百十七話 アイテムボックスの進化
『ヘルメ』
呼び掛けると、ヘルメは小さい姿のまま視界に現れる。
『はい。何でしょうか』
『ヘルメなら罠の有無を発見できる?』
『いえ、無理です。熱、魔力なら感知できますが……それと、外に出て手動で触っていけば確認は手伝えると思います』
『そっか。ならいいや』
『はい、役に立てずに申し訳ありません』
『いや、気にするな。モンスターの数が多かったら呼ぶから、その時は頼むぞ』
『はいっ』
ヘルメとの念話の後も、暫く槍の罠は続いていたが、L字路を曲がった時、前から魔素反応を感じると共に罠が出なくなった。
罠があった通路は終わりみたいだ。
前方に感じた魔素の反応は複数あり、サイズは今までより大きい。
<隠身>を発動。
黒猫も<隠身>スキルがあるのか分からないが、俺の真横で耳を凹ませて身体を屈ませながら歩いている。
俺が先頭を歩き反応があった場所へ、慎重に近付いていく。
そこに居たのは中型ゴブリン。
典型的な緑の皮膚を持ち肉厚なボディーを持つ。
焦げ茶色の短髪に眉が太い大五郎的、顎なしゲンさん的な三匹だ。
「ロロ、今回は後ろで待機だ。まだ、試してない魔法がある」
「ン、にゃ」
黒猫は指示通りに後退し、距離を取った。
中型ゴブリンたちは、頑丈そうな皮鎧を着込み、太い腕には蛮剣、こん棒を持っている。
通路は明るいので<隠身>の効果が効いているのかは分からない……。
まだ俺たちには気付いていないようだ。
もうゴブリンの視界には入っていると思うが。
ま、好都合だ。
気付いてないので、魔法の実験で先制させてもらう。
上級:水属性。
《連氷蛇矢》を念じた。
その瞬間。
中空に人間の腕ほどのサイズはある氷矢が無数に発生し、突き進む。
白光を曳航する氷矢群は追尾ミサイルの如く、ゴブリンたちの頭を貫通し、腹を破り、足を貫いていった。
こりゃ、ゴブリンたちは絶命だな。
氷矢群はゴブリンが装備していた分厚い革鎧や防具などを貫いていた。
そこで<隠身>を解除。
別に隠れないでも良かった。
しかし、烈級の《氷竜列》には及ばないが、さすがは上級魔法。
矢数と威力がすげぇ。
魔力もそれなりに消費したが、俺の場合は自然回復が早い。
この魔法なら連発が可能だ。
でも、このままじゃ完全に魔術師だな。
ギルドカードの職業名に追加しとくか。
魔術師と……ま、追加は冗談として、ほどほどにしよ。
俺は魔槍杖を使う前衛が本職だ。
「にゃおん、にゃっ」
死んでいる中型ゴブリンの大きい顔へ猫パンチを喰らわせている黒猫さん。
「ロロ、一応、警戒ね。魔石回収しちゃうから」
「ンン、にゃおん」
胸ベルトから古竜の短剣を取り出して、氷矢が刺さって死んでいる中型ゴブリンたちを切り刻む。
倒したゴブリンたちは武器を持ち防具も装備しているが、それらのアイテム類の回収はしない。
多少は売れるとは思うが……。
どのアイテムも魔力を感じないし、大した値段では売れないと判断。
しかし、人に近い構造なので、穿るのはいい気分じゃないな。
三匹とも、心臓の近くに中魔石があった。
緑の中魔石を三つゲット。
生活魔法の水で魔石や手を洗う。
よし。綺麗になった。
早速、この魔石で試そうか。
オープンと発して、アイテムボックスを起動。
メニューから◆の菱形マークを押す。
左に◆マークと右に魔石を求める表が羅列された。
◆:エレニウム総蓄量:0
―――――――――――――――――――――――――――
必要なエレニウムストーン:50:未完了。
報酬:格納庫15+:記録庫解放。
必要なエレニウムストーン:100:未完了。
報酬:格納庫20+:カレウドスコープ解放。
必要なエレニウムストーン:200:未完了。
報酬:格納庫25+:ディメンションスキャン機能搭載。
??????
??????
??????
―――――――――――――――――――――――――――
大きい◆菱形マークの方に、今、手に入れた中魔石を入れてみた。
さっきと同様に◆菱形マークの下に文字が表示される。
―――――――――――――――――――――――――――
未知のストーンを検出……魔素適合率83%
80%以上を確認しました。
このストーンをエレニウムストーンと認識しますか? Y/N
―――――――――――――――――――――――――――
おぉ、やった。当然、Yを選択。
すると、
―――――――――――――――――――――――――――
エレニウムストーンと認識完了。
今後はエレニウム総蓄量に貯蔵されます。
―――――――――――――――――――――――――――
右の表を確認してみる。
◆:エレニウム総蓄量:1
―――――――――――――――――――――――――――
必要なエレニウムストーン:49:未完了。
報酬:格納庫+15:記録庫解放。
必要なエレニウムストーン:100:未完了。
報酬:格納庫20+:カレウドスコープ解放。
必要なエレニウムストーン:200:未完了。
報酬:格納庫25+:ディメンションスキャン機能搭載。
??????
??????
??????
―――――――――――――――――――――――――――
ラッキー、確かに、ちゃんと魔石が認識されていた。
エレニウムストーン、残り四十九個か。
中魔石を集めてアイテムボックスを強化する報酬をゲットしてやろう。
小魔石は三十個を超えて集まっているので、中魔石もすぐに集まるだろう。
しかし、魔石を認識したのは偶然とは思えない。
このアイテムボックスは迷宮産とクナは語っていた。
きっとコレを前に使っていた人物が過去に、この迷宮に居たんだ。
アイテムボックスに表示される宇宙人系種族と思われるが……。
たぶん、その宇宙人系種族が、死んだか落としたかしたせいで、迷宮産として違う冒険者が手に入れた物なんだろう。
それがたまたま、地下オークションに出品されたと。
「にゃお」
ん、アイテムボックスの考察をしていると、黒豹のロロディーヌが呼び掛けてきた。
瞬時に、掌握察を行う。
――なるほど。
複数の魔素だ。今よりも数が多いな。
中型ゴブリンの群れか。
「ロロ、炎ブレスは無しだ。それ以外なら良いぞ」
黒豹は待っていましたと言わんばかりに、飛び出していく。
レベッカが魔法を撃つ時に『ここは一階。火魔法を使っても大丈夫だから』と言ってたからな。
ここは二階層、たまたま、レベッカがそう言っただけかもしれないが、酸素消失、ガス、粉塵などの二次災害が怖い。炎は控えたほういいと判断。
ま、気にしすぎかもしれないが。
気を引き締めて、魔槍杖を右手に召喚。
黒豹と化している黒猫の後ろ姿を見ながら、反応があった前方へ走っていく。
尻尾の揺れがピタッと止まる。
ん? 警戒したか?
相棒は姿勢を前屈みに……後脚を立てている。
尻尾を上下に揺らし、筆先で円を描くように尻尾をぶるんぶるんと回した。
そして、菊門を晒し、『ぷぅ』と、音を鳴らす。
屁かよ!
その瞬間、中型ゴブリンたちの姿が見えた。
尻尾と屁で、敵の数を教えてくれたのかもしれない、黒豹なりのコールサイン、もとい、コールヘッコキ。
先頭には盾持ちが壁のように四匹並ぶ。
後方にも弓持ちが四匹。
黒豹が触手骨剣を唸らせるように伸ばし、先頭の盾持ちの脚へ突き刺した。
俺は普通に飛び道具を持つゴブから先に潰す。
走りながら<光条の鎖槍>を連続で、撃ち放つ。
連発可能限界の、五つ。
五つの光槍は、山なり軌道を描きながら前衛ゴブの頭上を越えて、天井スレスレを通り、後方にいた弓持ちゴブリンたちの胴体を正確に貫いていた。
五つ目の光槍はズレていたが弓持ちゴブが串刺し状態なのは変わらない。
俺はそのまま魔槍杖を短く持ち、前進。
先頭の盾持ちゴブ野郎の一匹に狙いを定めた。
片足で地面を蹴り、微かに跳躍しながら、魔槍杖をゴブの頭上へ振り下げる。
ゴブは頭上に盾を構えて防ごうとしていた。
だが――天誅っ! と言うように、振り切られた魔槍杖の先端部位である紅斧刃が、盾ごと圧し折り、ゴブの頭蓋を潰しながら胸半ばまで沈み込んだ。
ひしゃげた胸からは血が溢れ迸る。
沈み込んだ魔槍杖を、次の標的を探すように持ち手をずらしながら引き上げた。
そこにタイミング良く、隣にいた盾持ちゴブが、相棒の触手骨剣の攻撃により、バランスを崩し転倒。
地面へキスしているのが目に入った。
その無様に転んだゴブの頭部目掛けて、魔槍杖を回転させた竜魔石の石突きで叩きつけを行い、頭を潰す。
残りの前衛中型ゴブリンは二匹。
前衛中型ゴブたちは俺とロロディーヌの攻撃に用心したのか、凧盾を前方に構えては、ゆっくりと近付いてくる。
ゴブは盾を左手、右手には短斧を装備していた。
その斧で、俺の魔槍杖や黒豹の触手骨剣を攻撃しようとしているのだが、ゴブの扱う短斧では意味がない。
魔槍杖は斧槍ハルバード。
攻撃圏が広いうえに、相棒の扱う触手骨剣は六本もあるので、ゴブたちは自分らの攻撃圏内には入れず、俺たちに近寄れないでいた。
そんなゴブたちが、魔槍杖と触手骨剣のみに集中したところで、左手を翳し<鎖>を射出。
鎖は目に止まらぬ速さでゴブたちの両足、膝を貫いていく。
「「ギャアァァァァァ」」
両膝を貫かれたゴブたちは悲鳴をあげた。
力が抜けるように床に倒れこむと、足を押さえて血を撒き散らしながら転げ回る。
そんな転んだゴブたちの喉元へ滑り込ませるように黒豹の触手が向かい、正確無比に喉を貫き、裂いては、止めを刺していた。
こうして、通路にいた中型ゴブリンたちは全滅。
「ロロ、また見張りを頼む」
「ンン、にゃ」
黒豹から黒猫の姿に戻った相棒。
喉の奥から響かせたような微かな声の返事を寄越す。
了承したようだ。
四肢をくねらせ横歩き。
紅色と黒色が織りなす双眸を、時折、チラッと俺に寄越しつつ、通路の先を見回す。
頭のいい子だ。
さて、俺は回収。
新しい死骸たちから魔石を頂く。回収回収っと。
短剣を使い解体作業を開始する。
……しかし、二階層から難易度が跳ね上がったな。
部屋ではなく通路で、このモンスターの数と質だ。
受付嬢が止めるわけだ。
普通はパーティメンバーが必須なのだろう。
そんなことを考えながら生活魔法の水で手と魔石を洗い、魔石の回収を終えた。
回収した中魔石は七つ、合計で九個。
その全部の魔石を、アイテムボックスの菱形マークへ入れ納めておく。
どうなったか。またチェック。
◆:エレニウム総蓄量:10
―――――――――――――――――――――――――――
必要なエレニウムストーン:40:未完了。
報酬:格納庫+15:記録庫解放。
必要なエレニウムストーン:100:未完了。
報酬:格納庫+20:カレウドスコープ解放。
必要なエレニウムストーン:200:未完了。
報酬:格納庫+25:ディメンションスキャン機能搭載。
??????
??????
??????
―――――――――――――――――――――――――――
中魔石は認識された。
もう未知のストーンとは表示されないようだ。
必要な魔石は残り四十個。
ギルドの魔石依頼の数を合わせたら五十個は集めないと。
このまま迷宮の奥へ向かう。
Y字通路の分かれ道が連続して続く。
その都度、住み着いていた中型ゴブリンたちが、俺たちを手荒く出迎えた。
そんなゴブリンたちを倒し続けて、先に進む。
倒した合計は二五匹。
手に入れた中魔石は、全部アイテムボックスの中へ納めた。
残り十五個だ。ギルド分を合わせると二十五個。
暫く通路を進む。モンスターが出ない……。
すると、通路の前方から部屋の入り口らしきアーチ状の門が目に入ってきた。
中から魔素の反応もある。
やっと、モン部屋か。
RPGのように、通路より部屋のがモンスターの質は高く強い。
「ロロ、行くぞ」
「にゃ」
<隠身>は使わず、侵入。
部屋は一階にあった部屋と特に大きさは変わらない。
左と真っすぐ先にアーチ状の出入口があり、通路が見えていた。
そして、部屋の手前に盾持ちの中型ゴブリンが三匹居る。
中央奥には……見知らぬゴブリンを発見。
あれが依頼にあった速鬼か?
アッシュグリーンな長髪。
猫背だがスリムなゴブリン。
反った長剣を持っている。人間なら剣士系な風貌だ。
腹部位を守る茶色の軽鎧にサンダルを装備している。
ゴブリンがグラディエーターサンダルとはな。
少しカッコイイぞ。
俺たちが部屋に入るなり、その見知らぬゴブリンは視線を向けてくる。
さすがに、侵入に気付くか。
ホブゴブリンと思われるモンスターは猫背をゆっくり動かし、赤く縁取られた緑目で俺たちを睨み付けてくる。
沿った長剣を構えては、口を広げ――吼えた。
「――ギャッオォォオオ」
「「ギャッギャギャギャ」」
「ゴギャギャッ!」
手前にいた中型ゴブリンたちも速鬼から指示を受けたように叫び合うと、丸盾を持つ中型ゴブリンと、凧盾を持つ中型ゴブリンの二匹が、盾を前に掲げながら突進してきた。
速鬼は後ろで様子を見るようで静観している。
突進してくる中型ゴブへ、最初に仕掛けたのは黒豹。
触手骨剣が丸盾ゴブの足を捉え転倒させると、一気に右方へと足を引き摺り、移動していく。
俺は魔槍杖を正眼に構え持つ。
中型ゴブリンたちを正面から迎え撃った。
すんなりと、槍圏内に入ってきた最初の凧盾ゴブを魔槍杖の矛で普通に突く。
初撃は凧盾により、防がれた。
だが、突きを連続で行う。――突く。――突く。
ゴブは凧盾で魔槍杖の矛を防ぐが、矛は魔竜王バルドーク製。
そう何回も防げるわけも無く、俺の連続突きにより凧盾は穴だらけになる。
最後には凧盾を大きくひしゃげさせて破壊した。
同時に盾を持っていた腕を貫く。
凧盾持ちのゴブリンは腕を負傷すると、叫び声をあげて逃げるように後方へ退いた。
そこに、もう一匹いた中型ゴブリンが蛮剣を振り上げ、肩口を狙う剣線を窺わせる袈裟斬りを繰り出してきた。
――急ぎ魔槍杖を引き上げる。
魔槍杖の上部で、振り下げられた蛮剣を防ぎ、紫の火花が散った。
俺は弾いた反動を利用し、魔槍杖を円回転させる。
そのまま、お返しと言わんばかりに竜魔石の石突を下から弧を描くような機動で中型ゴブリンの股間部位へ衝突させた。
――ズゴッ、と鈍い音を立てゴブリンの臭そうな玉を粉砕。
竜魔石が、中型ゴブリンの腰辺りまで肉や骨を潰しながら喰い込んでいた。
完全にアソコが陥没していると思われる。
「ウギョ? オオォッ――」
変な断末魔の悲鳴をあげて地面に沈むゴブリンさん……南無。
これ、蒼い水晶体が臭くなりそうだな。
念のため、竜魔石から隠し剣を発生させておく。
そのまま魔脚を使い前進。
負傷して後退、逃げていた中型ゴブリンが目に入る。
そいつの頭へ向けて、俺は素早く身体を前方一回転。
――踵を落とす蹴り技を繰り出す。
魔竜王バルトーク製グリーブは踵も硬い。
紫色の踵は、西瓜を割るようにゴブリンの頭蓋を陥没させた。
そのままゴブリンの頭を踏みつけるように着地。
その着地した、制動を狙うかのように速鬼の一閃が来た。
反った長剣による薙ぎ払い――モーションは速い。
急ぎ、その速鬼が繰り出した横薙ぎを防ごうと、魔槍杖の矛を地面に刺し斜めに構えた。
反った長剣と斜めに伸びている魔槍杖が衝突。
耳朶を震わせる硬質な金属音が鳴り響き、魔槍杖の後端にある竜魔石から生えた氷剣が振動していた。
速鬼は一閃を繰り出してきた直後、返し刃を行う素振りを見せるが、俺が魔槍杖を反応させてたのを見て、途中で動きを止めバックステップで後退。
判断も速いしフットワークが良い。
人の動きに似ている。
その後退した速鬼へ向け黒豹が前進していた。
首回りから生えた六本の触手骨剣を速鬼へ伸ばす。
もう黒豹は丸盾を持ったゴブを仕留めたらしい。
右辺には、床で首を掻き切られている中型ゴブリンの姿がある。
黒豹は六本ある触手をしなる鞭のように扱い、骨剣による連続叩き、突きを繰り出していた。
凄まじい連打力。
速鬼は反った長剣を巧みに扱い、後退しながら辛うじて、その連突きを防いでいく。
へぇ、ちゃんと防いでいる。モンスターながら中々やる。
やはり、金貨十五枚の討伐モンスターなだけはあるようだ。
そんな黒猫の攻撃を邪魔しないように、俺は魔脚で速鬼の側面側へ移動。
側面側から牽制を兼ねて、速鬼の足へ紅矛を出し細かく突くと、急な側面からの攻撃に上手く対処できずに、あっさりと魔槍杖の紅矛を喰らっていた。
速鬼はガクンッと、急に動きが鈍る。
――チャンス。<闇穿>を撃ち放った。
紅紫と黒の一条螺旋が風となる矛が、速鬼の脇腹を捉えた瞬間、細い速鬼の体が一気に捩れ千切れて、上下に分断されていた。
速鬼の猫背な上半身が宙に舞い、脊髄の一部が露出した下半身からは燃えなかった臓物が飛び散り、血が勢いよく迸る。
俺の顔を血の奔流が叩いてきた。
丁度良い。血の補給だ。ごくごくと喉越し音を立てて飲んでいく。
「にゃお」
血をごくごくっと飲んでいると、黒猫は“おつかれ”と言ったように軽く鳴き、床に流れる血をぺろぺろと舐め出していた。
「ロロ、舐めてないで、一応、左と右に出入り口があるから警戒ね」
「ンンン、にゃ~お、にゃ」
返事に喉声が混ざっているので、『しょうがないニャ』とかの感じなんだろうか?
フィーリングなので違うかもだけど。
魔石の回収を行っていく。
速鬼の死骸からは中魔石が出てきた。
死骸は傷ついているけど、討伐証拠にはなるので上下に分かれた死骸と共にアイテムボックスの中へ入れておく。
傷ありだから値段は引かれるだろうけどしょうがない。
手に入れた四つの中魔石を生活魔法の水で洗い、ついでに血塗れな顔も洗う。
綺麗にした魔石をアイテムボックスの菱形マークの中へ納めておいた。
これで、残り十一個の魔石をアイテムボックスへ納めれば容量アップの報酬を得られる。
さて、まだ通路は続く。
視線を通路の先へ向けながら、アイテムボックスのウィンドウを閉じた。
行くか。このまま進むとして、通路は上と左。
上の通路を選択。
クリーム色の通路が暫く続く。
通路に湧いていた中型ゴブリン。
モンスター部屋に湧いた速鬼。
それら出現するモンスターたちを、俺と黒猫だけで、順調に倒しながら、Y字型やT字型の分かれ道を適当に進んでいく。
◇◇◇◇
今も通路に湧いていた中型ゴブリンを倒し解体。
時間は掛かったが、中魔石を集めることができた。
魔石を菱形マークへ入れよっと。
早速「オープン」と口に出して、アイテムボックスを起動。
菱形マークを押す。ポチッとな。
◆:エレニウム総蓄量:49
―――――――――――――――――――――――――――
必要なエレニウムストーン:1:未完了。
報酬:格納庫+15:記録庫解放。
必要なエレニウムストーン:100:未完了。
報酬:格納庫+20:カレウドスコープ解放。
必要なエレニウムストーン:200:未完了。
報酬:格納庫+25:ディメンションスキャン機能搭載。
??????
??????
??????
―――――――――――――――――――――――――――
右側にはいつものように必要なエレニウムストーン数が表示される。
左側に表示された大きな菱形マークへと、ラスト一個となった中魔石を入れた。
すると、
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必要なエレニウムストーン:完了。
報酬:格納庫+15:記録庫が解放されます。
―――――――――――――――――――――――――――
完了した依頼の表示が出るとすぐに消えていく。
下から上に繰り上がって新しい依頼が表示された。
◆:エレニウム総蓄量:50
―――――――――――――――――――――――――――
必要なエレニウムストーン:100:未完了。
報酬:格納庫+20:カレウドスコープ解放。
必要なエレニウムストーン:200:未完了。
報酬:格納庫+25:ディメンションスキャン機能搭載。
必要なエレニウムストーン大:5:未完了。
報酬:格納庫+30:フォド・ワン・カリーム・ガンセット解放。
??????
??????
??????
―――――――――――――――――――――――――――
これで、格納庫が拡張されたのか?
記録庫も追加されているといいが……。
いや、ちょいとまて。
新しく下に追加表示された物“フォド・ワン・カリーム・ガンセット”。
もしや、銃か?
そんな期待を感じながら、表示されているウィンドウを消し、またアイテムボックスを再起動してみた。
◆:人型マーク:格納:記録
―――――――――――――――――――――――――――
アイテムインベントリ 54/100
中級回復薬ポーション×128
中級魔力回復薬ポーション×103
高級回復薬ポーション×40
高級魔力回復薬ポーション×44
大白金貨×12
白金貨×26
金貨×98
銀貨×74
大銅貨×264
月霊樹の大杖×1
祭司のネックレス×1
魔力増幅薬ポーション×3
暗冥のドレス×1
帰りの石玉×11
紅鮫革のハイブーツ×1
雷魔の肘掛け×1
宵闇の指輪×1
古王プレモスの手記×1
ペーターゼンの断章×1
ヴァルーダのソックス×5
魔界ゼブドラの神絵巻×1
暁の古文石×3
ロント写本×1
十天邪像シテアトップ×1
影読の指輪×1
火獣石の指輪×1
ルビー×1
翡翠×1
風の魔宝石×1
火の魔宝石×1
ハイセルコーンの角笛×1
魔剣ビートゥ×1
鍵束×1
鍋料理×21
セリュの粉袋×1
食材が入った袋×1
水差しが入った皮袋×2
ライノダイル皮布×3
石鹸×10
皮布×11
魔法瓶×3
第一級奴隷商人免許状×1
魔造家×1
古竜バルドーグの短剣×35
古竜バルドーグの長剣×4
古竜バルドーグの鱗×138
古竜バルドーグの小鱗×243
古竜バルドーグの髭×10
レンディルの剣×1
紺鈍鋼の鉄槌×1
ユニコーンの布印×1
聖花の透水珠×2
死骸×2
魔石が入った袋×1
―――――――――――――――――――――――――――
おぉ、ちゃんと最大容量が増えてる。
八十五から百へ変わり拡張されていた。
新しく“記録”も追加されている。
その“記録”を押してみた。
すると、薄緑色のウィンドウが展開。
――――――――――――
ザンビッシュ
ゴブリン・ブランデル
バット
ゴブリン・ソルジャー
ホブゴブリン
――――――――――――
モンスターの文字が表示されていた。
これは今までに迷宮内で倒したモンスターの名前か?
それとも、魔石を何らかの形でアイテムボックスに放り込めば、その情報が記録され表示されるのかな?
ま、その、どっちかだろう。
ウィンドウに表示されている“ザンビッシュ”をタッチ。
階層別に表示される。
※ザンビッシュ※
モンスター:大鼠
弱点部位:頭
小窓のウィンドウにはモンスターグラフィックが表示されていた。
立体的な映像にタッチすると拡大、縮小もできる。けど、グラフィックといっても、四KやフルHDといった解像度ではなく、ブラウン管のフレーム的な画像なので、どこかチープな印象を受けた。
※ゴブリン・ソルジャー※
モンスター:ゴブリン系
弱点部位:頭、心臓、股間
弱点といっても、頭と心臓は当たり前といえる。
※ゴブリン・ブランデル※
モンスター:ゴブリン系
弱点部位:頭、心臓
そこでアイテムボックスのウィンドウを閉じた。
さて、このアイテムボックスを強化するのも大切だけど、冒険者ギルドの依頼も完了させないと。
迷宮探索を再開だ。
モンスター部屋の上の通路を選択し歩き始めた。
罠は無いが、すぐに魔素の反応がある。
また、中型ゴブリンだろう。
正確な名前は情報によるとゴブリン・ソルジャーらしいが。
案の定、中型ゴブリンが通路の奥から歩いて表れる。
それら中型ゴブリンを倒しながら分岐のわかれた道を幾つか進んだ。
ゴブリンを倒し続けて中魔石は十二個ほど集まった。
この貯まった中魔石は◆菱形マークのアイテムボックスに、まだ納めていない。
冒険者ギルドの魔石収集依頼分だ。
もう十個ぐらい集めて、報酬上乗せを狙うか。
そんな調子で、中型ゴブリンが湧いてる通路を槍で中型ゴブリンを倒し続けて、進む。
順調に魔石が集まっていくのはいいが、肝心の討伐依頼の蝙蝠蟻はどこだ?
まだ遭遇しない……。
俺がワープしてきたところは、ひょっとしてゴブリンの巣があるエリア?
そうとしか思えないほど、ゴブリンの出迎えが多い。
ゴブリンたちの造形に、少し飽きてきた頃……。
あれ? 白色の糞?
白糞のような固形物が、壁際に落ちている。
今までこんな糞のような固形物はなかったが……。
変化の兆しを見せる迷宮通路の様子を窺いながら進む。
どういう訳か、ぱったりとゴブリンは出現しなくなった。
あれ? 死骸だ。
前方にゴブリンの死骸が転がっているのが見えた。
その死骸を確認すると、頭が食い千切られたのか、頭蓋の半分が無くなっている。
ゴブリンと違うモンスターが戦っていた?