千二百七十四話 ベゲドアードとの戦い
ベゲドアードを見上げながら……。
魔草ムラウラカラルを吸って――。
更に<血道第一・開門>。
体からわざと血を撒き散らし――。
<血道第四・開門>――。
――<霊血の泉>を発動。
そして、魔力消費が激しい《氷命体鋼》を維持。
――<仙魔・暈繝飛動>の魔力を活かすように――。
<武行氣>を意識し浮遊する。
「その血は、<血魔力>か――」
ベゲドアードは無数の魔刃を寄越す。
「その通り――」
ベゲドアードは普通の黒い魔刃の他に――。
大きい赤と黒の魔刃を交ぜてきた。
そのベゲドアードへと下から上へと上昇しながら無数の魔刃を寄越す。
「黒髪が<血魔力>か……吸血神ルグナドの力を有した秘宝、最低でも伝説級の品を、お前は持つようだな――」
と言いながら、普通の黒い魔刃の他に――。
大きい赤と黒の魔刃を交ぜてきた。
<仙魔・暈繝飛動>を活かすように霧と白炎を纏う挙動で――。
※仙魔・暈繝飛動※
※仙王流独自<仙魔術>系統:奥義仙技<闘気霊装>に分類※
※使い手の周りに霧と白炎を発生させる※
※魔法防御上昇、物理防御上昇、使い手の精神力と体力の回復を促す※
※仙王流独自<仙魔術>の様々な仙技類と相性が良い※
俺に向け飛来してくる魔刃のタイミングに合わせて――。
右手の夜王の傘セイヴァルトの槍で<血穿>を繰り出した。
――大きい赤の魔刃を<血穿>で貫く。
大きい赤の魔刃は爆発。ドッとした爆風に飲まれた。
構わず、その爆風ごと吹き飛ばすように――。
前方に伸びたような夜王の傘セイヴァルトの槍を斜め右へと振るい上げる<豪閃>で、次の大きい黒の魔刃を切断した――直後、赤の大きい魔刃と同じく爆ぜた――。
その爆発の火炎に飲まれた――が――ハルホンクの防護服の魔竜王バージョンと《氷命体鋼》を装備し展開していることもあり――。
俺に火炎のダメージはない――。
次々にベゲドアードは魔刃を寄越してくる。
左手に移した夜王の傘セイヴァルトの槍を――。
左へ右へと動かし――穂先と柄で――飛来してくる魔刃を流すように幾つも叩き斬った。
身を捻りつつ左右の手に夜王の傘セイヴァルトの槍を持ち替える勢いのまま<豪閃>を繰り出しまくる。
そして、右に流れる挙動から――右手に黒衣の王の魔大斧を召喚し、<握吸>を発動し、解除した。
また直ぐに<握吸>を発動してから――。
<握式・吸脱着>で少し魔大斧の柄巻を浮かせる。
再度、<握吸>を使い魔大斧の柄巻を握った。
その間にも魔大斧から青白い頭蓋骨が噴出していく。
青白い頭蓋骨と、暈繝飛動の白炎の霧と腰に注連縄を巻いている子精霊が衝突を繰り返しては、萎みつつ光と闇を意味する陰陽太極図のような小さい渦を造りながら消えていく。
右斜めを飛行中のベゲドアードは静止し、
「――それだ〝黒衣の王〟の装備! 黒髪の贄よ、魔力だけでなく血肉と、その〝黒衣の王〟を我に提供するつもりなのだな? 分かるぞ、フハハハ――」
と嗤う。
その癇にさわるベゲドアードを<闇透纏視>で凝視。
――が、またか。
魔察眼の感覚が狂うと共にベゲドアードの体内に見えていた魔力操作の流れが変化していく。
魔刃を寄越してくるベゲドアードの動きがダブって見えた。
漆黒のローブ越しに、心臓部と思われる大きな魔力溜まりと魔力の大動脈が視えたが、映し鏡の如く変化――。
――幻術か?
――経脈が移動しているのか。
――俺と同じ<経脈自在>持ちか?
――ベゲドアードの魔眼返し的な能力か?
瞬きを繰り返しつつ<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を目の前に再度召喚。
その<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で魔刃を防ぐ。盾にしつつ――。
宙空からベゲドアードに近付くが、ベゲドアードは「ハッ、勘がいいのか馬鹿なのか――」と言いながら斜め後方へと飛行し、魔刃を連続的に放ってきた。
複数の魔刃を<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で防ぎながら旋回機動を取る。
そして、ベゲドアードの左を回り、
「哀れだな、中傷することでしか己をアピールできないのか? 顔に出ているぞ?」
と笑いながら挑発。渋面となったベゲドアード。
そのベゲドアードも俺の機動に合わせて右に旋回し、「ハッ、黒髪が!」と吐き捨てるような大声を発して後方へと飛翔しながら四腕の無数のトゲトゲと糸のようなモノ晒しながら魔刃を飛ばしてくる。
その魔刃を避けたが追尾してきた。
夜王の傘セイヴァルトの槍を左から右に振るって無数の魔刃を叩き潰す。
このままだと遠距離戦の千日手は必定。
様々な魔刃を俺に送るタイミングが妙なベゲドアードはかなりの強者。
俺の時間を先読みしている?
<未来視>、<千里眼>、<前知>などの能力もあるのなら厄介だが……。
赤霊キュベラノをオマケとわざわざ語っていたように〝悪夢ノ赤霊衣環〟にはまだ秘密があるはずだからな。
更に〝黒衣の王〟の装備の〝煉霊攝の黒衣〟も使いこなしているようだ。
内側から赤い幽体の一部、手のようなモノを出していた。
その赤い幽体の一部、手のようなモノは頭上の〝悪夢ノ赤霊衣環〟の能力の一部なのかも知れないが……。
沙・羅・貂が居ればな。
が、いないからには<シュレゴス・ロードの魔印>もあるが……。
一人で対処する――。
<血道第四・開門>――。
<霊血装・ルシヴァル>を発動――。
<血霊兵装隊杖>の血の錫杖を頭上に浮かせながら――。
<魔闘術の仙極>を発動。
<経脈自在>を発動。
――<水の神使>や<滔天仙正理大綱>と<滔天神働術>をより高度に活かすための――。
<滔天魔経>を発動――。
※滔天魔経※
※滔天仙流:開祖※
※血仙格闘技術系統※
※玄智武王院流※
※白蛇竜武王鬼流※
※仙王流独自格闘術系統※
※仙王流独自<仙魔術>系統※
※三叉魔神経網系統※
※怪夜王流技術系統※
※魔人格闘術技術系統※
※悪式格闘術技術系統※
※邪神独自格闘術技術系統※
※魔界セブドラ実戦幾千技法系統※
※<水の神使>と<水神の呼び声>と<血脈冥想>と<滔天仙正理大綱>と<性命双修>と<闘気玄装>と<経脈自在>と<魔人武術の心得>が必須※
※血仙人の証しの<光魔血仙経>の影響を得た故の<滔天魔経>の獲得、滔天仙流系統:恒久神仙技<神仙霊纏>の恒久スキル<滔天仙正理大綱>の質が上昇し、魔力活力源の底上げと上限が上昇した。滔々と流れる大河を心に宿した存在※
※水場での戦いが極めて有利に進む※
※<滔天仙正理大綱>や<滔天神働術>と同じく滔天仙人の証し※
※<霊仙酒槍術>などの酒の功能がより上昇した※
頭上に光る鐶を有した血の錫杖が生まれ出ると、胸甲と鈴懸と不動袈裟風の衣装防具とハルホンクの防護服が融合を遂げる。
瞬時に全身を光魔ルシヴァル宗主専用吸血鬼武装で固めた。
魔闘術系統の<魔闘術の仙極>を、違う<魔闘術>系統の<武行氣>や<闘気玄装>と重ねるように――。
体幹を軸に魔力と実際の筋肉を己の魔力だけで活性化させながら速度を上昇させておく。
そして、対魔法の〝悪夢ノ赤霊衣環〟がある限りは……
王氷墓葎も防がれるだろう。
<水血ノ混沌秘術>系統の奥義剣舞も吸収される可能性が高い。
が、ゼロコンマ数秒の戦いは状況判断が大切。
多少の読みと、瞬間瞬間の思考力が物を言う。
そして、喩え、相手の時間を読めても、それは一つの仮定の時間軸――。
刹那の思考から下される未来は無限に拡がっている。
「……急激に魔力を高めてきたな……」
ベゲドアードは静止しながら語る。
少し驚いているようだ。
そのベゲドアードに頷くように<魔神ノ遍在大斧>を意識――。
魔大斧を右の籠手が付いた斧槍に変化させながら、わざと大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を静止したベゲドアードに直進させた。
ベゲドアードは「当たるわけないだろう!」と言いながら後退。
四腕の手から次々と俺に向けて魔刃を放つ。
ベゲドアードは高笑いしながら、流体文字の魔法絵巻を己の周囲に帯を造るように生み出しては、その魔法絵巻から薄い赤さを保ったままの半透明な怪物を生み出し、それを突貫させてくる。
ベゲドアードの前方を埋め尽くす勢いの魔刃と半透明な怪物の群れと、次々と衝突を繰り返す<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>が目映く輝く――。
離れているが、結構な魔力を得た。
大きな駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の直進は止まらない。
「チッ硬い! 〝古ノ角斗〟と似た対魔法魔具を持つのか!」
と大声で言ってくる。
ベゲドアードは急降下しつつ弧を描く機動で俺の背後を取ろうとする。
それに合わせて左斜め上に上昇。
ベゲドアードは俺を見上げる挙動から大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>から逃げるように飛翔し――俺の右斜め上に移動した後――。
右下腕の手を光らせ魔法絵巻を消す。
と、残りの腕から魔刃を放ちながら後退していく。
三百六十度の空間を活かせる空中戦では――。
――大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>での攻撃はあまり意味がないか。
が、攻防一体の範囲で守りに専念させれば有能――。
赤と黒が混じる魔刃のすべてを対処した。
飛行中のベゲドアードの四眼は鋭い。
四眼の内の二つの眼球には魔法陣が浮いている。
その魔法陣を有した魔眼で、俺を分析中のようだが、魔察眼の範囲でしか分析はできないはず。
<闇透纏視>のようなスキルなら、俺の魔力の流れなどは視えるかも知れないが――。
と、ベゲドアードをよく見ようと移動した直後――。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>が俺の盾の軌道からズレたのを見たベゲドアードは、四腕の手の先から、またも複数の赤と黒の魔刃を生み出し、魔刃を連続的に寄越してくる――。
追尾性能の高い魔刃――。
やや後退する機動で――。
速やかに黒衣の王の斧槍を上下左右に動かし、魔刃を一度に複数切断。
横に移動した。
追尾してくる魔刃を――黒衣の王の斧槍を下に突き出し、石突で叩き潰す――。
ベゲドアードへと付かせるように直進させた<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>だったが、ベゲドアードは素直に逃げていた。
当然、逃げながら魔刃を俺に放り込んできた。
急上昇中のベゲドアードに向け<仙玄樹・紅霞月>を繰り出す――。
俺の周囲の霧のような魔力から三日月状の魔刃の<仙玄樹・紅霞月>が飛び出て、ベゲドアードに直進。
螺旋回転中のベゲドアードは片腕を振るう。
と周囲にゼロコンマ数秒で魔法絵巻を造り上げると、そこから赤い半透明な怪物を数体召喚し、壁代わりに<仙玄樹・紅霞月>を相殺してきた。
頭上の〝悪夢ノ赤霊衣環〟は使わないらしい。
先ほどの《氷竜列》を吸収してきた赤い怪物を出すことには、リスクが伴う? タイムラグが必要か? そう思わせているだけか?
四眼四腕の魔族のベゲドアードは表情筋が人族とは多少異なる。
そして、魔察眼や<闇透纏視>が効き難いと……瞳の虹彩の動きだけでは、中々、ベゲドアードの心理は読みにくい。
が、そろそろ仕掛ける。
ベゲドアードの背後の空域を見ながら――。
砦と地続きの山の斜面が見えたところで、<光魔・血霊衛士>を発動――。
無数の血霊衛士を生み出し、直進させた。
<光条の鎖槍>を五発発動。
続けて<霊血装・ルシヴァル>を解除し、聖魔術師ネヴィルの仮面を装備。
一瞬で光魔ルシヴァル宗主専用吸血鬼武装は消えて、白銀の装備となった。
否、光魔ルシヴァル宗主専用吸血鬼武装は半透明となって重なっている。
ベゲドアードは周囲に出した魔法絵巻から出した半透明の怪物たちで、無数の血霊衛士を粉砕。
<光条の鎖槍>を赤黒い環の大盾で防ぐ。
構わず――。
王級:水属性の王氷墓葎を発動。
右腕から先の扇状の世界を、無数の注連縄を腰に巻く子精霊が踊り狂う氷の盛況が支配した。
巨大な氷の墓標を伴う氷の道はベゲドアードに直進。
その巨大な墓標には凍り付いた注連縄を腰に巻く子精霊が無数に付着していた。冷気がびゅうと谺する刹那、<無影歩>を実行――。
「な!? 消えた? が、魔法は無駄ァァァァ」
ベゲドアードは〝悪夢ノ赤霊衣環〟を収縮させて小さい環に変化。
その小さい環から、赤い霧が眼前に展開されると、霧は薄い赤色と半透明の怪物の頭部と成った。怪物の周囲は赤い霧が残る。
<鬼想魔手>を発動。
貫手状態の<鬼想魔手>を直進させた。
赤い怪物の口が開く、ベゲドアードの前方の空間が歪む。
次の瞬間、<脳脊魔速>を実行――。
<鬼想魔手>に対応しようとしているベゲドアードの背後へと<仙魔・龍水移>――。
同時に隙だらけのベゲドアード目掛け恒久スキル<黒衣の王>を実行――。
歪んだ空間と巨大な氷の墓標を伴う氷の道は、赤い怪物が広げた口の異空間へと吸い込まれ消えていた。
――ベゲドアードの全身から迸った魔線が俺と繋がる。
次の瞬間、ベゲドアードの肉体から不自然に魔力が消えた。
と同時に膨大な魔力を得られた。
ピコーン※<祭祀大綱権>※スキル獲得※
<吸魂>の効果を超えるほどの、くっ――。
<脳脊魔速>を強制的に終わらせる。
と、目の前のベゲドアードは墜落――。
身に付けていた〝黒衣の王〟装備の〝煉霊攝の黒衣〟が自動的に外れると俺の近くに浮遊してきた。その〝煉霊攝の黒衣〟アイテムボックスに仕舞う。
と頭部に漂っていた〝悪夢ノ赤霊衣環〟からどす黒い魔力が出て、ベゲドアードは頭部爆発し、肉体が四散しては、その〝悪夢ノ赤霊衣環〟に吸い込まれていた。
〝悪夢ノ赤霊衣環〟の四方から怪物の手足が生まれ出る。
続きは今週。
HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1~20」発売中。
コミックス1巻~3巻発売中。




