千二百四十二話 皆の活躍と翼を持つ蜥蜴モンスターとの戦い
飛行していると魔素の反応を斜め右上に得た。
〝列強魔軍地図〟を仕舞う。
空も魔裁縫の女神アメンディ様の支配領域だと思うが……。
魔界セブドラの高い高度はまた別のようだ。
近付いてくる魔素の数は数百。
続いて、掌握察を連続的に使用していると――。
左斜め上からも複数の魔素の反応を得た。此方も方角の敵か不明な飛翔体の数は最低でも数百規模か。
なんて場所だよ、魔界セブドラ。
セラの空も凄まじいが、魔界も魔界だな。
俺たちに飛来してくる速度は相棒よりも速い。
相対速度的に食いつかれるのは確実か――。
空中戦の準備を皆に、
「皆、左右前方から大量の魔素を察知した。戦いの準備を」
「閣下の索敵は早い!」
「「「「はい」」」」
「承知した!」
「分かりました~♪ ピュリンの出番かな~」
「敵か!」
イモリザの間の抜けた声とキスマリの言葉と共に右の空から現れたのは――。
甲状軟骨のような甲殻を有した軟体動物系統のモンスター。
イカとタコと似た部分もある。
甲状軟骨的な体か、甲殻にある穴から頭と胴だと推測される軟体が出ていた。
他の穴からも吸盤のついた複数の触腕がうねうねと動いていた。
それら触腕から魔法の浮き袋的なモノが大量に発生すると一気に直進。
触腕から発生させた魔法の浮き袋から凄まじい推力を得ているようだ。
完全に未知のクリーチャーだ。
左の空からは……。
蜥蜴っぽい頭部が二つと……。
背に赤い翼を生やして、分厚い胴体に……。
手足の長いモンスターが現れる。
造形は恐竜っぽい魔族か龍人か。
二つの手には魔槍と魔剣を持つ。
リザードマン的な魔族だが……あいつらも初見だ。
その左側の軍団規模の進行速度は遅い。
赤い翼は結構大きいから速度は速そうだが、そうでもないのか。
右側の甲状軟骨の体か、甲殻を持つモンスターのほうが速度は早いから優先的に倒すか。
すると、
「ひゅうれいや、謡や謡や、ささいな飛紙……」
キサラのハスキーボイスの<魔嘔>が始まる。
「飛魔式、ひゅうれいや……」
「ウォォォォォン――」
と、キサラの美しい魔声は魔皇獣咆ケーゼンベルスの太ましい声でかき消えた。
下から現れたケーゼンベルスは口を広げて、鋭い歯牙を見せている。
そのケーゼンベルスは凄まじい速度で上昇し――。
甲状軟骨の甲殻を持つ軟体動物のモンスターの群れへと派手に突入――。
ケーゼンベルスの体と衝突した甲状軟骨の甲殻を持つ軟体動物のモンスターは吹き飛ぶ。
潰れて爆発したモンスターもいた。
ケーゼンベルスは数体の甲状軟骨の甲殻を持つ軟体動物のモンスターを喰らったのか、巨大な氷でも噛み砕いているような音がケーゼンベルスから響いてきた。
更に、己の体に絡み付いてきた触腕を凝視。
身を捻りつつ口から吐いた銀色の炎で消し炭にしていた。
「『ウォォン! 我に触れられたことだけは、褒めてYAROUォ!!!』」
魔皇獣咆ケーゼンベルスの神意力を有した叫び声と念話が渋すぎる。
その力強い叫び声と念話が聞こえた刹那――。
周囲の甲状軟骨的な体を持つモンスターたちが一斉に爆発して散った。
と衝撃波にも見える攻撃を出した魔皇獣咆ケーゼンベルスだったが降下していく。
犬かきしているような姿は、可愛いが、少し情けなさがある。
飛翔はできるようでできないようだ。
まだ数が多い甲状軟骨の甲殻を体に有したイカとタコを融合させたような軟体動物系のモンスターたちは真下に消えた魔皇獣咆ケーゼンベルスを追う。
複数の触腕を魔皇獣咆ケーゼンベルスに伸ばしていく。
が、ケーゼンベルスには届かない。
そのケーゼンベルスは見えなくなった。
即座に甲状軟骨の甲殻を体に有したモンスター目掛け――。
――<光条の鎖槍>を五つ飛ばした。
複数の甲状軟骨的な体を持つモンスターたちを貫き溶かすように倒しまくる。
突き抜けた<光条の鎖槍>は遙か彼方に消えた。
<鎖>と《連氷蛇矢》に《凍刃乱網》を続けて放つ。
《氷命体鋼》は使っていないが、《《連氷蛇矢》は突き刺さるし、《凍刃乱網》を喰らった甲状軟骨的な体を持つモンスターはバラバラに切断できていた。
水系の魔法は普通に効く――。
甲状軟骨の甲殻を体に有したイカとタコを融合させたような軟体動物系のモンスターたちを次々に遠距離攻撃で倒していく。
「<使徒三位一体・第一の怪・解放>――」
イモリザからピュリンに変身していた。
「使者様、遠距離攻撃の支援はお任せを――」
「おう」
ピュリンは、相棒が用意した銃架に骨銃を乗せている。
アンチマテリアルライフル顔負けの大口径の骨銃だ。
そんな銃口から飛び出た弾丸の<光邪ノ大徹甲魔弾>が直進し、甲状軟骨的な体を持つモンスターを捉えると爆発。普通に強い。
「にゃァ」
「わわ、メトちゃんくすぐったい~」
銀灰虎が、うつぶせスタイルで射撃をしていたピュリンの体に乗っていた。
「銀灰虎、気持ちは分かるが、今はじゃれるのはナシ」
「にゃ~」
すると、
「ウォォォン!!」
と叫び声が下から響いてきた。
【バーヴァイ平原】を踏みしめて跳躍してきただろう魔皇獣咆ケーゼンベルスだ。
姿は巨大な黒狼のケーゼンベルスだが、上昇気流に乗った黒竜を彷彿とさせた。
ケーゼンベルスは、甲状軟骨のような甲殻を有した軟体動物系統のモンスターの数体を喰らう――。
お陰で、甲状軟骨のような甲殻を有した軟体動物系統のモンスターの数はかなり減った。
「ンン」
喉声を鳴らしたビッグな黒猫バージョンの相棒は触手手綱越しに――。
『てき』、『たおす』、『あかいにくだま』、『あおいにくだま』、『あかめだま』、『にゅるばば』、『うまい?』、『たべる』。
と気持ちを寄越してきた。魔法の遠距離攻撃を中断し、
「見た目的に焼いて食べたら美味いかもだからな」
「にゃ~」
「だが、今は飛行に集中してくれ。左右の敵は、俺と皆に任せてくれるとありがたい」
「にゃ~」
ビッグな黒猫ロロディーヌは頷く。
頭部を少し傾けたから俺たちも前後に揺れた。
そのまま片膝で、相棒の頭部を優しく触るイメージでつける。
姿勢を下げて、
「ありがとう、ロロ!」
と、礼を言いながら頭部の黒い毛と地肌を撫でてあげた。
真下から、凄まじいゴロゴロ音が響いてくる――。
少し揺れるが、構わない。
ロロさんのエンジンは凄い。心が温まった。
「ンン、にゃ~」
俺の心の声に返事をしている可愛いビッグな黒猫。
立ち上がりつつ――。
《氷槍》を繰り出しているヘルメを見て、
「――閣下、右側の敵はまだ多いです」
ヘルメの両腕の手は氷の繭のようなモノに変化している。
連続的に《氷槍》を繰り出していく。
「おう。その調子で皆と迎撃を頼む」
「はい!」
「わたしも出ます――エトアはヘルメ様の背後に移動してください」
「はい!」
俺たちに比べたら非戦闘に近いエトアだからな。
ヘルメもそれは重に承知しているのか、エトアから離れていない。銀灰虎と光魔騎士グラドはエトアの前に移動していた。
そして、グィヴァの稲妻の魔力が迸っている魔法の衣が渋すぎる。
稲妻の剣の遠距離攻撃を雨霰と繰り出していた。
紫電のような稲妻の剣は一瞬で甲状軟骨のような甲殻を突き抜ける。
軟体動物系統のモンスターを次々と撃ち落としていく。
軟体動物らしいイカ&タコの部分は融解させて、爆発させていた。
あれは<雷雨剣>だろう。
ヴィーネの翡翠の蛇弓の光線の矢も見える。
そのヴィーネを見ると、
「――ご主人様、囲まれると拙いですね」
「あぁ、左側が距離を詰めてきたら俺がやる」
「「はい」」
「わたしたちは右側に注力しましょう――」
ヴィーネとキサラとピュリンとフィナプルスが、そう言いながら遠距離攻撃を繰り出す。
フィナプルスは黄金のレイピアから、ナイフのような形の遠距離攻撃を繰り出していた。
そのフィナプルスが、
「はい! ピュリンの骨銃の威力は凄まじい!」
「ふふ♪」
「了解です。皆に紙人形を付けたので、近付いてくるモンスターを処断しましょう」
キサラはダモアヌンの魔槍と魔槍斗宿ラキースを出している。
「キサラ、〝青炎槍カラカン〟を渡しておく――」
「はい」
とキサラは〝青炎槍カラカン〟を受け取った。
バーソロンとビュシエは、
「軟体動物系のモンスターを見ると、キュイズナーを思い出します――」
「<血道・霊動刃>――! あ、キュイズナーですか、たしかに一部のみは似ている! 獄界ゴドローンの生命体!」
と発言しつつ遠距離攻撃を繰り出していた。
そのバーソロンとビュシエは相棒の頭部から右に少し離れて飛翔している。
「ブブゥ~」
馬魔獣ベイルの声が、相棒の黒毛に包まれている方向から響く。
一方エヴァとキッカは俺の近く。
「宗主、待機しつつ臨機応変に戦います」
「ん、がんばる」
頷いた。キッカは鞘に入った魔剣・月華忌憚を掲げている。
エヴァはサージロンの球を浮かせていた。
魔式・九連環も使うつもりか浮かせている。
皆に、
「先ほども言ったが、俺は、左側の頭が二つのモンスターを狙うが、その前に――」
古バーヴァイ族の四腕戦士キルトレイヤと古バーヴァイ族四腕騎士バミアルに視線を向けた。
「飛翔は無理か」
「はい、しかし神獣様の上で跳ぶようにして戦えば、近くならば戦えます」
「同じく、魔街異獣バーリィが居れば空中戦もできたが」
魔街異獣バーリィ?
大厖魔街異獣ボベルファと似た系統?
空中移動が可能な簡易的な乗り物の街?
分からないが、
「我は飛翔できる! ビロユアン・ラソルダッカから飛行術の魔法書はもらって読んだぞ! そして、リックン、ラン、トマーにも飛行術の魔法書を読ませようとしたが、逃げられてしまったことが悔やまれる」
「……了解。では、キルトレイヤとバミアルとキスマリは、キッカたちと同じく皆を守るためのフォローを頼む」
「承知! 左右の敵が近付いてきたら、魔剣アケナドと魔剣スクルドで倒そう」
頷いてから、皆に、
「では、俺は、左の頭部が二つに魔槍と魔剣を扱う魔族たちに向かう。皆は相棒と連携しつつ臨機応変に戦ってくれ」
「「「「「はい!」」」」」
皆の返事を聞きながら<経脈自在>を意識、発動させる。
肩の竜頭装甲を意識しつつ〝古の光闇武行師デファイアルの仮面〟を装備。
右手に茨の凍迅魔槍ハヴァギイを召喚。
左手に神槍ガンジスを召喚――。
ほぼ同時に両手で<握吸>を実行し、柄の握りを強めた。
そして<黒呪強瞑>を発動――。
<闘気玄装>も発動――。
そのまま<武行氣>を発動させる。
相棒の頭髪を触るように低空をスムーズに駆けた。
跳躍したように飛翔すると、俺の首に付着していた触手手綱が自動的に外れた。
「ンン」
背後で相棒の少し寂しげな声が響く。
<神獣止水・翔>の感覚共有は崩れたが、構わず、飛翔を続けた。
――ヴィーネが放った光線の矢の軌道が美しい。
<血道第三・開門>――。
<血液加速>を発動。
更に足下に<生活魔法>の水を撒きながら<水月血闘法>を発動した。
※水月血闘法※
※独自闘気霊装:開祖※
※光魔ルシヴァル独自の闘気霊装に分類※
※<脳魔脊髄革命>と<魔雄ノ飛動>と魔技三種に<超脳・朧水月>、<水神の呼び声>、<月狼ノ刻印者>が必須※
※霊水体水鴉と双月神、神狼、水神、が祝福する場だからこそ<水月血闘法>を獲得できた※
※血を活かした<魔闘術>系技術の闘気霊装が<水月血闘法>※
蜥蜴っぽい頭部を二つ持つモンスターの先頭集団に近付くと同時に<凍迅>を発動――。
「ギュバァ!?」
先頭の蜥蜴モンスターは翼を動かし反応するが遅い。
<凍迅>効果をもろに受けた蜥蜴モンスターの数体の体が凍り付いていく。
赤い翼もカチンコチンと凍り付く、落下していく蜥蜴モンスターもいた。
構わず、先頭にいる蜥蜴モンスターに向け<水雅・魔連穿>を実行――。
右手の茨の凍迅魔槍ハヴァギイと左手の神槍ガンジスで連続的に蜥蜴モンスターを穿った。
体が凍り付いていた蜥蜴モンスターは一瞬で散り散りとなる。
続けて前進――。
残りの蜥蜴モンスターたちは<魔闘術>系統を強めて<凍迅>を防いでいた。
更に、俺の速度を超えてくる。
複数の蜥蜴モンスターが「「「ギュボガ!!!」」」と叫びつつ前進し――。
魔槍を突き出してきた。
その攻撃を見ながら<魔闘術の仙極>を発動――。
素直に退いた。
再び、退きながら<龍神・魔力纏>を発動。
複数の蜥蜴モンスターの動きが鈍くなったように見える。
が、まだまだ<魔闘術>系統は覚えている――。
――<滔天仙正理大綱>を意識、発動。
――<滔天神働術>を意識、発動。
※滔天仙流系統:恒久神仙技<神仙召喚>に分類※
※戦神イシュルルの加護と<水神の呼び声>の水神アクレシスの強い加護と高水準の霊纏技術系統と<召喚闘法>と<魔力纏>技術系統と<仙魔奇道の心得>が必須※
※水属性系統のスキルと水に纏わるモノが総体的に急上昇し、水場の環境で戦闘能力が高まり、功能の変化を齎す※
※酒を飲むと戦闘能力が向上※
体が新たなバイブレーションを得たように加速する。
蜥蜴モンスターは速度を加速させるが、遅い。
――<滔天魔経>を意識し発動。
※滔天魔経※
※滔天仙流:開祖※
※血仙格闘技術系統※
※玄智武王院流※
※白蛇竜武王鬼流※
※仙王流独自格闘術系統※
※仙王流独自<仙魔術>系統※
※三叉魔神経網系統※
※怪夜王流技術系統※
※魔人格闘術技術系統※
※悪式格闘術技術系統※
※邪神独自格闘術技術系統※
※魔界セブドラ実戦幾千技法系統※
※<水の神使>と<水神の呼び声>と<血脈冥想>と<滔天仙正理大綱>と<性命双修>と<闘気玄装>と<経脈自在>と<魔人武術の心得>が必須※
※血仙人の証しの<光魔血仙経>の影響を得た故の<滔天魔経>の獲得、滔天仙流系統:恒久神仙技<神仙霊纏>の恒久スキル<滔天仙正理大綱>の質が上昇し、魔力活力源の底上げと上限が上昇した。滔々と流れる大河を心に宿した存在※
※水場での戦いが極めて有利に進む※
※<滔天仙正理大綱>や<滔天神働術>と同じく滔天仙人の証し※
※<霊仙酒槍術>などの酒の功能がより上昇した※
――<水神の呼び声>を意識、発動――。
周囲に蒸発したような水氣が膨れ上がった。
水神アクレシス様の気配が強まる。
<仙魔奇道の心得>と<霊魔・開目>を意識し発動――。
<煌魔葉舞>も意識し発動。
――<光魔血仙経>を意識して発動。
――<闘鮫霊功>を実行。
<武行氣>を強めて<闇透纏視>を実行し、蜥蜴モンスターを凝視。
体の魔素が集約し、分散している根幹を幾つか発見――。
右手の茨の凍迅魔槍ハヴァギイを前方に出す素振りから――。
蜥蜴モンスターに目掛け<雷飛>のスキルを繰り出した。
そして、左手に神槍ガンジスで<魔皇・無閃>を発動。
足下が爆ぜた感覚の後――。
一瞬で蜥蜴モンスターたちを駆け抜けた。
神槍ガンジスの穂先の双月刃が数十とした蜥蜴モンスターの胴体と赤い翼を両断――。
蜥蜴モンスターが持っていた魔剣と魔槍は弾け飛ぶ。
他にもいる蜥蜴モンスター目掛け――。
茨の凍迅魔槍ハヴァギイを振るう。
<魔雷ノ風閃>を発動。
茨の凍迅魔槍ハヴァギイから紫電と風が吹き荒れる。
蜥蜴モンスターの数体が一瞬で切断されながら蒸発して消えた。
完全に勢いが止まった蜥蜴モンスターの集団に向け――。
<始まりの夕闇>を実行――。
闇の心象異次元世界が魔界セブドラの空を侵食するかの如く、蜥蜴モンスターの集団を漆黒の空間に閉じ込めた刹那、<闇の次元血鎖>を発動。
闇の世界から紅蓮の<闇の次元血鎖>の群れが出現。
<始まりの夕闇>ごと紅蓮の<闇の次元血鎖>がすべての蜥蜴モンスターを仕留めた。
良し、倒しきった。
振り返ると相棒たちの戦いも終わっていた。
すると、血文字が、
『――【メイジナの大街】のデン・マッハやゲンナイ・ヒラガの大魔商と会合したぜ。デン・マッハが個人的に雇っていた護衛の魔傭兵マクザルが、アムシャビスの光玉と荒神反魂香の情報を持っていた』
と、アドゥムブラリの血文字が浮かぶ。
『――幼なじみの復活に必要なアイテムは案外早く入手可能かな』
『あぁ、案外な。アムシャビスの光玉は俺の知り得ている情報と合うから、持っている奴の存在が確定的となった。荒神反魂香も、持っているかも知れない存在の名を聞いた』
『ほぉ、アムシャビスの光玉と荒神反魂香はだれが持っている?』
続きは明日。
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