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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1332/2033

千三百三十一話 レン家の裏切り者は誰か?

 ヴィーネが、


「ご主人様、ラムラントの眷属化は、下の酒場と万屋を兼ねた宿屋で行ったらどうでしょうか、二階と三階は広そうでしたよ」

「ん、賛成、ここはシュウヤが成長できた場所でもあるけど……綺麗な寝台があるほうがいい」

「はい、しかし隣の店は広場からしても賞金稼ぎのような魔傭兵たちの溜まり場なのかも知れません」


 エヴァとキサラの言葉に頷いた。

 ラムラントたちは黙って俺を見る。


 判断は任せるようだ。

 

「それもそうだな、ラムラントの眷属化は隣の店を見てからにしよう」


 と発言。

 すると、キッカの血文字が浮かぶ。


『宗主と皆、レンが大楼閣に来ました。ソウゲン、シバ以外の重臣の上草連長たちをシュウヤ様に紹介したいとのこと』


「皆、キッカの血文字を見たな?」

「「「「はい」」」」

「見ましたぞ!」

「はい、見えました」

「不遜なアイテムを用いて、閣下を見張ろうとしていたレンの重臣たちの罪は重い!」

「うむ! ――敵を塵に!」

「――敵を灰に!」

「――敵を魔素に!!」」


 ゼメタスとアドモスは黒骨塊魂と赤骨塊魂の骨の盾を何回も突き合わせて叫んでいた。

 

 ギリアムは「ひぃ」と悲鳴をあげていた。

 体が萎縮したように小さくなったように見える。


 すると、ヘルメが、


「レン家の失礼な者たちに冷や水を浴びせに行きましょうか」

「一人か二人の重臣の体を<雷毛>でズタズタにしましょう」


 グィヴァは冗談だと思うが冷然な雰囲気を醸し出している。

 とりあえず、ラムラントを見て、


「ラムラント、悪いが、眷属化は少し待ってもらう。今の状況、タイミングだからできることがあるからな」

「はい、大丈夫です」

「キサラたちは、【レン・サキナガの峰閣砦】の街の情報収集を兼ねて、ラムラントの眷属化に使う部屋を、隣の宿で取っといてくれ」

「「「はい」」」

「アクセルマギナ、外に展開中の偵察用ドローンの一部を俺が動かす」

「はい」


 アクセルマギナに任せていた偵察用ドローンの数は全部で十匹、十体と数えたほうがいいんだろうか。


 ま、昆虫型だから十匹かな。

 五匹は廃墟の付近。もう五匹は自動操縦のまま結構な距離まで離れていた。操作可能な距離は、ちゃんと測ったことがないから分からないが、三キロぐらいか? もっと行けるかな。


 が、アクセルマギナのほうが操作可能な距離は広いようだ。


 気になる共有視界の中で一つを注視――。


 隣の店の一階の様子が映し出されていた。


 結構な広さ。左にテラス付きの出入り口があり両扉だ。

 その出入り口だけなら、西部劇に登場しそうな印象を覚える。

 

 中央が食堂を兼ねた大ホール。


 中心には、金網に囲まれた四角い空間、リングがあった。


 そのリングの中で素手で戦うのは黒髪の男性と四眼四腕の魔族。

 どう考えても、四眼四腕の魔族のほうが強そうに見えるが、黒髪の男性も猛者か。

 

 まさにグラップラーだ。


 周囲には円卓の丸い机を囲むように複数の椅子が並ぶ。


 そこでカードゲームを楽しむ客たち、魔酒を飲む客、おっぱいぽろりの娼婦を太い膝に乗せている豪客、煙を吸っている痩せている客、鼻から机の上にカッターで仕切られた粉を吸い上げては、急に立ち上がり、コマネチを行う猛者など様々だ。


 最後の粉を鼻から吸ってキレている方は黒髪の男性で目付きがイッていた。レン家、源左から出た魔族と思うが、ヤヴァいな。

 

 カードゲームを楽しむ客たちの様子を見ると、ポルセンたちと出会った当時を思い出す。

 

 右にはカウンターと背の高い椅子が並ぶ。

 ここは、大ホールの雰囲気とは対極、一転して高級感があった。


 酒を飲む者もお洒落な方が多い。

 高級グラスを片手に一人隅っこでお酒を楽しんでいるマダムは、色っぽかった。そのカウンターの裏には地下と二階に上がれる階段がある。


 その隣が、大きい調理場に倉庫と厠と洗面所か。


 そこで、隣の宿屋&酒場の偵察用ドローンの視界を止めて自動に切り替えてから、


「ヘルメとグィヴァは俺の目に戻れ。ヴィーネとエヴァは、俺と一緒に緊急評定に出席だ。ついでにギリアムとコセアドも大楼閣に付いてきてもらう」

「「はい――」」

「え、俺が……」

「あ、俺もですかい?」


 ギリアムとコセアドが驚く間にも、ヘルメは液体化すると、左目に飛んでくる。

 グィヴァは雷状の網のような魔力に変化しながら右目に飛来。

 普通の人族なら両目が潰れる勢いのゼロコンマ数秒で、二人の精霊は、俺の両目に帰還してくれた。


「……」


 ギリアムは口をあんぐりと広げて驚愕中。

 そのギリアムに、


「ギリアムは俺が雇った魔傭兵ドムラチュアの代表として、緊急評定に出席してもらうからな、当然、大魔商ドムラチュアとの連絡手段があるなら、教えてもらうし、当分は連絡はしないでもらう。そして、コセアドのパリアンテ協会も俺が雇った形でいいかな」

「「「……」」」

『ふふ、なるほど、閣下の案は面白い!』

『ふふ、ですね、裏切りを燻り出すには良い案です』


 ギリアムは頷くが沈黙。

 コセアドは、


「はい、俺は命を救われたんですから、まったく構いません。そして、俺の上司ですが、パリアンテ協会を持つ大魔商パリアンテです。【メイジナの大街】と【ケイン街道】が地元です。大魔商ドムラチュアの魔傭兵ドムラチュアとは揉めることが多く、俺がこいつらに囚われたことで、かなり追い込まれていた状況でした」


 なるほど。

 ギリアムを見ると、


「……その通り、今後の商売のため、大魔商パリアンテからは、身の代金を得るだけに留めるようにとドムラチュア様から指示を受けていた」

「指示か、ドムラチュアの連絡役もいると思うが?」


 ギリアムは頷く。

 

「この廃墟に直に入ることはあまりない。隣のハブラゼルの魔宿に来ると、大抵知らせが入る。知らせは、この街に住むガキか、娼婦が担当だ」

「今、その知らせが来る可能性は?」

「今は分からない。ヴァヌサの仕事が終わる頃には来る予定だった」

「魔傭兵ドムラチュアの仲間が外にいた可能性があるわけか……その連絡役の名は?」

「名は、ミツラガと名乗ることが多い。大抵は外套に笠か帽子を被る、四眼四腕の魔族だ」


 ギリアムは完全に抜ける氣か。

 頷いてからヴィーネたちに状況をもう一度説明しておくか。


「……ギリアムたち魔傭兵ドムラチュアは、変装していた上草連長の誰かと、【レン・サキナガの峰閣砦】の地下の地図と【レン家の宝廟】の地図と引き換えに、三十個の極大魔石と魔薬バリード百五十kgを渡していた。そこの扉の先の倉庫のような部屋の中にある地図がそうだ。因みに、レンが言っていた盗賊だが、魔傭兵ドムラチュアのヴァヌサという名らしい」

「……なるほど、ですからの今の会話なのですね」

「あぁ、そうだ」

「……いきなりレン家の核心を突く展開……」

「はい、そして、ギリアムに、レン家の裏切り者が、誰なのかを、指摘させるための緊急評定の出席ですね」


 ヴィーネとキサラの言葉に皆が頷いた。


「ん、レン・サキナガは、その部下の裏切りのことは知っている場合は?」


 エヴァは皆に聞いているような雰囲気だ。


「レンの内偵が動いてるなら、レンは、わざと上笠連長の重臣を泳がせている可能性がある。知っていて裁けない理由とかもあるかもだ。魔薬の流通も一つではない可能性が高い」


 俺がそう言うと、皆が思案氣な表情を浮かべる。


 ギリアムは当然といった顔付きだ。


 魔薬を売る魔商人、大魔商人と繋がる魔傭兵団は詳しいか。

 知っている情報は後で聞くか。

 エヴァは頷いて、


「ん、【レン・サキナガの峰閣砦】の街に、【メイジナ大平原】に拡がる【メイジナ大街道】に【メイジナの大街】と【サネハダ街道街】に【ケイン街道】など、かなり広いからね、アドゥムブラリと会談した【メイジナの大街】のデン・マッハやゲンナイ・ヒラガの大魔商もいる」

「はい、そうなると……この作戦を実行する前に、レンとは個別に話をするべきです」


 キサラの言葉に頷いた。


『ビュシエ、その場にレン・サキナガはいるんだな』

『はい、サシィと話をしています』

『では、緊急評定に出る前に、そのレンに、俺が〝別件で個別に話がある〟だから〝待っていてくれ〟と、そこの部屋を出てから、今の話を伝えておいてくれ』

『分かりました、何か(・・)が、あるのですね』

ある(・・)


 と、ビュシエと気持ちを込め合った血文字を送り合った。

 俺たちの考察を聞いているギリアムの表情は厳しくなっていく。


「……レン・サキナガも源左から離脱後に、【レン・サキナガの峰閣砦】の長になったようだから、その期間は紆余曲折あったはずだからな」

「「はい」」

「……俺たちと取り引きをしたレン家の重臣の顔は分からないぞ……」

「声と雰囲気で何となく……取り引きを行った重臣は、こいつかな? と予想した重臣の前に移動してくれ」

「……分かりました」


 ギリアムは不安氣だが、裏切った重臣は、動揺するはずだ。

 訓練を受けた工作員ならいざ知らず、ポーカーフェイスは貫けないだろう。何かしら仕種が態度に出るはずだ。

 

「ん、緊急評定の時、上笠連長の重臣たちの手を触っていれば分かる」

「そうだな、エヴァが触れるような話の展開に持っていこう」

「ふふ、いいですね」

「はい、レンも事前に話をして協力してもらいましょう」


 ヴィーネの言葉に皆が頷いた。


「では、レン家の裏切り者は誰か? の作戦会議的な話はここまで、俺たちは大楼閣に戻る。アクセルマギナとガードナーマリオルスはそのまま付いてこい、偵察用ドローンの投影があれば皆も状況が分かりやすくなるだろう。重臣の部下の動きも偵察用ドローンで把握できるだろうしな」

『素晴らしい案です!』

「はい!」

「ピピピッ」

続きは明日。

HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1~20」発売中。

コミックス1巻~3巻発売中。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「ん、緊急評定の時、上笠連長の重臣たちの手を触っていれば分かる」 「そうだな、エヴァが触れるような話の展開に持っていこう」 足しかに。エヴァが触れれば確実ですね! [一言] 大魔商パリアン…
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