表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
槍使いと、黒猫。  作者: 健康


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1235/2032

千二百三十四話 綺麗なお姉さん的な魔裁縫の女神アメンディ様

 皆と、バーヴァイ城の地下回廊を来た道を辿るように歩いた。

 足下は硬い岩盤のような床が続いている。

 遺構のような地下回廊は古代の歴史が詰まっている。

 天井と横壁には像が彫られてあるが、魔界王子テーバロンテや百足魔族デアンホザーたちの造形が殆どだ。そして、地下回廊の左右には拱式構造の門がある。

 その門の天を支える横架材は礼拝堂の門にあるような造りにも見えた。

 左右の門から先には、地下監獄がありそう。

 地下礼拝堂に貯蔵庫のような地下部屋もあるかもな。

 

 それらを見ながら肩の竜頭装甲(ハルホンク)を意識。


「ングゥゥィィ」

 

 霊湖水晶の外套を消して、牛白熊を活かした衣装に変身を行う。

 

 ぴゅぅと冷たい風を体に感じたが別段いやな感じはしない。

 大ホールからの向かい風か、天井には換気用の管路はある。

 敵が、ここを攻略しようとした場合、あの管路の中を潜ってバーヴァイの内部に侵入とかありそうだ。

 そして、ダンボールを被ってやり過ごすとか、あるかも知れない。

 

「ンン――」


 黒豹(ロロ)は黒猫の姿に戻ると、右肩に乗ってきた。


「ングゥゥィィ」


 肩の竜頭装甲(ハルホンク)を踏みつける黒猫(ロロ)さんだ。

 〝アメロロの猫魔服〟は縮んで子猫用のマント的な衣装に変化していた。

 可愛すぎる。

 銀灰虎(メト)も子猫の姿に戻ってフィナプルスの肩に乗っていた。

 先ほどは黒豹(ロロ)も交ざって、翼の毛繕いをしていたが、フィナプルスのことが気に入ったのかな。

 そして、背後の地下回廊を戻れば、冥界シャロアルへと続く太い柱と柱の門がある地下行きの階段があり、そこを無視して地下回廊を進めば、俺たちが盛大に陰陽和合を楽しんだ魔塔にも通じている。が、そこには戻らない。

 大ホールに向かう階段が見えてきた。

 足早に魔裁縫の女神アメンディ様が駆け上がる。

 階段をステップするように上っていく仕種は綺麗な女性にしか見えない。

 が、その背中から迸っていく虹色の魔力量が並ではない。

 魔界の女神様だとよく分かる量だ。

 が、魔裁縫の女神アメンディ様は魔力量の放出を止めた。

 更に、己の内と外の<魔闘術>系統を調整したのか魔力が目立たなくなる。


「ンン、にゃ~」

「ん、メトちゃんが先に行っちゃった。シュウヤ、戻ろう」

「おう」


 とエヴァに片手を引っ張られて、俺たちも階段を上がる。

 普通にバーヴァイ城の一階にある大ホールに戻ってきた。

 

 思えば、ここで駐留していた蜘蛛魔族ベサンと百足魔族デアンホザーの部隊と激戦を繰り広げたんだよな。<魔蜘蛛煉獄王の楔>を持つ俺は称号のセンビカンセスの蜘蛛王位継承権とラメラカンセスの蜘蛛王位継承権を得ているし、八蜘蛛王(ヤグーライオガ)の子孫蜘蛛娘アキがいるから、蜘蛛魔族ベサンの一族とも仲良くできるはずだ。

 そして、バーソロンから『暗黒時代、真夜時代となれば、信仰していた蜘蛛王ライオガと関係が深いと聞く蜘蛛女王ベサンが復活するという伝説が【蜘蛛魔族ベサンの魔塔】にあると噂があります』と伝説は聞いている。

 だから、原初ガラヴェロンテとキュビュルロンテとの会合が上手くいき次第、蜘蛛魔族ベサンの住み処に移動して、蜘蛛女王ベサンが復活していたら話をしたいところだ。

 


 デラバイン族の兵士たちはテキパキと仕事中。

 将校のキョウカとターチベルは机仕事で書類を纏めていた。

 山積みの書類を見ると、改めてバーソロンの仕事量は大変そうだと思えてきた。

 そして、内政はメルとペレランドラに任せているように今後もバーソロンに一任だ。


 デン、ドサチ、ベイアと蜘蛛娘アキと魔獣アモパムとソフィーもいた。

 デラバイン族の兵士の一部はソフィー付きの廻附隊かな?

 籠を持つ魔鳥が傍を飛んでいた。

 デラバイン族の兵士は部署ごとに制服が微妙に異なるようだ。

 そして、極大魔石を載せている空飛ぶ絨毯もいる。この間と同じか。

 空飛ぶ絨毯は極大魔石が入った箱を載せたまま外に向かった。

 更に重そうな極大魔石が入った箱を載せた荷車も移動を始める。

 荷車を運ぶ魔獣はポポブムと似ていた。


 平和になれば平和になったぶん忙しくなるか。


 魔裁縫の女神アメンディ様は、そんな皆の様子の見学を続ける。

 デラバイン族の兵士の傍を歩いているが、魔裁縫の女神アメンディ様とバレていない。

 そのアメンディ様は、デラバイン族の兵たちに声を掛けて挨拶していた。

 

 デラバイン族の兵士たちは、


「だれだ?」

「あれ? 角はわたしたちと少し似ているけど……」

「大ホールに客が来るとは聞いていないが」

「はい、聞いていません」

「魔獣の魔商人か?」

「いや、それでも一番門と二番門の門所長からの連絡があるまで、そこで待機するのがルール」

「あぁ、そして、魔力を結構内包している衣服は見たことがないが……」

「ふふ、わたしはシュウヤさんと知り合いです。皆さん気にせずお仕事を続けてください」

「「え!」」

「陛下と知り合いとは、すみませんでした」

「そうでしたか!」

「気にせず――」


 気さくな魔裁縫の女神アメンディ様は笑顔を振りまくように歩く。

 デラバイン族の兵士と楽しそうに会話を続けていくが一部の兵士は動揺していた。


 そして、大ホールには……【グラナダの道】のミューラー隊長たちはいない。

 ミジャイとロズコたち魔傭兵ラジャガ戦団もいない。

 【バードイン迷宮】で救出した刑務所組と体がつぎはぎだらけの救出組も当然だが、いない。

 

 すると、魔裁縫の女神アメンディ様に対応していた将校と、他の机仕事をしていた将校の一部とソフィーと魔獣アモパムのちゅぃと蜘蛛娘アキが、俺たちに気付いて、


「「「「陛下!」」」」

「ちゅぃ!」

「冥界シャロアルを踏破なさった♪」

「お帰りなさいませ、陛下とバーソロン様!」

「「シュウヤ様たちのお帰りだ!」」

「「「「――お帰りなさいませ!」」」」


 と、一斉に声をかけてくれた。

 肩にいた黒猫(ロロ)は飛び降りて皆の前にトコトコと移動していく。


「ンン、にゃ~」

「にゃァ~」


 銀灰猫(メト)も続いた。

 他のデラバイン族の兵士たちも、その大きな声と俺たちの存在に気付き、


「エトアにバスラートとモイロもいる!」


 と言っては、手作業や兵士同士の会話を止めて近付いてきた。

 城代のような存在のアチは、他に用事でもあるのか、ここにはいない。

 皆に向け、


「皆、ただいまだ。冥界シャロアルへの冒険は一先ず終了だ。魔裁縫の女神アメンディ様は救出できた」

「「「「「「おぉぉぉ」」」」」」


 大ホールに兵士たちの驚く声が谺する。

 運搬に携わっていたデラバイン族の兵士たちも作業を止めて此方側に寄ってきていた。

 将校の一人、ベイアが、


「魔裁縫の女神アメンディ様の救出おめでとうございます。その重要な女神様はどこに!」


 と語る。デラバイン族の兵士たちも、傍にいる魔裁縫の女神アメンディ様に気付いていないのか、注目が集まった。そして、注目されたのは、古バーヴァイ族の四腕戦士キルトレイヤと四腕騎士バミアルのみ。


 バーソロンは一人、


『そこにアメンディ様は、おられるだろうが!』

 

 と上官らしく顔だけで、叱っていた。

 そんな可愛げのある反応を間近で見ているフィナプルス、エトア、キッカ、ビュシエ、ヴィーネ、キサラが、


「「「「「「ふふ」」」」」」


 と笑っていた。

 エヴァは「ん」と笑顔を見せてはビュシエも「分からないものですね」と語り、白い歯を見せるような笑顔となって皆で頷き合う。

 

 魔裁縫の女神アメンディ様を、そんな皆のことを愛しげに眺めている。

 アメンディ様は、ベイアのことは怒っていない。優しそうな表情を浮かべていた。


 アメンディ様は俺に視線を向ける。

 真面目な顔色だ。その顔色から、


『皆への説明はシュウヤに任せます』


 と言ったような気がした。

 頷いて、


「ベイアの横斜めにいる綺麗なお姉さん的な女性が、魔裁縫の女神アメンディ様だ」

「「「「えぇ!」」」」

続きは今週を予定。

HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。」1~20巻発売中。

コミックス1巻~3巻発売中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 蜘蛛女王ベサンが復活していたら話をしたいところだ。 アキと協力してシュウヤが復活を手助けしたりしてw 「ベイアの横斜めにいる綺麗なお姉さん的な女性が、魔裁縫の女神アメンディ様だ」 「「「「…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ