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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1141/2033

千百四十話 広場の踊り場の確保と十字路と軍団の争い

「戦いはまだまだのようですが、シュウヤ様、これを」


 魔嗅豚族プレグシュルのファウナさんからポーションをもらった。


「宝箱のポーションか、ありがとう――」


 早速、蓋を開けて瓶を傾け、中身の液体を飲み干した。

 瞬時に活力を得て魔力が回復――。


「ふふ、はい」


 ファウナさんは美人さんで笑顔が素敵。衣装もノースリーブの戦闘用の装束。

 おっぱいの膨らみとくびれた腰のバランスが抜群で、セクシー女優になれる。

 が<魔多嗅覚器官>を用いる時には、顔が豚などの鼻だらけに変化する。

 と、俺がポーションを飲む数秒の間にキサラは階段の一段目と二段目の魔歯魔族トラガンを倒し切った。そのまま三段目の階段に片足を踏み出して高く跳躍を行う。

 宙空から<血魔力>を有した<豪閃>系の薙ぎ払いを四段目にいた魔歯魔族トラガンの胴体に繰り出し、輪切りにして真っ二つ。

 分かれた死体が転がって障害物となった。

 穂先の髑髏刃から迸る血飛沫が魔刃に見える。

 キサラは着地しながら五段目にいる魔歯魔族トラガンをダモアヌンの魔槍で突き倒し、横に跳躍。四段目にいた魔歯魔族トラガンの頭部を厚底のブーツで何度も踏みつけて頭部と上半身を潰してから跳ぶ。更に四段目にいる魔歯魔族トラガンの頭部をダモアヌンの魔槍で突き、それを支えに棒高跳びを行うように前方へ移動。

 同じ四段目にいる魔歯魔族トラガンの頭部を踏みつけるように着地後、その魔歯魔族トラガンを踏みつけてまた前方に跳ぶ。

 そのままリズミカルにタップダンスでも踊るように魔歯魔族トラガンたちの頭部や肩を潰しながら四段目にいる魔歯魔族トラガンたちの頭上を駆けてダモアヌンの魔槍を振るい回していく。柄孔から出ているフィラメント状でも魔歯魔族トラガンたちの体を切断しまくる。キサラは八陣の鋒矢の陣を模るように降りてくる魔歯魔族トラガンを倒しまくり、その魔歯魔族トラガンの死体を踏みつけながら四段目を移動して、四段目と五段目の魔歯魔族トラガンを倒していく。本格的に四段目の中央から五段目に突入した。

 鋒矢の陣に見えた魔歯魔族トラガンの陣は横陣が中央から崩れた形となった。

 が、階段の右端から降りてきた魔歯魔族トラガンには、ダモアヌンの魔槍はタイミング的に届かない。


「あ、討ちもらしです――」

「御使い様、私が」

「大丈夫だ。俺が対処する」

「はい」

「すみません――」

「気にするな、死体もあるし、この階段は広いからな。キサラはそのまま階段の中央の敵を倒し続けてくれ」

「はい!」

 

 フォローに出ようとした闇雷精霊グィヴァは相対した魔歯魔族トラガンを両腕の雷剣で突いてから斬り刻んでいた。

 階段の端から下ってきた魔歯魔族トラガンの一体に向け<鎖>を射出――。

 その魔歯魔族トラガンは<魔闘術>系統を強めた。

 エナメル質の肌の両腕を拡げ巨大な歯の盾にして頭部と上半身を守る。

 が、梵字が輝く<鎖>には無意味――。

 両腕の歯盾ごと頭部を穿った。<鎖の念導>でその<鎖>を操作――。

 魔歯魔族トラガンの死体を雁字搦めにしてから、一本釣りの要領でグイッと引いて背後の広場中央へと放り投げた。あ、相棒が釣られて走ってしまった。

 急ぎ、


「――待ったロロ、投げた死体に戯れないでいい。踊り場にいる魔歯魔族トラガンを倒し、キサラのフォローだ」


 と言うと、相棒は黒虎から黒豹の姿になりながら「にゃお~」と鳴いて、近くにいる魔歯魔族トラガンに触手骨剣を喰らわせていた。

 それを見ながら<鎖>を消す。

 と、階段の両端から雪崩の如く魔歯魔族トラガンたちが降りてきた。

 <血鎖の饗宴>を前方に展開させながら階段を上がり、降りてくる魔歯魔族トラガンを溶かしていくほうが無難かな。

 それにヘルメだけで魔歯魔族トラガンの源泉、湯水の元栓を閉じることが可能かどうか。この階段の先は未知数。先ほども考えたように、他にも強敵がいる可能性がある。

 が、まずは踊り場付近にいる魔歯魔族トラガンたちの殲滅が先か。

 キサラのお陰で踊り場への増援は減ったが、俺たちがいる踊り場付近には、まだ百体前後の魔歯魔族トラガンがいる。

 そして、先ほどから数回見せていたように、ムクラウエモンは桃色の舌を絡めた魔歯魔族トラガンの死体を武器にしていた。

 状態異常攻撃のようなムクラウエモンの泡ぶくブレスは連発は不可能なようだ。

 あのブレスは集団戦用の奥の手かも知れない。魔力も消費するんだろうな。

 俺の<血鎖の饗宴>も結構な<血魔力>を消費する。

 幸い魔歯魔族トラガンの血を吸収しまくりで、余裕を持って放てるが……。 

 踊り場にいる魔歯魔族トラガンたちは、囲んできた新手の【グラナダの道】と元囚人たちを見て、


「「「「ギョバ!」」」」

「「「「ギョヴィ!」」」」


 と叫んで興奮するや否や体の一部を蛇腹剣に変化させてロズコとイスラさんにエトアさんとミューラー隊長たちへ伸ばした。

 <血液加速(ブラッディアクセル)>は解除していたが――。

 もう一度<血道第三・開門>を意識し再発動――。

 <血液加速(ブラッディアクセル)>を使う。

 <血魔力>の加速感を得ながら斜め後方に移動し、エトアさんの前に立つ。

 そして<鎖型・滅印>を意識、発動――。

 両手首をスナップさせて<鎖>を連続射出――。

 蛇腹剣の軌道はお見通し――。

 すべての蛇腹剣を狙い澄ました<鎖>が貫いた。

 <鎖の因子>から弾丸を撃ちまくるように<鎖>を連続射出。

 蛇腹剣と魔歯魔族トラガンたちを<鎖>の連射攻撃で溶かすように蜂の巣に処した。


「魔鋼自動連弩よりも連射速度があり、魔鋼弋射のように相手を絡め取ることも可能な鎖攻撃……」


 ミューラー隊長の言葉だ。 

 そこにムクラウエモンに乗っているポーさんが煙管から笛の音を響かせる。

 ムクラウエモンは、


「げろげろ、げろげーろ、いっさむ――」

 

 と鳴きながら、先ほどと同じく煙が混じる泡ぶくブレスを吐いた。

 泡ぶくブレスを浴びた周囲の魔歯魔族トラガンたちは蝋人形のように固まる。

 正確には、木蝋か石化か麻痺か不明だが、不思議な中距離攻撃だ。

 そして、ムクラウエモンの言語は<魔法真紋・魔蛙・夢蔵右衛門・使役>のスキル獲得によって理解できるはず……が、泡ぶくブレスを放つ際の言葉は理解できず。

 特に〝いっさむ〟が謎だ。

 新種の蛙の鳴き声と言えばそれまでだが、アラビア語やラテン語っぽいニュアンス。

 固まった魔歯魔族トラガンに<鎖>を射出し、頭部を穿つ。


「「「「おぉ!」」」」

「「わぁ~」」

「魔蛙ムクラウエモン殿とポー殿にはこのような音楽系スキルが!」

 ミューラー隊長たちがムクラウエモンの泡ぶくブレスが周囲に与えた影響を見て驚く。

「「笛の音はセイレーンの人魚的だった」」

「テパ・ウゴ、今のは魔声魔法でもないし、音も少し違うだろ」

「「俺にはそう聞こえただけだ」」

「魔蛙なだけに、毒霧系統ってことか?」

「魔大蛙ピガランダーは毒霧を吐くからな!」

「魔歯魔族トラガンに効く神経毒ってことか!」

「シュウヤ殿、鉄格子の部屋を調べる前に、暫し参戦――」

「驚いてないで、シュウヤさんに続け!!」

「「「イエッサー!」」」

「「チャンス!!」」

「皆、踊り場の魔歯魔族トラガンを殲滅しよう――」

「「「「了解!」」」」

「「行くぜぇ」」

「「「おう!」」」

「「「「「「はい!」」」」」」

 

 皆で固まった魔歯魔族トラガンたちを破壊するように倒しまくった。

 

 闇雷精霊グィヴァの雷腕剣舞が凄まじい。

 続いて、イスラさん、アクセルマギナ、ミューラー隊長、ミジャイ、ロズコ、セブランさん、バスラートさん、モイロさん、ファウナさん、ジアトニクスさん、アマジさん、ビートンさん、ギンさん、ピエールさん、ヒビィさん、メトマさん、パデフィンさん、テパ・ウゴさん、ポンガ・ポンラさん、エヤさん、セクさん、ナッセンさんたちも一気呵成に囲みに加わり、魔歯魔族トラガンたちを潰していく。得物はそれぞれ特徴があった。

 ポンガ・ポンラさんは骨のバルディッシュ系の斧と槌が融合したような両手武器を持つ。豪快にその両手武器を振り下げ、厳つい槌の部分で固まった魔歯魔族トラガンを粉砕していた。頭部が二つで筋肉隆々なポンガ・ポンラさん。

 テパ・ウゴさんと同じ魔族っぽいが、背中の筋肉鎧が異なった。

 右肩にもテパ・ウゴさんにはない骨の突起物があった。

 二つの頭部は女性っぽいし興味深い。観察を強めたくなるが……あまりジロジロ見ると、テパ・ウゴさんのように勘違いされてしまう可能性が大。

 あまり見ないようにしよう――。

 俺も<鎖>で殲滅戦に参加し、踊り場の戦いは終局に向かった。

 ムクラウエモンは体を小さくさせてポーさんの背後に移動。


「よーし、踊り場の確保は成功――死体処理は俺に任せて、ミューラー隊長たちは先ほど話をしたように、鉄格子の部屋を頼む」


 ――<血鎖の饗宴>で踊り場に散らばる魔歯魔族トラガンの死体を溶かすように処分していった。


「――はい。では、エイトランとセブランはこの場に残って魔歯魔族トラガンに備えろ。ラムーたちは付いてこい」

「「「「はい!」」」」

「「「「了解」」」」

 

 ミューラー隊長たちは鉄格子の前に移動する。

 ルクサード・ベルマランのヴァイスンさんとトクルさんもミューラー隊長に付いていく。バスラートさんとモイロさんとラムーさんも続いた。

 ボクっ娘のエトアさんとジアトニクスさんも小走りでついて行く。

 鍵開けが得意と言っていたビートンさん、<中罠解除・解>を持つギンさん、<大罠解除・即>を持つピエールさんも続いた。


 一方、イスラさんと一部の【グラナダの道】の面々とロズコとミジャイに元囚人の魔族たちは踊り場に残り、キサラから逃げるように下りてきた魔歯魔族トラガンを各個撃破していく。

 ――死体処理の<血鎖の饗宴>を終えながら階段前に移動した。

 俺に向けて無数の魔歯魔族トラガンの死体を運んでくれた闇雷精霊グィヴァに、


「グィヴァ、右目に戻ってくれ。キサラと共にヘルメを追う。魔歯魔族トラガンの根元を断つ」

「分かりました――」


 と、闇雷精霊グィヴァは一瞬で体を雷状態に変化させながら飛来。

 怖い閃光を頭部に浴びた気分となったが、無事に俺の右目に帰還してくれた。


 そこで、ヴィーネに血文字を――。


『ヴィーネとキッカ、そろそろだと思うが、俺は広場右の階段を上がり、魔歯魔族トラガンが次々に下りてくる根元を断ちに向かう。<霊血の泉>と<分泌吸の匂手(フェロモンズタッチ)>を行った場所の天井は【バードイン霊湖】と繋がっていて、そこには二匹の大きな鮫がいるが、俺が助けたレイブルハースという名の神格を有した存在とその妻だから、話すことになったら失礼がないように。ピュリンたちにも伝えておいてくれ。あと、俺を追い掛けてきてもいい』

『分かりました』

 

 ヴィーネとの血文字を終わらせた。

 

 階段を上がっているはずの液体状のヘルメは戻ってこない。

 ヘルメが血文字を使えたらかなり便利だが、できないものは仕方ない。

 そして、今も階段ではキサラが躍動中。

 姫魔鬼武装のマスクは砂漠鴉ノ型に変化している。高速戦闘タイプだ。

 武器はダモアヌンの魔槍から仕込み魔杖に変化させて戦っていた。ダモアヌンの魔槍とフィラメントも間合いは広いが、さすがに端の魔歯魔族トラガンには届かないし、端に移動したらしたで、中央から下りてくる魔歯魔族トラガンを潰せなくなるからな。それに、倒した死体の処理も大変だ。

 中央の階段は積み重なった魔歯魔族トラガンの死体で見えなくなり、崖のようになっている。とはいえ、キサラのお陰で魔歯魔族トラガンが下りてくる数は極端に減った。

 階段の端から下りてきた魔歯魔族トラガンは――。

 俺の<鎖>や皆の得物でめった刺しにして倒す。

 が、魔歯魔族トラガンは硬すぎる。

 アクセルマギナの赤いブレードはかなり効くが、皆の得物は殆どが弾かれていた。メイス系が普通に効く程度か。

 ムクラウエモンの泡ぶくブレスを喰らわせないと相性が悪い。

 そして、ポーさんの得物の煙管は凄い武器ってことだ。

 火口と雁首の吸い口をつなぐ管の羅宇(らう)は頑丈で、魔法文字も刻まれているから格好いい。


「にゃ、にゃ、にゃ~」


 黒豹の姿に戻っていた相棒も踊り場に留まり、先端が黒豆型の触手を幾つか前方に出して皆のフォローに徹していた。

 少しドヤ顔気味か? 皆に指示を出しているつもりのようだ。可愛いから許す。

 と、鉄格子に向けて<罠鍵解除・極>を繰り出しているエトアさんが見えた。

 周囲にはミューラー隊長たちが控えているから大丈夫だろう。

 

 近くにいるロズコとミジャイたちを見て、


「相棒にアクセルマギナ、そして皆、俺はこれから上に向かう。階段から下りてくる魔歯魔族トラガンの根元を断つためにな。で、今、<罠鍵解除・極>の途中だから、ポーさんとムクラウエモンは、エトアさんたちが鉄格子の部屋を開けた際に備えてくれ。更に、俺たちから逃れるように階段を下りてきた魔歯魔族トラガンたちの対処も頼む」

「「「はい」」」

「おう! 任せろ!」

 

 ポーさんを頭に乗せているムクラウエモンが壁沿い側に少し移動した。

 その間にも、キサラは階段を上がりながら次々に魔歯魔族トラガンを仕留めていく。

 仕込み魔杖の杖のはばき金から銀色の魔刃が伸びる。迸っている魔刃の色合いはムラサメブレード・改とは異なるが、ナ・パーム統合軍惑星同盟の品にも見えてくる。

 そうして黒魔女教団の剣術と〝黒呪咒剣仙譜〟で学んだ剣術を披露していく。

 槍、剣、匕首に、紙人形などの魔術も扱う四天魔女だったキサラはやはり凄い。

 

 その万能なキサラに向け、


「キサラ、俺も出る。<血鎖の饗宴>を使うから、それを念頭に置いてくれ」

「分かりました――」

 

 キサラは階段の右端に跳躍――。

 さて、俺も、とその前に、


「ロロとアクセルマギナ、鉄格子の中にいるかも知れない敵を見張るか? それとも俺と来るか?」


 と聞くと、黒豹(ロロ)はゆっくりと瞬き、可愛い。

 そして頷くような素振りをしてから、


「ンン、にゃ」

 

 と鳴いて俺の足に頭部をぶつけてから、先に階段を上がり始めた。


「マスター、わたしはここで後続を待ちつつ広場を押さえたとフィナプルスにも連絡をしてきます。ヴィーネたちにもレイブルハースとペマリラースの件を報告しておきます」

「了解した。助けた魔族の方々に俺たちの紹介を頼む。壇の近くの巨大な檻の中にいるのは後回しでいいからな」

「はい!」


 壇の上で魔歯ソウメルか百足高魔族ハイデアンホザーから魔手術を受けていたであろう魔族の方々は、ろくに説明をせず無条件で助けたが……楽観的に俺たちの味方って考えるのは愚の骨頂だ。実は俺たちが助けた魔族やレイブルハースに恨みを持つとか、色々と考えられるからな。 

 フィナプルスはそれを見越して残ったはず。

 

 チラッとレイブルハースとペマリラースの様子を……。

 仲睦まじく空気の泡を使って遊んでいる?

 いちゃいちゃ泳ぎを見て自然と笑顔になってから、階段を見上げた。

 黒豹(ロロ)は魔歯魔族トラガンの死体に向け炎を吐いて焼却してくれていた。

 頭がいい神獣ちゃんだ。

 

 階段の上方へと一気に移動できる<仙魔・龍水移>もあるが――。

 階段の上方の左側に左手首を差し向けた。

 <鎖の因子>から<鎖>を射出――。

 <鎖>は階段を下りながら両腕と体の一部をハンマーのように変化させていた魔歯魔族トラガンの頭部を穿ち、階段に突き刺さった。その<鎖>を少し引っ張り、アンカー代わりになるか確認――深く突き刺さっている。<鎖>を素早く収斂させた。

 ――<鎖>が<鎖の因子>に引き込まれる反動を利用し、一気にターザン機動で階段の上方に移動する――そのままキサラを抜かした。

 魔歯魔族トラガンが犇めく階段に向かう。


「「「ギョリィィィ!!」」」

「「「ギョバァ!!」」」

「「「ギュイィ!」」」


 魔歯魔族トラガンたちは興奮し、蛇腹剣を振るってきた。

 直ぐに<血道第一・開門>を意識して全身から血を流し、その血を一瞬で<血鎖の饗宴>へと錬成、否、変化させて周囲に展開させた。


 波打つ<血鎖の饗宴>は一度に数十の魔歯魔族トラガンを溶かす。

 そのままキサラと黒豹(ロロ)の位置に注意しつつ――。

 <血鎖の饗宴>で魔歯魔族トラガンを倒しながら長い階段を駆け上がっていく。

 死体が一切でないのはかなり便利だ。

 吸血鬼(ヴァンパイア)を相手にしている気分。


 ――長い階段通路は少し右に曲がっていた。

 ――ヘルメはどこにいった?

 ――曲がる階段は螺旋階段っぽい。

 回る~回る~って歌を思い出す。


『御使い様、ヘルメ様はまだまだ上かと、左右に扉がありますが、あの先ではないはずです』

『あぁ』


 闇雷精霊グィヴァが思念で伝えてきたように――。

 左右に通路がない踊り場の横には扉があったが、扉の先に魔素の気配はないから無視して、階段を上がりながら<血鎖の饗宴>で犇めく魔歯魔族トラガンたちを仕留めていく。後から黒豹(ロロ)とキサラも付いてくる。

 

 魔素で直ぐにヘルメだと分かるが、液体状のヘルメにも注意しよう――。

 味方、眷属を<血鎖の饗宴>で殺してしまったらと考えると……怖い。

 そんな不安を感じながら階段を進み、魔歯魔族トラガンを<血鎖の饗宴>で倒しまくっていると、唐突に階段が終わる。

 そこにも当然の如く魔歯魔族トラガンたちが犇めいていた。

 横幅が広い十字路で、奥は巨大な洞窟……その巨大な洞窟には魔歯魔族トラガンの軍と争う他の勢力もいた。幅の広い十字路の左右にも複数の洗練された魔素を察知。

 魔素の形は人型、魔歯魔族トラガンだとは思うが、魔人タイプか、または他の優秀な魔族だろう。奥の洞窟から無数の魔歯魔族トラガンが軍靴を響かせるが如く横列を組んで此方側に移動してくるが、広大な空間を有した大洞窟のほうが凄まじいことになっていた。

 ……混沌の戦場。

 小山のような場所に陣を構えている魔界王子テーバロンテの眷属と推測する漆黒の法衣を着た魔杖を持つ存在と、その存在を守るように魔歯魔族トラガンの大部隊がいる。

 ジアトニクスさんのような頭部ではないが、頭賢魔族レデ・ポリ・アヌラン的な長身の魔族が漆黒の法衣を着ていた。

 しかし、魔界王子テーバロンテの軍は数にして最低でも一万は超えていそう……。


 そんな魔界王子テーバロンテの軍と――。

 蒼炎髑髏の戦士たちと――。

 多腕魔王シーヌギュフナンの眷属たちと――。

 堕落の王魔トドグ・ゴグの復活の証しのハイゴブリンたち――。

 軽戦士風の人型の魔族が数人――。

 髑髏の騎士の集団、悪業将軍ガイヴァーが率いていたであろうバードイン殲滅部隊が戦っている状況だった。大乱戦。

 俺たち側の十字路も大軍だ、数百体以上の魔歯魔族トラガンが階段を下りようと前進してくる。と、その十字路の奥の洞窟からヘルメの魔素を察知した。

 液体ヘルメは近付いてくると、にゅるにゅると横壁から天井に移動しそこで女体化。

 

「閣下~<血鎖の饗宴>を使っても大丈夫です~」

「了解。十字路を確保しようか」

「はい! 上には血鎖は寄越さないでくださいね」

「分かってる、落ちてくるなよ」


 和やかに語るが、あまり味方がいる場所では、<血鎖の饗宴>は使いたくない。

 集中力を高めるように真剣に<血鎖の饗宴>を操作――。

 血鎖の大波となった<血鎖の饗宴>は一気に直進。

 十字路を犇めいていた魔歯魔族トラガンを飲み込むように消し飛ばしていく――。

続きは今週を予定。

HJノベルス様から最新刊「槍使いと、黒猫。20」発売中。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一万以上の大軍をどうやって処理するのだろうか。 始まりの夕闇で洞窟全体を囲って闇の次元血鎖で消し飛ばす、紅蓮嵐穿で一万の魂を魔槍杖に食わせる、魔法や武槍技連打など色々手段があるな。
[良い点] 地上の戦いから洞窟での戦いに移行したか?そしてその戦場に突撃するのかどうか。 [気になる点] 敵が下に降りて来てたのは、洞窟のトラガンが降りて来てたのか。漆黒の法衣を着た魔杖を持つ存在が、…
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