表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
槍使いと、黒猫。  作者: 健康


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1232/2032

千二百三十一話 古魔将アギュシュタンと外法シャルードゥ

 〝古魔将アギュシュタンの髑髏指環〟は古魔将アギュシュタンに変身しながら――。


 宙空から地面に降り立った。

 象牙色と白絹のような髪は結構美しい。

 双眸がないアギュシュタンの体格は、古バーヴァイ族バミアルと似ている。

 太い二本の腕と二本の足。右腕だけから濃厚な<血魔力>を発していた。

 

 あれが〝ヴェルマラフノ右血腕〟か?

 

『お、イモリザではなく、ここで〝目隠し鬼〟実戦運用か』

『冥界シャロアルの外法シャルードゥがここに来る予感があるんだろう』

『弟子は、この領域、冥界シャロアルの液体的な外と内の領域が他とは異なることを、もうかなり熟知している』

『神か、諸侯クラスか、なら、わたしを出してもいいと思う』

『……シュリよりも、妾と妾の<女帝衝城>を、つこうてほしい……』

『レプイレスは最近血に飢えているか』


 と念話を寄越す魔軍夜行ノ槍業の師匠たち。

 古魔将アギュシュタンは魔大刀シスーを振るいながら<闘鮫霊功>と似た<魔闘術>系統を実行したまま周囲を見渡す。

 一瞬、魔大刀シスーから地母神の幻影が見えた。

 緑色の魔力を有した魔眼で俺を凝視――地母神の美人さんだが、俺にアピール?

 が消えた。


 俺は<神譚ノ血刀式>と<地母神キシュヌの血大刀>の恒久スキルと、<血印・血魔大刀キシュヌ>と<血印・零式>のスキルを獲得しているから、使用すれば、魔大刀シスーと共に地母神キシュヌが出現するんだろうか。


 古魔将アギュシュタンは、


「ふむ。主、敵は四眼四腕の魔族の見た目のモンスターですな」

「そうなる」

「バミアルとキルトレイヤの迅速な使役は見事でございました」

「魔裁縫の女神アメンディ様のお陰だ」

「――そのようですな。魔裁縫の女神アメンディ様! 我は、主の部下! 使役を受けている古魔将アギュシュタンと申しまする!」


 ヴィーネとビュシエのほうにいる魔裁縫の女神アメンディ様は手を上げ、


「あ、はい~。よろしくお願いします~」


 と答えていた。アギュシュタンに、


「髑髏指輪状態でも外の様子は理解しているのか」

「はい、ある程度分かりまする」


 すると、魔素の反応――。

 直ぐに<闇透纏視>で、その反応を凝視。

 四眼四腕の片足の一部は、分離し逃げていたか。

 離れた地面から液体が浮き上がり歪なモンスターを形成し始める。

 魔素が増えている?

 四眼四腕の魔族の魂を利用していた大本か?

 リーダー格の液体状のモンスターってことか。

 液体状のモンスターの造形は、もう四眼四腕の魔族の片足ではない。

 

 形容し難い真核生物を巨大化したような液体状のモンスターとなっていた。


 無数の触手のようなモノをゆらゆらと揺らしている。

 透けた中身は少しピンク色。

 魚の内臓のようなモノがウニョウニョとうねっている。

 <闇透纏視>のお陰で、アメーバの内臓を巡る魔素、魔力の流れがよく分かった。

 魔察眼でも魔力の流れは分かるが、やはり、詳細具合が<闇透纏視>は異なる。

 勿論、液体状のモンスターは、アメーバ的、人型に多い三陰三陽の縦横に走る十二経絡とは大きく異なる。が、それっぽい要所……魔力溜り、魔点穴の場所は分かる。

 あそこをぶった切れば、一発で昇天は確実。

 外側の造形の一部は鐘形の曙躑躅(あけぼのつづじ)っぽい。

 まさに未知との遭遇だ。物体Xと遭遇した気分だ。


 それらモンスターを見た古魔将アギュシュタンは


「ふむ、液体状のモンスター。四眼四腕の魔族の体を盾に逃げていたようですな」

「あぁ、外法シャルードゥも現れるかもだ。皆も交ざりたそうにしているが、先にやるぞアギュシュタン」

「承知――」


 古魔将アギュシュタンは迅速に前に出た。

 俺は左を行く。

 古魔将アギュシュタンは魔大刀シスーを振るい血の一閃を繰り出した。

 アメーバのようなモンスターを両断し溶かすように倒す。

 

 古魔将アギュシュタンの弧線を描く剣術に魅了されるが――。

 青炎槍カラカンに魔力を込めた。

 俺の斜め前から一緒に前傾姿勢で前進していた<光魔・血霊衛士>の一体を消す。

 と同時に<武行氣>を強めて浮遊したまま前方へと加速――。

 瞬時に、液体状のモンスターと間合いを詰めた。

 腰を捻り、右腕ごと槍と化したような勢いで<青炎・穿牙>を発動。

 青炎槍カラカンを突き出す。青い炎を発している穂先が液体状のモンスターを豪快に穿った。液体は爆発したようにドッと音を立てて派手に散った。蒸発音が響く。

 

 ほぼ同時に――。

 

 青炎槍カラカンの柄から噴出していた青い炎が右手と右腕に絡んで火傷を負う。

 <四神相応>の<青龍ノ纏>的な動きだが、まだ慣れない。

 火傷は、光魔ルシヴァルらしくシュゥと蒸発音を立てて一瞬で治った。

 

 さて、他にも逃げた液体状のモンスターはいる。

 その群れを狙う――。

 飛び込むように液体状のモンスターたちとの間合いを潰して直ぐに<双豪閃>。

 独楽の如く体が旋回――。

 青炎槍カラカンと茨の凍迅魔槍ハヴァギイの穂先が液体状のモンスターを殴るように捉え斬る。

 液体状だから、手応えはあまりない、移り変わる視界に、次のターゲットを視認。

 液体状のモンスター目掛け――跳躍。

 宙空から茨の凍迅魔槍ハヴァギイを斜め下に振るう<闇雷・飛閃>――。

 

 ※闇雷・飛閃※

 ※闇雷槍武術系統:上位薙ぎ払い※

 ※雷炎槍流系統:亜種薙ぎ払い※

 ※闇神アーディンが愛用する※

 ※闇神アーディンから直に学び、このスキルを獲得し生きている者は他にいない※

 ※闇雷精霊グィヴァと連動※

 ※<雷飛>と合わせると魔力刃が穂先の表面に生まれる※

 ※迅速に狙った標的を闇雷槍武術流技術系統で斬りながら直進し、二度斬る※

 ※一槍に通じた槍全般の高度な技術が必須※


 液体状のモンスターを斜めに輪切りにした――。


 液体は崩れて蒸発して消える。

 

 着地際にも、ややタイミングをズラした青炎槍カラカンの<龍豪閃>を繰り出した。

 一瞬で、数体の液体状のモンスターを仕留めた。


「お見事です! 残りは左側のみ!」


 振り向くとヘルメの言葉通り――。

 四腕戦士キルトレイヤと四腕騎士バミアルが左側の四眼四腕の魔族を倒しきる。

 液体状の片足をすべて潰すように倒しまくっている。

 <光魔・血霊衛士>も血の棍で液体状の片足だけを正確に<血穿>で穿ち倒した。


 まだ左側に多いが、バミアルとキルトレイヤの敵ではないか。

 一体だけ残っていた血霊衛士を消す。

 

 すると、前方の液体世界が漆黒に変化したところから、銀色と漆黒色の冠を被る頭部が大きい大柄のモンスターが出現した。

 やや黒色が強い液体状の外套を羽織る。腕の数は二本だけ。

 両手に抜き身の銀色の刃を握っていた。


「『……我のヘイビラスたちを、こうも簡単に潰してくるとは……魔裁縫の女神アメンディの解放と……古バーヴァイ族の復活といい……お前たち何者だ』」

「俺たちは光魔ルシヴァル。俺の名はシュウヤ。で、お前は外法シャルードゥか?」

「『その通り、シュウヤか――』」


 銀色の刃を<投擲>してきた。

 即座に<握吸>と<握式・吸脱着>を実行――。


 更に青炎槍カラカンへと魔力を盛大に込めた瞬間――。

 外法シャルードゥ目掛け青炎槍を<投擲>――。


 銀色の刃と衝突した青炎槍カラカンは直進し外法シャルードゥに向かう。


「『なっ』」

 

 外法シャルードゥは両手から伸ばした銀色の刃をクロスさせる。

 青炎槍カラカンの<投擲>を防いでいた。


 直ぐに<握吸>を実行して青炎槍カラカンを引き寄せる。


 刹那、外法シャルードゥの横に古魔将アギュシュタンが出現。


 魔大刀シスーを振るう。

 外法シャルードゥは後退。

 が、間に合わず、液体状の外套ごと胴体の一部を斬った。


 <武行氣>と<闘気玄装>を強めて前進――。

続きは今週を予定。


HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。」1巻~20巻発売中。

コミックス1巻~3巻発売中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「髑髏指輪状態でも外の様子は理解しているのか」「はい、ある程度分かりまする」 指輪の状態でも生物的やな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ