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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1207/2033

千二百六話 古魔将アギュシュタンとの戦い


 古魔将アギュシュタンは、突如と飛来し着地してきた装甲武者のシタンを見ても微動にしない。

 アギュシュタンに双眸がないが、表情筋は人族や魔族と似ている部分もある。ニヤリと笑みを浮かべたような印象を覚える。

 俺を守るシタンは面頬を備えた後頭部の部位と全身の甲冑からカタカタと音を発生させた。


 そのシタンは魔豪大剣ビララフを下ろし、


「ン、目無シ……通称、〝目隠シ鬼〟カ?」

 

 と、古魔将アギュシュタンのことを指摘。

 

「その通り。我を知っていたか」

「……フム、噂ダケダ」


 シタンとアギュシュタンは知り合いか。

 すると、俺を守るシタンの背中と肩付近の武者鎧の一部から闇色と蒼色が混じった火の玉が幾つも出現。

 それらは混ざり合いながら装甲武者の装甲と溝から出た魔力と融合すると仁王のような存在に変化させた。

 

 シタンは、異世界の一つ阿修羅界出身だったな……。

 阿修羅界の仏像的な厳つい者たちを召喚可能? 

 見た目は幻影っぽさがあるから巨人的な幻影を装甲武者の体に憑依させながら魔豪大剣ビララフを振るうとか?


 俺からは仁王のような後ろ姿しか見えていないが、後ろ姿からしても渋すぎる。

 それともこの仁王のような存在も、スキル<古兵・剣冑師鐔>範疇なんだろうか。

 

 古魔将アギュシュタンは、

 

「……その闇の纏は、<阿修羅ノ核魔>、大剣は魔豪大剣ビララフ。背後のデカブツは<大間書(おおまがき)・阿修羅戦官>の何れかであろう?」

「正解ダ。アノ、目隠シ鬼ガ、我ノ事ヲ……知ッテイルトハ……」

「……魔剣師シタン、我も戦場を渡り歩いている立場だった故だ」

「……」


 古魔将アギュシュタンは右半身と両足の太股と足先に血魔力を集めていたが霧散させながら、


「シタン……もう一つの渾名は魔大剣師シタンだったか。そして、魔樹王カジュラド、宵闇の女王レブラ、魔賢覇王ラヴェマルアなどの神々や諸侯が率いた軍で活躍していたはずだ」

「……フム。ソノトオリ、ガ、我ハ、一兵卒ニ過ギヌ」

「ハッ、魔界大戦で名が轟いた以上は一兵卒の立場では居られないはずだがな?」

「……ソレハ昔……今ハ、主ノ<古兵・剣冑師鐔>デアル!」


 とシタンは俺を見る。

 面頬装備が渋い。頷いた。シタンの面頬が嗤ったように見えた。

 古魔将アギュシュタンは、


「……ふむ、我をここまで形成した存在のシュウヤが主か……実に、楽しみだ」


 剣呑な雰囲気となった石畳の広場に風が通る。

 シタンに、


「シタン、古魔将アギュシュタンを知っていたんだな」

「……直ニ相対シタ訳デハナイガ、知ル。<血魔力>ヲ放ツ魔大刀ノ名ハ〝魔大刀シスー〟ソシテ、〝ヴェルマラフノ右血腕〟。【血大刀キシュヌノ地】デ得タト聞イテイル」

「その通り、魔大刀シスーとヴァルマラフの右血腕は、吸血神ルグナド様の<筆頭従者長(選ばれし眷属)>ササ・モモに、客将扱いで雇われていた時に得た物だ……」


 へぇ……どちらも経験豊富。

 シタンは、


「アギュシュタン、オマエハ、魔神エイギュラムスノ配下、黒獅魔公アグラーニノ六芒軍ノ右魔将キジラグ・マハーノ軍ト衝突シ、行方知レズト、聞イテイタガ?」

「……そうだ。べガリオンの窪地と大魔台ペラガを巡った争い。負け戦となった」

「……フム」


 さて、


「シタン、説明しとく。セラで入手しておいた髑髏指環を鑑定し魔力を通した結果が、今だ。古魔将アギュシュタンが現れた。で、古魔将アギュシュタンは俺と契約する条件に第一~第四関門と言っていた。第五関門で、俺との勝負があるようだ。俺が勝ったら、古魔将アギュシュタンは俺を主と認めるようだ」

「ナルホド! ――デハ、我ハ、任務ニ戻ル!」


 と<古兵・剣冑師鐔>のシタンは直ぐに魔皇獣咆ケーゼンベルスの横に移動した。


 古魔将アギュシュタンは右腕に<血魔力>を集結させる。


「シュウヤ、得物は出さないのか」

「あぁ」


 ――魔槍杖バルドークを右手に召喚。

 <血道第三・開門>――。

 <血液加速(ブラッディアクセル)>――。

 <武行氣>は維持したまま<闘気玄装>を発動――。

 <霊魔・開目>を発動。

 

 やや遅れて――。


 ――<経脈自在>。

 ――<魔闘術の仙極>。

 ――<滔天内丹術>。


 を発動。


 右腕と脇腹と背で魔槍杖バルドークを持ちつつ――。

 風槍流『風蛇左腕』で左腕を泳がせながら半身の姿勢となったところで――。


 左手でアギュシュタンの全身を掴むように掌と指を動かし、


「……アギュシュタン、準備は完了だ。来い」

「承知――フハハ!」


 古魔将アギュシュタンはドッとした加速でいきなり間合いを詰めてきた。

 魔大刀シスーの血の一閃か――背後に後退し、一閃を余裕の間で避けた。

 アギュシュタンは俺の避け方を予測し、次なる一手に出ている。

 加速し両腕がブレる。両手握りの魔大刀シスーで連続的に突いてきた――。

 一手どころではない突き技の初撃を避けながら<黒呪強瞑>を発動させて迅速な連続突きを避けていくが避けきれない。

 斜めに掲げた魔槍杖バルドークの柄で魔大刀シスーの切っ先を受け弾き、乱雲の矛で突くフェイクから<柔鬼紅刃>を実行しつつ反撃――。

 紅斧刃を活かす<豪閃>で下段を狙う――。

 が、切っ先に押されるように紅斧刃は弾かれた。が、魔槍杖バルドークを消し、再出現させながら竜魔石の<龍豪閃>――。

 斜め下から右上の機動でアギュシュタンの腕を狙う――。


「ほぉ――」


 中段構えの魔大刀シスーの刃に、<龍豪閃>は簡単に往なされる。


「アイテムボックスの効能か、<武器召喚>の使い手か?」


 と、聞いてくるアギュシュタンは落ち着いている。

 構わず右に出るフェイクから左に回りつつの魔槍杖バルドークを振るう<龍豪閃>――。

 アギュシュタンは魔槍杖バルドークの紅斧刃を見ずに、俺に合わせ相対し、


「いい動きだ!」


 と言いながら左に傾けた魔大刀シスーの刃で<龍豪閃>を柔らかく押しながら前進――。

 魔大刀シスーを押し上げるように魔槍杖バルドークの柄の上を滑らせながら、魔大刀シスーの長さを活かすように、俺の首切りを狙ってきた。


 背筋が寒くなるほどの疾さと鋭さ――。


「お前もな――」


 魔槍杖バルドークを回転させながら横に移動し、首切りをなんとか避け弾く。

 アギュシュタンは体を独楽のように回し――。


「フッ、我の<首切獄門>をここまで完璧に防ぐ存在を見るのは久しぶりだ――」


 と言いながら俺の胴体をすっぱ抜く勢いで魔大刀シスーを振るってくる。

 右腋に迫った一閃を右前に突き出した魔槍杖バルドークの柄で弾いた。


 更に右腕を捻り、紅斧刃で魔大刀シスーの引っ掛けを狙う。

 が、読まれたようにアギュシュタンは横回転しながらの下段蹴り――と、右腕の裏拳の攻撃を繰り出してきた。


 それらの格闘を<悪式・突鈍膝>と<滔天掌打>で受けたところで「まだまだァ――」と叫んだアギュシュタンは俺に向け微かに跳躍していた。

 大上段からの真向幹竹割(まっこうからたけわ)りが迫る。

 その縦の振るわれた魔大刀シスーの刃に魔槍杖バルドークの紅斧刃の上部を衝突させて、大上段の振り降ろし攻撃を、重いが防ぐ。


 そのまま魔槍杖バルドークを掬うように振るう。

 竜魔石の<龍豪閃>がアギュシュタンの顎を捉えたかに見えたが、アギュシュタンはニカッと鋭い歯牙を見せながら避けると左肩を沈めるような体勢に移行し、魔大刀シスーを振るうと、魔大刀シスーから血の刃が飛び出てきた。


 魔槍杖バルドークで魔大刀シスーを防御しつつ横に移動するが、血の刃は防げず、右肩に切り傷を負った。

 更に、防いだ魔大刀シスーから刃状の<血魔力>が散りながら俺に迫った。


 それらの無数の刃が〝古の光闇武行師デファイアルの仮面〟の衣装とハルホンクの防護服と衝突していく。

 同時にもう一度振るわれてきた魔大刀シスーが迫る――。

 即座に<山岳斧槍・滔天槍術>を意識し発動しながら――。

 魔槍杖バルドークを盾代わりにして薙ぎ払いを防ぐ。

 またもアギュシュタンは魔大刀シスーを振るってきた。

 魔槍杖バルドークを斜めに下げて、俺の胴体を狙ってきた一閃を防ぐ。


 アギュシュタンは「<魔練絹>」と呟きながら不思議な加速力で前進し撫で斬りから始まる剣舞を繰り出してきた。


 飾り気のない見事な連続斬り、奥義系のスキルか?

 すべての魔大刀シスーの剣撃を<山岳斧槍・滔天槍術>を活かし魔槍杖バルドークだけで防ぎ切る――。

 何度も異質な金属音と共に鈍い音が響いた。

 ――防ぐ度に魔大刀シスーの<血魔力>が散る――散るがそれが本物の細かな刃となるから困る――。

 が、ハルホンクの防護服も対応してくれている――。

 <武行氣>の衣装も柔らかいようで硬い。


「くっ、尽く、我の……だが――」


 と次の魔大刀シスーの袈裟斬りを魔槍杖バルドークの柄で防ぐ。

 衝撃波の影響で体が少しい浮いたが、しっかりと魔槍杖バルドークが魔大刀シスーの刃の衝撃と<血魔力>の刃を防いでいると、魔大刀シスーから放出されている<血魔力>を魔槍杖バルドークが吸い取り始めた。


「――我とシスーから<血魔力>を吸収している斧槍、否、魔槍杖か!」

「あぁ――」


 魔槍杖バルドークの柄から『呵々闇喰』の文字が浮き上がる。

 と半身から相対の姿勢に移行しつつ魔槍杖バルドークを振るう<血龍仙閃>を繰り出した。


 アギュシュタンは魔大刀シスーの刃の逆刃を見せるように掲げ<血龍仙閃>を防ぐと体勢を崩しながら後退した。

 即座に――<四神相応>。

 ――<青龍ノ纏>。

 ――<煌魔・氣傑>。

 ――<闇雷精霊グィヴァとの絆>を連続発動した。

 青龍が『ぎゅぉ~』と『ふふ、青龍ちゃん』と青龍とグィヴァが思念を寄越すのを感じながら上半身の一部が濃い青系統に変化を遂げる。

 

 アギュシュタンは魔大刀の刃越しに、俺を見ているのか、


「な!?」


 と驚きの声を発した。


「「「おぉぉ」」」

「ご主人様の体に青龍とグィヴァの幻影が!」

「無数の<魔闘術>系統に<武行氣>と青龍と闇雷精霊グィヴァ様の融合!?」

「ウォォォォン!」


 皆の声を感じながら<水晶槍ブラムス>を意識し発動。

 左手に水晶槍を召喚し、<水月血闘法>をも発動――。

 <青龍蒼雷腕>をも意識、左腕に発動し、加速しながら、その左手が持つ水晶槍で<雷式・血光穿>を繰り出した。


 アギュシュタンは「二槍流が本筋か、だが、<血魔大刀キシュヌ>――」と言いながら魔大刀シスーを迅速に下げた。

 <水晶槍>から雷撃を周囲に発している<雷式・血光穿>を、<血魔力>の刃が何重にも重なっていた魔大刀シスーの刃が両断してきた。

 左右に真っ二つとなった水晶槍は破裂したが、右腕に持つ魔槍杖バルドークで<魔雷ノ風穿>を放つ――。


 ※魔雷ノ風穿※

 ※魔槍雷飛流技術系統:武槍技※

 ※魔槍雷飛流技術系統:極位突き※

 ※雷炎槍流系統:上位突き※

 ※闇雷槍武術系統:上位突き※

 ※風槍流技術系統:最上位突き※

 ※豪槍流技術系統:上位突き※

 ※悪愚槍流技術系統:上位突き※

 ※塔魂魔槍流技術系統:上位突き※

 ※女帝槍流技術系統:上位突き※

 ※獄魔槍流技術系統:上位槍突貫※

 ※魔竜王槍流技術系統:上位突き※

 ※豪槍流技術系統:上位突き※

 ※独自二槍流技術系統:上位突き※

 ※独自三槍流技術系統:上位亜種突き※

 ※独自四槍流技術系統:上位突き※

 ※太古の闇に通じる槍の極位突き※

 ※闇神アーディンの愛用突き※

 ※様々な槍武術の突き技を得た者が獲得できる『武槍技』※

 ※『魔槍技』と似ているが異なる※

 ※闇と雷が強いが、風属性を得たようにも見えるだろう※

 ※風をも穿つ魔雷の武槍技※



 ノーモーションに近い武槍技が古魔将アギュシュタンの右腕を穿ち抜いた。


続きは今週。

HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。」1~20巻発売中。

コミックス1~3巻発売中。

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[良い点] そうか、青龍とグィヴァは同じ雷系で相性が良いのか。 [一言] シタンとアギュシュタンは顔見知りではないが知っていたか。それだけお互いに活躍してたんだな。
[良い点] 〝古魔将アギュシュタンの髑髏指環〟との契約条件を無事に達成。 槍使いとしての実力を古魔将アギュシュタンに示すことができた。 新スキルも早速使いこなしてるw [一言] 古魔将アギュシュタンも…
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