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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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千二百七十七話 悪夢の女王ベラホズマとの邂逅

2023年11月11日 12時01分 修正


 いきなりの申し子?

 目の前のヴァーミナ様と似た女神様っぽい方に、


『申し子とは悪夢の女神ヴァーミナ様の眷属という意味でしょうか』

『違うのかえ?』

『違います。<夢闇祝>という名のスキルでヴァーミナ様とは繋がりはありますが、眷属ではありません』

『おぉぉ……』


 と、喜んでいる?


『……俺は光魔ルシヴァルの宗主。眷属の<筆頭従者長(選ばれし眷属)>と<従者長>に光魔騎士に精霊たちもいる。そして、光属性と闇属性を持ちますが、<血魔力>を扱いますし、血を栄養源にしているので、どちらかと言えば吸血鬼(ヴァンパイア)系統が筋です。そうしたことから、俺たち光魔ルシヴァルは、吸血神ルグナド様が作り出した吸血鬼(ヴァンパイア)吸血鬼(ヴァンパイア)ハーフに近い存在です』

『……吸血神ルグナドと近いだと……それはさておき……黒き瞳、夜の瞳を持つそなたの名は、なんと言う?』


 脳内に響く水質の魔声……。

 <魅力の魔眼>などを越えた魅了能力がありそうだ。


『……名はシュウヤ、貴女様は?』

『シュウヤか、妾は悪夢の女王ベラホズマ……そして、いい名だ。妾の気持ちに応えてくれただけはある』


 ベラホズマか……。

 名乗って近付いてきた。


『俺がベラホズマ様の気持ちに応えた? どういう……』

『シュウヤは、妾との絆を得たからだ。そして、妾の妹の一人、悪夢の女神ヴァーミナとの絆……<夢闇祝>という名のスキルを持つが故に妾を助けに、この世界に来た。と思ったのだ』

 

 ヴァーミナ様がベラホズマ様の妹だと?

 驚きだ……。

 

 セラの魔人ナロミヴァスと関係しているから、ベラホズマ・ヴァーミナの悪夢の使徒や悪夢教団の名があったんだと思っていたが……。

 ヴァーミナ様がベラホズマ様の妹だったとは。

 魔界王子テーバロンテにもキュビュルロンテと原初ガラヴェロンテという親族がいたから、ありえる話だが……。


 ベラホズマ様は俺を見て、少し間があいて、


『……だが、妹のヴァーミナの力をもってしても、な……【赤霊ノ溝】は【白銀の魔湖ハイ・グラシャラス】から遠い。それ故、妾の危機を救いに現れたヴァーミナの申し子だと思うたのだ』 

 

 だから、<夢闇祝>の傷の印が首にある俺を申し子と……。

 

 すると、周囲の白色に暈けている視界が薄まる。

 元の世界のヴィーネたちがいる世界が見えた。

 が、外は時間が止まっている?


 ヴィーネは横顔でガドリセスを出している。

 

 〝悪夢ノ赤霊衣環〟の怪物は体に魔刃を喰らいまくっている状況に変わりない。


 そして、〝悪夢ノ赤霊衣環〟がベラホズマ様に迫っていることが、〝危機〟ってことか。


 ヴァーミナ様と似ているベラホズマ様に、


『……ベラホズマ様との絆とは、<夢闇轟轟>を獲得しましたが、その恒久スキルのことでしょうか』


 ベラホズマ様は小さい口を手で隠し、


『ふふ、<夢闇轟轟>というのか……凄く嬉しいぞ、妾とシュウヤの絆……うふふ』


 と喋りつつ、嬉しそうな表情を浮かべてくれた。

 喋り方といい姿といい悪夢の女神ヴァーミナ様とかぶる。


 とりあえず、


『ここの世界は【白銀の魔湖ハイ・グラシャラス】ではないのですね』

『……そうだ。嘗ての故郷を模した幻影に過ぎぬ。ここは妾の神域、妾の精神世界、心、心象世界と呼べる世界。故に……シュウヤの……』

『そうでしたか、<夢闇轟轟>を覚えたからベラホズマ様の神域に来れたと』

『ふふ、その通り、シュウヤは、妾に子を宿す資格を有している、うふ♪』


 なぜ、子供……。

 とツッコミを入れたいが入れず、スルーして、


『……ベラホズマ様の妹が悪夢の女神ヴァーミナ様とは、驚きました』

『……シュウヤは妹のほうが好みなのか……妾は好みではないのかえ……』

『見た目だけなら綺麗ですから、嫌いではないです』

『好意はあるのだな。嬉しいぞ!』

『はい、しかし……』


 話ができる他者を、襲って捕まえては、食料として食うのはな。

 理解しあえるとは思えない。


 が、倫理的には、俺も血を吸うから……。


『……なんかえ?』

『一方的に弱者を痛めては、その血肉を喰らい人を殺す悪夢教団の宗教儀式が、いやなんです。俺も血を吸う種族ですから、強くは言えませんが』

『……妾は別段、悪夢教団、悪夢の使徒たち、四眼四腕と二眼四腕のバアネル族に拘りはないぞえ』


 ヴァーミナ様もそれっぽいことは言っていたな。


『そうなのですね』

『だが止めろと強制するつもりはない。実際に血肉を喰らうことにより、強くなるのだからな。スキルを得られる。魂を得たら快感を得られる。リスクは周囲から嫌われるぐらいだ。強き者が弱き者を蹂躙し、家畜にするのもまた一つの道。更には、妾に魔力や魂を捧げてくれる者たちだ。可愛がるのは当然であろう……が、そのベゲドアードには利用されることも多々あった……が、妾は神格を失っていた弱き神のなれの果て故、何もできず。今は少しだけ神格が復活している故に、多少異なるが』

『……はい』


 ベゲドアードのことが気になるが、


『話を変えますが……嘗てヴァーミナ様とベラホズマ様は【白銀の魔湖ハイ・グラシャラス】で暮らしていた。しかし、ヴァーミナ様とベラホズマ様はどうして別々に?』


 と俺が聞くと、ベラホズマ様は頷いた。


『……遙か昔、眷属を引き連れて【白銀の魔湖ハイ・グラシャラス】から外に出たのだ……悪神デサロビアと眷属に我の眷属と魔界騎士を殺されてしまった仇を討ちにな……しかし、領域から外も様々……魔公爵ゼンと魔界騎士ホルレインの勢力と、他の諸勢力に攻撃を受けた妾たちは負けた。眷属たちも散り散りに、複数の傷場を奪われてしまったのだ……そして、上級神といえど、魔界セブドラは広大、神格を失った弱い妾を見つけることは容易ではないからな』


 なるほど。


『負けたベラホズマ様が、【赤霊ノ溝】の地下に、ベラホズマ様の巨大な神像として鎮座し、赤霊ベゲドアード団たちに祀られていたのは……』

『妾の神像は〝黒衣の王〟の装備を持ったベゲドアードが用意した物。……あいつは、事前に〝悪夢ノ赤霊衣環〟を入手し、使いこなしていた。妾の神格の器を再利用しようと企んでいたようだが……同時に、妾に魔力や血肉を捧げてくれていたのだ。妾も辛うじて神意力と結界を飛ばせるぐらいの復活を果たせたのも、そのお陰なのだが……結局強かったベゲドアードも〝悪夢ノ赤霊衣環〟を御しきれず……今がある』

『ベゲドアードは俺が倒しました』

『おおぉ、ならば〝煉霊攝の黒衣〟を?』

『獲得しました』

『素晴らしい……〝悪夢ノ赤霊衣環〟を御しきれるぞ』

『あれを御するつもりはないですよ?』

『〝悪夢ノ赤霊衣環〟には、妹と妾の眷属たちに他の魂の欠片が入っているのだぞ……』

『ナロミヴァスも……』

『その名は知らぬが……』


 ベゲドアードの死に様は見ているから嫌すぎる。


『……怪物となった〝悪夢ノ赤霊衣環〟は四眼四腕の魔族と二眼四腕の魔族たちを喰らいながらベラホズマ様の神像に向かっていますが、それが、危機ということですか?』


 少しショックを受けたようなベラホズマ様は、


『……うむ……先ほどの皮肉ではあるが、弱肉強食……妾の悪夢の女王ベラホズマの神格に魂を奪おうとしているのだろう。〝悪夢ノ赤霊衣環〟を止めて妾を助けておくれ、そして、妾の魔界騎士と専属の夫に……なっておくれ』


 と、そこで視界が一転――。

続きは明日。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 〝煉霊攝の黒衣〟は〝悪夢ノ赤霊衣環〟の制御の為の重要アイテムな訳か。煉霊攝の黒衣には制御や封印みたいなそういう力が有るんかね。 妾の魔界騎士と専属の夫に……なっておくれ 魔界騎士はまだし…
[気になる点] それらしいセリフ全く無かったけど、どこで妹って気づいた?
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