千二百五十四話 <神譚ノ血刀式>
2023年10月19日 9時39分 20時40分 修正
左右にいた二眼四腕の魔族たちが、
「ダラス団長の赤霊現象が起きないぞ!?」
「……赤霊ベゲドアード様のご加護が効かない!?」
「んなわけがねぇ! 黒髪を殺す!」
「あぁ、ダラス団長とトトマズ副長の仇だ!! こなくそが――」
「赤霊ベゲドアード団のため――」
「「赤霊ベゲドアード様、万歳!!」」
と各自叫ぶ。
二眼四腕の魔族たちは団長が殺されても士気があまり落ちていない。
四腕に持つ魔剣を突き出してくる。
魔刃を飛ばす連中は少なくなったのか魔刃を飛ばしてこない。
<滔天仙正理大綱>と<滔天神働術>は維持したまま。
※滔天仙流系統:恒久神仙技<神仙霊纏>に分類※
※水の法異結界と大豊御酒に<魔闘術>系統と<魔手太陰肺経>の一部と<闘気玄装>と<召喚闘法>と<経脈自在>と<羅仙瞑道百妙技の心得>と<仙魔奇道の心得>に高水準の魔技三種が必須※
※霊獣四神と玄智の森の恵みが詰まった大豊御酒を飲んだことで水属性が強化され、新たな魔力活力源を獲得、滔々と流れる大河を心に宿した者、それは滔天仙流の開祖の証しだ※
※魔技三種の能力が上昇※
※近接と<投擲>の武術技術系統が向上※
※大豊御酒と水の法異結界を得ている使い手は<霊仙酒槍術>など様々な酒から功能が得られ、<霊仙酒豪槍鬼>などの戦闘職業が得られるようになるだろう※
※滔天神働術※
※滔天仙流系統:恒久神仙技<神仙召喚>に分類※
※戦神イシュルルの加護と<水神の呼び声>の水神アクレシスの強い加護と高水準の霊纏技術系統と<召喚闘法>と<魔力纏>技術系統と<仙魔奇道の心得>が必須※
※水属性系統のスキルと水に纏わるモノが総体的に急上昇し、水場の環境で戦闘能力が高まり、功能の変化を齎す※
※酒を飲むと戦闘能力が向上※
<滔天魔経>を意識し発動。
<血脈冥想>を意識し、発動――。
<闘鮫霊功>を意識し実行――。
発動した<血脈冥想>を活かす。
心の内に宿る膨大な水の法異結界と大豊御酒の効能を<闇透纏視>で視るように心の襞を全身で感じ取ったゼロコンマ数秒後――。
<召喚術>を意識し、発動――。
<神譚ノ血刀式>の恒久スキルを意識した。
<地母の血大刀>の恒久スキルを意識した。
俺の体から半透明な宇宙空間のような魔力が出た。
そして、俺の体から神譚ノ血刀式の漢字の魔法文字が飛び出る。
と、半透明な宇宙空間的な心象世界の魔力は、縦に並んだ神譚ノ血刀式の漢字が滑らかに動いて袈裟斬りを行い一刀両断。
そこからまた違う星々の輝きを放つ異空間的なモノが見えた。
神譚ノ血刀式の漢字はそこに吸い込まれて消える。
<始まりの夕闇>のような印象を受けるが異なる。
異空間か宇宙空間的なところには――。
バビロニアの星座の意味でもあるような幾何学の輝きがある。
巨大な八芒星のような魔法陣も出現していた。
と、そこの俺と重なっている宇宙的な異空間から女性の甲高い悲鳴に近いニュアンスのエコー声が連続的に響いてきた。
『――アギュシュタンが持つ〝魔大刀シスー〟ではなく、自らの膨大な魔力を糧に我を直に使うとはな――いい度胸だ。そして、水神アクレシスのような膨大な水の魔力は気に食わぬが膨大な闇の魔力と吸血神ルグナドとは異なる心地良い血印が宿る<血魔力>は、頗る気に入った――』
と今度は芳しい女性の念話的な声が体の内と外から響く。
甲高い悲鳴と今の女性の声は同じ地母神キシュヌの声だろう。
ゼロコンマ数秒も経たせず、ゴルゴダの革鎧服を装着した体と重なっている宇宙的な空間から、ニュルリと、二つの角を額に持つ地母神キシュヌが現れた。
白色と紫色の長髪が靡いている。
髪飾りが似合う。
エルフのような長耳には、菱の耳飾りが装着されていた。
スリット入りのクロスドレスを着ている。
鎖骨と豊かな乳房の上部分が見えていた。地母神キシュヌは非常に美しい。
巨大な八芒星のような魔法陣を背後に浮かばせていた。
「にゃァ~」
左肩にいる銀灰猫が反応。
と、左右にいた二眼四腕の魔族は、突然の宇宙的な空間と地母神キシュヌの出現に「「な!?」」と声を発して驚いているが四つの魔剣を握る四腕は伸びきったまま――。
そのまま左手の仙王槍スーウィンで左の魔剣を叩き弾いた。
右手の茨の凍迅魔槍ハヴァギイを左右に動かし、右から迫る魔剣の薙ぎ払いを斜め下に弾いた。
両手の武器を消す。
右手に源流・勇ノ太刀を召喚――。
左手に血魔剣を召喚し、魔力を通す――。
骨の杯が密集した十字の柄からブゥゥゥンと音を響かせながら血が迸った。
柄はまさに、血の十字架だ。
そのタイミングで<地母神キシュヌの血大刀>を意識し、<血印・血魔大刀キシュヌ>のスキルを発動し、
『この岩が多い陣地の右を頼みます』
『ハッ、我に攻撃をさせるとは――』
と、地母神キシュヌは右に向かいながら血の太刀の<血印・血魔大刀キシュヌ>を振るい、一度に二眼四腕の魔族の数体を薙ぐ。
俺は上段と中段の構えを取りながら――。
左にいる二眼四腕の魔族たちを見る。
――源流・勇ノ太刀で袈裟懸けを意識。
中段の血魔剣では突きの構えを意識。
そのまま岩の地面を歩く。
二眼四腕の魔族は、地母神キシュヌの突進を見て視線がブレた。
刹那、地面を蹴った。
二眼四腕の魔族たちとの間合いを詰めた直後に――。
源流・勇ノ太刀を袈裟懸けに振るう。
源流・勇ノ太刀の刃が二眼四腕の魔族の肩口を捉え、その腹までを一気に薙ぐ。
――続けざまに前進し、斬った死体を己の体躯で弾きながら<無影歩>を実行。
<無影歩>のまま前進し――二眼四腕の魔族たちに近付いた。
「「「――消えたァ!?」」」
<無影歩>で姿を消したように見えている二眼四腕の魔族たちは動揺している。
先頭の魔族の頭部に向け右足の踏み込みから迅速に――
左腕が握る血魔剣を前に突き出す<闇神式・暗剣>を実行――。
突如として闇から這い出たような血魔剣の切っ先が相対した魔族の頭部をぶち抜いた。
直ぐに地面を蹴って前進し頭部と上半身の一部を失った死体を吹き飛ばす。
<無影歩>を解除しながら<武行氣>を活かす低空飛行から――。
「「ひゃぁ――」」
二眼四腕の魔族たちは乱雑に四つ魔剣を振るう。
その剣筋を見ながら<黒呪鸞鳥剣>を実行――。
源流・勇ノ太刀と血魔剣で四方から迫る魔剣を正確に上下左右に弾きながら二眼四腕の魔族の一人、二人、三人、四人、五人を連続的に切り伏せる。
周囲の岩を幾つも切断してからバックステップ。
後方にいた二眼四腕の魔族たちを倒した、俺が召喚した形の地母神キシュヌは血濡れた太刀を両手から消す。最初は一つの太刀だったが、二つの太刀に変化したのか。その地母神キシュヌは身を捻りつつ帰還し、俺の体から出ていた半透明の宇宙的な異空間の中へと吸い込まれるように消える。
その俺の体から出ていた半透明な宇宙的な異空間は消えた。
掌握察の範囲内にはまだ複数の魔素はあるが――。
高台の陣地内にいた赤霊ベゲドアード団の二眼四腕の魔族は倒しきったかな。
すると、左肩にいた銀灰虎がもぞもぞっと動く。
銀灰虎は革紐で体が肩に固定された状態だ。
その銀灰虎は、
「にゃァ」
と鳴いた。
さて、まだ残っている赤霊ベゲドアード団の団長ダラスの下半身を見る。
ダラスの赤黒いキュライスと赤革のブーツは回収しておくか。
<魔布伸縮>を伸ばす――。
「ハルホンク、赤黒い金属キュライスと赤革の長いブーツを食べていい」
「ングゥゥィィ」
<魔布伸縮>が絡み付いている赤黒い金属キュライスと赤革の長いブーツを引き寄せる。手元に運ぼうとしたが、途中で赤黒い金属キュライスと赤革の長いブーツは<魔布伸縮>の中に吸い込まれた。
かなりの魔力を得た。
「――ウマカッチャン!」
「お、美味かったようで良かった」
「ングゥゥィィ!」
<魔布伸縮>の虹色の魔布にもハルホンクは意志を通せる。
竜頭装甲の眼窩に出現中の蒼眼が蠢き白眼を剥く。
と、その白眼がピカピカと煌めいてぐわりと回って蒼眼に元通り。
次の瞬間、俺の両足の装備が赤黒い金属製のキュライスとなった。
両手の武器を消す――。
赤黒い金属の表面を触る。表面はざらついていた。
結構硬い。
赤霊ベゲドアード団のダラス団長が装備していたキュライスと赤革の装備品の魔力は濃厚で優秀だったようだな。
「ピカピカ、ヒカル、ハルホンク!」
ハルホンクは元気に発言。
魔竜王の蒼眼を左目に移し、また右目に戻してぐるぐる回していく。
「ンン」
と肩の竜頭装甲の左肩と背中に装着されていたような銀灰猫が、ハルホンクの魔竜王の蒼眼に反応していた。
「ハルホンク、メトは降りたがってるから、解放していい」
「ングゥゥィィ」
銀灰猫が落ちないように、その銀灰猫の体に絡ませていた紐のような物を消す。
「にゃァ~」
解放された銀灰猫は地面に降りた。
伸びの姿勢となって「ンンン」と喉声を発し、尻尾で俺の足の甲を撫でてくれた。
銀灰虎はトコトコと歩いてから地面の匂いを嗅ぐと頭部を見上げる。
少し高い岩に軽々と跳躍し、また左の高い岩へと飛び移って、更なる高台に移動をしては、そこで周囲を見回す。
その高台の上で猫の姿からムクムクと筋肉を増やすように銀灰の虎へと変化させていた。
この赤霊ベゲドアード団の陣地には二眼四腕の魔族はいないと思うが。
虎の姿となって警戒してくれている。
尻尾がピンと立って、菊門を見せてきた。
そんな頼もしく可愛らしい銀灰虎さんの姿に思わず笑ってしまう。
そのまま右手に黒い大斧を意識――。
一瞬で、右手に戦闘型デバイスから黒い大斧が召喚された。
そこに背後からヘルメとエヴァが近付いてきた。
他の皆と相棒と魔皇獣咆ケーゼンベルスは、下のほうの岩場と左の岩場付近に多かった三腕の魔族の集団を倒しまくっている。黒髪の集団とはまだ接触していないようだ。
「閣下、赤い軍団の討伐、お見事です」
「おう」
「ん、シュウヤ、魔神バーヴァイ様は最期になんて?」
「あぁ、我の魔界騎士……と呼ばせてもらうぞ? と語り、幻影は溶けつつ一カ所に集結すると骸骨となった。骸骨は直ぐに、この黒い大斧へと変化を遂げたんだ」
「ん、魔神バーヴァイ様が精神、魂が宿った大斧?」
「あるかもな」
「それに、青白い頭蓋骨の幻影が出て怖いけど、黒い大斧の呪いは大丈夫?」
「……それは〝黒衣の王〟の装備としての大斧でしょうか」
ヘルメも聞いてきた。
頷いて、
「呪いは<黒衣の王>の恒久スキルがあるから、多分大丈夫だと思う」
「ん、良かった」
「はい」
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