千二百三十話 片足がイソギンチャクのモンスターとの戦い
キルトレイヤとバミアルの動きを見た黒猫と銀灰虎は興奮しているのか鼻息が荒い。大きい黒豹だが、アメロロの猫魔服が可愛くて面白い。
「にゃごぉ」
「にゃァ~」
と二匹は気合いが入った唸り声を発して、前足から爪を出し入れ始めた。
戦いたいようだ。
キルトレイヤとバミアルは「ウゴアァァ」咆哮を発し、魔剣と四腕に全身を活かすような剣術と体術を披露し始めた。
先ほどから休まず戦い続けて、出現が速まっている四眼四腕の魔族を倒しまくる。
が、液体状の片足の攻撃を時々キルトレイヤとバミアルは喰らっていた。
ウネウネと動き回る無数の触手と煙の攻撃は、予想し難いよな。
その液体状の片足だが、潰れて消えるタイプと、ダイラタンシー流体タイプの硬軟タイプがいるようだ。
キルトレイヤとバミアルの魔剣の斬撃を浴びても再生したり衝撃を吸収したりと攻撃を防いでいる四眼四腕の魔族もいる。
が、キルトレイヤとバミアルの扱う魔剣も特別か。
魔剣から銀色の光が強まると、一気に切れ味が増していた。
液体状の片足を持つ四眼四腕の魔族を何重にも斬り刻む。
キルトレイヤは、爪先半回転を行うように体を横回転させると、踵で、相手の軸足を蹴るような下段回し蹴りを、四眼四腕の魔族の片方の足に衝突させて転倒させていた。
直ぐに転倒させた四眼四腕の魔族の頭部へと魔剣を振り下ろし、頭部を潰すように倒している。
外法シャルードゥが来ても二人だけでも倒せそうだな。
だが、あの二人がいても、負けたから、巨大な脊柱だった訳で……。
と、改めて、外法シャルードゥが急に現れるかも知れないと……周囲を見回す――。
背後と左右からは魔素の反応はない。複眼の群れもナシ。
滑り感のある液体的な世界の冥界シャロアルは変わらないが、空は、薄い銀色と紫色と橙色の雲のようなモノが真上をゆっくり流れている。
空と言えるのか微妙だが、そこから急襲もありえるんだよな。
〝吸霊の蠱祖〟の名前がここで出るとは思わなかったが、魂を扱える存在が外法シャルードゥ……足下から出現とかあるのか?
今は大丈夫、地面は灰色で硬い。
また左右を見る。
そして、複眼の能力を持つ冥界シャロアルの神クラスの存在もいる。
今はいないようだが、魔裁縫の女神アメンディ様の転移は対応できなかった?
そして、ビュシエたちが守っていた背後からは、もう四眼四腕の魔族で片足が液体状のモンスターは現れない。
そこでエトアとバスラートとモイロを確認。
バスラートとモイロは魔鋼族ベルマラン。
鋼の兜で頭部は覆われているから表情の確認はできないが態度から余裕さがあると分かる。その余裕さは、俺たちのことを信頼してくれている証しだろう。
そのバスラートは〝魔砂状図〟のアイテムを足下に使用していた。
冥界シャロアルの広い場所の一部が簡易的な地図として足下に出現している。
モイロは<魔鋼測候>のスキルを時々使用しているのかな。
羊皮紙とは違う紙のようなモノに紙に文字を書いている。
すると、ヴィーネとキサラが、
「バーソロン、わたしたちも守りの位置に付きます」
と発言すると動く。ヘルメとグィヴァも
「わたしたちも守りを意識しましょう」
「はい」
と左右に移動した。
バーソロンは頷いて、
「はい、精霊様がいるので安心できますが、わたしも守りを――」
と両手から出している炎の紐を二人の跳躍、浮遊する動きに合わせて消していた。
翡翠の蛇弓を持つヴィーネとダモアヌンの魔槍を持つキサラはバスラートとモイロとエトアの背後を守る位置に付く。
黒豹と銀灰虎が前に移動したこともあるかな。
バーソロンは<ルクスの炎紐>を再び両手から出して操作。
宙空に炎の紐を泳がせていく。
いつでも炎の紐で迎撃が可能か。
<鎖の因子>から出る<鎖>と同じように扱える。
魔導車椅子に乗るエヴァはサージロンの球を出していたが消して俺の右横に来た。
<血道・石棺砦>の一部を消したビュシエも左横に来る。
ビュシエは<血魔力>に溢れたゴシック系の戦闘装束を着ている。
「ん、前方に敵が湧くことが増えた」
「それでも殲滅速度が上昇している。バミアルとキルトレイヤが如何に強いかが分かります」
エヴァとビュシエの話に頷いて、
「あぁ、<血魔力>を得ているし、頼もしい眷属を得た」
「ん、水神ノ血封書を眷属化に利用できたのは凄いと思う」
そのエヴァの言葉に前にいる皆と背後のヴィーネたちも注目。
ビュシエは、
「はい、わたしの復活といい、素晴らしいアイテムが水神ノ血封書です。そして、宗主のシュウヤ様だから扱える<始祖ノ古血魔法>と<水血ノ混沌秘術>の応用も凄いと思います」
「ん、水血の太刀を<握吸>で掴んでいたのは、驚いた」
「あ、はい。あれは<水血ノ断罪妖刀>ですね、五つの剣閃を途中で止めることが可能とは、それを実戦に活かす判断力が非常に優れていると思います」
「「はい」」
「閣下は戦いを修業に活かしますからね、何事も機知に富む」
「「ふふ、はい」」
皆の言葉に無難に頷く。ビュシエは、
「その水神ノ血封書の<水血ノ魂魄>を活かしたことで、<古バーヴァイ族四腕騎士バミアル・使役>のスキルを獲得しての使役化ですからね」
「おう」
「バミアルとキルトレイヤは<血魔力>を有しているので、<筆頭従者長>や<従者長>ではない光魔騎士タイプということでしょうか」
「そうだと思う」
俺たちが会話していると、キッカが会釈し、キスマリが威風堂々と歩いて前に移動する。
黒豹と銀灰虎の横に移動した。
バミアルとキルトレイヤのフォローに出られる位置か。
黒豹と銀灰虎は尻尾でキッカとキスマリの足を触っていた。
皆で、古バーヴァイ族の剣術の研究かな。
古バーヴァイ族は体格と魔剣を大きくさせることが可能なスキルを持つ。
剣術だけなら俺も参考になる。
が、いい加減待つのもな、俺も戦いに交ざるか。
青炎槍カラカンを右手に茨の凍迅魔槍ハヴァギイを左手に召喚。
交互に得物を変えつつ<握吸>と<握式・吸脱着>を発動。
<握吸>を使っては消して、<握式・吸脱着>をも使う。
――青炎槍カラカンと茨の凍迅魔槍ハヴァギイを交換。
魔槍でナイフトリックを行う。
「……ご主人様の二槍流がまた進化をしているような」
「ん、短剣を扱っているように見える!」
「はは、さすがにな。では、皆、俺も四眼四腕の魔族、片足がイソギンチャクのモンスターを倒すのに参加してくる」
「ん!」
「「はい」」
魔裁縫の女神アメンディ様に向け、
「そして、先ほども言いましたが、片足がイソギンチャクのモンスターを倒しきったところで、魔裁縫の女神アメンディ様、転移をお願います」
「「「「はい」」」」
「ん」
「はい」
「分かりました」
<武行氣>と<経脈自在>と<闘気玄装>と<黒呪強瞑>を発動――。
<水神の呼び声>と<水月血闘法>と<闘鮫霊功>を発動。
<水の神使>を意識し、発動。
<滔天仙正理大綱>を意識し発動。
<滔天神働術>を意識し、発動――。
<光魔血仙経>と<魔闘術の仙極>を発動。
<血脈冥想>を実行。
ゼロコンマ数秒も経たせずスキルと恒久スキルを発動させる。
体から噴き上がるような無数の魔力を丹田で練り上げる。
体の外に放出していく魔力を抑えることは中々に難しい。
が、<経脈自在>と<血脈冥想>のお陰で、緩やかになる。
水と血と冥界の滑り感の濃い大気と融合した感覚を得ると、自然と冥界シャロアルが理解できたような気がした。
そしてハルホンクを意識しつつ。
<血道第五・開門>――<血霊兵装隊杖>を発動させた。
「ングゥゥィィ」
結袈裟と肩は覆っていない鈴懸と似た衣装防具を瞬く間に装備する。肩の竜頭装甲も一瞬で合わせてくれた。
同時に、血の錫杖が頭上に浮かぶ。
<光魔・血霊衛士>を意識し発動。
血の錫杖は掴まず、二体の血霊衛士を造り出しながら駆けた。
直ぐに『左右から攻めろ』と念じた。直ぐに自律稼働させる。
「バミアルとキルトレイヤ、俺も交ざるぞ。血の騎士は、現実の騎士だが、俺の<血魔力>が造り上げた幻影と思え――」
「「――承知!」」
二体の血霊衛士は左右に移動させる。
バミアルとキルトレイヤの邪魔にならないように四眼四腕の魔族が湧いている両端に向かった。俺はバミアルとキルトレイヤの間から直進。
二人を越えて四眼四腕の魔族へとジャンプ――。
宙空から左手が持つ茨の凍迅魔槍ハヴァギイで迅速に<魔雷ノ風穿>――。
※魔雷ノ風穿※
※魔槍雷飛流技術系統:武槍技※
※魔槍雷飛流技術系統:極位突き※
※雷炎槍流系統:上位突き※
※闇雷槍武術系統:上位突き※
※風槍流技術系統:最上位突き※
※豪槍流技術系統:上位突き※
※悪愚槍流技術系統:上位突き※
※塔魂魔槍流技術系統:上位突き※
※女帝槍流技術系統:上位突き※
※獄魔槍流技術系統:上位槍突貫※
※魔竜王槍流技術系統:上位突き※
※豪槍流技術系統:上位突き※
※独自二槍流技術系統:上位突き※
※独自三槍流技術系統:上位亜種突き※
※独自四槍流技術系統:上位突き※
※太古の闇に通じる槍の極位突き※
※闇神アーディンの愛用突き※
※様々な槍武術の突き技を得た者が獲得できる『武槍技』※
※『魔槍技』と似ているが異なる※
※闇と雷が強いが、風属性を得たようにも見えるだろう※
※風をも穿つ魔雷の武槍技※
四眼四腕の魔族は液体状の片足を残し消し飛ぶ。
続けて液体状の片足も吹き飛びながらボッと音を立てて燃えたように消し飛ぶ。
――即座に右斜め前に出た。
前後に並ぶ四眼四腕の魔族に向け――。
右手が握る青炎槍カラカンで<龍豪閃>を発動。
身を捻る機動から繰り出す回転撃の<龍豪閃>が三体の四眼四腕の魔族の首を狩る。
イソギンチャクの片足から無数の触手が来るが、<凍迅>を発動させて、すべて凍らせて無数の触手ごと半透明なイソギンチャクの片足ごと凍らせて倒した。
と、数十といる四眼四腕の魔族の向こう側で血霊衛士の<血穿>が、四眼四腕の魔族の背中に決まるところが見えた。
それを見ながら<血想槍>――。
※血想槍※
※血想槍法:開祖※
※様々な高能力に称号:覇槍神魔ノ奇想が内包している称号:覇槍ノ魔雄と、スキル<魔雄ノ飛動>と<血魔力>に<導魔術>が必要。総じて、風槍流や豪槍流などの極めて高い槍武術も求められる※
※<血魔力>と<導魔術>を用いた槍武術に特化した<血想>スキルの発展系の一つ※
※使い手の想念を活かす光魔ルシヴァル独自の槍法※
――血を纏う無名無礼の魔槍。
――血を纏う聖槍アロステ。
――血を纏う霊槍ハヴィス。
――血を吸う魔槍杖バルドーク。
――血を纏う仙王槍スーウィン。
――血を纏う王牌十字槍ヴェクサード。
――血を纏う夜王の傘セイヴァルト。
――血を纏う白蛇竜小神ゲン様の短槍。
――血を纏う雷式ラ・ドオラ。
――血を纏う独鈷魔槍。
――血を纏う神槍ガンジス。
それらの<血想槍>で、<双豪閃>を繰り出しまくる。
一瞬で、数十の四眼四腕の魔族を消し飛ばした。
液体状の片足も斬ったと思うが手応えは薄い。
そして、血霊衛士ごと倒す勢いだったが、<血想槍>は個別に操作が可能――。
俺の右回りの四眼四腕の魔族を倒しきる。
そこで指に嵌めている〝古魔将アギュシュタンの髑髏指環〟を皆に見せるように腕を上げた。<魔将アギュシュタン使役>を意識発動。
古魔将アギュシュタンの髑髏指環から魔線が噴き上がる――。
続きは今週を予定。
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