千三百七十八話 ローブを着た者たちとの戦い
2024年2月21日 1時24分 修正
ヴァンラーの魔槍が引き寄せていた炎の魔剣ごと戦闘型デバイスに仕舞う。
と、前方を駆けているローブを着た者たちは速度を急激に上昇させる。
右斜め前の屋根に跳び移る者が数名――。
左の建物に跳び移った者の数は五名――。
左の建物に移った者たちを追い掛ける、端から左の建物に向かう。
<闇透纏視>で五名の魔素を見る限り――。
先ほどの倒した四眼四腕の魔族よりも強者のような印象を覚える。
逃げずに戦ってくれるほうが楽だが、走る速度は緩めない。
転移魔法やパレデスの鏡やゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡などを使う気配はない――。
逃げる先に、罠がある?
悪神ギュラゼルバンと恐王ノクターの眷属が用意していた伏兵の場所に誘導している?
そうだとしても構わない――。
体を巡る<魔闘術>系統の<武行氣>と<闘気玄装>と<ルシヴァル紋章樹ノ纏>の魔力の流れを強めた。
更に<水月血闘法>を実行――。
この<魔闘術>系統は吸血鬼系統だからこその<魔闘術>だ。
続いて<水の呼び声>を意識、発動――。
<霊魔・開目>を意識し発動――。
※霊魔・開目※
※霊魔闇神流<霊魔>系統:闇神闘技<闇迅霊装>に分類※
※<魔力纏>技術系統:極位※
※霊纏技術系統:上位<闘気霊装>※
※<霊魔闘刹>と<霊迅雷飛>を纏った闇神アーディンから魔槍雷飛流のあらゆる攻撃を<経脈自在>を持つ使い手が喰らい続けた結果、神々の纏さえ視ることが可能となる魔点穴が開通し、一瞬で昇華、才能が開花したことにより<霊魔・開目>を獲得※
※霊魔系高位戦闘職業と<魔人武術の心得>と狂怒ノ霊魔炎と<魔闘術>系系統など、色々な効果を高める※
※闇雷の槍使いの戦闘職業には必須※
続いて<煌魔葉舞>も意識し発動。
※煌魔葉舞※
※煌魔葉舞流<煌魔闇雷>系統:闇神闘技<魔闘術>に分類※
※魔人格闘術技術系統:上位技術※
※<魔力纏>技術系統:極位※
※霊纏技術系統:上位<闘気霊装>※
※魔界セブドラ実戦幾千技法系統:二十四魔氣練魔舞術※
※悪式格闘術技術系統:上位技術※
※魔槍雷飛流を扱う闇神アーディンから直に闇神闘技の<煌魔葉舞>を学び得た存在は希少※
※近接戦闘能力が上昇※
※<霊魔・開目>があると効果が上昇※
<霊魔・開目>と<煌魔葉舞>は、強力な<魔闘術>の霊纏技術系統:上位<闘気霊装>だ。
これを獲得できたのは闇神アーディン様のお陰、感謝だ。
――<光魔血仙経>を意識して発動。
※光魔血仙経※
※光魔血仙経流:開祖※
※光魔血仙格闘技術系統※
※滔天仙流技術系統※
※戦神流命源活動技術系統:神仙技亜種※
※仙王流独自格闘術系統※
※仙王流独自<仙魔術>系統※
※<黒呪強瞑>技術系統※
※魔人格闘術技術系統※
※悪式格闘術技術系統※
※邪神独自格闘術技術系統※
※魔界セブドラ実戦幾千技法系統※
※光魔ルシヴァル血魔力時空属性系<血道第五・開門>により覚えた特殊独自スキル※
※<血道第五・開門>、<血脈冥想>、<滔天仙正理大綱>、<性命双修>、<闘気玄装>、<経脈自在>、<魔人武術の心得>、<水月血闘法>、大豊御酒、神韻縹渺希少戦闘職業、因果律超踏破希少戦闘職業、高水準の三叉魔神経網系統、魔装天狗流技術系統、義遊暗行流技術系統、九頭武龍神流<魔力纏>系統、<魔闘術>系技術、霊纏技術系統、<魔手太陰肺経>の一部、戦神イシュルルの加護が必須※
※血と水を活かした光魔血仙経流により、全般的な戦闘能力が上昇※
※眷属たちに己の生命力を譲渡する根源となる能力、<性命双修>と関係※
※使い手の内分泌、循環、神経、五臓六腑が活性化※
※己の魄と魂の氣が融合※
※生命力を眷属か関係者に譲る場合、使い手は膨大な痛みを感じることになるが、その謙譲とサクリファイスに『献身』は神々も注視するだろう※
※血仙人の証し※
<経脈自在>を意識し発動。
全身の血管と魔点穴がバイブスを起こす。
新たな径路が体中に発生していく。
『閣下の体が凄まじい熱を帯びています! ですが、不思議と怖くない!』
『はい、御使い様の体が熱い! 魔力の巡りは想像を超えています』
頭部の元々の魔点穴の百会から――百毫、上院、中院、水分、壇中、紫宮、石門、中極、関元、丹田などの魔点穴をも活かす。
それらの魔点穴の位置が俺の体中を巡りながら大変化し、新たな魔力源と成るように細胞から活性化。
<魔闘術>系統を活かしながら前進。
先の屋根を跳び移っていく五人はローブごと体を輝かせた。
と三人の体から、髑髏と髑髏が融合しているような魔力が滲むように出現した。
続いて二人の体から魔力が噴き上がる。
その魔力は、長い布で双眸を覆い後頭部で布が結ばれている頭部の幻影となった。
髑髏と髑髏が融合したような髑髏の幻影が気持ち悪いが、それが悪神ギュラゼルバンの頭部かな。
恐王ノクターの頭部の幻影は双眸を布で隠している頭部だろう。
その魔力の幻影を生み出した五人は、左斜め前方の屋根へ跳び移りながら横回転――俺を見るように腕に持った棒手裏剣を<投擲>してきた。
走る速度を落とさず――。
大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を召喚し直進させた。
飛来してきた複数の棒手裏剣を大きな駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で防ぐ。そのまま<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を直進させた。
同時に、俺も左斜めの建物の屋根へと跳ぶ――。
「来たぞ――」
「おう」
屋根に残っていた二人が、掛け声を合わせて直進してきた。
右上腕と下腕が握る魔槍を突き出してくる。
屋根の奥にいる三人のローブを着た者は、先に軒際から跳ぶ、降りていた。
二名の魔槍使いは殿か――。
二人の魔槍の穂先に大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を衝突させた。
魔槍の攻撃を<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>が防ぐ。
大きな駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を押すように前に向かわせた。
「げ――重い、八咫角!?――」
「ぐ、横に弾け――」
「「うぉぉ――」」
二人の二眼四腕の魔族は自ら生み出していた髑髏と髑髏が融合している魔力の幻影を強めて、布で双眸を隠す頭部の幻影も強めて、よりくっきりと顕せる。
その二人は揃った動きで、魔槍を持つ右腕を左へと払うように動かした。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を力で横にズラしてきた。
その<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を引かせる。
腰の魔軍夜行ノ槍業を触り魔力を送った。
<血道第一・開門>で体から血魔力を放出させて<血想槍>を発動――。
<血想槍>に雷炎槍エフィルマゾルを召喚させて置く。
『――シュリ師匠、片方への対処をお願いします』
『了解――』
大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>と魔軍夜行ノ槍業が魔線で繋がって環状に変化。
その環状の魔線から、頭部と両腕を有した半透明のシュリ師匠が現れる。
シュリ師匠は雷炎槍エフィルマゾルを右手で掴むと左にいる魔槍使いと対峙――。
『悪神ギュラゼルバンの魔力を扱う魔槍使いか――』
シュリ師匠の楽しそうな念話が響くとシュリ師匠の足下が爆ぜる。
俺は右にいる二眼四腕の魔族に向け――。
跳躍し、右腕ごと断罪槍となったようにジャンピング<断罪刺罪>を繰り出した。
二眼四腕の魔族は、鋼の魔槍を掲げて断罪槍の<断罪刺罪>を防いだ。
見事な防御だが、衝撃は殺せない、鋼の魔槍が振動し、
「くっ」
と、苦しむ声を発すると、握り手の四腕が揺れていく。
即座に断罪槍の<龍豪閃>を発動。
掬う機動の下から上へと向かう断罪槍の石突を、二眼四腕の魔族の顎に送った――。
二眼四腕の魔族は、四つの腕の手が持つ鋼の魔槍を下げた。
鋼の魔槍の柄で、断罪槍の石突を受け止める。
重低音が響き、火花が散った。
二眼四腕の魔族の二つの眼は、俺の断罪槍の動きを捉えている。
と、瞳、虹彩に魔法陣が浮かぶ――。
恐王ノクターのスキンヘッド系のリアルな幻影が――。
二眼四腕の魔族からドッとした勢いのまま現れて、俺を襲ってきた――。
『――閣下、精神波の攻撃がいつの間にか来ていたようです!』
『はい、御使い様、がんばって!』
目隠しされていた布から大量の血が滴り落ちていた。
が、直ぐにバチバチッとした音と鐘の音が響く。
二眼四腕の魔族は鋼の魔槍を押し出しながら、右回し下段蹴り――。
その蹴りをフラつきながらも避けた。
「なんだと――」
と驚きながらも、鋼の魔槍を突き出してくる。
その突きに合わせ断罪槍を突き出す<断罪刺罪>――。
鋼の穂先と、断罪槍の片鎌槍の穂先が衝突し、激しい火花が散った。
鋼の穂先が少し撓むように上向く。
同時に二眼四腕の魔族の二つ腕と手が震えた。
「チッ、この<刺突>系統の強さと反応の良さ……それに<大恐眼・衰弱>が効かないとは……」
「多少は効いたさ――」
と断罪槍に魔力を込めながら<握吸>を発動し――。
<魔手回し>を実行――。
三日月状の枝刃で鋼の魔槍の穂先を絡めつつ断罪槍を引いた。
「え――」
鋼の魔槍を左手で奪い取った。
と、断罪槍の柄を放るように二眼四腕の魔族の胸元に送り――。
左腕を斜めに差すように、奪った鋼の魔槍で<牙衝>を放つ。
二眼四腕の魔族は俺のフェイントに掛かり、二つの腕を動かすが遅い――。
鋼の魔槍の穂先はローブを掠めるが、二眼四腕の魔族の右足に突き刺さった。
<牙衝>が決まる――。
「げぁぁ」
足を封じることに成功か?
その鋼の魔槍の柄を<悪式・突鈍膝>で蹴り上げ、跳ねるように回転しながら二眼四腕の魔族の胸元に鋼の魔槍の柄が向かう。と、その胸と柄が衝突――。
「ぐぇ」
ローブは頑丈だが、タフな二眼四腕の魔族は体を引かせた。
しかし、貫いた足の甲が、もうくっ付いて再生だと?
その二眼四腕の魔族は足を引いて、
「――チィ、お前が六眼バーテを倒したのは本当のようだな」
と聞いてきた。
「あぁ、本当だ」
と答えながら――。
中割れた間からはいけるだろ――。
衝突させた鋼の魔槍を戦闘型デバイスのアイテムボックスに仕舞う。
俺と相手の間の宙空で回転していた断罪槍も戦闘型デバイスに戻し仕舞う。
そのまま左右の手にムラサメブレード・改と血魔剣を召喚――。
ムラサメブレード・改で、袈裟斬りの<惰・月斬り>――。
「槍に剣だと――」
二眼四腕の魔族は片腕を掲げたが、その手と頭部を斜めに斬る。
続けざま中割れたローブごと血魔剣を横に振るう――。
<血外魔道・暁十字剣>を繰り出し、体の両断を狙うがローブに血魔剣のブレードは弾かれた。
と、
「俺にはきかねぇ!」
「吸血鬼かよ」
「ちげぇ、ノクター様から頂いた<恐回復大躯>――」
二眼四腕の魔族の頭部がくっつきながら二眼が蠢く――。
横移動をする俺の動きを追う二眼の動きが気色悪い――。
再生力が高いが、動きは鈍っているし、得物はない。
その無手の二眼四腕の魔族は、
「お前の動きを止める――」
と、四腕を振るい拳を突き出してきた。
武器無し相手に武器アリで戦うのもアレだが、そんな状況ではない――。
左に出るフェイクから右側面から左足の踏み込みから、腰を捻り上半身を左に畳ませるようにムラサメブレード・改の柄巻を握る右腕を振るった。
袈裟懸けの<飛剣・柊返し>を繰り出す。
ブゥゥゥゥンと音を響かせる青緑色のブレードが四腕の内、「げぇぁぁぁ」と二腕を切断し、中割れたローブの間に侵入した。
そのまま前のめりに、胸から上か下へと斬る――。
ローブの内側と衝突したムラサメブレード・改の青緑色のブレードから火花が散った。二眼四腕の魔族が身に着けていた魔鎧ごと胸元をバッサリと斬った。
が、またも再生しようと斬った傍から二眼四腕の魔族の体がくっ付き始めた。
即座に<滔天神働術>を発動。
<破壊神ゲルセルクの心得>をも発動――。
両手の武器を消し、右手に魔槍杖バルドークを召喚。
そのままノーモーションで、<闇穿・魔壊槍>――。
魔槍杖バルドークを突き出した<闇穿>で、再生途中の体を紅矛が貫いた。
ゼロコンマ数秒も無く魔槍杖バルドークの真上から――。
螺旋模様が美しい漆黒ランスこと螺旋壊槍グラドパルスが出現し直進――。
螺旋回転しているドリル状の穂先が、二眼四腕の魔族が着ている頑丈なローブをぶち抜いた。
螺旋壊槍グラドパルスは地獄の咆哮のような凄まじい重低音を響かせる。
二眼四腕の魔族の体ごと建物の屋根の天井をくり抜いて直進した。
螺旋壊槍グラドパルスは斜め下の通りの床を食べるように虚空の中に消える。
<武行氣>を活かして斜め下の床に向かう。
そして、シュリ師匠は既に戦いを終えていたのか、
『見事! 時空槍技術系統としての螺旋壊槍グラドパルスは凄まじいわね、破壊神ゲルセルクが関係しているってのも分かる気がするわ』
『はい、と言いますか、シュリ師匠はもう魔槍使いを倒していたのですね』
『うん、わたしの速度と雷炎槍流に対応はしてきたけど、それだけね。十五合ぐらいは打ち合えたかな、弟子と衝突した恐王ノクターの眷属のほうが確実に強い。というか、恐王ノクターの眷属は高祖吸血鬼と言っても過言ではないでしょ、頭部を斬って生きているって、普通ではないわよ』
『はい、俺も驚きました。では、三人の敵を追い掛けましょう』
『うん――』
シュリ師匠の幻影の体は、魔軍夜行ノ槍業と<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>から出ている魔線と繋がっている。そのシュリ師匠の幻影の体を雷炎の魔力が縁取っていった。
まだ朧気だが、シュリ師匠の女性としての魅惑的な輪郭が、より顕わになって、魅惑度が二重に増して見えた、とくにおっぱいさんが良い。
『ふふ』
シュリ師匠は、俺にウィンク――。
可愛いと思った刹那、宙空を駆けていた。
俺も通りを駆けながら――<闇透纏視>を使う。
<闇透纏視>を使うまでもなく――。
三人のローブを着た者が逃げた先は直ぐに分かった。
相棒に乗ったヴィーネが先回りしていてくれた。
三対二の状況となっている。
ヴィーネのガドリセスの剣を防ぎ、相棒の触手骨剣の連続攻撃を防いでいるローブを着た四眼四腕の魔族は強い。
背後にいた四眼四腕の魔族は振り向いて、
「チッ、不死のノイガンと雷踏のゴムロを……」
「先ほどの二眼四腕の魔族の名か。やけにタフだった魔槍使いが、ノイガンだな」
「そうだ、恐王ノクター様の眷属」
「お前は?」
その間にも黒豹とヴィーネと戦う四眼四腕の魔族は魔力を強めていた。
<筆頭従者長>のヴィーネと神獣と一見は互角に戦っている。
「……俺は、ヴァドラ・キレアンソー。悪神ギュラゼルバン様の大眷属の一人」
「恐王ノクターと手を組んだのか?」
「……その通り」
「組んだにしては、数が少ない上に魔傭兵頼みか。眷属同士、利害が一致した限定的な同盟だろう?」
「……さ、さあな」
四眼が少し泳いでいた。
表情筋も少し他の四眼四腕の魔族とは異なるような感情を示すように、片頬が動いて右上腕と左上腕が動き、指もピクピクと数回動いた。
俺の問いは図星か?
更に、
「……ヴァドラ・キレアンソーは、悪業将軍ガイヴァーとは見た目が随分と異なるな」
「……なっ、バードイン殲滅部隊は連絡を絶ったが……」
「そうだ。【バードイン城】で俺が倒した」
「……お前がか……あの悪業将軍ガイヴァーを……そして、アキサダを手懐けたようだが、<精神感応>や<魔洗脳>を使ったのか?」
「そんなことはしていないし、しない。強いて言うなら、真心だろう」
「……」
「少し恥ずかしいから沈黙するな」
「あぁ? ふざけた野郎だ……」
「ふざけた野郎で結構、で、ヴァドラ、お前の目的は、レン・サキナガの主戦力が三つの砦とマセグド大平原に集まる前の陽動だな?」
「……」
沈黙。
半身の姿勢のヴァドラは四眼の内の二つの眼が、ヴィーネと相棒と戦っている四眼四腕の魔族を見ていた。
続きは明日。
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