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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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千二百四十四話 古バーヴァイ族の集落跡と様々な勢力たち


「閣下、敵が結構いますね」

「あぁ」

「下から攻撃はありませんが、要注意です」

 

 常闇の水精霊ヘルメと闇雷精霊グィヴァだけ近くを浮遊している。

 ヘルメの両手は氷の刃が無数に付いたような造りで一つの氷剣となっていた。

 周囲にも無数の氷の刃が浮いている。

 前よりもコントラストが異なるし渋くて格好いい氷腕剣だ。

 

 新スキルかも知れない。


 グィヴァも雷の魔力を集積させて雷光剣のような腕武器に変化させている。

 僅かに雷腕剣の剣身から紫色に近い放電が起きているが、それがまた渋い。

 

 ヘルメもグィヴァも俺に合わせて進化しているようだな。


 【古バーヴァイ族の集落跡】の小山は岩が多い。

 そんな岩ばかりの【古バーヴァイ族の集落跡】では岩場の各所で戦いが起きていた。

 魔獣のモンスターもいる。魔族の頭部を喰らう魔獣の姿は黒虎っぽい。

 そして、ここには、俺たちのような空から下を窺う存在はいない。

 

 皆も相棒の頭部の端に移動している。

 ビッグな黒猫(ロロ)も皆の動きに呼応し、皆の体に絡んでいる触手の位置を変化させつつ降下を取り止めた。


「ンン」


 と喉声を鳴らして浮遊し旋回を開始する――。

 両翼の形も少し小さいし、頭が良い神獣ちゃんだ。


「ロロ、それで正解だ。そのまま旋回し、下から上に俺たちに向けて対空攻撃を仕掛けてきたところから潰していこう」

「ンン、にゃ~」

「にゃァ」


 銀灰虎(メト)も賛成するように鳴いた。


「「「「はい!」」」」

「承知!」

「我が魔族共を蹂躙してやろう!」

「ん、キスマリ、シュウヤは偵察を優先する。先制攻撃はあまりしない」

「わ、分かっているつもりだ。が、我はトゥヴァン族……欲望の魔王ザンスインを信奉している。その欲望の信仰は戦いの力へと直結している。だからこそ戦いに殉じることができるのだ。堕落を含む欲望の王魔トドグ・ゴグとは大きく異なるのだぞ」

「ん、大丈夫。戦いとなったらキスマリも前衛となる」

「うむ」

 

 キスマリと皆も戦いは起きると想定済みか。

 そんな皆と、斜め下に拡がっている岩だらけの【古バーヴァイ族の集落跡】の地形を把握しつつ……未知の敵集団の偵察を強める。

 岩と岩の間を行き交い徘徊し、小隊と中隊規模で戦っている魔族とモンスターたち、主な四つの勢力を凝視――。

 色違いの軍服を着ていてくれたら分かりやすいが、そんなことはあり得ない。


 一つ目の集団は大柄の四腕の魔族。

 身なりは、ザ・傭兵。

 帆馬車と似た魔獣を守りながら岩と岩の通路を進んでいるようだ。

 古バーヴァイ族が残した遺品かお宝の探索か?

 ここをねぐらにしていた魔傭兵のキャンプ地などを探索しているのかな?


 武器は魔槍と、魔杖と柄巻から伸びた魔刃を持つ。

 

 ムラサメブレード・改と似た武器だ。

 先ほどバーソロンが試していた〝ゲンシヤの柄巻〟と同じ系統だろう。


 二つ目の集団は、背中に太い腕が生えている三腕の魔族。

 こいつらの身なりもザ・傭兵。

 頭部には髪がない、ツルツルで輝きを放っている。

 眩しいから、あれは武器になるかもだ。


 武器は、魔槍と魔剣に、魔杖や柄巻から伸ばした魔刃を持つ。


 三つ目の集団は黒髪の魔族たち。

 二本の腕と足だから人族に近い。身なりは、ザ・戦国武者。

 魔銃と魔刀などを持つ。

 源左の方々と似ているが、サシィたちの同胞ではないはずだ。

 サシィからの血文字連絡には【古バーヴァイ族の集落跡】に軍を派遣するなんてことは聞いていない。

 俺たちからは、エラリエースと光魔騎士ファトラの加入に、魔裁縫の女神アメンディ様の救出とバミアルとキルトレイヤの復活眷属化とアチの<従者長>化を伝えたのみ。

 そのサシィからの血文字には、魔雷教のオオツキたちの長いバーヴァイ城駐留の件と【ケーゼンベルスの魔樹海】と【バーヴァイ城】と【源左サシィの槍斧ヶ丘】の上笠主導による警邏と貿易の件と、タチバナを泳がせている件と、エラリエースのブラッドクリスタルを触って試したいなどだったからな。だから、【レン・サキナガの峰閣砦】の連中かも知れない。


 皆も黒髪の日本人風魔族たちの存在を見て、同じことを思ったようで見てきた。


「ご主人様……あの集団は源左から離れた者か……【レン・サキナガの峰閣砦】に住まう黒髪の魔族たちでしょうか」

「あぁ、俺もそう考えていた」

「では、味方になる可能性もある勢力が、黒髪の?」

「一応、そうなる。皆も、下で戦うことなったら、そう考えて動いてくれ」

「「「はい」」」

「了解!」

「「「承知!」」」

 

 返事をしてくれたヘルメ、グィヴァ、ヴィーネ、キサラ、バーソロン、エヴァたちとアイコンタクト。

 皆、微かに頷いていた。

 

 イモリザは頭部を傾げていたが、大丈夫だろう。

 その三つ目の黒髪の集団は見守る方針で、次は……。

 

 四つ目は魔獣の集団。

 魔獣は、相棒の黒虎や銀灰虎(メト)と似ている。

 かなり大きい肉食魔獣。

 

 その肉食魔獣は、岩場から出ている水棲動物っぽいモンスターを掘り出して食べているのもいた。

 食物連鎖のモンスター同士の争いもありそうだ。

 

 それら四つの勢力が互いに争う。

 

 魔族たちの目的は【古バーヴァイ族の集落跡】の岩の資源かな。

 岩石には、ブラックダイヤモンド、チタン、Cuの銅、ニッケル、タングステン、アルミニウムなどが含まれていたりして、岩に付着している苔と繁っているシダのような植物も資源になるのかな。穴から時々水棲動物っぽいモンスターが出て、魔族たちにも襲い掛かっているから、そのモンスターが資源になるのかも知れない。


「……陛下、枢密顧問官のト・カシダマが率いていた軍と衝突した際には、あの岩場や地中から出現するモンスターは居ました。しかし、あの四つの勢力はいなかった集団です」


 光魔騎士グラドの言葉に、


「了解した」


 と返事をすると、グラドは胸元に手を当て敬礼してくれた。

 ペミュラスに視線を向ける。

 スケルトンタンク風の頭部の中にある四眼のような印が動いて、


「はい、グラド殿の言う通り。そして、我が捕らわれたところはあそこです。天の厚い岩を四つの細長い岩が支える地。天の厚い岩の真下は窪んでいますが、そこで我は百足高魔族ハイ・デアンホザーの部隊の一員として陣地を構えていた」


 と発言。

 胸から歩脚を数本伸ばし、差す。

 差したところは岩だらけの古代の庵のような場所。


 底は窪地。

 四つの岩が支えている大きな屋根のような厚い岩は落ちそうで落ちていない。絶妙な『ロックバランシング』は芸術的だ。


 そして、古代遺跡に見える。


 日本の地名なら神秘的で有名な『天岩座神宮』と似ているかな。


「ほぅ」

「あの岩場は……魔神バーヴァイと魔神レンブラントの祭壇です」


 とバミアルとキルトレイヤが指摘した。


「おぉ……〝黒衣の王〟と〝炎幻の四腕〟の手掛かりが直ぐ傍にあったとは……」


 ペミュラスはスケルトンタンク風の頭部の中身に銀色の粒子を発生させていく。

 漆黒の液体に白銀の液体が混ざり合うブラウン運動のまま漆黒を白銀に染めていく。

 あの頭部の中身は不思議すぎる。


 コーヒーにミルクを混ざるようにも見えた。


 前にも思ったがペミュラスの頭部の中身には別宇宙があるように見える。

 中で小人たちが泳いでいたりする生活をしていたら面白い。

 


 

続きは明日かも。

HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1~20」発売中。

コミックス1巻~3巻発売中。

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― 新着の感想 ―
[一言] 頭部には髪がない、ツルツルで輝きを放っている。 眩しいから、あれは武器になるかもだ。 言ってやるなw ここも複数の集団の争い。〝黒衣の王〟や〝炎幻の四腕〟が狙いだと面倒ですな。 【レン・サ…
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