千二百五十三話 赤霊ベゲドアード団との戦い
2023年10月18日 13時56分 修正
戦国武者風の黒髪の集団と争っている魔獣モンスターたちは黒虎系。
グリフォンぐらいの大きさの黒虎もいる。触手はないが、頭部の横に鰓のような部位があり、両前足には甲のような岩があるようだ。
そして、色取り取りな鉱脈があると分かる地帯では、先ほどと同じく黒虎のモンスターが穴に頭部を突っ込んで穴の中にいた水棲モンスターを引き摺り出し、外に放り投げては、岩場の上に転がすと、他の黒虎モンスターが我が我よと、その上で踊り暴れる水棲動物っぽいモンスターに突進しまくって水棲動物っぽいモンスターを食べまくっている。
黒髪の集団と争う黒虎モンスターと水棲動物っぽいモンスターを食べる二つのグループか。
それらを見ながら<黒衣の王>を意識――。
黒い衣服の繊維部分は伸ばすことはできないのか。
<魔布伸縮>のようなことはできない。
と、試していられない――。
黒髪の方々と黒虎モンスターたちがいる方向ではない方角から魔刃が飛来してきた。
<魔闘術>系統の<武行氣>を再度強く意識しつつ振り向く。
俺に飛来してくる魔刃の色合いは銀色が混じる。
その魔刃を見ながら、丹田を中心に<武行氣>を練り直しつつ、左斜め上へ急上昇し、魔刃を二つ避けた――。
そして、<導想魔手>を蹴って右斜め下へと降下――。
――俺の降下速度に合わせたような魔刃が飛来。
「メト、掴まってろ」
「にゃァ」
<血道第三・開門>――。
<血液加速>――。
<血魔力>を纏った体の節々から<血魔力>を放出させる。
スラスターから細かく噴出される炎のように小刻みに<血魔力>を出しつつ、速度を上げながら左右に移動を繰り返して、無数の魔刃を避けまくった。
これも修業――。
魔刃を繰り出してくるのは二眼四腕の魔族たち赤霊ベゲドアード団の勢力だな。
胸元に髑髏の赤印を有している。
右手に茨の凍迅魔槍ハヴァギイを召喚。
――遺跡付近の赤霊ベゲドアード団の大半は魔神ハーヴァイと魔神レンブラントの祭壇の崩壊に巻きこまれて死んでいたが――。
離脱した者もいるようだ。
今もまた、二眼四腕の魔族が持つ魔剣から放たれた魔刃が飛来してきた――。
その魔刃を茨の凍迅魔槍ハヴァギイの柄で横に弾く。
左手に仙王槍スーウィンを召喚。
茨の凍迅魔槍ハヴァギイからキィィンと金属音が響く。
かなり硬度がある魔刃だ。
<経脈自在>を実行――。
<水神の呼び声>を実行――。
<仙魔奇道の心得>を意識。
<闘気玄装>を再度発動させて<水月血闘法>を実行――。
<魔闘術の仙極>を実行――。
<滔天仙正理大綱>を意識し、実行――。
<滔天神働術>を実行――。
<霊魔・開目>を再度意識し、発動した。
更に<光魔血仙経>も、もう一度、意識して発動――。
<闘鮫霊功>と<黒呪強瞑>は、今は使わず――。
速度を上げながら飛来した魔刃を避けたところで――。
直ぐに魔刃を繰り出してくる二眼四腕の魔族たち目掛け――。
王氷墓葎の魔法書がチラつくが出さず――。
《氷竜列》を繰り出した。
俺の周囲が凍り付くように気温が急激に下がった。
同時に、腕の先の宙空に氷の大きい龍の頭部が出現。
その大きい龍の頭部は一瞬で巨大な氷竜に変化しつつ直進。
二眼四腕の魔族たちは、巨大な氷竜を見て逃げる者も出た。
が、大半の二眼四腕の魔族たちは、自信があるようで、魔剣を振るいまくって魔刃を飛ばしてきた。魔刃と衝突を繰り返す《氷竜列》――。
巨大な氷竜の体から出ている氷の刃が数十と折れたが、本体は潰れることなく――。
多数の二眼四腕の魔族を喰らうように衝突。
次の瞬間、【古バーヴァイ族の集落跡】の岩場ごと大爆発――。
一瞬で、数十人の二眼四腕の魔族たちはダイヤモンドダストとなった。
【古バーヴァイ族の集落跡】の一部地域が雪景色となる。
が、まだ二眼四腕の魔族たちは多い。
更に、手斧――。
――手斧が飛来してくる。
背中に太い腕が生えている三腕の魔族たちが手斧を、その太い背中の手に召喚したかと思ったら、その太い腕を振るって手斧をぶん投げてきた。
手斧の<投擲>による遠距離攻撃だ。
――魔刃を繰り出す二眼四腕の魔族と――。
手斧を<投擲>してくる三腕の魔族たちは――。
――俺が〝黒衣の王〟と〝炎幻の四腕〟を奪取したと理解しているようだ。
二眼四腕と三腕の魔族たちも魔神バーヴァイと魔神レンブラントの〝黒衣の王〟と〝炎幻の四腕〟を狙っていたか、秘宝を狙っていたんだろう。
――更に崩れた祭壇から飛び出た存在の俺だ、目立つか。
――手斧と魔刃を避けまくる。
二眼四腕の魔族と三腕の魔族たちの遠距離攻撃は中々の速さ――。
が、俺の<魔闘術>系統の速度上昇と速度減少による緩急の差を突くことは難しいだろう。偏差射撃を行うような二眼四腕の魔族がいるが、その飛来してきた魔刃のタイミングに合わせて茨の凍迅魔槍ハヴァギイで<豪閃>を繰り出し対処。
一つ、二つ、三つと魔刃を避けまくる。
皆を乗せた相棒は俺の後方から左に回るように旋回中。
「ンン、にゃご~」
相棒の声が斜め後方から響いた。
神獣ロロディーヌから飛び降りた皆が二眼四腕のモンスターたちに向かっていく。
キルトレイヤとバミアルとキスマリとフィナプルスと馬魔獣ベイルに乗ったグラドたちが落下傘部隊に見えた。
翡翠の蛇弓から光線の矢を繰り出しているヴィーネが見える。
エヴァはサージロンの球を浮かせていた。
キサラとキッカとイモリザは、ビュシエが宙空に作り出していた長方形の<血道・石棺砦>の上に乗った状態だ。
キサラはダモアヌンの魔槍からフィラメントを出している。
キッカは魔剣・月華忌憚を持ったまま冷静に立っている。
ケーゼンベルスは二眼四腕の魔族の頭部を咥えて吐いていた。
ココアミルク肌が可愛いイモリザは<使徒三位一体・第一の怪・解放>は使わず、両手を拡げて、その手の近くに魔法陣を生成し、<魔骨魚>を生み出していた。
人数的にピュリンの狙撃もアリだが、まぁ、イモリザの判断に任せよう。
刹那、銀髪でビックリマークを作ったイモリザは、離れている俺を見て、
「キュピーン、使者様~任された♪」
と大きな声で発言。
面白いなイモリザは、そのイモリザは<血道・石棺砦>の上で跳躍して喜んでいる。
ヘルメとグィヴァと相棒は高い位置を保ったままだ。
橙色の魔力を纏うロロディーヌが不死鳥に見えてくる。
エトアを守っていると理解できた。
そのヴィーネたちに、
『黒髪の集団に接触と考えたが、俺が甘かった。三腕の魔族と、岩場を利用する四腕の魔族たちは各個撃破でいい』
『『『『『はい』』』』』
『ん、がんばる』
次々にキサラ、ヴィーネ、バーソロン、ビュシエ、キッカ、エヴァたちの血文字が浮かんでは消えていく。
その間にも手斧と魔刃の飛来は続いている――。
手斧の遠距離攻撃は重い、結構、厄介だが――。
腕の数は手数の数――魔剣の数のほうが脅威かな。
赤霊ベゲドアード団の二眼四腕の魔族を優先的に狙う。
山岳地帯っぽい岩場と陣がある場所に隠れながら――。
今も四腕を振るいまくって魔剣から魔刃を繰り出してくる二眼四腕の魔族たちに向け――。
<光条の鎖槍>――。
続けて、<光条の鎖槍>――。
もう一度、<光条の鎖槍>――。
更に<光条の鎖槍>――。
そして、<光条の鎖槍>――。
連続的に五発の<光条の鎖槍>を繰り出す。
五発の<光条の鎖槍>は直進。
宙空に五条の軌跡が見えた刹那――。
二眼四腕の魔族たちの体に<光条の鎖槍>が突き刺さった。
「「「ぎゃぁぁぁ」」」
「足がァァ」
「なんだこりゃぁ」
二眼四腕の魔族は魔刃を繰り出すことに夢中だったのか魔剣を振るうのみ。
空振って<光条の鎖槍>を体に喰らっていた。
が、大柄の二眼四腕の魔族は四腕を巧みに動かす。
魔剣で翡翠の蛇弓の光線の矢を弾きながら、
「――《光槍の罰》だと!?」
と発言し、<光条の鎖槍>をも、四腕の手が持つ煌びやかな魔剣をクロスさせて防御に成功。
左右に腕を動かし、<光条の鎖槍>を裂くように弾いていた。
あいつが二眼四腕の魔族のリーダー格か?
リーダー格は岩の壇の上で陣地にいる。
岩が多いが旗と幕も展開されているから野営地でもあるんだろう。
<光条の鎖槍>を喰らった連中は放って――。
本陣にいる、そのリーダー格と目される二眼四腕の魔族を凝視。
額はやや盛り上がって眉毛が鋼鉄っぽい顔付き。
角はないが、専用の兜を被っている。
膜状のポンチョのような防御層が両耳と両肩に繋がっていた。
防御力アップ効果がありそうな薄い膜。
あの兜と膜状のポンチョ防御層で防御が硬そうな二眼四腕のリーダー格を狙うとしよう。
まずは手前にいる二眼四腕の魔族部隊を掃除しようか。
数にして数十は超えているが、<魔闘術>系統を強めて宙空から――。
二人の筋肉と体幹の動きを一瞬で把握。
近くの二眼四腕の魔族たちとの間合いを詰めた。
<光条の鎖槍>で目立ちすぎたのもあるが――。
二眼四腕の魔族たちは各自<黒呪強瞑>と目される<魔闘術>系統を強めて、己を強化していた。
「ぬおぁ!?」
「速い――」
二眼四腕の魔族は俺の<魔闘術>系統の動きに反応している。
二眼の色合いは蒼紫で鼻も高く、かなりの端正な顔立ちだ。
その二眼四腕の魔族は俺の速度に合わせ右腕上腕と左腕下腕を動かす。
二人の筋肉と体幹の動きを一瞬で把握。
魔剣を突き出す軌道を即座に読みながら、足下に<生活魔法>で水を撒く――。
と同時に茨の凍迅魔槍ハヴァギイで<血穿>――。
茨の凍迅魔槍ハヴァギイは滂沱な雨の如く周囲に散る<血魔力>を放つ。
その穂先と二つの魔剣が衝突――。
穂先は斜めに掲げ直した魔剣の腹を滑って上向いてしまう。
――<血穿>が防がれた。
が、それは想定済み。
着地際で<勁力槍>を意識発動。
そのまま左手の仙王槍スーウィンで、<白炎明鬯穿>を繰り出した。
銀色の水炎を有したような仙王槍スーウィンから閃光が走る。
突き出す左腕ごと輝く仙王槍スーウィンの穂先が直進――。
一直線に銀の閃光が二眼四腕の魔族の腹をぶち抜いたように見えた。
目映い仙王槍スーウィンに貫かれた四眼四腕の魔族は上半身が銀色に染まる。
と、一瞬で、体が溶けた。
四腕が持っていた魔剣は地面に落下。
それらの魔剣は拾わず即座に前進――。
後続の二眼四腕の魔族二人に近付いた。
二人の二眼四腕の魔族は前のめりの体勢となると、
「――ダラス様に近づけさせん!」
「来るな、黒髪野郎――」
左右上腕が持つ魔剣の切っ先から魔刃が飛び出る。
同時に、左右下腕の魔剣を突き出してきた。
二人の動きの質が高い――。
<水月血闘法>を活かす。
足下に<生活魔法>の水を撒きながら――。
アーゼンのブーツの裏を滑らせつつ横斜めに移動――。
二人の二眼四腕の魔族から、応用力はあまり感じられない。
二人の四腕の手が握っている魔剣の数は八つ。
その八つの魔剣の軌道を予測しながら、巧妙に己の体の軸を、相対している二人の魔族とズラしつつ槍の間合いを維持した。
相対している二人は体を横に移動して俺に合わせてくる。
が、キサラやヴィーネに比べたら歩法、武術の差は雲泥の差だ――遅い。
上腕の魔剣の剣身から出た魔刃を簡単に避けた。
「動きが速すぎる――」
「右、左か――」
合計八つの魔剣の切っ先を紙一重で避け続けた瞬間――。
左から右へと凍迅魔槍ハヴァギイを振るった。
――<闇雷・飛閃>を繰り出した。
一瞬の闇雷の閃光を思わせる薙ぎ払いが、二眼四腕の魔族の体を通り抜けた。
二眼四腕の魔族の二人は体が四つに分断されたように物別れ。
バラバラとなった死体から血飛沫が迸る。それら血を吸収しつつ――。
斜め前と奥から飛来してきた手斧と魔刃を仙王槍スーウィンで弾きつつ前進し、次に飛来してきた魔刃を避けた。
そのまま奥に向かった。
<仙魔・桂馬歩法>を実行。
小川が滔々と流れるがままを連想させるようなステップワークを行いながら直進。
リーダー格を守る前方左右にいる二眼四腕の魔族たちに――。
拳状の<導想魔手>と<鬼想魔手>を喰らわせ吹き飛ばす。
二人の二眼四腕の魔族は背後の岩と衝突し、自らの得物で頭部が縦に切断されながら<導想魔手>と<鬼想魔手>の魔力の拳に押し潰されていた。
その死体を<超能力精神>で吹き飛ばしながら――。
前方へと駆けた。壇上の岩にいる兜を被っているリーダー格に近付く。
「黒髪の手練れめが――」
左上腕の手が持っている魔剣の突きを凝視――。
即座に茨の凍迅魔槍ハヴァギイで<血龍仙閃>を繰り出した。
<血魔力>の龍が螺旋している茨の凍迅魔槍ハヴァギイと柄で右上腕の魔剣の突きを弾き飛ばした。
が、ポンチョのような防御層から出た粘着質の糸と、左上腕と下腕が持つ魔剣で<血龍仙閃>は防がれた。
鋭い眼差しのリーダー格は、
「尋常ではない攻撃の質だが、我に動きを見せたのは、拙かった――」
と喋ると、ポンチョのような防御層を仕舞いつつ右上腕と下腕が持つ魔剣が俺の腹に伸びてくる。
その二つの魔剣の機動と挙動に合わせる――。
神速の勢いで、仙王槍スーウィンを下から振るう――。
「――<夜行ノ槍業・弐式>」
上向いた仙王槍スーウィンの柄と穂先が、直進してきた二つの魔剣が衝突し、二つの魔剣ごと右上下腕を突き上げることに成功――。
――キィィィィンと甲高い金属音が響く。
二眼四腕の魔族のリーダー格は驚愕し、
「な!?」
――腹を晒した。
自動的に<夜行ノ槍業・弐式>のカウンター技――。
右手が握っている茨の凍迅魔槍ハヴァギイで正拳突きを行うように直進。
二眼四腕の魔族の胸甲ごと胸を穿った。
ポンチョの防御層の源も貫いたのか、ポンチョの防御層が消える。
「ぐぉぁ」
続いて<握吸>を意識し発動させていた仙王槍スーウィンの突きが――。
二眼四腕の魔族の腹に決まる。
更に茨の凍迅魔槍ハヴァギイの迅速な突きが、二眼四腕の魔族のリーダー格が持っていた魔剣を弾きながら、その腹を再度穿った。
そこに左腕ごと前方に伸びた仙王槍スーウィンの突きが二眼四腕の魔族の頭部に決まった。
――兜を弾き飛ばす。
続いて、茨の凍迅魔槍ハヴァギイの突きが、二眼四腕の魔族の右下腕を貫いた。
カウンターの<夜行ノ槍業・弐式>の疾風怒濤の槍舞は続く。
茨の凍迅魔槍ハヴァギイと仙王槍スーウィンの連続突きがリーダー格の体を削り削った。
両足の一部が残るだけとなった。
良しッ――倒した。
「あぁぁ、団長がぁぁ」
「ダラス団長が倒れるなんて……」
赤霊ベゲドアード団の団長の名はダラスか。
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