千三百三十六話 六眼バーテとの戦い
金髪の六眼バーテは六眼に魔力を集結させる。
と、凄まじい加速力で俺の右を飛翔していく。
間合いを詰めてくるかと思ったが――。
周囲の状況把握か。その間に――。
<霊魔・開目>を発動。
※霊魔・開目※
※霊魔闇神流<霊魔>系統:闇神闘技<闇迅霊装>に分類※
※<魔力纏>技術系統:極位※
※霊纏技術系統:上位<闘気霊装>※
※<霊魔闘刹>と<霊迅雷飛>を纏った闇神アーディンから魔槍雷飛流のあらゆる攻撃を<経脈自在>を持つ使い手が喰らい続けた結果、神々の纏さえ視ることが可能となる魔点穴が開通し、一瞬で昇華、才能が開花したことにより<霊魔・開目>を獲得※
※霊魔系高位戦闘職業と<魔人武術の心得>と狂怒ノ霊魔炎と<魔闘術>系系統など、色々な効果を高める※
※闇雷の槍使いの戦闘職業には必須※
体に纏う<魔闘術>系統の技術を増やす。
丹田を中心とした魔力巡りは凄まじい勢いだが、<四神相応>に比べたら楽だ。
とはいえ、かなりの魔力量だから、体の内から魔力が龍の如く放出されていく。
落ち着くように<血脈冥想>を発動。
呼吸は要らない俺だが、自然と深呼吸。
鼻から息を吸い、肺に空気を満たしてから、一気に吸った空気を吐いた。
六眼バーテは、俺の<魔闘術>系統を強めた動きを察知した。
六眼の内の三眼を煌めかせながら、神意力のようなプレッシャー的な圧力を寄越す。
<闇透纏視>系か<滔天魔瞳術>系か不明だが、視界がブレた。
と、雷模様が一瞬生まれた。
ブレた視界が元通り。
『バーテの魔眼による精神攻撃をレジストしたようです』
『おぉ、ありがとうグィヴァ』
『ふふ、はい! 御使い様の精神防御能力が元々高いのもあります!』
『おう!』
と銃撃音が連発、六眼バーテの体に微かな火花が散る。
レン家の誰かが撃った弾丸が次々に六眼バーテの体と衝突していく。
六眼バーテは無傷だ。
素肌にも弾丸が当たるが、まったく傷を受けていない、皮膚のようで鋼か?
が、その皮膚が柔らかく動きながら表情を変化させる。
そして、
「あぁ……むかつく」
と呟いた六眼バーテは無表情のまま三つの魔剣を振るい飛来してきた弾丸を払いまくる。
と、徐々に怒りの表情に変化していく。
睨みを利かせた六眼を忙しなく動かした。
魔銃から弾丸をぶっ放している存在を直ぐに見つけた。
六眼が止まる。その六眼が睨むのは、【レン・サキナガの峰閣砦】の大楼閣の下の板敷きにいたレン家の魔銃部隊。
「お前たちか」
と言うと、その魔銃持ちの前に転移、右上中下腕を振るう。
三つの腕の手が持つマチェーテと似た魔剣が、魔銃と黒髪の魔族の体を通り抜ける。
レン家の魔族の体は四つに分断された。魔銃も幾重に細断されながら爆発。細かな鋼が散るが、六眼バーテは気にしていない。
幸い魔刃は出ていないから懸造りの板敷きは殆どが無事。
が、六眼バーテの動きは止まらない。
「――<魔皇・霞崩>が、こんな雑魚に邪魔されるとは、無粋すぎる! 虫螻が!」
怒った六眼バーテは、そう叫びながら直進し、六つの魔剣を振るいまくる。
板敷きの上にいた魔銃持ちの方々を細切れにしていく。
六眼バーテは細切れにした死肉ごと大量の血飛沫を全身で吸い取っていた。
<血魔力>として血を吸収できるなら吸血神ルグナドの<筆頭従者長>や<筆頭従者>と変わらないな。六眼バーテはレン家の魔銃部隊を斬り倒した。
俺を見て跳躍、間合いは詰めてこず、少し離れた宙空で静止すると、
「――貴方、武装魔霊か魔装天狗の衣装替えも扱えるのねぇ、状況的に魔界王子テーバロンテを倒した存在かしら――」
と、聞きながらも三眼から雷状の礫を寄越す。
六眼バーテに応えずに、魔槍杖バルドークで礫をすべて弾き飛ばした。
六眼バーテは左から右斜め上昇――大楼閣と【レン・サキナガの峰閣砦】を見やる。
「うふふ、強そうな眷属たちも美味しそう、あ、【レン・サキナガの峰閣砦】の最上階の中にも強そうな存在がいるわねぇ……」
ヴィーネとフィナプルスはレン・サキナガを裏切ったオオノウチとアキサダの部下を倒しまくる。
大砲持ちの大砲が暴発し、【レン・サキナガの峰閣砦】の建物が一部が砲弾によって壊れていた。
エヴァとサシィはレン・サキナガに語りかけながら、レン家の方々を救うようにアキサダの部下とオオノウチの部下たちを倒す。
ヘルメとキッカにビュシエもオオノウチの部下たちを倒しながらオオノウチを目指した。
「アキサダという上草連長は高みの見物ですか!?」
「分からない! 先ほどまで緊急評定に出席していたはずなのですが!」
レン・サキナガがヘルメの言葉にそう反応していた。
そして、キスマリたちも大楼閣の出入り口付近で闘っているようだ。
六眼バーテは納得するような表情を浮かべる。
エヴァたちには特攻をかけるつもりはないようだ。
六眼バーテは視線を上げ、近くで浮遊したままのカマキリ熊の大怪物を見ていた。
裂けた口の両端から百足が這い出ていく。
その百足を先ほどと同じく眼球からぐわりと出た怪物が百足を食べていた。
カマキリ熊の大怪物は微動にしない。あいつがここで暴れると厄介だが……。
黒猫ならここの異変に気付いたはず。
銀灰猫を連れて飛んでくるだろう。
あの大怪物が暴れたら相棒に任せるとしようか。
そして、六眼バーテは……。
俺の<闘気玄装>、<滔天仙正理大綱>、<滔天神働術>、<戦神グンダルンの昂揚>、<魔闘術の仙極>、<龍神・魔力纏>、<黒呪強瞑>、<滔天魔経>、<血液加速>、<水月血闘法>、<血霊兵装隊杖>の<魔闘術>系統を重ねて強化している状態の速度に合わせてきた相手で、今のように余裕を見せている強者だ。
その六眼バーテを<闇透纏視>で観察を強める。
魔力溜まりを体に幾つか見つけたが、流動的だ。
<経脈自在>のようなスキルを持つ? 否、元々がそういう内臓の種族か。
元より悪神ギュラゼルバンの大眷属だからな。
メタモルフォーゼが可能なら完全流体の生命体ってこともありえるだろう。
悪業将軍ガイヴァーの見た目は光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスのような姿だったんだが……六眼バーテはかなり美形の人型だ。まったく異なる。
そして、外套に秘められた魔力も凄まじい。
内に着ている鎧も相当な魔力が内包されていた。
胸甲には家紋と軍隊の印が刻まれていた。
六つの腕を活かせる鎧の仕組みが施されてあるようだ。
太股と膝は鎖帷子系で、靴は赤い。【バードイン城】に帰還した際に戦った人型魔剣師ガングリフを想起する。
そして、六眼バーテの装備を見ながらワザと<魔闘術の仙極>を消す。
右に飛翔しつつ【レン・サキナガの峰閣砦】から少し離れた。
六眼バーテも「あら、ふふ、飛行スキルもあまり見たことない種類よねぇ、イカスわ……」と言いながら俺に付いてきた。
一方、レン・サキナガは反対側を旋回しながら部下の背後に逃げたオオノウチを追う。
金髪の六眼バーテを見ながら周囲に生活魔法の水を撒き散らす。
すると、その六眼バーテは、
「――多彩な<魔闘術>系統の幾つかを消して、ただの水を宙空に撒く? どうして? あ、何かの作戦ね、ふふ、誘いに乗ってあげる――」
と言いながら丹田から爆発するような魔力を生み出した。
『カカカッ、今の魔力の膨らみと拡がりを見たか、皆』
『『『『あぁ』』』』
『見たぜぇ、魔人武王の弟子ではないが……強いな、あの女魔族』
獄魔槍のグルド師匠は喜びのニュアンスだ。
『ふむ、悪神ギュラゼルバンの大眷属かゲヒュベリアンとは異なる性質のようだが、名は聞いたことがない。あの魔法紋の契約に鏡から出現の仕方も、少し特殊な大眷属か?』
悪愚槍のトースン師匠の思念だ。
『うん、そうだと思う』
『妾も、六眼バーテの名は聞いたことがない。だが、鏡系統の魔道具に封じられている大眷属は意外に多いことは皆も知っているだろう』
『あぁ、そうだな、その場合は強いことが多いぜ』
『不死六眼ギアトガの言動を思い出す……』
塔魂魔槍のセイオクス師匠がそう呟く。
『ふむ、で、六眼の魔族か、トゥヴァン族がある程度有名だが、六眼の吸血鬼とは違う不死系の魔族か?』
『分からん、六眼自体が、魔城ルグファントにいる間に数度見たことがある程度だからな』
妙神槍のソー師匠の思念だ。
『ふむ、六眼六腕となれば目立つからの』
『魔力の質、装備も異常なレベル』
『そうだな、特にあの赤い靴はヤヴァい代物だろう』
『呪い系かしら?』
『あぁ、だとしたら弟子、あの赤い靴の攻撃はなるべく避けろ。回収もハルホンクにも喰わせないほうがいいだろう。大丈夫だとしてもな』
魔軍夜行ノ槍業の八人の師匠たちが色々と思念してくれた。
それほどの強者が、六眼バーテ――。
六眼バーテは、左から右に転移したような加速力を用いて、俺との間合いを詰めた。
剣圏から、六腕を振るう。
その六つの魔剣の斬撃の軌道を読みながら――。
右手に持つ魔槍杖バルドークを上げる。
魔槍杖バルドークの螻蛄首と穂先と柄で、六つの魔剣の斬撃を幾度となく防いだ、柄が振動するが、指は無事、と、激しい金属音が鳴り響き周囲で無数の火花が散った。
その魔槍杖バルドークを上下に回しながら――。
<握吸>を意識発動し――。
柄を上下左右に押し出すように魔槍杖バルドークを振るう。
「チッ、二眼二腕の魔族なのに、なんて槍捌き――」
<山岳斧槍・滔天槍術>は崩れない。
六眼バーテは、右に転移したような加速移動から――。
三つの右腕が持つ魔剣が伸びてきた。
<魔闘術の仙極>を再発動、強める。
魔槍杖バルドークで受けず、連続の突きを前後の動きだけで避けた。
「くっ、妾の攻撃を」
六眼バーテの六眼の内の三眼の瞳が散大し収縮。
左に回ったバーテは体を内に畳ませるような機動から袈裟懸けを繰り出す。
その袈裟斬りをマチェーテと似た魔剣の右から突きの斬撃を魔槍杖バルドークで防ぐ。
更に小刻みに魔槍杖バルドークを揺らすように押し出し、嵐雲型の穂先にマチェーテと似た魔剣を引っ掛けながら前進。魔槍杖バルドークの柄を六眼バーテに預け、六の腕と魔剣を封じる。
「え――」
驚く六眼バーテを見ながらまだ使用していない<魔闘術>系統の<煌魔葉舞>のスキルを発動。
※煌魔葉舞※
※煌魔葉舞流<煌魔闇雷>系統:闇神闘技<魔闘術>に分類※
※魔人格闘術技術系統:上位技術※
※<魔力纏>技術系統:極位※
※霊纏技術系統:上位<闘気霊装>※
※魔界セブドラ実戦幾千技法系統:二十四魔氣練魔舞術※
※悪式格闘術技術系統:上位技術※
※魔槍雷飛流を扱う闇神アーディンから直に闇神闘技の<煌魔葉舞>を学び得た存在は希少※
※近接戦闘能力が上昇※
※<霊魔・開目>があると効果が上昇※
更に<魔神式・吸魔指眼>を実行。指先から漆黒の線のような攻撃が伸びる。
その<魔神式・吸魔指眼>が六眼バーテの体と衝突――。
指から伸びている<魔神式・吸魔指眼>の漆黒の線と六眼バーテの体が繋がる。
長柄の魔槍杖バルドークで六腕が封殺されているバーテは、痛いのか「ぐぉァ」と叫びながら魔槍杖バルドークの拘束を逃れようとするが逃さない。
跳ぶような機動の片膝<悪式・突鈍膝>の蹴りを、六眼バーテの胴体に浴びせる。
続けざまに<玄智・陰陽流槌>を発動。
魔槍杖バルドーク越しに六眼バーテの体に左と右の肘の打撃を繰り出した。
両肘に付いていた陰陽の水模様が四方に弾ける。
それが光と闇の刃のように六眼バーテの体に衝突、傷を付けて、鋼のような肉体を凹ませていく。
肘から水の陰陽の魚が宙へと躍り消える。
「げぇぁぁぁ」
六眼バーテは銀色と黒色の血のような液体を口から吐きながら吹き飛んだ。
その六眼バーテは体の<魔闘術>系統を強めると体が回復。
<握吸>を使い魔槍杖バルドークを右手に引き寄せ、回収。
六眼バーテは左に転移しつつ俺から距離を取る。
そして、
「ここで槍武術、否、すべてを上昇させるとな!」
と言いながら、転移するような加速力で前進。
一気に間合いが剣圏内となった。
鋭い斬撃を放つ六眼バーテ。その斬撃を魔槍杖バルドークですべて叩き落としながら上昇――。
前転から踵落としを六眼バーテに向かわせる。が、さすがに腕の数が多い。
あっさりと六つの魔剣の腹と刃で踵落としは防がれた。
アーゼンのブーツから金切り音が響く。構わず、短く持った魔槍杖バルドークを下に突き出す。
六眼バーテは六つの魔剣を引きながら後退し、俺を見ながら斜め後方に飛翔しつつ、六眼の内の三眼から得体の知れない怪物を生み出して特攻させてくるが――。
その怪物の群れを左手に移した魔槍杖バルドークで――。
左腕ごと魔槍杖バルドークを振るう<龍豪閃>で薙ぎ倒す。
と、六眼バーテは消える。背後に転移してきた察知――。
<仙魔・龍水移>で対応するように<仙魔・龍水移>を実行。
即座に<豪閃>――。
「――げ!」
俺の背後を取ったと思った六眼バーテの背後を逆に取った。
六眼バーテは背中に目があるように反応している。
身を翻す機動で、三腕の魔剣すべてを盾に利用。
<豪閃>を受けながら後退した。同時に加速力が増して後退を続ける。長い髪が前方に靡く。
ゆらゆらと揺らめく金髪が六つの魔剣の刃に当たり切断されていた。
直ぐに長い髪は再生していく。師匠たちが言ったように不死系種族か?
吸血鬼でもないだろう。
とにかく、かなりの再生能力を有した存在がバーテか。
――<水神の呼び声>を意識、発動――。
六眼バーテは、
「げ、水を撒いていた理由!? しかも水神アクレシスとか、結構な大物じゃないの! なんで魔界セブドラのこんな奥に神界の大御所が唾付けてんのさ!!」
と、叫んだ六眼バーテ。
左に移動しながら魔眼を六つ輝かせる。
その魔眼にはウィトルウィウス的人体図のような魔人のモデルが中心にいる魔法陣が浮かんでいた。
「こうなったら! <魔極・六雷刃>!」
その魔眼と魔法陣は魔線で繋がる。
幾重にも積層した魔法陣となった刹那、無数の電狐を帯びた礫を繰り出してきた。
大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を召喚。
『――御使い様、わたしにお任せを!』
『おう、分かったが、危なかったら直ぐに<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を上げるからな?』
『はい!』
<闇雷精霊グィヴァとの絆>も意識し、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を下げた。
『では、グィヴァのスキルを使う<闇雷蓮極浄花>!』
※闇雷蓮極浄花※
※闇雷精霊グィヴァが蓮のような花弁を模る物理と魔法の防御用スキルだが、使い手の精神力と魔力を回復させる効果もある※
※<闇雷精霊グィヴァとの絆>と連動することにより、グィヴァを纏った時に使い手も任意のタイミングで使用可能※
右目からグィヴァの雷精としての塊のようなモノが出る。
と同時に蓮のような花弁を模った。
飛来してきた無数の電狐と、その電狐と繋がる礫を蓮のような花弁の<闇雷蓮極浄花>がすべて吸収。
『良し、グィヴァ出ろ』
『はい』
闇雷精霊グィヴァが右目から出る。
雷状の魔力を周囲に発生させながら前進し、六眼バーテとの間合いを一瞬で剣圏内にした。そのまま雷刀のような腕を右から左へと振るう。六眼バーテは六眼の内の三眼でグィヴァの体を観察。
残りの三眼で確りとグィヴァの雷刀腕を凝視しながら、己の三つの腕が持つ魔剣を掲げ、盾にしてグィヴァの奇襲を防ぐ。
刹那、
「ギバアァ!」
熊とカマキリが融合したような大怪物が叫ぶ。
闇雷精霊グィヴァに突進。グィヴァは逃げる。
大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を向かわせたが、熊とカマキリが融合したような大怪物は動きが速い。
するとヘルメが、「フォローします――」と《氷槍》が、熊とカマキリが融合したような大怪物に向かう。
「――ギバアァ!」
熊とカマキリが融合したような大怪物は、カマキリのような腕を振るって《氷槍》を切断。
「そこです――」
ヴィーネも翡翠の蛇弓から光線の矢を放つ。
光線の矢は「ギバゴガァ――」と熊の口から吐き出された、黄土色の液体?
否、毒液の炎のようなブレスで、防がれてしまう。
ヘルメたちに攻撃するかも知れない六眼バーテに向け――。
大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を向かわせた。
「チッ」
六眼バーテは後方に飛翔。
バーテの動きを半身の姿勢で追いつつも、熊とカマキリが融合したような大怪物を凝視。
その体の割合は熊が七割か? 他はカマキリ。
頭部の複眼はカマキリで、口回りは熊だ。
熊の毛の色合いは黒色と灰色。
太ましい左右上腕が熊で、左右下腕にカマキリのような鎌刃を持つ。
その瞬間、下から、「にゃごぁぁぁ」と相棒の泣き声が響く。
と、紅蓮の炎が、その下から飛来――。
熊とカマキリが融合したような大怪物の腹を紅蓮の炎が突き抜けていた。
大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>から逃げている金髪の六眼バーテは動きを止めた。
驚愕の表情を浮かべて、
「げぇ、ベリシトゥー!!!!」
<脳脊魔速>を発動。
即座に六眼バーテの背後にだれもいないことを把握。
<血魔力>を発しながら魔槍杖バルドークに<血魔力>を吸わせた瞬間――。
<紅蓮嵐穿>――。
魔槍杖バルドークを前に出すモーションのまま――。
秘奥が宿る魔槍杖バルドークごと次元速度で直進――。
――魔槍杖バルドークから魑魅魍魎の魔力嵐が吹き荒れる。
俺の体から出た龍の形をした<血魔力>もその魔力嵐の中に混じるや否や推進力が増した。
魔槍杖バルドークと俺は六眼バーテの六つの魔剣ごと体を突き抜けながら直進。後方からやや遅れて爆発音が響きまくるのを感じながら振り返った。
<脳脊魔速>を終了させる。
六眼バーテは数本の溶けたマチェーテのような魔剣を持つ腕のみ、その腕と魔剣が残っていたが、それも溶けたように消えた。
続きは明日。




