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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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千三百三十話 ギリアムの情報

2024年1月3日 11時39分 修正&追加

 【レン・サキナガの峰閣砦】の地下地図、【レン家の宝廟】の詳細か。


「その地図はどこにある」

「あ……」


 と、ギリアムは四眼の内の三眼が右端に向かう。

 一階の右端には、俺たちが下りてきた階段があるが、階段の下には、階段の間隔を埋めるような小さい部屋があった。赤茶色の扉は閉まっている。

 直ぐにヘルメとグィヴァが、その扉の前に移動。

 やや遅れてナギサも、その扉の前に移動して、扉の取っ手を凝視しつつ、長い黒髪の一部をマルアのように変化可能なのか、鱗模様が目立つ刃物に変化させていた。


 アクセルマギナとガードナーマリオルスもそこを凝視。


「扉の部屋の内部には、別段に罠はないと思います」

「ピピピッ」


 アクセルマギナの言葉に頷く。

 ガードナーマリオルスは、球体の体を回転させながらドアの前に移動。

 そして、体から片眼鏡のようなカメラを伸ばす。

 そのカメラから魔線が出ては扉と奥の部屋の内部をスキャンしていった。

 スキャンを終えると片眼鏡を仕舞いつつ、戻ってきて、俺の周りを「ピピピッ」と音を立てながら一周後、落ち着いた。


 部屋には罠が何もないってことだろう。


 ヘルメとグィヴァも頷く。

 ナギサも頷くと、髪の毛を元に戻して、


「では、開けます」


 と右手で取っ手を回し扉を開けた。

 部屋の中の右端にチェストがあった。

 チェストはクーラーボックス的で、魔力が内包されていた。

 チェストの直ぐ左、その奥側の壁には、黒色が基調の防護服は魔傭兵ドムラチュアの装束がハンガーに掛けられている。魔剣と盾に魔杖も、壁と縦に沿う形の専用ラックに立て掛けられてあった。源左で見たことがあるような魔銃も立て掛けてあった。

 各種ポーション入りの腰ベルトも、その前の床に置かれてある。

 魔力が豊富な弾薬もケースで数十と入っている小箱もあった。

 魔銃と弾薬にアクセルマギナが視線を向けている。

 ガードナーマリオルスも小さい体から「ピピピッ」と音を響かせると、丸い体を急回転させながら前進し、回転を止めると、その丸い体の表面から、またも、片眼鏡のようなカメラを出した。


 先ほどと同じくスキャンか。

 更に、球体の体の表面を回っていた円状の頭部も動きを止める。

 円状の頭部から小さいアンテナを伸ばした。そのガードナーマリオルスのコミカルな動きから名作映画の『ニューヨーク8番街の奇跡』に登場してくるような可愛い小さな訪問者たちを思い出した。と、そのアンテナからも、カメラと共に魔力を飛ばす。

 録画だけでなく、魔銃と弾薬の組成を分析しているんだろうか。

 アクセルマギナとガードナーマリオルスは魔銃と魔弾が欲しいのかな?

 ナ・パーム統合軍惑星同盟の文明的に、旧世代の魔銃のような感覚だと思うが、後で回収しようか。

 クーラーボックスはアイテムボックスか?

 そのアイテムボックスらしき箱の上には、何枚かの地図が乱雑に置かれてある。


「あの地図が【レン・サキナガの峰閣砦】の地下の地図、【レン家の宝廟】の地図かな。下のチェストには、何が入っているんだ?」

「【レン家の宝廟】の地図と、そこに行くまでの地図です。下のアイテムボックスには、手投げ用の爆発ポーションと、施設の破壊に用いる〝二刻爆薬ポーション〟が入っています」


 施設の破壊目的の爆薬か……。

 トリニトロトルエン的な褐色火薬だったらかなりの威力だ。


「……地図は誰から入手した?」

「……レン家の重役だと思われる者と部下から入手しました。相手は変装していたので、顔は分かりません、俺たちは三十個の極大魔石と魔薬バリード百五十kgと交換しました」

「了解したが、重要な情報だ」


 ヘルメとグィヴァとラムラントと頷き合う。

 ヘルメに向け、


「……先ほどの部屋には監視アイテムが幾つか見つかっている」


 と言うと、ヘルメは、


「はい、色々と辻褄が合ってきましたね」


 頷いた。

 ラムラントも、


「レン家の部下たちも源左と同じく一見は纏まって見えますが……」

「あぁ、不正はどこの国でもあるだろう」


 俺たちの言葉にギリアム以外の皆が頷く。

 それを見ながら、白蛇竜小神ゲン様の短槍を仕舞う。

 代わりにコグロウの大針を再召喚し、魔力を通した。


 コグロウの大針の柄に薄らと魔印が浮かぶ。


「ひっ、その鋼の大針は……俺に……」


 ギリアムは、コグロウの大針と俺を見て怯えた。


「そうだな……」


 とコグロウの大針を掌で回す。

 すると、ギリアムは、は四つの眼で俺とコグロウの大針を凝視しては顔色が明らかに悪くなった。


 光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスが脅迫している時よりも悪く見えた。


 <禹仙針術>を用いたコグロウの大針がギリアムの脛を突き抜けたからな。


 コグロウの大針はそれほどの恐怖をギリアムに与えたか。


 怯えた調子のギリアムは数回コクコクと頷きながら、


「……シュウヤ様は、かの、暗殺仕事人……殺刻流暗殺武術の使い手たち、藤襲一族と関係がお有りなのか?」

 

 と発言。

 コグロウを知っていたようだ。

 あぁ、魔商団ドムラチュアは【サネハダ街道街】と【ケイン街道】が地元か。


 コグロウも【ケイン街道】で活躍していたようだから、ギリアムたちがコグロウを知っていてもおかしくない。


 ギリアムに、


「言い方はおかしく聞こえるかもだが、最近、関係を持ったと言えるかな、しかも濃密に」

「……」


 ギリアムの四眼が俺たちを巡る。

 恐怖の感情も表情筋の動きで顕わとなっていた。


 そんなギリアムに<闇透纏視>を使用。

 そして、コグロウの大針の切っ先を見せた。


 ギリアムの正中線と径路に幾つかの魔力の渦がハッキリと見える。

 そのギリアムに、


「……ヴァヌサの帰還後に魔傭兵ドムラチュアは大魔商ドムラチュアの下に戻る予定だったのか?」

「……はい……レン家の秘宝のほうが重要でしたから、奪取次第【ケイン街道】にあるドムラチュア様が居る本拠に戻る予定でした」

「了解、戻るか……それで二階にいたラマガンは体に魔手術を受けていたようだが」


 そう聞くと、ギリアムの四眼の瞳孔が散大し収縮してから、


「……はい、ラマガンは魔手術を受けています」


 ラマガンのことを詳しく聞くか。


「ギリアム、その魔手術を受けたラマガンの詳細を教えてくれ」


 ギリアムは頷いた。

 

「……ラマガンは優秀でした。【メイジナの大街】、【サネハダ街道街】、【レン・サキナガの峰閣砦】での魔薬バリーの販売網の構築、デラバイン族、蜘蛛魔族ベサン、ベルハー族、の部隊を倒した経験もあり、悪神ギュラゼルバンの眷属キムハラを討ち取ったこともある。そうした成果をあげているラマガンに、ドムラチュア様も喜んでいた。ですから、魔手術を行う魔手術人の手配に、特別な移植用素材なども、すべてドムラチュア様が用意したのです」

「へぇ、結構な報酬だな」

「はい、自慢ではないですが、俺たちは魔傭兵ドムラチュアは稼ぎますから」


 ギリアムたちの親分ドムラチュアは、魔傭兵ドムラチュアにかなりの投資をしているようだな。


 そして、自慢げに語っていたギリアムだったが、部屋の死体を見て、またも顔色を悪くした。

 青ざめては、天井に突き刺さっている短槍も見てから、俺に視線を戻し、


「……そのラマガンよりも、強かった二槍使いベアトリス、ヴァクリゼ族出身、四眼ベアトリスをシュウヤ様はあっさりと倒された……」


 中々の強さだった。


「あぁ、先ほどの最後に倒した二槍使い、短槍使いの四眼四腕の魔族か」

「はい……」


 怯えているギリアムに、


「では約束を守ろう――《水癒(ウォーター・キュア)》」

 

 ギリアムの頭上に大きい水球が発生。

 水球には青龍のような水の龍が数体絡まっている。

 その《水癒(ウォーター・キュア)》の透き通った水球が崩れて、ギリアムの体に水のシャワーが降りかかった。

 《水癒(ウォーター・キュア)》の綺麗な液体を浴びたギリアムの体は一瞬で回復。

 

 防護服は切り裂かれたままだったが、上腕と下腕の根元と脇腹の傷も元通り。

 

 すると、ヴィーネとエヴァとキサラが廃墟の出入り口に顔を見せる。


「シュウヤ様!」

「――ここでしたか、そして廃墟にて謎の事件!」

「――ん、《水癒(ウォーター・キュア)》を使った直後?」

「おう、戦ってからの尋問後、有意義な情報提供をしてくれた、ギリアムは魔傭兵ドムラチュアにはもう戻れないだろう」


 キサラはヘルメとグィヴァに話をしてから、三腕のラムラントにも大楼閣のVIPルームにあったアイテム類から出ていた魔線などに付いて話をしていた。


「……そうでしたか、エヴァ、一応」

「あ、うん――」


 ヴィーネに言われたエヴァはギリアムに近付き、


「ん、わたしの名はエヴァっていうの。シュウヤの眷属、貴方の名を教えてくれる?」

「俺はギリアム」

「ギリアム、四腕の傷は癒えているなら、動かせる?」

「あぁ、シュウヤ様は高度な水属性の魔法も使えるのだな」


 と右上腕と左上腕をエヴァに向けた。


 その手に自らの手を当てたエヴァは、「ん、シュウヤは武人だけど大魔術師級でもあるから……」と言いながら俺を見て、頷いた。


 <紫心魔功パープルマインド・フェイズ>の準備ができたってことだ。

 ギリアムに向け、


「ギリアム、情報提供をしてくれたが、嘘はないな?」

「ない、すべて真実だ」

「ん」


 エヴァは頷く。

 嘘はない。


「先ほどの話の続きだが、レン家の部下、重役とその部下と再び連絡を取れるか? 勿論、名は魔傭兵ドムラチュアとしてだ」

「はい、可能ですが……」

「ん」


 エヴァは頷いていた。

 ギリアムはもう俺たちと敵対する意思はないとの判断だろう。


「なら、ラムラントととの眷属化の後に、少しつき合ってもらう」

「は、はい」

「ん、ギリアムはたぶん大丈夫」


 とエヴァはギリアムから手を離した。

 そのエヴァは皆と同じく部屋を見渡していく。


 ヴィーネは、


「……ご主人様の衣装が……胴衣に?」

「あぁ、廃墟の二階にあった魔戦酒バラスキアを飲んで肩の竜頭装甲(ハルホンク)にも与えたら、衣装も変化するスキル<魔戦酒胴衣>を獲得できた」

「おぉ、驚きです」

「はい、スキルを獲得する魔戦酒バラスキアとは聞いたことない」

「ん、凄い」


 頷いてから、ギリアムを見る。


 アドゥムブラリが欲しがっているアムシャビスの光玉は、大魔商ドムラチュアが持っている。この、ギリアムと、上の荷物に、大魔商ドムラチュアがどれほどの価値を見出すか分からないが、アムシャビスの光玉と交換できるかも知れない。


 後でアドゥムブラリに連絡しようか。


 しかし、ギリアムは生きているが、アムシャビスの光玉を持つ相手と揉めてしまったことも伝えないとな……。

 

 アドゥムブラリも呼んで【ケイン街道】に一緒に魔王気分で直進するか。

 そこで宵闇の女王レブラ様の勢力の大魔商ドムラチュアと会うかな。

続きは明日。

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― 新着の感想 ―
[良い点] コグロウも【ケイン街道】で活躍していたようだから、ギリアムたちがコグロウを知っていてもおかしくない。 ほう、そうか。となるとコグロウのスキル使えるのは良い威圧にもなるかもな。 やはり聞い…
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