに居たらツッコミが来ただろうな。

 少し寂しい。


 と、順調な旅路に見えたガンゾウとベルアンだったが、途中で、諸侯か魔神との激戦となった。

 場面が切り替わり、ガンゾウが泣きながら魔神か諸侯に突っ込む。


 ガンゾウの本体と重なっていた分身体が本体の動きに付随するように動いていた。

 分身体の魔杖もガンゾウの動きを真似るようにやや遅れながらも付いていく。

 

 刹那の間に、本体と分身を活かした三回、四回、五回、六回の突きが、魔神か諸侯か太い体に決まり、一瞬で燃焼させて倒している場面となる。<魔皇・杖楽犀花>系統の燃焼versionか。

 

 細かな言葉と音では出なかった。


 魔神コナツナの丘墳らしき場面となるが、傍にはベルアンはいない。

 魔神コナツナの一つ眼の巨人を魔杖槍犀花で倒しているガンゾウの姿は中年過ぎあたりか。

 肩には人面瘡の傷があるが、やや細身の体付きになっていた。

 

 と、そこで〝魔犀花流槍魔仙神譜〟が終わる。

 最後のほうの刺繍は消えずに魔杖槍犀花にも取り込まれていない。

 分身系のスキルは、特殊すぎて八眼魔族エイゾンでないと獲得は無理なのかも知れないな。


 そこで〝魔犀花流槍魔仙神譜〟を仕舞う。

 魔杖槍犀花を<握吸>で吸い寄せた。

 良し――と振り返りつつ、出入り口からまだ出ずに、先ほど覚えたばかりの<幻甲犀魔獣召喚術>を使用した。

 

 魔杖槍犀花から大きい犀と似た魔獣が飛び出た。


「グォォォ~」


 と鳴いていた。神殿の内部に獣の鳴き声が響きまくる。

 アルコーブ内に飾られているガンゾウの石像が震動させていた。

 ケラケラと笑ったように感じる。同時にガンゾウとベルアンの笑顔が壁画の一部に見えた気がした。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 二眼二腕の魔族であった頃から、特別な<根源ノ魔泉>を持つガンゾウが【エイゾンの強壮毒魔泉】によって八眼魔族エイゾンに転生するのは、必然だったのかもしれないですね。 新しく手に入れた<魔音…
[良い点] <魔音響楽・王華>と<幻甲犀魔獣召喚術>ゲット!読むだけで10以上のスキルを習得したな。 [気になる点] >「あぁ、見えているとも! 転生に成功だ。しかも魔王級! ベルアンの王族の魔力も<…
[良い点] 犀といえば龍魂雷魔犀の骨がありましたね。魔犀花流との化学反応が気になります。 分身のスキルが得られるのでガンゾウの真似事ができるかも?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ