表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
槍使いと、黒猫。  作者: 健康


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1333/2033

千三百三十二話 クイバンの嘶きとエイラスの咆哮の獲得

 倉庫の部屋のアイテムと皆を見ながら、アドゥムブラリとの血文字を行った。


『アドゥムブラリ、ということで、済まん。幼馴染み復活に必要な二つのアイテムの一つアムシャビスの光玉を持つだろう存在と揉めてしまった』

『いいさ、主の判断は聞く限り、ほぼほぼ間違いはないだろ。魔戦酒バラスキアを飲んだくだりは、少し、なにやってんだ? と思ったが結果を聞くと、すげぇ、しかない。そして、俺は二人の大魔商と、その部下からドムラチュアがアムシャビスの光玉を持っているという情報を得ただけだからな、他にもアムシャビスの光玉を持っている蒐集家がいるはずだ』

『あぁ、だと良いが、で、こちらに向かっているのか?』

『おう、バーソロンと黒狼隊の面子と合流して向かう』

『了解した。【レン・サキナガの峰閣砦】に近付いたら連絡をくれ』

『おう』


 アドゥムブラリと血文字交換中にも偵察用ドローンの視界はチェックしている。

 廃墟とハブラゼルの魔宿の周囲が映っているが、連絡役のミツラガの姿らしき四眼四腕の魔族は見当たらない。


 俺たちが大楼閣に戻りレンと上草連長の重臣たちと会っている間に、ミツラガがハブラゼルの魔宿に来たら、キサラたちに任せるか。

 キサラを見て、


「キサラ、魔傭兵ドムラチュアのミツラガだが……」

「はい、お任せを。捕らえるか、最悪は倒してしまうかも知れませんが」

「了解した、それでいい」


 そのまま階段下の倉庫のような場所に保管されていたアイテム類を見て、


「上に戻る前に、そこのアイテムを回収しとく。爆弾ポーションなどは俺が回収するとして、アクセルマギナとガードナーマリオルス、あの魔銃と弾薬がほしいなら取っていい。キサラたちもいいかな、あげちゃって」

「はい、魔銃はアクセルマギナが自由に使うべきかと」

「ん、わたしたちは使わない。爆弾ポーションと施設破壊用のポーションと魔傭兵ドムラチュアの衣装はシュウヤがもらうべき」


 エヴァたちにも爆弾ポーションをあげるのもいいかと思ったが、<バーヴァイの魔刃>が使えるようになったし、飛び道具が豊富だから要らないか。


「魔銃は鋼だし、ミスティも興味を持つかな」

「ミスティへのお土産の魔銃と弾薬は源左砦に訪問した際に、サシィから〝団子〟と〝おにぎり〟は一緒にもらっています。ですので大丈夫かと」

「そうだったか」

「はい、ただ、そこの魔銃と源左製の魔銃は形が少々異なるようですから……あ、爆弾ポーションはミスティやクナも興味を持つかと思います」


 ヴィーネの言葉に頷いた。


「アクセルマギナ、ミスティへのお土産は源左の魔銃にするから、気にせず魔銃と弾薬の回収をしてくれ、俺は爆弾ポーション類などをいただく」

「はい、では、遠慮無く魔銃と弾薬を回収させていただきます」

「おう」

「どうぞ」

「ん」

「「「はい」」」


 アクセルマギナはラムラントとキサラとナギサにヴィーネたちに会釈してから、倉庫のような部屋に足を踏み入れた。

 ゼメタスとアドモスは、アクセルマギナの動きには反応せず。


 ギリアムの左右の位置取りを崩していない。

 ギリアムに、威嚇をするように骨の盾から虹色の魔力を噴出させる。

 鍬形も輝いた。眼窩の奥に宿る魔力の炎の色合いも元々の橙色に戻す。

 と、歯牙の間からも魔力を放出させていく。

 兜の左右の槍烏賊のような伸縮をしている。


 ギリアムは、もう完全に降伏していると思うが、光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスに余念はない。


「……」


 アクセルマギナは地図とチェストのアイテムボックスを見てから、壁に立て掛けてあった魔銃を掴む。

 ウィンチェスターライフルっぽさがあるのは源左の銃と似ているか。


 惑星セラの貴重な第一世代の聖櫃(アーク)の魔銃との性能差は……

 源左の時にも思ったが、気になるところだ。


「ピピピッ――」


 ガードナーマリオルスも丸い体の孔からチューブを出しつつ部屋に向かう。

 ガードナーマリオルスは片眼鏡のようなカメラから色々な光を魔銃に照射していた。

 アクセルマギナは手の甲から橙色の魔線が放出され、その魔線の中心に、近未来的なルシヴァルの紋章樹を映し出す。

 掌と指の浅指屈筋の腱と深指屈筋の腱からも橙色の魔力を発していた。

 更に胸元が輝く? あぁ、マスドレッドコアか。


 チラッと俺を見るアクセルマギナが美人さんだ。

 と、右の瞳の下に記号の文字と1:1.6180339887が出ていた。

 

 すると、半身の魔機械の強化外骨格からロボットが変形するような機動で、内部から、分析用の小型モジュールを出す。

 バイオニューロンチップ的な魔基板が幾重にも重なったLED繊維が見えまくる。

 アクセルマギナの独特な心臓音も響く。


「「おぉ」」

「アクセルマギナの胸元から……」

「ん、格好いい、けど不思議」


 不思議な鼓動音……なぜか、お爺ちゃんの古時計の歌を思い出す。


『はい、宇宙の不思議と言えば、惑星セラの宇宙文明、そして、八皇の一人のハーミットはどうしているのでしょう』

『あぁ、最新鋭深宇宙探査船トールハンマー号に乗って、バルスカルを追い続けているのか……それとも、戦いを終えてまったりしながら、俺を追っているかも知れない。そして、その場合レーダーを弾くことが多い塔烈中立都市セナアプアだったとしても、さすがに俺の反応が長く消えることが多いことは確認しているはずだから、様子を見に魔塔ゲルハットに来ているかも知れない』

『はい、第一世代のミホザは、いいパーツがあるようですから、その探索にいそしんでいるかもですね』

『あぁ、基本、宇宙海賊だからな、そうに違いない』

『はい』


 にしても、汎用戦闘型と言うが、アクセルマギナは非凡だな。


 アクセルマギナは、虹色の光を魔銃に発しながら数回頷くと振り返る。

 持っていた魔銃を、足下から背伸びしているようなガードナーマリオルスのチューブへと手渡してから屈んで弾薬をケースごと回収。

 

 左の尻と太股を注視してしまった。

 お尻と太股に絡む人の指のような外骨格が悩ましい。

 右足と右の尻は黒い繊維質のスカートで覆われている。


『ふふ、アクセルマギナちゃんのお尻ちゃんは、少し成長したような印象です』

『やはりそう思うか』

『はい、内緒ですよ』

『お、おう』


 ヘルメと少しアホな念話を行った。


 アクセルマギナは、立ち上がるとガードナーマリオルスのチューブが持っていた魔銃を掴み直し、部屋の外に出てきた。

 露出していた魔機械の体の小型モジュールは一瞬で内部に格納される。

 その挙動も折り紙が畳まれるような機動だから、渋すぎる。


 倉庫部屋の様子を録画していたガードナーマリオルスは頭部をキュルルと音を鳴らして回してから――。

 下の丸い胴体を回転させて前進し、部屋から出た。

 

 アクセルマギナは、


「スペクトル分析など、ある程度終えました」

「了解」

「ピッ」


 アクセルマギナとガードナーマリオルスは敬礼。

 敬礼を返すと、アクセルマギナは楽にした。


 ガードナーマリオルスは、チューブの先端をアクセルマギナが持っている魔銃の後端へと伸ばしていた。

 チューブの先端は、ディスプレイケーブルの端子かHDMI端子と似たような金属素子に変化させている。


 その端子を魔銃の銃身と照準器のような金具にさし込もうとしているが、上手くささらない。

 なんか端子を見ていると、端子に合うソケットにガシッと嵌めたくなる。


 俺のカレウドスコープの卍の形をしたアタッチメントとビームライフルの後部は繋ぐことが可能だからな。


 アクセルマギナは、魔銃を上げて、


「ガードナーマリオルス、この魔銃は第一世代とも異なるオールドタイプに分類される。ナ・パーム統合軍惑星同盟系星系に流通しているような魔銃ではないの、受け口の器具はありません」

「ピピピッ」


 アクセルマギナはチューブを丸い体の中に仕舞う。

 片眼鏡のようなカメラも収縮させてレンズの形を変化させた。


 悲しいといった感情表現を片眼鏡のようなカメラのレンズを前後、収縮と散大を繰り返し、(>_<)か、(T_T)的な印象の表現をしている。

 ガードナーマリオルスの気持ち的に悪いと思うが、凄く可愛い。


 黒猫(ロロ)銀灰猫(メト)がいたら、猫パンチを浴びせていただろう。

 

 アクセルマギナは、ガードナーマリオルスに微笑んでから、俺を見て、


「マスター、この鉄とニッケル合金、魔銃の魔力源はエレニウムエネルギー、弾薬は別個に必要ですが、遺産高神経(レガシーハイナーブ)に対応したマスターなら簡単に扱えます」

「了解した、内部の機構と弾薬は?」

「はい、触った者の魔力に反応する仕組みは源左の魔銃や同じです。ナノセキュリティー防御層はありません。しかし、魔法陣が個体の魔力に合わせて浮かぶ仕組みが分かりません。雷管と撃鉄代わりの魔石と未知の鋼鉄を少し分析しましたが、不明な点がある。魔力が内包した混合火薬の弾薬は、魔界セブドラならでは独自技術で、魔法やスキルで作られています。素材も硫酸、硝石、硫黄と似た化合物のようですが微妙に異なる組成式。セラでも使えると思いますがどうなるか不明。そして、この魔銃を分解し素材を徐々に取り込めば、わたしとガードナーマリオルスの強化に繋がるかも知れません」

「お、なら、その魔銃と弾薬を好きなように使うといい」

「はい!」

「ピピッ」


 アクセルマギナは戦闘型デバイスに仕舞うように魔銃と弾薬に格納した。

 キサラは、


「アクセルマギナとガードナーマリオルス、良かったですね!」

「はい!」

「ピピッ」


 キサラとアクセルマギナはコツンと拳を合わせてタッチしては、また拳を合わせて、また掌を合わせて楽しそうにダンス。

 スタイルの良いキサラの巨乳が上下していく。


 揺れ幅が素晴らしい。

 姫魔鬼武装の黒い修道女風の衣装はノースリーブだからな。

 黒魔女教団が信奉する魔界セブドラの一柱、闇遊の姫魔鬼メファーラ様に感謝すべきか。

 

「「ふふ」」


 ヴィーネとエヴァたちも笑顔を見せた。

 キサラはガードナーマリオルスのチューブを引っ張る遊びをした後、


「シュウヤ様、ハブラゼルの魔宿で予約をしてきます。そして、先ほどの話に出ていた魔傭兵ドムラチュアの連絡役ミツラガの件はお任せを」

「私もキサラさんと一緒にハブラゼルの魔宿に入ってみたい!」


 ナギサの発言に頷いた。


「おう、分かった。では、ゼメタスとアドモスもハブラゼルの魔宿に移動してくれ。魔傭兵ドムラチュアの連絡役を見つけ次第捕まえる方向で動いてくれるか?」

「ハッ、お任せを!」

「承知!!」


 頷くと、キサラたちは廃墟から外に出た。

 偵察用ドローンの視界にも、キサラたちの姿が映る。

 大柄の光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスは、やはり目立つな。

 ナギサが小人に見えるぐらいだ。


 ハブラゼルの魔宿に入ったら、皆から注目を浴びることを請け合いだ。

 俺が戻ってきたから、あの中心のリングに入って闘っていても不思議ではないな。


 とか考えてから、倉庫部屋に入る。

 黒い装束を掴んでから、


「ハルホンク、これも食ってくれ――」


 その黒い装束を右肩の竜頭金属甲(ハルホンク)にくっ付けた。


「ングゥゥィィ」


 黒い装束は一瞬、掃除機に吸い取られたように凹む。

 と、一気に竜頭金属甲(ハルホンク)の中に吸い込まれて消えた。

 よし、魔力を得た感覚を得た――。


 【レン・サキナガの峰閣砦】の地下地図と【レン家の宝廟】の地図も戦闘型デバイスのアイテムボックスに格納した。

 クーラーボックス型のアイテムボックスを、戦闘型デバイスのアイテムボックスの中に格納。

 

 このクーラーボックスのようなアイテムボックスの中身の施設を爆破できるポーションはクナへのお土産かな。

 極大魔石の量からしても、量産化はできるかも知れない。

 その場合、ダイナマイトのプラスの面のようにサイデイルの樹海開拓の道具にもなりえるか。

 キッシュへのプレゼントにもいいかもな。

 クーラーボックスのようなアイテムボックスもプレゼントできる。

 ペルネーテ組か、サイデイル組か、セナアプア組か。

 眷属以外なら、ペルネーテにも、サーマリア王国関係が先になるかも知れないが、戻る予定だから、レムロナとフランにプレゼントもいいかもな。


 部屋から出て、階段傍に突き刺さっていた棒手裏剣を竜頭金属甲(ハルホンク)に吸収させる。

 俺が弾いた棒手裏剣と、棒手裏剣が入った袋を幾つか回収し、


「これも食べていいや」

「ングゥゥィィ~」


 棒手裏剣を全部食わせた。


 四眼ベアトリスが使っていた短槍も回収しておくか――。

 転がっていた短槍を回収し、跳躍して、天井に突き刺さっていた短槍を引き抜いて回収。


 アイテムボックスに浮かぶ新しいアイコンを――。

 

 newクイバンの嘶き×1

 newエイラスの咆哮×1

 

 へぇ、これまた曰くがありそうなアイテムだ。

 両手にクイバンの嘶きとエイラスの咆哮を召喚。

 そのまま二槍流の妙神槍流のソー師匠の動きを参考にした動きをしながら、ヴィーネ、ギリアム、エヴァ、アクセルマギナ、ガードナーマリオルス、ラムラント、コセアドを順繰りに見て、


「上に戻ろうか、外に出よう」

「「「「はい!」」」」

「ん」

「ピピッ」

「はい!!」


 外に出た。<導想魔手>を出してから、


「コセアドは空は無理かな」

「あ、無理です」

「なら、その<導想魔手>に乗ってくれ」

「はい」

『閣下、わたしが運びましょうか』

『あ、そうだな、頼む』

『はい』


 左目の内部にいたヘルメが外に飛び出る。

 液体から直ぐに女体化したヘルメは、両手の指先から輝く紐の<珠瑠の花>を伸ばして、コセアドの体に絡めると一気に上昇。


「うあぁぁぁ~」


 コセアドの体は結構ごついから、甲高い悲鳴が、おかしく思えた。



続きは明日。

HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1~20」発売中。

コミックス1巻~3巻発売中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] アクセルマギナ達の強化は未知の魔機械技術等の吸収か。 爆破ポーションは使い道色々有りそうですし、量産化できる様になってから他所に渡したりしたいですな。 [一言] いいさ、主の判断は聞く限…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ