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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1202/2033

千二百一話 魔槍斗宿ラキースと魔星槍フォルアッシュ

 ラムーは霊魔宝箱鑑定杖を(かか)げた。

 霊魔宝箱鑑定杖の先端に()まっている灰色の水晶が輝く。

 と、そこから灰色の魔力が出て魔槍斗宿(まそうひつきぼし)ラキースに向かい魔槍斗宿ラキースと衝突し黒い柄が煌く。

 柄には銅金属っぽい金属が浮き彫り状に紋章が施されてあるが、それも怪しく輝いた。


 穂先の六つの鈍い輝きには変化がない。


 ラムーは(おもむろ)に霊魔宝箱鑑定杖を下げながら(うなず)いた。

 鑑定を終えて成功だろう。


 ラムーは、


「名は〝魔槍斗宿(ひつきぼし)ラキース〟、伝説(レジェンド)級。魔力を通すと使い手の素早さと力強さが上昇し、<握吸>と<握式・吸脱着>というスキルを獲得する場合があるとか。そして、穂先の六つの輝きには【二十八宿・斗宿羅漢瞑道】に棲まう怪物たちを仕留めた意味があるようです。また、六つの輝きの意味と関連した<瞑道六滅>のスキルを獲得できる可能性もある。製作者は【二十八宿・斗宿羅漢瞑道】を支配、管理していたとされるラキース。通称、星屑のラキースと呼ばれていた。製作の経緯、手段、素材は不明。ラキースは、魔界や神界とも通じていただけが分かります。種族は不明」

「「「おぉ」」」

「素早さと力強さが、上昇か……」

「にゃお~にゃ、にゃ~」

「にゃァ~」

「ちゅぃちゃんですか♪ ちゅぃちゃんです♪ ちゅぃ~♪」


 魔獣アモパムがまた面白く鳴く。

 茶色の体毛を伸ばし縮ませながら、フニュアンの宝箱から出て机にいるが、鳥の足のような茶色の毛には魔酒の一つを持っていた。


 ちゅいちゃんこと、魔獣アモパムは、魔酒を器用に丸い体の上に動かしながら、毛先を足代わりにして、俺の腕に跳び乗ると、


「――ちゅぃちゃんですか?」


 を喋り鳴きながら、毛先を伸縮させながら肩に乗ってきた。

 体重はまったくない。

 黒猫(ロロ)ちゃ銀灰猫(メト)よりも軽い。

 

 魔獣アモパムは直ぐ近くに来ると、茶色の細い毛を伸ばしてくれた。俺の頬を少し突く勢いで触ってくる。


 と、「ちゅぃちゃんです♪」と鳴いた魔獣アモパムこと、ちゅいちゃんは他の茶色の毛が絡んでいた魔酒の飲み口を頬にぶつけてきた。


 あぁ、これが目的だったのかな。

 魔獣アモパムはスラウテルの魔風盾と暗剣の風スラウテルの胸甲と魔酒と魔酒の間に入って遊んでいた。



「――ありがとう。だが、これは、鑑定できなかった魔酒だな。これを俺に飲めってことか?」


 と聞くと魔獣アモパムは可愛い双眸を毛の塊のような丸い体から出してくる。

 

「ちゅいちゃんですか♪」


 意味は、YESだと思うが……。


「そっか、が、飲むのは、鑑定に成功したキュラバラル魔酒からかな」

「ちゅぃ~」


 と魔獣アモパムは鳴いて俺の肩から跳躍し、机に跳び乗る。

 

「魔槍斗宿ラキースは渋くて格好いい~♪ そして、ちゅぃちゃん可愛い~♪」

「魔槍斗宿ラキースは伝説(レジェンド)級!」


 イモリザとエラリエースが元気に発言。

 光魔騎士ファトラも、


「はい、名前といい柄の模様も黒くて渋いですね!」

「あぁ」

「はい、陛下に似合う!」


 と、光魔騎士グラドとバーソロンも光魔騎士ファトラと返事をしては、頷き合う。


「【二十八宿・斗宿羅漢瞑道】を支配、管理していたとされるラキース。不思議な存在のようです」

「たしかに……ラキースとは何者でしょうか」

「そして、【二十八宿・斗宿羅漢瞑道】とは、異世界の名でしょうか、わたしはセラでは聞いたことがありません」


 キサラがそう発言。

 ヴィーネは、頷いて、


「わたしも当然、初。地下都市ダウメザランや北マハハイム地方、南マハハイム地方とそれなりに冒険しているが、初耳だ」


 と発言。俺を見てきた。


「俺もないが、異空間か……」


 玄智の森の【二十八宿・妖霧鬼魔突兀瞑道】なら知っている。


 そう考えていると、


「「「「ないです」」」」


 デラバイン族の兵士たちの声が響いた。


「しりません」

「我も聞いたことがない」

「ないですね」


 皆もないようだな。

 すると、光魔騎士グラドが、


「聞いたことはありませんが、異空間ならそれと似たような名は聞き覚えがある程度。そして、皆さんも知っているように、異空間の一つと呼べるか不明ですが、〝狭間(ヴェイル)の穴〟、またの名を〝狭間(ヴェイル)の魔穴〟と呼ばれるところは経験済みです」


 と発言。

 俺とヴィーネは直ぐに頷いた。

 ヘルメも


「ふふ、狭間(ヴェイル)の魔穴! 閣下の壊槍グラドパルスが狭間(ヴェイル)の魔穴の前で止まっていたころを見たかったです」


 と発言。あれは貴重な経験と言えると頷いた。

 魔界王子テーバロンテを倒した前後で<闇穿・魔壊槍>を用いたんだったな。

 魔界王子テーバロンテにかなりのダメージを与えたが、離脱された。で、壊槍グラドパルスは何かの壁に阻まれて止まってしまったんだった。


 魔界王子テーバロンテを倒した際は、ヘルメなど、各戦力はバーヴァイ城とバーヴァイ平原に散っていたからな、俺が必殺技の一つ<闇穿・魔壊槍>を用いた瞬間はヘルメは見ることはできなかった。


「あの時か、妾たちは、しかと見た」

「はい、あの時、光魔騎士、否、馬魔獣ベイルに乗った魔界騎士グラドが、変な空間に喰われ掛かっていたように見えました」

「〝魔神殺しの蒼き連柱〟といい、よく覚えていますよ。狭間(ヴェイル)の魔穴……あそこも異空間と呼べるかと」


 ()()(テン)たちの言葉にキサラとエヴァとヴィーネが頷いた。


 この話に、デラバイン族の将校と兵士の一部――。

 ロズコたち刑務所から助けた魔族の一部と【グラナダの道】の魔鋼族ベルマランたちの一部は少し驚きの声を発して光魔騎士グラドを注視していた。


 光魔騎士グラドは普段【バーヴァイ平原】と【古バーヴァイ族の集落跡】の守りに出ている。

 手勢以外だと個人的な会話をしている者は少なかったようだな。

 その光魔騎士グラドに【グラナダの道】の魔鋼族ベルマランのバスラートさんたちが近付いて個人的な会話を始めていた。


 今回はいい機会となったようで嬉しい。

 そして、皆、【二十八宿・斗宿羅漢瞑道】を聞いたことがないようだ。


 すると、ヴィーネは俺を見て、


「……二十八宿の名は聞いたことがあります。玄智の森の玄智山を登る時と下りる時を兼ねた浮遊しながら移動する修業の際に利用していた異世界の名。そこに出現したモンスターも独特だったと、覚えています……」


 その言葉に頷いた。

 滝を擁した段丘の岩棚に玄智山は景色は壮観だった。

 白蛇竜大神イン様の白蛇聖水インパワルと水神アクレシス様と【仙王ノ神滝】が関係深い玄智聖水などなど。

 

 修業蝟集部屋での修業はためになった。

 感謝の想いで、


「二十八宿と言えば【二十八宿・妖霧鬼魔突兀瞑道】か。【二十八宿・斗宿羅漢瞑道】と関係があるかは不明だ。【二十八宿・妖霧鬼魔突兀瞑道】は、鬼霧入道ドンシャジャが湧く空中迷宮のような場所で〝玄智闘法・浮雲〟の修業に用いられる異空間だった」

「はい」

「「「……」」」


 皆、沈黙。

 すると、キサラが、


「スキルの<握吸>と<握式・吸脱着>とは、得物を握る手全般にわたってのスキルでしょうか」


 俺もそれは気になる。

 ラムーは、


「はい、多分。としか分かりません」

「名前的に握力の上昇? それに関係した得物の握り方のスキルか? 武器の柄の握り手と柄巻に掌が付着されるとか」

「ん、魔式・九連環にも、そのスキルがほしいかも」

「得物を握る。普遍的な事象で単純ですが、何気に重要です」

「はい」

「「そうですね」」

「基本……なるほど」

「「あぁ、単純だが、たしかにな」」

「「ふむ」」

「「「「……」」」」


 皆も納得するように頷き、呟きまくる。

 食堂が、ざわざわ、とざわついた。


 すると、身長が高いジアトニクスが、


「たしかに、キサラ様も申したが武器を握り、武器を振るい突く。……基本ですが重要ですね。<握吸>と<握式・吸脱着>は武器を扱う者たちには有利に働くスキルと予測します」


 と発言。

 ジアトニクスの縦長の頭部は二つあり、切断されたように面を見せている上部の頭部は浮いている。その上の頭部と下の頭部の断面から迸っている魔力の動きはかなり激しい。


 上下の間の空間を占めるどころか頭部の外にも魔力が放出されていた。

 アーク放電を起こしているような魔力。

 魔力の形は、シナプスの核を含む細胞体と軸索と樹状突起の形に見えた。


 そして、ジアトニクスが喋る度、それらの魔力は、ゆらゆらと波の山と谷を起こす。

 波長となって揺れていた。

 

 毎回だが、ジアトニクスの頭部はTHE・宇宙人。

 高度な知性を持った生命体やクリーチャーを思わせる。


 キサラは、


「腕と手の力は、生命力を表しますと聞いたことがあります」


 皆と俺は頷いた。

 エヴァが魔式・九連環を握る時にも思ったが、握り方は重要だ。

 アキレス師匠に槍の握り方では、小指がキーになると、かなりしごかれた覚えがある。


 そこで、


「ラムー次の品、ハイゴブリンのギュヒガ・トドグ使用していた青白い炎の魔槍委、魔星槍フォルアッシュの鑑定を頼む」

「はい、早速――」


 先ほどと同じく霊魔宝箱鑑定杖に魔力を込めたラムー。

 霊魔宝箱鑑定杖の灰色の水晶から出た魔力が、魔星槍フォルアッシュに当たる。

 

 魔星槍フォルアッシュの大笹穂槍と似た穂先が鈍く光ると、ラムーは頷いた。


「名は〝魔星槍フォルアッシュ〟、伝説(レジェンド)級。装備するだけで使い手の速度と力が上昇。柄にダメージを負うほど穂先と石突の攻撃力が微上昇。魔族ララブギーアの言語を学べる。また、すべての高い能力を持つ存在が魔星槍フォルアッシュを装備しつつ<冥想>系の修業を行うと<異空間アバサの暦>、<星影>、<隠月>、<星ノ音階>などの星槍系統に関するスキルと槍武術<星槍術>と<星槍技>と異空間アバサに関するスキル獲得の機会に恵まれるようです。そして、元々は星槍フォルアッシュが名で、異空間アバサに封じられていた。魔族ララブギーアは、<異空間アバサ>に干渉できるようです。星槍十文字流伝承者ボィルゥ・ハヴェンガズムが、ハイゴブリンとキルビント・トドグと戦った際に召喚星槍極位スキル<星槍・天法網鍛極>を用いた。しかし、キルビント・トドグは召喚系カウンターを得意する槍使い。キルビントに攻撃を受けたボィルゥ・ハヴェンガズムは絶命し、その際にキルビントが星槍フォルアッシュを奪取した刹那、魔槍フォルアッシュの名に変化したようですね。そして、螻蛄首に刻まれている魔法文字も一部解読に成功しました。『……数多ある槍使い、異空間アバサにて散る、魔族ララブギーアたちよ、魔刻にて魔刻ではない異空間がアバサなるぞ。探韻は己の命を星槍の刻に刻むと心掛けよ』と刻まれてあるようです」

「「「おぉ~」」」

「これも凄まじい品だ……」

「異空間アバサとは聞いたことがなかったが、魔族特有の召喚スキルか」

「あぁ、それを学べる機会があるとは」


 頷いた。冥想系か……。


続きは今週を予定。

HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。」1巻~20巻発売中。

コミックス1巻~3巻発売中。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔星槍フォルアッシュは神話級レベルな伝説級ですね。少なくとも、先に説明有った魔槍斗宿ラキースより強力そう。 (すべての高い能力を持つって条件が有るからの、神話級ではなく伝説級な印象) 瞑想…
[良い点] <血想槍>に必要な魔槍もかなり集まりましたね。 やはり鑑定は、かなり重要。〝魔星槍フォルアッシュ〟を装備しつつ<瞑想>系の修行をしないといけないなんて普通は気づけない。 鑑定してないアイテ…
[良い点] 瞑想するだけで星槍系統のスキルを会得できるのはいいですね。 星槍十文字流を学ぶことで<星想ノ精神>などの銀河騎士系の能力が発展するかも。 [一言] 鑑定しないと気付くことができないことが多…
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