千三百四話 眷属たちに<バーヴァイの魔刃>の授与
2023年12月8日 12時17分 修正
皆に、
「あぁ。血魔剣と<バーヴァイの魔刃>は合う。光と闇の反発故の威力向上かも知れないが、それは好都合」
「ん、蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣も強いと思う」
「血魔剣と<バーヴァイの魔刃>のコラボは強力~」
「ん、血魔剣は、他にも<血獄魔道・獄空蝉>と<血外魔道・石榴吹雪>が使える。だから、いきなり<バーヴァイの魔刃>に遠距離攻撃が変化したら、その時のシュウヤと戦っている相手は怖いと思う。だから、今後色々と有効活用できるようになる!」
頷いた。ヴィーネは、
「はい、エヴァの言う通り、吸血王の血魔剣で<バーヴァイの魔刃>の威力が上昇となると、血魔剣専用の<血獄魔道・獄空蝉>と<血外魔道・石榴吹雪>も囮や牽制に連続攻撃のフェイントなど戦術の幅は拡がりそうですね。しかし、ご主人様は槍使いなので<バーヴァイの魔刃>よりも、<バーヴァイの螺旋暗赤刃>のほうが重要だと思います」
と発言。その言葉に皆が頷く。
だが、戦いとなるとスキルの偏りは多々あるはず。
魔大斧にも変化が可能な、黒衣の王の斧槍を入手したが、どうしても魔槍杖バルドークを意識してしまうからな。
すると、キスマリが、
「ふむ、主は蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣の二剣流も見事な腕前だ。が、槍はそれ以上の唯一無二、天下無双の実力者だからな。しかし、それはそれだ。一先ず、威力も申し分ない〝黒衣の王〟関連の<バーヴァイの魔刃>の獲得おめでとうだ!!」
「おう、ありがとう、キスマリ」
ラ・ケラーダの挨拶を六眼四腕のキスマリと皆に送る。
キスマリは鷹揚に頷いて、四本の手を胸元に当てて軍隊式の挨拶をしてくれた。
そのキスマリは、
「うむ。四眼四腕の魔族の<バーヴァイの魔刃>にバリィアン族の<バーヴァイの手斧>なども厄介だったから、今後の<バーヴァイの魔刃>は良い遠距離攻撃となろう!」
と発言。頷いた。
キサラは、
「剣が必須の<バーヴァイの魔刃>は<煉獄短剣陣>の煉極レグサール大剣と同じような印象です。そして、遠距離攻撃だけなら槍を扱う際にも使える<仙玄樹・紅霞月>、<朱雀閃刹>、<仙羅・絲刀>と水属性の魔法の無詠唱のほうが、ご主人様には、使い勝手がいいということでしょうか」
王級規模の水属性の攻撃魔法はそれだけ終わってしまう可能性が大だが、そのことは言わず、
「おう」
「はい、キスマリが言いましたが、剣師としての実力も高いシュウヤ様ですから、聖魔術師ネヴィルの仮面装備に合わせて、聖なる魔剣師としての道もあるかと……最近は思い始めています」
キサラの言葉に嬉しさを覚える。
「ん、一理ある、白銀の衣装になる仮面と、古の光闇武行師デファイアルの仮面も格好いい」
「はい、わたしは白銀の衣装がお気に入りです。あれは素敵すぎる」
「ですね、シュウヤ様の動きをずっと追っていたくなる」
「はい、閣下は湖面を滑る貴公子の魔剣師に見える時があります」
「「はい」」
「古の風戦師フィーリーの仮面も捨てがたいです」
女性陣の眷属全員の意見は仮面推しか。
聖魔術師ネヴィルの仮面、古の光闇武行師デファイアルの仮面、古の風戦師フィーリーの仮面に似合う装備はどれも格好良かったからな。
そして、<バーヴァイの魔風重大剣>なども獲得したし、剣術の道もありはありだな。
が、俺は槍使いが主軸。
副産物が、剣術であり格闘術の認識だ。
すると、大柄のバミアルとキルトレイヤが前進し〝バーヴァイの黒魔巨細剣〟を掲げて、
「眷属の方々の剣を推す声が高まるのも分かる氣がしますぞ、主は、魔神バーヴァイ様の<バーヴァイの魔刃>を既に使いこなしている!」
大柄のキルトレイヤも俺のほうに〝バーヴァイの炎魔巨細剣〟を掲げ、
「はい、血魔剣と<バーヴァイの魔刃>の威力向上は、主と魔神バーヴァイ様の相性が良いということ! そして、今の魔剣を用いた<バーヴァイの魔刃>の速度は、バーヴァイの守護戦士団の団長ジェスラハモンの<バーヴァイの魔刃>より速かった!」
「うむ、血魔剣と<バーヴァイの魔刃>の威力も凄かった。当時の最高位〝魔極大刃〟の威力を越えているはず、主は、守護騎士団の団長にも成れる!」
と、古バーヴァイ族の四腕戦士キルトレイヤと四腕騎士バミアルが語る。
「古バーヴァイ族の守護戦士団と守護騎士団長か、その古バーヴァイ族の生き残りに言われるのは、光栄だ。そして、もう少し<バーヴァイの魔刃>を試す」
「「ハッ」」
蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣を消す。
衣装は〝黒衣の王〟〝煉霊攝の黒衣〟のままで――。
片手を上げて、<仙魔・暈繝飛動>を実行――。
※仙魔・暈繝飛動※
※仙王流独自<仙魔術>系統:奥義仙技<闘気霊装>に分類※
※使い手の周りに霧と白炎を発生させる※
※魔法防御上昇、物理防御上昇、使い手の精神力と体力の回復を促す※
※仙王流独自<仙魔術>の様々な仙技類と相性が良い※
俺の周囲に霧と白炎の魔力の<仙魔・暈繝飛動>が展開――。
「うふふ、白髭アタックの<白炎仙手>を繰り出す直前と似てます。あ、白銀の龍が見えました!」
<龍神・魔力纏>は使っていないが、恒久スキルの<四神相応>を俺は持つ。
称号の四神の盟約者も得ているからな。恒久スキル<青龍ノ心得>などが自然と<仙魔・暈繝飛動>と連動しているのかも知れない。
「……あぁ、似ている」
常闇の水精霊ヘルメの言葉に納得しつつ――。
周囲の霧と白炎の魔力を操作するように<仙玄樹・紅霞月>を繰り出した。
※仙玄樹・紅霞月※
※仙玄樹流技術系統:自在強<仙魔術>※
※水神アクレシス、大地の神ガイア、植物の女神サデュラ、双月神ウラニリ、双月神ウリオウ、神狼ハーレイアなどの加護と神気に水属性と時空属性と<超脳・朧水月>、<月狼の刻印者>、<血魔力>が必須※
※仙玄樹ツキヨミが、魔界セブドラの魔人鮫ギジアスが跋扈する黒泥海ガサドラで、無謬なる<仙樹宝界>と<無量狼コタンギ>を用いつつ山葵・狼月延石の上で座禅の修業を行った際に、『蓮は泥より出て泥に染まらず、樹海八狼月伝は本物なり』という言葉を残して独自に開発したとされる※
半径三メートルの範囲に拡がっていた霧と白炎の魔力の外側から次から次へと三日月状<仙玄樹・紅霞月>の魔刃が飛び出ていく。
それら三日月状の<仙玄樹・紅霞月>と【赤霊ノ溝】の壁が衝突――。
深く壁に突き刺さったが、先ほどの血魔剣の<バーヴァイの魔刃>や蒼聖の魔剣タナトスとは違い、貫けていない。
威力は明らかに血魔剣で<バーヴァイの魔刃>を繰り出すほうが上か。
「……<バーヴァイの魔刃>は、やはり、剣が必須?」
「ん、血魔剣や蒼聖の魔剣タナトスを持った状態のほうが威力は明らかに上だった」
ヴィーネとエヴァの言葉に頷いた。
「あぁ、では、<祭祀大綱権>を試して、皆に<バーヴァイの魔刃>を授与しようと思う」
「「「おぉ」」」
「「はい!」」
「ご主人様、嬉しいです!」
「おう」
ヴィーネは笑顔満面。
ガドリセスを出して剣身と柄を見ている。
<バーヴァイの魔刃>があれば翡翠の蛇弓以外にも遠距離攻撃が使えるようになるからな。
「はい、うふふ、嬉しい~♪」
「ん、凄い!」
「わぁ~」
「使者様、わたしも<バーヴァイの魔刃>が使えるようになるんでしょうか!」
「ヘルメたちは分からないが、イモリザたちも使えるはず。光魔ルシヴァル一門の眷属の枠なら多分全員が、<バーヴァイの魔刃>を使えるようになるはずだ」
助けた方々はざわついた。
「光魔ルシヴァル一門が羨ましい……」
「「あぁ」」
「うん、〝黒衣の王〟の装備も結構集まっているようだし、光魔ルシヴァルの宗主のシュウヤ様って何者なの……」
さて、<祭祀大綱権>を実行――。
一瞬で、全身から<血魔力>と普通の魔力が噴出――。
一気に脱力感が増した刹那――。
「え!」
「おぉ」
と、俺の真上に巨大な魔神バーヴァイ様の幻影が出現したと思いきや、その幻影はルシヴァルの紋章樹の幻影に吸い込まれ消える。
と、ルシヴァルの紋章樹の上部が明るく輝き下部が暗くなる。
陰陽の太極図の意味もありそうなルシヴァルの紋章樹が宙空に展開された。
続いてルシヴァルの紋章樹の根っこと幹と枝と葉に――。
<筆頭従者長>の大きな円と<従者長>の小さな円が出現。
それらの円が類縁関係と派生関係として樹の枝に分かれながら樹状図として表記された。樹状図は魔力粒子となって周囲に散る。
魔力粒子は、俺と皆の体に取り込まれていく。
「「得ました!」」
「はい、<バーヴァイの魔刃>を獲得――」
「ご主人様、見てください――」
と、ガドリセスを振るって、<バーヴァイの魔刃>を壁に飛ばし、壁の一部を切断していた。
威力はそこまではないが切れ味は高い。
ヴィーネの剣術の腕が<バーヴァイの魔刃>にのったかな。
「ンン、にゃご!」
「ンン、にゃごァ」
「ん、やった、ふふ――」
「――ふふ♪」
「はは、これは、これで――」
「「「――はい!」」」
黒猫と銀灰猫が爪先から<バーヴァイの魔刃>を出している。
エヴァ、ビュシエ、キサラ、キッカ、アミラ、マルア、イモリザ、ゼメタス、アドモス、グラド、バミアル、キルトレイヤ、ナロミヴァス、アポルア、アンブルサンたちが、大小様々な<バーヴァイの魔刃>を繰り出してきた。
「「「「――オォォ!!!」」」」
ゼメタスとアドモスが虹色の魔力を放出させている骨剣から迸っていく<バーヴァイの魔刃>の威力が凄まじい。さすがは将軍……。
相棒と銀灰猫は猫の大きさだから、小さい<バーヴァイの魔刃>で可愛い。
そして、後で、魔雅大剣も試してみたいと鳴いてくるかもな。
【赤霊ノ溝】の壁と施設が次々に破壊されていく。
これはこれでいい眺めだ。
邪教のような人肉嗜食のバアネル族の施設なんて破壊でいい。
キスマリとラムラントとペミュラスは<バーヴァイの魔刃>を獲得していないか。
まだ眷属にしてないからな。
と、エヴァは血文字でバーソロンとサシィに連絡していた。
「ん、シュウヤ、バーソロンとサシィも<バーヴァイの魔刃>が使えるようになったって」
「おう」
すると、見知らぬ血文字が浮かぶ。
が、直ぐにバーヴァイ城にいる<従者長>アチから血文字と理解した。
『陛下、<バーヴァイの魔刃>が使えるようになりました!』
『おう、【古バーヴァイ族の集落跡】で、魔神バーヴァイ様と関連した〝黒衣の王〟装備を入手し、<バーヴァイの魔刃>を得て、<祭祀大綱権>も得たから皆に与えることが可能となった』
『はい!! ありがとうございます』
そして、直ぐに、サシィから、
『シュウヤ、エヴァたちから色々と聞いている。そして、私も<バーヴァイの魔刃>を得て強くなった。ありがとう!』
『おう、良かった。【古バーヴァイ族の集落跡】はバリィアン族に任せることになりそうだ』
『はい、ヴィーネとバーソロンから血文字で色々と聞いている。そして、そこで助けた黒髪のレン家の者たちの処遇だが、すべてシュウヤに任せよう。上笠連長を通さずとも、敵方のレン家の者と交渉してもらって構わない。その旨は私が皆に伝えておく』
『了解した。上笠のタチバナはどうだ?』
『目立った動きはさすがにない。が……時折、奥座敷の庭の【立花弦斎の羨道】に一人で向かう時がある』
『前にも言っていた祖先の墓場か……きな臭さはあるな』
『……ふむ。それ以外は、前以上に上笠の一人として動いてくれている』
『そっか、何もないなら、そのままだな。では、黒髪のレン家の方々を、【レン・サキナガの峰閣砦】に送る際にもう一度血文字を送ると思う』
『分かった』
続いて、バーソロンからも血文字が来て、【赤霊ノ溝】を制覇したと告げ、一時、【バリィアンの堡砦】に皆で帰還すると伝えた。
「ンンン――」
「「「「うあぁぁ」」」」
相棒は何も言わずに、巨大なドラゴン風の神獣に変化を遂げている。
「バリィアン族の方々、【バリィアンの堡砦】に送ります、相棒、皆を頼む」
「ンン、にゃ~~」
と既に何人も相棒の体に助けた魔族の方々を乗せていた。
皆の体にも触手が絡むと、四肢を屈めた相棒は「ンン」と鳴いてから俺をチラッと見た。
そのドラゴンタイプの相棒の首下から大量の触手が飛来。
「おう――」
神獣の触手から逃げるように跳躍――。
<武行氣>を使い飛翔を開始――。
「にゃごおぉぉ」
相棒が追い掛けてくるが――。
「はははは、相棒、捕まえてみろ~」
と、挑発――。
「にゃご――」
と、炎を吐いてきやがった。
<武行氣>を強めて本格的に逃げていく。
「ンン、ロロちゃん、シュウヤをやっつけて!」
「閣下~、ロロ様と遊びは楽しそうですが、火遊びは危険ですよ~」
続きは明日。
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