千二百七十八話 キベラと悪夢ノ赤霊衣環との戦い
引き延ばされていた時間が急激に縮むような印象で元の世界に戻った。
ガドリセスを下段に構えていたヴィーネは俺を見て頷く。
頷き返し、少しずつ〝悪夢ノ赤霊衣環〟に近付いた。
ヴィーネは、俺とベラホズマ様の精神世界のことは気付いていない。
左目と右目の中にヘルメとグィヴァがいたら悪夢の女王ベラホズマ様の精神世界を防いでいたかも知れないな。
そして、〝悪夢ノ赤霊衣環〟と戦っている漆黒のローブを着た四眼四腕の魔族と二眼四腕の魔族たちは、次々魔刃を繰り出す。
確実に〝悪夢ノ赤霊衣環〟の怪物にダメージを与えていた。
が、その度に前衛の二眼四腕の魔族と四眼四腕の魔族たちは喰われて、逆に〝悪夢ノ赤霊衣環〟を成長させていた。
ヴィーネは金属鳥を巨大な神像の近くに向かわせているが、まだ四眼四腕の魔族と二眼四腕の魔族たちに攻撃は加えていない。
そのヴィーネに、
「ヴィーネ、あの〝悪夢ノ赤霊衣環〟に攻撃を仕掛ける。見ていたから分かると思うが魔法系統は効かないだろう。物理系統ならある程度効くはずだ。そして、翡翠の蛇弓の攻撃はかなり効いていたから攻撃を頼む。弱ったところで、〝煉霊攝の黒衣〟を着て大人しくさせるか、<霊呪網鎖>などを試みる。最悪は破壊を狙う。ま、臨機応変に魔族たちもいるからな」
「はい――」
ヴィーネはガドリセスから翡翠の蛇弓へと素早く切り替える。光線の矢を番うと、その光線の矢を射出した。
光線の矢は〝悪夢ノ赤霊衣環〟の手足を突き抜け赤黒い金属の体に突き刺さった。いつものように、その光線の矢から複数の蛇の幻影が滲み出て瞬く間に〝悪夢ノ赤霊衣環〟の中へと浸透した刹那――。
〝悪夢ノ赤霊衣環〟の赤黒い金属の表面から緑色の閃光が迸る。
そして、〝悪夢ノ赤霊衣環〟は内部から破裂するように大爆発を起こした。
赤黒い金属の手足と赤黒い金属っぽい塊が周囲に弾け跳ぶ。
「「「「おぉ」」」」
「銀髪の女の光の矢は凄いぞ!!」
「「あぁ」」
二眼四腕の魔族と四眼四腕の魔族たちも思わず、歓声を発した。
が、歓声を発していない奴らは、俺たちにも魔刃を繰り出してくる。
ヴィーネを守るように大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を盾にして、その魔刃を防いだ。
反撃に――<鎖型・滅印>を意識。
両手を最小の動作で動かす。
梵字が宿る<鎖>が躍動する。
更に複数の《連氷蛇矢》を連発。
二本の<鎖>の先端が、魔刃を繰り出した複数の魔剣を弾き、その腕を次々に貫く。その隙を複数の《連氷蛇矢》が、まさに蛇が獲物を喰らうような機動で、四眼四腕の魔族たちの頭部をそれぞれ突き抜けた。
一度に複数の四眼四腕の魔族をヘッドショットで倒した。
ヴィーネは、
「ご主人様、ありがとうです。このまま〝悪夢ノ赤霊衣環〟攻撃を重ねます」
「あぁ、頼む!」
「はい――」
真剣な表情のヴィーネは素敵だ。
上弦と下弦の蛇柄の目が赤く光る。
光の導にも見える光線の矢が射出された。
〝悪夢ノ赤霊衣環〟は、体の一部から怪物の幻影を発した。
すると、ヴィーネの光線の矢を避けるように、体の一部を巨大なミミズのような姿に変化させながら、近くの四眼四腕の魔族たちへと頭上から襲い掛かった。
邪神ニクルスの使徒だったリリザのような動きだ。
「「「うァァ」」」
〝悪夢ノ赤霊衣環〟のミミズのような口の内部には赤黒い金属の歯牙が生えていた。四眼四腕の魔族と二眼四腕の魔族たちは、その口のような部位に向け魔剣を伸ばす。逃げる者もいるが、大半の四眼四腕の魔族と二眼四腕の魔族たちは、魔剣ごと〝悪夢ノ赤霊衣環〟に飲まれ喰われた。
――咀嚼音がえぐい。
〝悪夢ノ赤霊衣環〟は瞬く間にヴィーネの翡翠の蛇弓の攻撃で破損していた部位が修復した。
左手首の<鎖の因子>のマークから<鎖>を放つ。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を消しながら右腕を上げて《連氷蛇矢》を発動。
右手の指先に、腕の大きさの《連氷蛇矢》が幾つも生成される。
と、生み出したばかりの《連氷蛇矢》が直進していく。
<鎖>は〝悪夢ノ赤霊衣環〟の手足を貫いたが赤黒い装甲部に弾かれる。
《連氷蛇矢》も〝悪夢ノ赤霊衣環〟の体から生えていた手足を貫いたが、赤黒い装甲部に吸収された。
が、ヴィーネの光線の矢は〝悪夢ノ赤霊衣環〟に突き刺さる。
俺の<鎖>と《連氷蛇矢》も牽制にはなったか。
光線の矢から出た緑色の蛇が〝悪夢ノ赤霊衣環〟の赤黒い金属に浸透すると、またも閃光を放って爆発。
〝悪夢ノ赤霊衣環〟の赤黒い金属はスプーンで抉られたように破損した。
「ヌゴァ――」
〝悪夢ノ赤霊衣環〟は悲鳴のような叫び声を発した。
ヴィーネは直ぐに翡翠の蛇弓から光線の矢を放ち、また放つ。光線の矢を連射していく<速連射>を発動した。
〝悪夢ノ赤霊衣環〟の体に何十本もの光線の矢が突き刺さった。
その光線の矢から緑色の蛇の幻影が出現すると、緑色の蛇の幻影は〝悪夢ノ赤霊衣環〟の中へと浸透していく。
一瞬、魔毒の女神ミセア様の幻影が見えたような気がした。
〝悪夢ノ赤霊衣環〟もこれで大人しくなるか?
と〝悪夢ノ赤霊衣環〟の表面に亀裂が走り、緑色の閃光が放たれた。
〝悪夢ノ赤霊衣環〟は、
「『ヌゴァァ』」
と神意力を込めて叫び声を発しながら大爆発。
〝悪夢ノ赤霊衣環〟の赤黒い金属は欠損しまくる。
吸収していた 血飛沫も大量だ。
更に、赤黒い金属の塊と、取り込んだばかりの四眼四腕の魔族たちの四肢が宙空に弾け跳ぶ。
体が小さくなった〝悪夢ノ赤霊衣環〟の塊はヴィーネから逃げるように右の奥にするすると素早く移動し、ベラホズマの神像を守る魔刃を繰り出し続けている四眼四腕の魔族たちに近付いた。
その〝悪夢ノ赤霊衣環〟に、
「俺たちを喰らうつもりか」
「なめんじゃねぇ!」
「わたしたちこそ、食べてやる!」
と、四眼四腕の魔族と二眼四腕の魔族たちが声を荒らげながら、四腕を振るい、魔剣から放った魔刃が〝悪夢ノ赤霊衣環〟の手足を潰す。
赤黒い金属の体に突き刺さっていた。
〝悪夢ノ赤霊衣環〟は、
「『グォゴァ! ドォォゲェェ』」
と、不気味な叫び声を発しつつ青蜜胃無的に赤黒い金属を凹ませる。
その凹ませた穴から杭状の金属を突き出して、床を突いて跳ねた。
ヴィーネが放った光線の矢を避ける。
と、宙空で〝悪夢ノ赤霊衣環〟はミミズのような口をまた造る。
その口を拡げながら四眼四腕の魔族と二眼四腕の魔族たちに襲い掛かった。魔刃と魔剣ごと四眼四腕の魔族と二眼四腕の魔族たちの体を一気に喰らった〝悪夢ノ赤霊衣環〟は、光線の矢で受けたダメージをまたも回復し、新しい手足を生やす。
と、その体のような物が山なりとなった。
複数の様々な手足も生えているから、なんとも言えないが……。
山なり状態の〝悪夢ノ赤霊衣環〟は……。
海の妖怪、坊主頭の化け物の『海坊主』と似ているかも知れない。
複数の手足の下には肌もあるが、金属か装甲も存在し、それらの表面には赤黒い魔力が渦を巻いていた。
<血鎖の饗宴>のような血鎖が密集しているようにも見える。
そう思考した刹那――。
その傾斜からもう一つの山が――。
否、蛹から蝶が脱皮するように、非常に美しい女性の上半身が背を反らすように現れた。
背筋に長い銀髪が靡く。
「あれは、悪夢の女王ヴィナトロス様か!?」
と叫ぶキベラ。
そのキベラは、
「――銀髪と黒髪にも攻撃をしつつ、〝悪夢ノ赤霊衣環〟にも魔刃を繰り出せ――神像に近付かせるな、ベラホズマ様の神像に宿る魔力を喰われたら、俺たちに勝ち目はない!」
「「「「「おう!」」」」」
数にしてまだ数十は超えている四眼四腕の魔族と二眼四腕の魔族たちは逃げるつもりはないようだ。
ベゲドアードへの忠誠とキベラにもある程度信頼を寄せていると分かる。仲間を思い合える気持ちはあるようだ。
皆の魔剣が振るわれる。
その度に、魔剣から放たれていく複数の魔刃が、美しい女性を背に誕生させている山なり状態の〝悪夢ノ赤霊衣環〟と衝突を繰り返す。
赤黒い金属の手足は直ぐに切断されて、再生が間に合わずに赤黒い金属の体も破損していく。
山なり状態の〝悪夢ノ赤霊衣環〟は動きを止めた。
悪夢の女王ヴィナトロス様らしき女性の体にも四眼四腕の魔族と二眼四腕の魔族たちが放った複数の魔刃が衝突し上半身は傷だらけとなって血飛沫が迸っていた。
首や銀髪も切断されているが、直ぐに体は再生し銀髪も元通り。
根元の山なり状態の〝悪夢ノ赤霊衣環〟は、
「グォゴァ!」
と叫びながら、うねるように体を湾曲させると、複数の魔刃を飲み込みながら地面を這うように前進。
動きが気色悪い。
その海坊主のような〝悪夢ノ赤霊衣環〟は、背と呼べるか不明な場所に出た女性の上半身には影響されず――四眼四腕の魔族が振るった四つの魔剣を赤黒い金属の体で斬られつつも前進し四眼四腕の魔族との間合いを零とした。
四眼四腕の魔族が持つ魔剣と四腕は〝悪夢ノ赤霊衣環〟の体内に取り込まれたのか、四眼四腕の魔族は身動きは取れない。
そこに、ヴィーネの光線の矢が向かうが、〝悪夢ノ赤霊衣環〟は四眼四腕の魔族と共に背中に眼があるように跳躍したように体を浮かせて避けた。
「ひぃぃぃぃ」
四眼四腕の魔族は恐怖のあまり失禁しつつ泣きながら逃げようとするが〝悪夢ノ赤霊衣環〟は逃がさないと言うように無数の手足が、その四眼四腕の魔族を捕まえる。
「――げぇ、見えなァ、離せァァ」
四眼四腕の魔族の頭部が潰れた。
体も豪快に引き千切られると、それらの体と内臓ごとすべてが〝悪夢ノ赤霊衣環〟に飲まれた。四眼四腕の魔族を飲み込んだ〝悪夢ノ赤霊衣環〟から出現していた女性の上半身が凄まじい速度で上下左右に震え出す。
女性は〝悪夢ノ赤霊衣環〟から離れる勢いか?
首筋の<夢闇祝>と<夢闇轟轟>の傷がズキズキと痛む――。
その人族を思わせる肌が綺麗な女性の上半身は白銀の髪を靡かせながら止まると俺を見た。
額に三つの玉が嵌まっているヴァーミナ様と似た顔。
首の傷はヴァーミナ様と同じ。
上の屋根で相対した時に、判子のような形の表面に出現していた女性と同じだ。
虚ろの双眸、瞳の色合いはエメラルドグリーンだが、死んだ魚の眼を思わせる。すると、妙神槍の魔槍と手足を持つキベラが、
「――見ろ、ヴィナトロス様と思われる存在の上半身が〝悪夢ノ赤霊衣環〟の外に出た! あれは〝悪夢ノ赤霊衣環〟にダメージが入っている証拠だろう!」
と叫びながら、山なり状態の〝悪夢ノ赤霊衣環〟に魔刃を飛ばす。
キベラの言葉に四眼四腕の魔族と二眼四腕の魔族たちは<黒呪強瞑>系統を強める。
「あぁ――」
「くらえぇぇ」
「こっちにくるなぁぁ」
と各自叫びながら四腕を振るいまくる。
キベラよりも威力は弱そうに思えるが、数は力と言わんばかりの勢いで、連続して魔刃が〝悪夢ノ赤霊衣環〟に向かい、〝悪夢ノ赤霊衣環〟の表面が削れた。
ヴィナトロス様と思われる存在の上半身も傷だらけとなったが、直ぐに回復する。
更に、〝悪夢ノ赤霊衣環〟の削れた表面から黒兎顔、能面顔、般若顔、端正なナロミヴァス顔、白くもあり黒くもある特徴的な顔立ちが生まれ出る。魔刃を喰らうと幻影は消える。
そして、再生と死を繰り返しているように見えた悪夢の女王ヴィナトロス様と呼ばれた女性の上半身は、悪夢ノ赤霊衣環へと吸い込まれるように消えた。
と、山なり状態の〝悪夢ノ赤霊衣環〟は、
「グォラァ――」
と叫び、体から赤黒い金属の刃を無数に飛ばす。
更に体の一部から四眼四腕の魔族の血肉を放出し、ヴィーネが繰り出した光線の矢に血肉を衝突させて、相殺して光線の矢を消してきた。
頭がいい。
〝悪夢ノ赤霊衣環〟の赤黒い金属の刃は二眼四腕の魔族と四眼四腕の魔族たちの頭部と体をそれぞれ貫く。
「あぁ! 皆に、クィモラ!」
と叫んだキベラが前進――。
左右の魔槍を振るい魔剣も振るう。
キベラにも赤黒い金属の刃が飛来していたが、迅速に槍と剣を振るい赤黒い金属の刃を弾き飛ばした。
キベラは加速し、左右上腕の手が持つ二つの魔槍を〝悪夢ノ赤霊衣環〟に突き出す。その穂先は赤黒い盾に防がれた。
左右下腕の手が持つ魔剣が下から斜め上に動く。
その斬り払いは赤黒い金属の刃が飛び出て、キベラの腕ごと魔剣を弾き飛ばす。
キベラは退いた。
その直後――。
〝悪夢ノ赤霊衣環〟は大きな開いた口を造り上げると、その口から、
「――グォゴァ!」
と白濁とした液体を吐いた。
退いたキベラに向かうが、キベラは加速して、白濁とした酸の攻撃を避けた。
そこで背後からキサラの気配を察知。
『地下を進んで死体が転がっている十字路を抜けるところです』
『了解、直ぐに拡がる、そこの中央に俺たちがいる』
『はい』
血文字はヴィーネも見ている。
「ヴィーネ、〝悪夢ノ赤霊衣環〟を頼む」
「はい、翡翠の蛇弓だと逃げますが――」
と光線の矢を射出すると、〝悪夢ノ赤霊衣環〟は右の宙空へと跳ねるように移動して、ベラホズマの神像から離れた。
「あぁ、今はそれでいい――」
と<魔闘術の仙極>を再度発動。
<仙魔・暈繝飛動>の白炎の魔力を、その場に残す勢いで、キベラに近付いた。
更に<血道第三・開門>――。
<血液加速>――。
<闘気玄装>を再発動。
<滔天仙正理大綱>と<光魔血仙経>も連続発動。
<龍神・魔力纏>を発動――。
<水月血闘法>を発動。
キベラの四眼が煌めき、「くっ、黒髪の白銀野郎が!」と俺の加速した動きに反応した。
二振りの魔剣から五つの魔刃を飛ばしてくる。
キベラは無覇と夢槍を正眼に構えた。
――<闇透纏視>を発動。
飛来してくる五つの魔刃越しに、キベラの体を凝視。
ソー師匠の手足の魔力の流れとキベラの体の流れは、かなり融合しているように見えるが、僅かな淀みがあった。
キベラとの間合いを詰めながらわざと速度を落とした。
聖魔術師ネヴィルの仮面を意識しながら――。
飛来してくる魔刃のタイミングに合わせ足下の<血魔力>の放出を強めて、地面に<血魔力>を浸透させた。
と同時に<血鎖の饗宴>を繰り出した。
俺の前方の地面から斜め上へと一気に伸びた<血鎖の饗宴>の血鎖は魔刃を飲み込み――キベラの四眼の視界を潰すように、キベラの右側から、キベラに向かう。
「――な、なんだ、この血の鎖はぁぁ」
キベラの四眼の内の二眼が右上に向かう。
無覇と夢槍の魔槍から紫色の魔力を溢れると、キベラはその魔力を吸い上げる。
構わず――。
キベラとの間合いを槍圏内とした直後――。
右手に白蛇竜小神ゲン様の短槍と左手に雷式ラ・ドオラを召喚。
<闇透纏視>でキベラの動きと体内魔力の淀みを確認しながら迅速に、<霊仙八式槍舞>を発動。
キベラは<血鎖の饗宴>の動きに対応し、俺への初動が遅れた。
ゼロコンマ数秒の遅れは致命的だが、キベラは、俺が繰り出した二連の<刺突>を夢槍と無覇を巧みに動かして柄で防がれた。
が、流星の如くの雷式ラ・ドオラの薙ぎ払いが――。
キベラの右上腕を切断し、続けての白蛇竜小神ゲン様の短槍の突きが、魔剣を握る右下腕ごと腹を貫いた。
そのまま雷式ラ・ドオラの薙ぎ払いが、無覇の柄を弾きながら、キベラの左の胸を捉え斬る。
無覇は上方に飛ぶ。
更に、雷式ラ・ドオラの突きが夢槍の柄と魔剣の柄と衝突し柄を滑る機動で、そのままキベラの腹に突き刺さった。
「ぐぇ」
キベラは後退し、片腕はだらり下がっている。
<闇透纏視>で確認していた淀みを狙った七式目の<霊仙八式槍舞>の雷式ラ・ドオラの斬撃が――キベラの右上腕を捉え――。
切断に成功――八式目っ、白蛇竜小神ゲン様の短槍の突きがキベラの首を穿つと同時に両手の武器を消す。
ソー師匠の右上腕を触りアイテムボックスに回収――。
キベラは再生持ちか――。
「ぐぼぁぁ」
と空気が漏れたような奇声を発したように穿った首と胴体が再生しかかる。
そのキベラの体の左上腕を凝視。
左足の踏み込みから<刺突>のモーションを取る。
<握式・吸脱着>と<握吸>を発動――。
右手に無名無礼の魔槍を召喚し、その右手を前方に突き出す<闇ノ一針>を発動――。
キベラのソー師匠の左上腕が持っている魔剣で、<闇ノ一針>の無名無礼の魔槍の穂先を防ごうとした。
そのキベラの肩とソー師匠の腕の魔力の淀みがある腕と肩の境目をピンポイントで<闇ノ一針>の無名無礼の魔槍が貫いた。
切断に成功。
ソー師匠の腕を傷つけず、キベラの体から切り離した。
直ぐにソー師匠の左上腕ごと夢槍を盗むように奪取。
刹那、<闇ノ一針>の効果で、キベラの左半身の裏側から闇の魔力粒子が雨霰と迸った。
<闇ノ一針>効果のキベラの左半身の印が地面に焼き付く。
キベラは、体の再生が止まる。
首は半分繋がったまま項垂れた。
<闇ノ一針>効果で、キベラの左上半身の魔力の流れだけがオカシイ。そのまま<闇透纏視>を活かし、キベラが両足もとい、ソー師匠の両足とキベラの股間の境目を狙う――。
無名無礼の魔槍で<豪閃>を繰り出した。
キベラの鎧ごと下腹部を両断し、ソー師匠の両足を奪取した。
キベラが使用していた無覇の魔槍が落下してきたのを左手を上げて掴んで、回収した。
魔軍夜行ノ槍業が震えながら、
『よくやった、弟子!!』
続きは明日。
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