千百六十二話 エラリエースの想いと【グラナダの道】たち
「闇と光、融合しているようで融合はできていないのか?」
「……はい。ベートルマトゥルはその融合を狙っていたようですが、完全には無理のようです。一先ずは、皆さんとの出合いに感謝を〝輝けるモノ〟にもお祈りを捧げます……アーメン」
ミレイヴァルが、エラリエースの言葉に少し反応している。
ミューラー隊長、イスラさん、ロズコ、ファウナさん、ミジャイ、ジアトニクスさん、ボクっ娘のエトアさん、アマジさん、テパ・ウゴとビートンさん、ギンさん、ピエールさん、ヴィーネ、アクセルマギナ、キサラ、フィナプルス、キッカ、ヘルメ、グィヴァもエラリエースを注視した。
注目を浴びて緊張したような表情となったエラリエースが、
「スキルを使用します。<神剣再生ピナ・ナブリナ>――」
エラリエースは己のスキルを発動。足下の相棒の体毛と触手が一斉に離れた。
警戒したわけでないと思うが、相棒の桃色気味の頭皮が見えた。
とエラリエースが握っていた神剣ピナ・ナブリナの輝きが強まる。
額に刻まれている破瓜型の十字架も光が強まった。
エラリエースは、苦悶の表情を浮かべて「ぐっ」と苦しげな声を漏らす。
と、口からどす黒い血を吐いた。
相棒の頭髪に触れたどす黒い血は蒸発し消える。
濃厚な闇属性の塊にも見えた。
カレウドスコープのスキャン結果にはなかったが、ベートルマトゥルかテーバロンテが、エラリエースの体内に残していた残骸か?
そして、先ほどの血のクリスタルとは異なる反応だ。
更にエラリエースの背と下腹部辺りの真上に浮かんでいた一部の陰陽太極図は闇の部分だけが徐々に消えて光だけとなった。
双眸からの血の涙も半透明な涙に変化する。
エラリエースは、
「良かった……成功です。神剣ピナ・ナブリナのお陰で、神界騎士の能力の一端は取り戻せた」
と語ると、その体から光属性の魔力が溢れていく。
<闘気玄装>と似たような<魔闘術>系統が強まったかな。
「「「「おぉ」」」」
皆がエラリエースの覗かせている体の表面に赤みが射したような気がした。
衣装は簡素な白いワンピース。ヴィーネかキサラが渡したんだろう。
「元気になったのなら嬉しい。神剣ピナ・ナブリナの効果で魔界王子テーバロンテや枢密顧問官ベートルマトゥルなどの影響が減ったのか?」
「はい、しかし、まだ私の体は闇属性の魔力に蝕まれている。ですが、神剣ピナ・ナブリナが扱えるので光神ルロディス様と戦神ビィルフエイト様は私を見捨ててはいなかったのでしょう」
エラリエースは語ると、額の破瓜型の十字架が輝いた。
右端の架は削れていたが、少しだけ復活しているようにも見えた。
「だから、メイラさんは神剣ピナ・ナブリナを俺に託したのか」
「姉に預けた神剣ピナ・ナブリナがこんな形で返ってくるとは思いませんでしたが」
「そうだろうな」
「姉から私のことを?」
「少しだけ、【見守る者】の高位〝捌き手〟一人で神界騎士団の第三部隊長だったと聞いている。そして、魔界王子テーバロンテの大眷属と共に、〝堕光使エラリエース〟として、エラリエースは討伐対象だった。神界騎士団側は君の命を狙っていた。交渉の際だが、【ヴェナリア特務機関】のレガトゥスさんと戦いになりかけた」
「……そうだったのですね。すみませんでした」
「気にするな。救出直後に言ったがエラリエースを助けたのは、小さなジャスティスで動いた俺の信条だ」
「はい。立派な信条です。情に厚い方なのですね」
「ありがとう。礼なら、そこにいる、もじゃもじゃな頭髪のミジャイに言うんだな」
「え、俺ですかい?」
「おうよ、魔傭兵ラジャガ戦団の部下たちの救出を頼んだのはミジャイだからな。ミジャイが頼んでこなければ、他の用事を優先していたはずだ」
「ミジャイさん、ありがとうございます」
「……どう致しまして……しかし、ロズコを救えたのは、信義則を持つシュウヤ陛下の実力があってこそ。ロズコ以外の魔族たちを救った行動も侠気の一環。更に言えば、レイブルハース地方の救済も、秘宝をレイブルハースにあっさりと返上したからこその救済ですからね。ですから、とんでもない魔英雄で魔皇帝様ですよ」
「ふふ、そのようです。魔英雄で魔皇帝様がシュウヤ様。そして、皆さんに感謝です」
エラリエースの言葉に皆が笑顔となる。そのエラリエースに、
「……堕光使とは、堕天使と同じような言葉でいいんだな?」
「はい」
「が、光属性を持つエラリエースだ。堕光使ってのはどうも合わないような気がする」
エラリエースは頭部を左右に振った。
「……光神ルロディス様の眷属だった私は闇を受け入れた。その時点で堕光使なのです。神界セウロス側から討伐対象となるのは当然」
原理主義か。
「メイラさんが神剣ピナ・ナブリナを俺に託したように、神界側のすべてが同じ意見ではないだろう?」
「……それはそうですが……」
メイラさんたちの人数が救いだな。
「……闇があろうとエラリエースは光属性を持ち、神剣ピナ・ナブリナを扱えるんだ。それは同時に光神ルロディス様がエラリエースを大切な眷属の一人だと思っている証拠だと思う」
そう語ると、エラリエースの蒼い瞳が揺れて涙を流す。
「……そう言って頂けると、とても嬉しいです。ありがとう」
笑顔を意識し、
「おう。では、先ほど会話にあったように、これからのことを説明しとく。俺たちは魔界王子テーバロンテの元居城バードインを目指す」
「……はい、あ、先ほど悪業将軍ガイヴァーを倒したとイモリザさんが歌うように仰ってましたが……」
「おう。悪神ギュラゼルバンの大眷属、悪業葉衝軍の将軍の一人、バードイン殲滅部隊長だった悪業将軍ガイヴァーはもう倒した」
「……凄い。では、居城が悪神ギュラゼルバンに攻められていた魔界王子テーバロンテは本当に滅したのですね。あ、空が……」
「おう。この手で倒した」
「え……」
エラリエースはきょとんとして驚いている。
「閣下は魔界王子テーバロンテを滅したのです。周囲地域も平定しました」
「おう。魔傭兵ラジャガ戦団のミジャイの部下の救出にここに来たのも、その流れだ」
ミジャイはロズコと共に会釈。
【グラナダの道】にイスラさんと回りの魔族たちも笑みを浮かべてエラリエースに応えていた。
エラリエースは頷いて、
「……なるほど」
と納得。何かを思い出すような表情を浮かべていた。
ヘルメは、
「平定の流れですが、【バーヴァイ平原】に魔界王子テーバロンテが滅した影響で【ケーゼンベルスの魔樹海】から大量のモンスターが流入してきたのです。それを倒した閣下たちは、【ケーゼンベルスの魔樹海】に出兵しました。そこで魔皇獣咆ケーゼンベルスと交渉し、使役に成功し広大な【ローグバント山脈】に一気に移動し、〝列強魔軍地図〟に地名を出現させておられた――次は、【源左サシィの槍斧ヶ丘】に向かいました。魔君主に当たる源左サシィと和平交渉の流れから突如、源左に攻め込んできたマーマインの部隊を返り討ち。そのまま【ローグバント山脈】にあったマーマイン砦へと進撃を開始した閣下たちは、あ、わたしはこの時バーソロンと共に【源左サシィの槍斧ヶ丘】の守りにつきました。【源左サシィの槍斧ヶ丘】を表と裏で攻めてきたマーマインは大軍でしたからね。閣下たちは無事に、吸血神ルグナドの<筆頭従者長>ビュシエ・エイヴィハンの片腕を取り込んでいたマーマインの親玉ハザルハードを撃破し、【ローグバント山脈】を平定したのです。その流れで源左のサシィと吸血神ルグナドの<筆頭従者長>だったビュシエを眷属に迎えた。【バーヴァイ平原】の隣の【古バーヴァイ族の集落跡】はまだ行ったことがないですが【源左サシィの槍斧ヶ丘】と同様に平定したことになります」
「「「おぉぉ」」」
【グラナダの道】の面々と助けた魔族たちが、ヘルメの語りを聞いて興奮。
「バーヴァイ城には、魔界王子テーバロンテが残した魔の扉という【バードイン城】に転移できるアイテムがあったから、それを利用しバードイン城に転移し、悪業将軍ガイヴァーを倒したんだ。相棒の飛行もすこぶる速いが、転移は一瞬だ」
「はい」
「それで、ミジャイとヘルメが回収していた生成り色の魔力を放つ風景画なんだが、魔力を込めると小さい魔族が出現し【バードイン城】の蔵書室へと絵画が変化した。更に、宝物庫のような場所にも変化を遂げたんだ。その小さい魔族は宝物庫へと案内してくれるような動作を取っていたんだが……当時は、ミジャイの部下ロズコ救出を優先したからな」
エラリエースは胸元に手を当て、
「……財宝よりも命を大事にした。本当に信義誠実の原則のまま、部下思いなのですね。納得です」
「あぁ、信義は大切だと思っている」
「ふふ、そんなシュウヤ様の仲間になれて嬉しいです」
エラリエースの眼差しは熱い。俺も嬉しくなった。
「おう。俺たちの方針を説明しとくと、来る者は拒まず去る者追わずの精神が基本。だから、エラリエースが自由にどこに行っても構わない」
「では、このままシュウヤ様の仲間で皆様の活動をお手伝いさせてください」
「了解。喜んで迎えよう。改めて、俺の名シュウヤ・カガリ。呼び名は自由に呼んでくれ。これからもよろしく頼む」
「はい。シュウヤ様。わたしはエラリエース・トバリエリといいます」
「分かった」
「閣下、仲間だけですか?」
「おう」
ヘルメの顔色には『眷属に誘わないのですか?』と書かれているような気がしたが、まだ縛りたくない。
そこで、【グラナダの道】のミューラー隊長とイスラを見る。
すると、ヴィーネとヘルメとグィヴァとイモリザは、小さい血のクリスタルを拾い<血魔力>や魔力を通していた。血のクリスタルは血の霧のようなモノを生成していく。
血の霧は魔法陣を模りながら霧散し、各自、血の魔力を得ていた。
ヴィーネは、
「血のクリスタルはわたしたちの<血魔力>とは少々異なるようですね」
「はい、あ、ビュシエなら扱える?」
ヘルメが皆に聞く。頷いた。皆も頷く。
「<血魔力>のブラッドマジックの大本は吸血神ルグナド様だからな。ビュシエは<血道・血槌轟厳怒>など<血道・武具生成>も扱える」
「サシィたちは学びたいと、言っていました。源左を治めるのに忙しいと思いますが、血文字のメッセージ交換で色々と学んでいるはずです」
頷いた。
光魔騎士バーソロンも<血魔力>のブラッドマジックを学びたいと言っていた。
バーヴァイ城に帰ったら<筆頭従者長>に引き上げるとしよう。
そのことではなく、エラリエースに
「エラリエース、血のクリスタルについて質問してもいいか?」
「はい」
「エラリエースは血のクリスタルの生成が可能なのか? そして、血のクリスタルを元にブラッドマジックが使えるのかな」
「はい、生成が可能で、血のクリスタルを触媒にしたブラッドマジックは私も少し使えます。私が闇を受け入れた証拠です……」
「なるほど……」
「魔界王子テーバロンテは吸血神ルグナドの<血魔力>のブラッドマジックを応用し、私に用いていた。更に発展させたのが、最高諮問機関の枢密顧問官たち、その一人がベートルマトゥルです。ですから私も実験体の一人ですね」
「魔歯ソウメルと百足高魔族ハイデアンホザーの魔手術を受けていた実験体一号と二号と、傷だらけの魔族を助けたが、エラリエースと同じような実験体か……」
「……はい、窪地には数名の実験体が、他の魔族たちと戦ってましたね」
エラリエースの発言に頷いた。
窪地の戦いもすべてが敵に見えたが……。
「……あ、すみません、責めているわけではありません」
俺の顔色から勘ぐったエラリエースがそう発言してきた。
「分かっている」
「ご主人様は、【グラナダの道】と刑務所にいた魔族たちを救い、レイブルハースの夫婦を救い、エラリエースも助けた。<魔手術>を受けた魔族たちと、つぎはぎ状の体を持つ魔族たちと実験体一号と二号も救いました。十二分の活躍です」
誇らしげなヴィーネの語りに嬉しさを覚える。
頷いた。
相棒の背の黒毛のソファに寄りかかって、まったりとしている魔族たちの心が傷付いているのなら癒やしてあげたい。できれば平和に過ごしてほしい。
その心の傷が己の強さになっているのなら余計なお世話だが……。
エヴァにケアを頼もう。
そして、自由を望むなら魔界セブドラは危険かも知れないが、自由に羽ばたいてもらおうか。と、皆に笑顔を向ける。エラリエースは頬を朱に染めた。
正直言えば、苦しんでいる方々全員を救いたかった。
が、それは傲慢だよな。
昔、トン爺やラファエルが貴賤なく、俺に語ってくれた言葉を噛みしめる。
「閣下は使者様は無敵な~魔皇帝~♪」
イモリザが歌い始める。キサラがダモアヌンの魔槍をギターのような楽器に変化させて弾き始めた。
それをBGMに、
「ミューラー隊長たちも、俺たちと付いてきますか?」
ミューラー隊長は微かに頷く。
表情は灰色の兜に包まれているから分からない。
すると肩に乗っている銀灰猫が片足を上げて、
「にゃァ」
と鳴いて挨拶。今度は左足を上げてまた「にゃァ~」と挨拶していく。
片足を交互に上げながら「にゃァ、にゃ、にゃ~」と鳴いていた。
餌をくれに見えるがミューラー隊長たちに何かを伝えているんだろう。
が、片足を上げる度に上半身を少し上げて体勢が少し横に傾くから、片耳が首筋に触れて擽ったい……触れる度にブルッブルッと片耳が震える。
思わず、擽ったくて肩が自然と数回上がってしまった。
「ふふ、シュウヤ様が面白い顔に」
「ご主人様、銀灰猫の耳が触れて、擽ったいのですね。ふふ」
ギターを止めたキサラとヴィーネは笑いながら語る。
銀灰猫の頭部から体を撫でていた。
銀灰猫は俺の首後ろを踏みながら左肩に移動。
大人しくしてくれた。
黒猫のように俺の耳朶を叩く遊びはしてこない。
銀灰猫の可愛い吐息を感じていると……。
ミューラー隊長は、
「……我らは……」
呟く。イスラさんとヴァイスンさんとトクルさんに視線を向けた。
ミューラー隊長は、灰色が基調な兜と甲冑装備を身に着けているから、素顔はまったく分からない。が、素の肉体はイスラさんと違い人族系統の体付きと分かる。
関節部分から鎖帷子系装備を覗かせていた。
イスラさんとヴァイスンさんとトクルさんは黙ったまま胸の甲冑に籠手を当てて頷く。
甲冑から小気味良い金属音が響いた。
「「「「……」」」」
背にいた魔鋼族ベルマランたちも一斉に胸の甲冑を籠手で叩く。
ジアトニクスさん、アマジさん、ビートンさん、ギンさん、ピエールさん、ヒビィさんに、まだ名前の知らない金髪の魔族さんは微笑みを交えながら、その様子を見ていた。
各自の顔色から、もう、その答えは出ていると分かる。
太ましい鋼の甲冑が渋いヴァイスンさんは、
「隊長、俺たちは……グラナダの道、故郷も大事だが……」
「ヴァイスン……うん、そうよね、目的は達したけど……」
と、魔鋼族ルクサード・ベルマランの二人が発言してから俺を見る。
「あぁ……イスラもだな」
「そうだ、シュウヤ殿には多大な恩がある。同時に【バードイン迷宮】を攻略し、レイブルハース地方を救う偉業を成し遂げつつも、それをごく平然と当たり前のように語り、もう次のことを考えている……私は……感動の連続に頭と体が追いついていないのに、なんということだろうか……正直言うが胸が熱くなっている……」
と、くぐもっているが、女性らしい声音で語ってくれた。
というか、告白か? 思わず、視線を巡らせてしまう。
キサラとヴィーネは無表情。
怖いがな。そこは怒ったりすねたりと、してくれたほうが、野郎としてはありがたいところなんだが、指摘はしない。ヘルメとグィヴァは気にしていない。
ミューラー隊長とイスラさんは短く語ると頷く。
そして、ミューラー隊長は、
「あぁ、俺も打ち震える思いが強い!」
と宣言するように語る。
「「「「「「おう! グラナダの道!」」」」」」
【グラナダの道】の面々が声を合わせた。
イスラさんも、
「皆、グラナダの道! 皆の伝説、魔鋼族マカラ・ベルマランのイスラは、今、ここに誓う、私は、シュウヤ様に忠誠を誓うと――」
と、魔剣ラガンハッシュを掲げた。
柄頭のハトビガ魔鋼の黒水晶が少し輝く。
「「「「おぉ」」」」
グラナダの道とファウナさんたち魔族たちも歓声を発した。
イスラさんは俺に視線を向けてから片膝をゆっくりと下ろした。
「忠誠を受け入れてくれるか、シュウヤ殿!」
「勿論、受け入れよう。魔鋼族マカラ・ベルマラン・イスラ。先ほどと同じく自由だ」
「分かった! では、魔傭兵ラジャガ戦団でもいいから末席に加えて頂けないだろうか」
「了解したが編成は、バーヴァイ城で決めてもらう。バーヴァイ城にいる光魔騎士バーソロンや光魔騎士グラドや黒狼隊などと応相談だ。もう旅に出たと思うが、<筆頭従者長>のアドゥムブラリもいる。魔皇獣咆ケーゼンベルスも散歩に出てなきゃいるだろう。<筆頭従者長>のエヴァとビュシエがいる。エラリエースが知っているか分からないが、<神剣・三叉法具サラテン>の沙と羅と貂もいる。更に魔界大戦を経験している『六眼トゥヴァン族』のキスマリ。蜘蛛娘アキと蜘蛛娘アキの配下のアチュードとベベルガもいる。そして、光魔騎士バーソロンの配下には高級将校の指揮も可能なアチがいる。将校はベイア、キョウカ、ドサチ、ベン、ターチベル、デンだ。黒狼隊はツィクハル、パパス、リューリュで、黒い狼ヨモギ、黒い狼コテツ、黒い狼ケンに乗っている。黒い狼たちは、魔皇獣咆ケーゼンベルスの眷属たちで、【ケーゼンベルスの魔樹海】に棲まう狼軍団たちだ。因みにアチは、俺の眷属化の予定だったりする」
「シュウヤさん、全員を覚えているんですね」
「シュウヤの旦那は記憶力もある!」
「本当に魔君主だと分かるぜぇ」
「あぁ、だが、部下の一人一人を覚えてくれる魔君主はそうはいないと思うぜ」
「はい、ちゅごいです」
「「……ほ・れ・る」」
テパ・ウゴさんの、鋼のような胸筋と乳首をビクビクッと動かしながらの言葉だ。
二つの頭の口が揃って怖い言葉を放つのは参る。
「たしかに……」
「<筆頭従者長>たちには挨拶をしたい」
「げろげろ、げろげーろ(あぁ、俺は魔皇獣咆ケーゼンベルスが気になる)」
魔嗅豚族プレグシュルのファウナさんと、ピエールさん、ビートンさん、エトアさん、ポーさん、魔蛙夢蔵右衛門などが語ってくれた。
ファウナさんのノースリーブの戦闘装束は素敵だ。
三腕の魔族でもあるんだよな。
魔鋼族ベルマランのイスラさんは、
「……分かりました。がんばって覚えます。ミューラー隊長たちもどうだ?」
とミューラー隊長に聞いていた。
「俺たち……我らもシュウヤ殿の配下に……」
「おう。配下といっても、もう仲間だろ。で、バーヴァイ城を起点に、自由に故郷を目指したいなら目指せばいいさ。なんだったら、セラの【塔烈中立都市セナアプア】などにも来たいなら案内できる。セラも殺伐としているが、魔界に負けず劣らずの楽しい仲間は多いぞ。定期的にレベッカの声を聞きたくなるからな」
「そ、そうなのですか!」
と、ヴィーネが声を高くして驚いている。
――なして、そんなおどろく。と、両腕でスペシウム光線を造るようなポージングで、鈍ってしまう反応となった。
「あぁ、ユイもミスティもビーサもだ」
「にゃおぉぉ~」
相棒も同じ気持ちらしい。
ミューラー隊長は、
「では、シュウヤ殿、暫くお世話になります。皆もいいか?」
と、近くにいる魔鋼族ベルマランのヴァイスンさんとトクルさんに聞いていた。
二人とも大柄の魔鋼族ベルマランで鋼の色合いが似ている。
「はい! ミューラー隊長、俺たちもシュウヤ殿の配下に! 恩を返す!」
「そうね。侠気溢れるシュウヤさんなら祖先たちも納得するでしょう」
ヴァイスンさんとトクルさんは納得。
すると、背のほういる【グラナダの道】の魔鋼族ベルマランたちが、
「「俺たちも賛成だ!」」
「「あぁ、命を救ってくれたシュウヤ殿たちと一緒に活動したい」」
「「あぁ、世のため魔族のためなる!」」
「【バードイン迷宮】の出合いは永遠だ!」
「「あの共闘した瞬間は忘れないぜ」」
と声が響きまくってきた。
その中にいる魔鋼族ベルマランのラムーさん、バスラートさん、モイロさんも叫んでいる。
バスラードさんは〝魔砂状図〟を使える。
ラムーさんは霊魔宝箱鑑定杖が使える。
バーヴァイ城に留まってくれるなら、その都度鑑定を頼めば楽になるか。
が、ミューラー隊長たち【グラナダの道】には仲間を探す目的もあるだろうからな。
後で〝列強魔軍地図〟も触ってもらうとしようか。
魔界セブドラを放浪していたようだし、〝列強魔軍地図〟に新しい地名が描写されるはずだ。
続きは今週。
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