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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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千二百七十話 ゼメタスとアドモスの坂下の戦いの活躍


「ンンン――」


 相棒も飛び降りたようだ。

 左足の爪先で斜面を蹴り<武行氣>を意識し、発動して浮遊。

 肩の竜頭装甲(ハルホンク)も意識。

 衣装を銀ヴォルクの外套と魔竜王装備一式に変更。

 そのゼロコンマ数秒の間、黒豹に変化していた相棒が右から前に出て、見上げてきた。

 その瞳は散大している――獲物を狩るための習性だ――。

 相棒とアイコンタクトを行うと共に坂道を下った。


 すると、赤霊ベゲドアード団の二組の後衛が、坂道を下るのを止める。

 上腕の魔剣を上下に振るう。魔剣から四つ魔刃を飛ばしてきた。

 先ほど、下腕の手が持っていた発煙筒を腰ベルトに差して、その腰ベルトに差してあった魔剣を引き抜いている。四つの魔刃の狙いは先に坂道を下っている光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモス――。そのゼメタスとアドモスは加速し魔刃をあっさりと避けた。


 二人がゼロコンマ数秒前にいた坂道と、四つの魔刃が衝突し爆ぜる。


 ゼメタスとアドモスは月虹の魔力を噴出させながら左と右へと跳ぶように分かれた。

 月虹の魔力の軌跡が二人を追う。

 

 それが光る道に見える。

 坂道を下るゼメタスとアドモスにまたも魔刃が飛来――。

 <ルシヴァル紋章樹ノ纏>で加速しながら駆け下りているゼメタスとアドモスに、それらの魔刃は当たらない。


 左右の坂道が魔刃と連続的に衝突し爆ぜていく。

 その爆発具合は、俺たちを出迎える花火のようだ。


「ンン」


 共に駆け下りている相棒が喉声を鳴らす。

 

「――ゼメタスとアドモスなら大丈夫だ」

「にゃ」


 微かな鳴き声の返事。相棒は少し心配したか。

 

 そのゼメタスの前に、実と花が付いた常緑高木が立ちはだかる。

 ゼメタスは結構な大きさの常緑高木へと骨剣を突き出した。

 骨剣は柄巻部分まで深く突き刺さると、常緑高木の幹はハンマーを喰らったように円状に凹む。と一瞬で常緑高木は粉々となった。

 そのゼロコンマ数秒の間に、前方の四眼四腕の魔族たちが放った魔刃がゼメタスに飛来――。

 ゼメタスは骨盾を掲げ飛来した魔刃の衝突に合わせて左右に骨盾を動かし、左右へと魔刃を流すように弾き飛ばしながら坂道を下り終えて平坦な道に出た。

 ゼメタスの左右の地面は魔刃が衝突し、抉れていた。

 

 一方、右のアドモスは既に平坦な道に出ている。

 

 そのアドモスにも赤い霧のエリアから出たばかりの四眼四腕の魔族たちが放った魔刃が飛来していた。


 アドモスは骨盾で魔刃を受けながら坂近くまで一気に後退。

 魔刃を放った赤霊ベゲドアード団の四人は、


「<バーヴァイの魔刃>は重騎士に通用する! 畳みかけるぞ!」

「「「おう」」」


 と前進し、ゼメタスとアドモスへと近付いていく。

 他の赤霊ベゲドアード団の四人も向こう側の坂道を下り終えて、前進しゼメタスとアドモスに向かうと、赤き霧のエリアを抜けた。


 ――数秒はゼメタスとアドモスに前衛を任せよう。


 ケーゼンベルスとヴィーネたちの気配を後方の上に感じながら、出っ張りの大きい灌木を蹴って高く跳躍し<武行氣>をワザと消す。


 慣性落下でキュンと縮むような感覚をキンタマに得たが――。

 着地間際に<武行氣>を意識し――。

 相棒と共に、ふんわり着地を行う。


 左手が持つ白蛇竜小神ゲン様の短槍を少し上げつつ――。

 平坦の道の左右から前進している光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスを凝視した。


 二人の星屑のマントの輝きを見ると活力を得られる。

 

「<黒南風もののふ>――、私たちに、そのような魔刃は効かぬ――」

「ふむ、<赤北風もののふ>! 上等戦士ゼアガンヌならば、多少は効いたかも知れぬが、な――」


 そのゼメタスとアドモスの語りが大ボス過ぎて面白い。

 黒色と赤色のオーラの迸り具合といい<光魔沸夜叉将軍>の<黒獄騎士軍団長>と<赤獄騎士軍団長>のスキルは伊達ではないな。

 

「「――戯れ言を!」」

「骨の重騎士がぁ!」

「死ねぇぇやぁぁ!!」


 そんな光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスの語りの影響か。

 

 四眼四腕の魔族の八人が怒りのまま一斉に魔刃を放つ。


 そのすべての魔刃がゼメタスとアドモスと衝突したように見えた。

 が、すべての魔刃を骨盾が防ぐ。


 ゼメタスとアドモスは微動だにしない。

 骨盾と甲の角が伸びているゼメタスとアドモスは威風堂々。


 と、その鋼鉄鎧の体をを思わせる節々から黒と赤の蒸気のような魔力を噴出させる。


「構うな、放て――」


 四腕の魔族が繰り出した魔刃が左右の槍烏賊の出っ張りと衝突するが、魔刃のほうがへし折れる。

 兜の槍烏賊部分は、依然よりシャープに見えた。


「な……<バーヴァイの魔刃>が効かない……」

「魔界騎士だとでも言うのか!?」

「な、な訳ねぇ!!」

「〝黒衣の王〟を持つ将軍を狙いに着た魔界騎士かも知れないぞ……」

「びびるな、やれ!!」

「放て!」

「「「お、おう!」」」

 

 出っ張りの表面の細かな孔からの魔力が噴出されている。

 更に、その槍烏賊の穴から出ている魔力と骨盾から出ている虹色の魔力が融合していた。


 ゼメタスとアドモスは骨盾と槍烏賊の防御能力の高さを世に示すように、すべての魔刃を難なく防ぎきっている。


 そのゼメタスとアドモスと、四眼四腕の八人の位置を把握しながら、


「相棒、ゼメタスとアドモスも敵を仕留めるぞ」

「にゃご!」

「「ハッ」」


 すると、


「あの重騎士はタフすぎる! 我らバケン・ダスル隊は新手の紫色の騎士と魔獣を狙う!」

「「「おう!」」」


 バケン・ダスル隊のリーダー格を中心に三人の四眼四腕の魔族たちが一斉に上下腕が握る魔剣を振るう。魔剣から複数の魔刃が放たれた。

 魔刃が俺たちに飛来――。

 <鎖>で迎撃できるか試すのもありだが――。

 <夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を前に出した。


 魔刃を防ぎまくる<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>は頑丈だ。

 他の四人の四眼四腕の魔族たちは、


「我らはあの重騎士だ!」


 と言いながら上下腕の手が持つ魔剣を振るいまくる。

 雨霰とゼメタスとアドモスに三日月状の魔刃を飛ばしていた。

 魔剣から魔刃を放つには、スキルだとしても、かなりの魔力を消費しているように見えるが、まだ余裕があるように見えた。


 四眼四腕の魔族たちは、タフ。

 〝袖付き〟の二眼四腕の魔族か。

 先陣を切るほどだから、皆、名がある強者なのかも知れない。

 

 左右の四人はゼメタスとアドモスに任せよう。


 魔刃を<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で弾きながら前進――。

 

 相棒も余計な動きはしない。

 大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の背後で体勢を屈めながら付いてきている。

 お尻辺りを時折ふるふると震わせながらの狩りの姿勢だ。

 可愛いが、今は触っている暇はない。


「げ、なんて防御力! まずは、あの正面の大きな浮遊物をどうにかしろ!」

「「「「「「「おう!」」」」」」」


 一斉に魔刃が飛来。

 <夜行ノ槍業・召喚・八咫角>に衝突しまくる魔刃の数が尋常ではない。

 魔刃と衝突を繰り返す大きな駒のような<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>から重低音が響く――振動も激しい。が、直に魔刃だった魔力を吸いまくるから――心地良い。


 ――活力も漲ってきた。

 

 四眼四腕の魔族たちが懸命に攻撃をすればするほど元気になる。

 四眼四腕の魔族たちは俺に魔力と闘志を提供しているんだが、気付いていない。

 その魂を水神アクレシス様とココッブルゥンドズゥ様へと、祈りとして捧げようか。

 

 <生活魔法>の水を足下に撒く。

 このままわざと魔力を得続けるのも一興か。


 前にもあったなこんなことが。


「ングゥゥィィ」


 左の肩の竜頭装甲(ハルホンク)も、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の内側から四眼四腕の魔族たちが繰り出してくれている魔刃だった魔力を吸い込んでいるから嬉しいのかも知れない。


 が、俺のほうが得られる魔力量は多いようだ。

 ウマカッチャンというフレーズはなし。

 ハルホンクには吸収している魔刃が内包している魔力量が少なすぎるかな。

 

 俺には、泡風呂に入ってジェットバスを受けている感覚なんだが……。

 続けて――<水神の呼び声>。

 ――<水の神使>。


 ※水の神使※

 ※<水神の呼び声>と<水の即仗>と光魔の陰陽分れざりし心の溟涬(めいけい)而含牙の使い手が水神アクレシスの強い神気を浴びて得られる希少恒久スキル※

 ※水神アクレシスの神籬の意味を持つ腰に注連縄を巻く子精霊(デボンチッチ)を出現させることが可能※

 ※紙垂(しで)には神の領域と人の領域を分ける働きがある。腰に注連縄を巻く子精霊(デボンチッチ)は混沌の極みの表れ、操作は不可能※ 


 ――<滔天神働術>。

 

 ※滔天仙流系統:恒久神仙技<神仙召喚>に分類※

 ※戦神イシュルルの加護と<水神の呼び声>の水神アクレシスの強い加護と高水準の霊纏技術系統と<召喚闘法>と<魔力纏>技術系統と<仙魔奇道の心得>が必須※

 ※水属性系統のスキルと水に纏わるモノが総体的に急上昇し、水場の環境で戦闘能力が高まり、功能の変化を齎す※

 ※酒を飲むと戦闘能力が向上※スキルと恒久スキルを連続発動。

 すると、


「ウォォォ、閣下に攻撃を集中するとは許せん!」

「――我らに攻撃を集中しろ! 四眼四腕ども!」

 

 と左右のゼメタスとアドモスが発奮。

 二人は前衛としてのプライドを示すように魔力を放出させる。

 粉塵的な魔力を上方に展開させながら前に出た。

 星屑のマントがそれらの粉塵的な魔力を吸い込んでいくから、ゼメタスとアドモスの上下の空間が異界に見えてくる。


 そのゼメタスとアドモスと連携しよう――。

 <夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を前へ特攻させる。


 同時に<血道第三・開門>――。

 <血液加速(ブラッディアクセル)>――。

 <ルシヴァル紋章樹ノ纏>――。

 <闘気玄装>――。

 四つの<魔闘術>系統を発動。

 丹田を中心に凄まじい勢いで魔力が体を巡ると、大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>に隠れながら平坦な道を駆けた。

 

「「「ひぃぃぃ」」」

「あの盾がこっちに――」

「「な、魔刃の一部を吸収している!?」」


 今ごろ気付いても遅い。

 相棒も俺に合わせ黒豹の体から橙色の魔力を噴出させて加速する。

「相棒、赤い霧には入るなよ」

 

「「「「――ぐあぁぁ」」」」


 正面にいた四人の四眼四腕と大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>が衝突――。

 四人とも吹き飛ぶ。大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を消す。

 四人の四眼四腕の内、二人の魔腕はへし折れ、魔剣は宙に飛んでいた。

 即座に<魔布伸縮>を発動。

 四つの虹色の魔布が魔竜王装備と外套から飛び出て、四眼四腕の魔族の片足に絡まった。


「にゃご!」


 相棒は右に飛んだ。


「「――ぐぁぁ」」


 ゼメタスとアドモスが倒したであろう四眼四腕の魔族たちの悲鳴を耳にしながら――。

 

 <闇透纏視>を発動。

 <魔布伸縮>で宙空に固定されている四人の位置を捉えながら前進――。

 ――一人の四眼四腕との間合いを零とした。

 即座に右手が握る茨の凍迅魔槍ハヴァギイで<水穿>を繰り出した。


 茨の凍迅魔槍ハヴァギイの穂先が水飛沫を放つ。その穂先が四眼四腕の魔族が扱う魔剣を弾きながら<闇透纏視>で捉えていた魔素溜まりごと、その胴体を突き抜けた。


 続けざまに右手を引きながら――。

 左手の白蛇竜小神ゲン様の短槍で<水雅・魔連穿>を発動――。

 

 右腕と左腕がブレルほどの茨の凍迅魔槍ハヴァギイと白蛇竜小神ゲン様の短槍の連続突きが四眼四腕の魔族に決まる。

 四眼四腕の魔族の頭部が爆発したように消え、複数の風穴が四眼四腕の魔族の体に出来上がった直後、欠損だらけの体は破裂したように散った。


 その血飛沫を吸い寄せる。

 刹那――三人の足に絡めた<魔布伸縮>の虹色の魔布を引き寄せた。

 ゼロコンマ数秒も経たせず、膨大な魔力を込めた<凍迅>を発動。


「「「うぁぁ」」」


 と悲鳴を発している四眼四腕の魔族は「「つ――」」と発言したま<凍迅>の魔力の影響を体に受けた影響で凍り付く。

 三人の四眼四腕の魔族は床に落下した衝撃で体が割れた。


 茨の凍迅魔槍ハヴァギイを仕舞う。

 右手に白蛇竜小神ゲン様の短槍を移して、赤い霧を見上げた。

 

 すると、背後からヴィーネたちが近付いてきた。

 ゼメタスとアドモスも四人の四眼四腕の魔族を倒し終えて寄ってくる。

 

「お見事です」

「閣下に掛かれば直ぐですね」

「ん、ゼメタスとアドモスもがんばった」

「ウォン! 主、後続が来ると思うが、前方の赤い霧の破壊を試みるぞ」

「了解した、頼む」

「ウォォン!」


 吼えた<魔皇獣咆ケーゼンベルスが前に出る。

 口を開けた直後、


『「赤き霧よ、我の前から消え失せろ!!!」』


 ドッとした神意力を有した衝撃波が、赤い霧と衝突。

 赤い霧は一気に薄まる。更に、あちらこちらに旗の模様が出現しては、その旗が爆発を繰り返して、赤き霧は一気に消えた。坂の左右に建っていた死体の塔も幾つか爆発。


「良し!」

「「「おぉ~」」」

「喜びたいが、敵の大軍だ――」


 砦と坂から四眼四腕の魔族たちが一気に降りてくる。

 太った包丁野郎を倒して、捕まっている方々を救いたいが、二人の〝黒衣の王〟の装備を着ていると分かる四眼四腕の魔族もいた。

 幸い、処刑ショーは止まった。



 

続きは明日。

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コミックス1巻~3巻発売中。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゼメタス達は硬い!更にもしも倒せれてもシュウヤが生きてる限り滅びない特性有るから、普通の魔界騎士より厄介というw [一言] 直に魔刃だった魔力を吸いまくるから――心地良い。 ――活力も漲っ…
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