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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1246/2032

千二百四十五話 魔神バーヴァイと魔神レンブラントの祭壇

 

 ペミュラスの不思議な頭部の中が気になるが、〝黒衣の王〟と〝炎幻の四腕〟が、あそこに魂か体の一部が眠る? それともアイテムがあるんだろうか。

 魔神バーヴァイと魔神レンブラントを信仰していたバミアルとキルトレイヤの魔剣と関係がある?


「岩の像は無数にあるが、バミアルとキルトレイヤが持っていたような魔剣は、さすがにスカベンジャーたちに取られたか」

「はい、魔傭兵も多種多様です」

「優秀な魔剣が地面に刺さっていたら人気が出るはず」

「ですね、冥界シャロアルのような環境ではない以上、魔界王子テーバロンテが暴れた当初の、ここは魔商人たちにも人気があったかも知れません」

「はい、たしかに、古バーヴァイ族の遺品は人気がある」


 バーソロンの言葉に皆が頷いた。

 すると、バミアルとキルトレイヤは、


「……主、皆様、古バーヴァイ族の復活は望んでおりませぬ故……大丈夫ですぞ」

「はい、魔剣があったとしても冥界シャロアルのような環境ではないですからね。水神ノ血封書でも復活は無理なはずです。そもそも目立った魔剣を魔界王子テーバロンテが残す訳がない。魔神バーヴァイと魔神レンブラントの祭壇付近ならば隠された何かが残っているかも知れませんが……」

「分かった」

「「ハッ」」

 

 バミアルとキルトレイヤは胸元に手を当てる。

 光魔騎士グラドと似たポーズで渋い。

 

 再び、斜め下の先を見た。

 厚い岩を四つの細長い岩で支えている古代遺跡は不思議だ。

 強い振動を受けたら『ロックバランシング』が崩壊すると思うが、バランスが崩れる気配はない。


 魔力か結界的な作用が働いている?

 

 そして、先を進んでいるはずの魔皇獣咆ケーゼンベルスが見当たらない。

 と思ったら――「ウォン!」と真上にいた。


 ケーゼンベルスの四肢に腹が小さい。小型化したか。


 といっても大型犬の大きさだが。


 そのケーゼンベルスは腹の毛を靡かせながらビッグな黒猫(ロロ)の頭部に着地するや否や全身をぶるぶると震わせていく。


 濡れた毛を乾かすつもりなのか?


 スローモーション映像で、今のケーゼンベルスを見たら、面白い映像が見られることだろう。


 そして、降りてくる時、相棒のような腹と産毛は見えなかった。


 少し残念だな。ケーゼンベルスの地肌には少し桃色があったと思ったが見たかった。


 そのケーゼンベルスは俺に向け、


「主、下の魔族たちの争いに加わり、この【古バーヴァイ族の集落跡】を神聖ルシヴァル大帝国の名の下で平定するのか?」

「ふふ、当然です。閣下あるところに光魔ノ規範あり、神聖ルシヴァル大帝国は、拡大を続けるのです」


 ヘルメがヘルメ立ちを行いながら語る。


「ふふ、素敵なヘルメ様のお言葉です! 魔裁縫の女神アメンディ様とは違う水の女神様に見えますよ」


 グィヴァが両腕の脇を締めながら楽しそうに語る。

 ヘルメも嬉しいのか、


「まぁ! グィヴァちゃん、可愛いことを! ぴゅっぴゅしてあげます!」

「わっ、うふふ♪ 温かい~魔力も増える~嬉しいです!」


 グィヴァはダンスをするように小躍り。

 キサラとイモリザとビュシエとフィナプルスがダンスに乗る。


「「「「ふふ~」」」」

「あ、わたしにまで、水を♪ ありがとう精霊様~♪ 使者様と共に!!」


 ヘルメがぴゅっぴゅっと水を俺とグィヴァとイモリザにかけていく。

 ヘルメの水をグィヴァはおっぱいで受けた。


 乳房が上下左右にプルルルンとプルルッとプルンと揺れていく。

 思わず柏手を三回行う――。


 ついでに、おっぱいの女神たちに、お祈りをした。


「……ご主人様、グィヴァ様の胸にお祈りですか?」

「ん、前に手と手を合わせて、し幸せ~って教えてくれた」


 それを覚えていたか。

 エヴァはペロッと少し舌を唇から出している。可愛い。


「お、おう」


 と笑う。するとドッと皆が笑っていた。

 闇雷精霊グィヴァも笑顔となって跳躍するように浮遊。

 

 上下に揺れる乳房の動きを追ってしまった。

 と、グィヴァは魔法の衣越しに乳の揺れを押さえようと片手で押さえている。

 掌の大きさに余る乳房の影響で、魔法の衣が少し盛り上がった。


 乳房の張りの良さが理解できた。


 グィヴァは恥じらうような表情を見せる。


 さて、このまま美女たちとふざけるのも一興だが……。

 真面目な表情に戻して、


「下の魔族に戦いを仕掛けられたら、戦うさ」

「最優先事項はペミュラスの件だな」

「おう」


 ケーゼンベルスはバーソロンたちを見据え、


「……【バーヴァイ平原】と隣接している諸勢力が己の勢力のためだけに争い合う状況を見ても、その言葉か。実に優しい(・・・)……。否、ぬるい主らしい考えよな……主は本当に覇王ハルホンクを飲み込んでいるのか?」


 魔皇獣咆ケーゼンベルスは、わざと文句を言っている。

 

 バーソロンやビュシエの内面に対しての言葉だろう。


 血で血を洗う魔界セブドラでは、力こそが正義。


 俺も力を持つから、それも正しい。


 だが、『力の使い方も色々とある』

 ってことを皆に言いたいんだろうと瞬時に理解した。


 エトアはケーゼンベルスの厳しい態度を初めて見たのか怖いようで隣にいる銀灰猫(メト)に身を寄せていた。


 そして、分かっているのかヴィーネやキサラは反論しない。


 ケーゼンベルスに向け、あえてまともに、


「あぁ、ハルホンクは、しっかりと食べたから、この肩だ。今も竜の装甲として出現している」


 と語ると、ケーゼンベルスは少し微笑んだ?

 ケーゼンベルスは歯牙を見せる。


 すると、俺の右肩が自然とピクッと動く。

 

 肩の竜頭装甲(ハルホンク)が、


「ングゥゥィィ、喰エ、喰エ、螺旋ヲ、司ル、深淵ノ星……」


 と意味有り気に呟いた。

 魔皇獣咆ケーゼンベルスの覇王に反応しての言葉だと思う。


 ケーゼンベルスは、鋭い目付きで、


「主、覇王ハルホンクに飲まれていないだろうな?」

「分からない」


 肩の竜頭装甲(ハルホンク)は、蒼眼を左から右へと転移。

 ケーゼンベルスは、また笑顔を見せるように歯牙を見せてから、


「……」


 と沈黙。すると、今度は左手が煌めく。

 掌の運命線と似た傷の隣にある<シュレゴス・ロードの魔印>から、桃色の半透明の蛸足集合体(シュレゴス・ロード)が少し出て、


『……主、ハルホンクは、我の魔力も好む。あげるといいぞ』

『了解した』

『うむ。そして、主は主。ハルホンクに飲まれることはありえない。ハルホンクを喰ったのだからな』

『そうだな。シーフォもその時に会った』

『……ふむ。主、我はいつでも準備ができている』

『分かった』


 <シュレゴス・ロードの魔印>から出せる半透明の蛸足集合体(シュレゴス・ロード)はフェイントの一種としてかなり使える。

 戦術的に囮としての運用かな。

 が、なるべく正々堂々と風槍流の槍を使って勝負をしたいんだよな。

 <シュレゴス・ロードの魔印>から半透明の蛸足集合体(シュレゴス・ロード)を伸ばして肩の竜頭装甲(ハルホンク)に当てた。

 桃色の半透明の蛸足集合体(シュレゴス・ロード)の魔力がシュパッと音を立てながら肩の竜頭装甲(ハルホンク)に吸い込まれて消えた。

 

「――シュレ♪ ウマカッチャン! マリョク、オイシイ!」

『うむ』


 肩の竜頭装甲(ハルホンク)は蒼眼をぎゅるぎゅると回す。


 ペミュラスたちは驚いて右肩を凝視していく。

 初見なら当然か。

 そのうち慣れるだろう。


「良かった、一先ず、満足か?」

「モット、ホシイ……ケド、マンゾク!」

「先ほど倒したモンスターから大量に魔力を得ているだろう?」

「ウマカッチャンダッタ! ガ、アレハ、アレ」

 

 ハルホンクの語りに思わず笑う。

 ……とりあえずハルホンクと皆に、


「……ハルホンクは下の連中に、俺と敵対する者すべてを喰らえ、と言うことか?」


 すると、肩の竜頭装甲(ハルホンク)は、


「ングゥゥィィ、ソウダ、オイシイ魔力……ガ、好キ……」

 

 と気持ちを発言した。

 魔竜王バルドークの蒼眼がピクピクと動きながら白眼が剥く。

 と、半透明の蛸足集合体(シュレゴス・ロード)の魔力を吸って満腹になったと思ったが、大丈夫か?

 

「――下ノ、強者ノ全部ノ魔力ガ、欲シイ! ゾォイ!」


 と叫びながら<勁力槍(けいりょくそう)>のような魔力を竜頭の装甲から噴出させる。

 驚いた。近くにいたヴィーネとキサラとビュシエは身動ぐ。


 ケーゼンベルスは微動だにせず、黒い狼として、口を拡げ、


「フハハ、覇王ハルホンクは、やはりそうではなくてはな! そして、主だからこそ、覇王を飲み込んだ……螺旋を司り、<深淵の星>を扱える覇槍神魔。そして、覇槍ノ魔雄が、我の主……」

「ンン、にゃァ」


 と、魔皇獣咆ケーゼンベルスは香箱スタイルで頭を垂れてくる。

 急にしおらしくなるケーゼンベルスが可愛い。

 大型犬のシベリアンハスキーに見える。


 同時にシルバーフィタンアス、ふさふさな毛と尻尾を持つ銀白狼(シルバ)を思い出した。


「にゃァ」


 ――銀灰猫(メト)も思い出していたのかな。

 ケーゼンベルスの横に並ぶように座った。可愛い二匹だ。

 

 ケーゼンベルスは満更でもないのか「フッ」と笑うと耳の魔皇獣耳輪クリスセントラルを少し輝かせながら銀灰猫(メト)の頭部と耳を舐めていた。


 毛繕いを始める。

 黒い狼たちを可愛がるような気持ちなんだろうか。

 親愛の情に溢れているケーゼンベルスか。

 

 心がほっこりとしてくる。

 

 では、そろそろ、


「厚い岩を四つの岩柱が支える古代遺跡が、魔神バーヴァイと魔神レンブラントの祭壇のようだから、向かうとして……ペミュラス、【古バーヴァイ族の集落跡】のことで、他に説明することはあるか?」

「ありまする。枢密顧問官のト・カシダマが率いた百足高魔族ハイデアンホザーの数は約三千を超えた特殊部隊、偵察と探索を重きに置いた部隊でした。そして、左のラージマデル古道という名の幅広い街道から【古バーヴァイ族の集落跡】に入ったのです」


 ペミュラスの言葉に光魔騎士グラドが「はい」と言ってから高台の位置に腕を向け、


「あの高台から、枢密顧問官のト・カシダマが率いていた百足高魔族ハイデアンホザーの動きを把握していました」

「了解した。では、皆、四つの勢力と地形の見学はお終いとするが、どうだろう」

「「「はい」」」

「了解です」

「「「承知!」」」


 皆も地形はある程度把握したかな。


「下の連中も俺たちの動きは気付いているとは思う。だが、魔刃を飛ばしてくることはない以上は極力無視の方向だ。あの魔神バーヴァイと魔神レンブラントの祭壇に行こう」

「「はい」」

「ん、目的は〝黒衣の王〟と〝炎幻の四腕〟!」

「原初ガラヴェロンテ様とキュビュルロンテ様との交渉のために!」


 ヴィーネの言葉だ。

 そして、片腕を上げた。ビュシエも<血魔力>を有した片手を上げた。

 <血魔力>の片手剣とメイスを宙空に生成し、


「がんばりましょう」


 すると、皆も円陣を組み、片手を上げ、


「「「「はい!」」」」


 と武器の刃を真上で合わせた。

 皆の得物が衝突し、キィンと小気味よい金属音が連続的に響いた。

 一斉に武器を消した皆の表情には気合いが漲っている。

 その皆を見ながら触手手綱を引っ張り、


「相棒、近くに寄せてくれ――」

「ンン」


 ビッグな黒猫(ロロ)は斜め下へと飛翔し、四つの岩が厚い岩を支えている古代遺跡の前に着地。

 古代遺跡は揺れもしない。

 <闇透纏視>で古代遺跡の岩を凝視すると無数の魔線が宙空に放出されていた。

 

「行こう――」

「「「はい」」」


 ビッグな黒猫(ロロ)から降りた。

 皆も一斉に降りていく。

 相棒は直ぐに「ンン」と鳴いて黒豹の姿に変化した。


 周囲には小山のような石像ばかり石階段には不思議な形の凹凸があった。

 遺跡だから当たり前だが、かなり古い。

 

 石階段には神秘的な文字が刻まれてある。

 神々を奉った石板を積み重ねて階段にしたのか? 

 古バーヴァイ族も土着の神々を信奉していた民たちを倒して、のし上がった一族だったのかな。

 皆で階段を上がって……魔神バーヴァイと魔神レンブラントの祭壇を進む。

 細い岩柱は頑丈だと分かるが……。

 天井の分厚い岩を支えられるような太さがあるようには、どうしても見えないが、支えられている。

 細い岩から迸っている魔線のお陰だろうか。


続きは今週。

HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。」1~20発売中。

コミックス1巻~3巻発売中。

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[良い点] 「――下ノ、強者ノ全部ノ魔力ガ、欲シイ! ゾォイ!」 食いしん坊なハルホンク! 枢密顧問官のト・カシダマが率いた百足高魔族ハイデアンホザーの数は約三千を超えた特殊部隊 他の勢力も多少居た…
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