千百三十九話 魔歯魔族トラガンとの戦争に雷式ラ・ドオラの兆し
「ンン――」
と、相棒も壇の上から跳んだようだ。
頭上に<血霊兵装隊杖>の血ノ錫杖を浮かせたまま――。
足下に<導想魔手>を出し、その<導想魔手>を蹴って高く跳ぶ。
相棒は両前足から先に着地。
瞬時に黒虎へと変化を遂げるや否や力強い膂力で前進。
左前足を振るい、爪で魔歯魔族トラガンの片足を切断して床に転がし首に噛み付くと、頭部を引っこ抜くように倒していた。
ゼロコンマ数秒も経たせない激速な変身と猛獣のような狩り。
見慣れているが、脊椎動物の黒猫から黒虎への骨格と筋肉の変化には美しさがある。黒い毛だけでなく体毛に真皮の毛細血管、神経、汗腺の繊維性の結合組織なども一瞬で大きくなるのはまさに神秘の成せる技。
感動しながら――。
――<闘気玄装>を発動。
――<経脈自在>を意識。
――<滔天内丹術>を意識し発動。
※滔天仙流系統:恒久独自神仙技回復上位スキル※
※戦神イシュルルの加護と<水神の呼び声>と<魔手太陰肺経>の一部が必須※
※玄智の森で取り込んだ様々な功能を活かすスキル※
※体内分泌などが活性化※
※<闘気玄装>、<魔闘術の仙極>、<血魔力>の魔力が呼応し効果が重なる※
※回復玄智丹、万仙丹丸薬などの分泌液と神経伝達物質が倍増し、それらが全身を巡ることにより飛躍的に身体能力が向上し、<魔闘術>と<闘気霊装>系統も強化され、魔力回復能力も高まる※
※<経脈自在>で効果倍増※
魔力の回復を図る。
続けて――<滔天仙正理大綱>を意識、発動。
――<仙魔奇道の心得>を意識。
――<仙魔・暈繝飛動>を意識し発動。
――<血道第三・開門>。
――<血液加速>を発動。
――<血道第五・開門>を意識し――。
<血霊兵装隊杖>の光魔ルシヴァル宗主専用吸血鬼武装から<血魔力>を周囲に出した。
俺の体の表面と周囲に展開されている<仙魔・暈繝飛動>の霧魔力と<血魔力>を融合させた。
ゼロコンマ数秒でスキル群を発動させてから――。
ポーさんとアクセルマギナが戦う魔歯魔族トラガンの集団目掛け<仙玄樹・紅霞月>を発動――。
<霊血の泉>の上乗せ状態の<血魔力>を有した霧魔力から――。
無数の三日月状の液体のような魔刃と樹の血濡れた三日月状の魔刃が飛び出て魔歯魔族トラガンに向かう。
同時に右腕を背中側へと動かし槍投げモーションを取った。その右手に王牌十字槍ヴェクサードを召喚。
腰にある<魔軍夜行ノ槍業>が震えた。
青白い王牌十字槍ヴェクサードに<血魔力>を込めたところで、柄の上に怪人ヴェクサードさんが出現し、ランプの精のように動くと、
『狂戦士の力を受け継ぐ者よ、魔歯魔族トラガンを穿ち倒そうぞ』
と思念を寄越してきた。すると――。
前方に直進していた<仙玄樹・紅霞月>の魔刃の群れが魔歯魔族トラガンたちの体を捉え突き抜けて床と衝突し、爆発を繰り返した。
「「「「「ギャァ」」」」」
「「「ギョビアァ」」」
一度に十体以上の魔歯魔族トラガンを屠った。
が、<仙玄樹・紅霞月>を避けた魔歯魔族トラガンと傷を負っただけの魔歯魔族トラガンもいる。
「――主、ありがとうございます!」
「――マスター! ナイス!」
ポーさんとアクセルマギナはお礼を言いながら大きな煙管と赤いブレードを振るい、<仙玄樹・紅霞月>で負傷した魔歯魔族トラガンたちを倒していた。
その二人の近くに着地し、
「――このまま各個撃破しよう」
と言いながら跳躍を行う――。
前方にいる魔歯魔族トラガンたちへと王牌十字槍ヴェクサードで<投擲>を行った。
フリーとなった右手に白蛇竜小神ゲン様の短槍を召喚しながら着地。
<投擲>され宙を直進していた王牌十字槍ヴェクサードの杭矛は魔歯魔族トラガンの体を貫き、その体をラテンの十字架を思わせる部分が削るように破壊して爆発音を響かせる。続けざまに三体の魔歯魔族トラガンの体を破壊するように突き抜けて、階段近くの壁に突き刺さって止まった。
刹那、その王牌十字槍ヴェクサードから衝撃波が発生し、怪人ヴェクサードさんの思念的な気合い魔声が周囲に轟いた。
近くにいた魔歯魔族トラガンたちは衝撃波を喰らい吹き飛ぶ。と、吹き飛ぶ中に頭部が内側から砕けるように破裂した者がいた。
怪人ヴェクサードさんの思念的な魔声の影響か?
吹き飛んだ魔歯魔族トラガンは、階段と踊り場にいた他の魔歯魔族トラガンと衝突。
数十の魔歯魔族トラガンが巻き添えを喰らう。
横幅が広い階段を占めていた魔歯魔族トラガンたちの隊列が大きく崩れた。
壁に突き刺さった王牌十字槍ヴェクサードは上下に揺れている。怪人ヴェクサードさんの幻影は王牌十字槍ヴェクサードの中に収斂するように消えていた。
まだまだ数が多い魔歯魔族トラガンを見ながら、<超能力精神>で壁に刺さっていた王牌十字槍ヴェクサードを引き寄せて消す。
同時に<生活魔法>の水を足下に撒きつつ――、
左手に雷式ラ・ドオラを召喚しながら魔歯魔族トラガンたちへと足を向けた。
「「ギョッチ!」」
「「ギュヴラッチ!!」」
魔歯魔族トラガンたちは叫び声を発し、それぞれ<魔闘術>系統を強める。<黒呪強瞑>系統だろう。
エナメル質や象牙質の体の一部を歪に持ち上げるように動かして蛇腹剣のような物へと変化させた。
前にも思ったが、魔歯魔族トラガンは仲間意識がありつつも非常に好戦的で、昆虫のように感じるしどことなく機械的でもある。
と考えながら槍圏内から跳躍――。
腰を僅かに捻りつつ右腕ごと白蛇竜小神ゲン様の短槍を前方へと突き出すジャンピング<白蛇穿>を繰り出した――。
白蛇竜小神ゲン様の短槍から迸った光と闇の太極図のような<血魔力>と水飛沫を纏った杭刃が魔歯魔族トラガンの変化途中の腕を貫き四角い頭部も貫くと、その腕と頭部が爆ぜた――。
硬そうなエナメル質の破片と肉の破片が<血霊兵装隊杖>の胸甲と鈴懸と不動袈裟風の衣装防具とハルホンクの防護服に次々と衝突してくる――。
結構な衝撃だったが、別段ダメージはない。
光魔ルシヴァル宗主専用吸血鬼武装とハルホンクの防護服は硬い。
まだまだ数が多い魔歯魔族トラガンたちは、左右から間合いを詰めてきた。
ハンマーのような両腕を突き出して、
「ギョヴィ!」
「ギョバァ!!」
と叫ぶ。
斜めに掲げた雷式ラ・ドオラの柄でハンマーのような両腕を受けながら前進して強引に持ち上げつつ、雷式ラ・ドオラを捻り攻撃のベクトルを横にズラした刹那、右手に魔槍杖バルドークを出現させる。
穂先が紅斧刃バージョンの魔槍杖バルドークを下から右上へと振り上げた。
――<血龍仙閃>を繰り出した。
※血龍仙流系統:極位薙ぎ払い系※
※龍豪流技術系統:上位薙ぎ払い系※
※高能力の下地に、魔界、神界、獄界の多次元世界の神々と通じる戦闘職業の<霊槍・水仙白炎獄師>と豪槍流と龍豪流の槍技術が必須※
※魔界セブドラに向かうことなく、地獄龍山に住まう〝災禍を超えし血龍魔仙族〟と言われる血龍魔仙族ホツラマの極位薙ぎ払い系スキルを秘密裏に獲得した者は他にいない※
突然の長柄への変化に敵は対応できず。
血龍魔仙族ホツラマの極位薙ぎ払い系スキルの血龍を纏うような紅斧刃が、一体の魔歯魔族トラガンの片腕と上半身を激烈に両断――もう一体の魔歯魔族トラガンの上半身の表面も切断――薄皮一枚か――。
「ギュア!」
距離的に上半身の左胸辺りの薄皮を斬っただけの魔歯魔族トラガンを狙う――。
俄に魔槍杖バルドークを消しつつ右に出て――。
魔歯魔族トラガンの頭部へと<血魔力>を発した左手で<死の心臓>を放つように<血魔力>を有した雷式ラ・ドオラを突き出す<光穿>を繰り出した。
胸を浅く斬った魔歯魔族トラガンの頭部を追い掛けるように直進する<光穿>の雷式ラ・ドオラが頭部を派手に穿った。
魔歯魔族トラガンの脳漿などの血を浴びた雷式ラ・ドオラが鈍く光る。
ピコーン※<雷式・血光穿>※スキル獲得※
おぉ、新スキル獲得!
魔歯魔族トラガンの失われた頭部の根元から迸る血を吸い寄せながら、周囲の死体を吹き飛ばすように――。
爪先半回転を行い、右にいる蛇腹剣を振り回している魔歯魔族トラガンの蛇腹剣を避けながら近付き、左手の雷式ラ・ドオラで<龍豪閃>――。
※龍豪閃※
※龍豪流技術系統:上位薙ぎ払い系※
※豪槍流技術系統:極位薙ぎ払い系※
※龍族・龍人族・龍神族以外で<龍豪閃>を獲得した存在は他にいない※
<血魔力>を有した雷式ラ・ドオラの杭刃が魔歯魔族トラガンの側頭部を捉え、杭刃で側頭部を横に窪ませるまま真横に雷式ラ・ドオラを振り抜く。
魔歯魔族トラガンの頭部は輪切りとなって上部が吹き飛んだ。
頭部を輪切りにした魔歯魔族トラガンの死体は倒れる。
――雷式ラ・ドオラに<血魔力>が馴染む。
――長い間練習用の武器だったこともあり、雷式ラ・ドオラはしっくり来る。
感覚的にも伸び代を感じられた――。
そのまま体を独楽のように回転させて周囲の状況を把握。
魔歯魔族トラガンはうじゃうじゃと数が多いから、魔槍杖バルドークを白蛇竜小神ゲン様の短槍に変更。
白蛇竜小神ゲン様の短槍に<血魔力>を送りながら、周囲の死体を<血鎖の饗宴>ですり潰すように消し飛ばし、魔歯魔族トラガンの血を吸収。
その<血鎖の饗宴>を消去。
回転中に鉄格子の部屋の中が少し見えた。
固定された寝台と手術台があり、魔族か人族らしき者が寝台の上に拘束されている。
奥には魔歯魔族トラガンか百足高魔族ハイデアンホザーがいるかも知れない。
助けたいが、後回しだ――。
「ギョバ!」
「ギュイィ!」
左斜め前方にいる二体の魔歯魔族トラガンが叫ぶ。<血鎖の饗宴>を見て興奮している?
<血鎖の饗宴>で死体を処理し、皆が動きやすくするための空きスペースを作った俺を警戒した?
<血鎖の饗宴>で興奮したわけではないのなら、蟲的な思考で空間把握能力は優れているんだろうか。
叫んでいた魔歯魔族トラガンは変な体勢で蛇腹剣を突き出してくる。
やはり魔歯魔族トラガンは百足高魔族ハイデアンホザーとは違う。蛇腹剣はまだ分かれていない魔剣モード。
その機動と軌道の変化を予測しながら斜め前に出た。
同時に<闘気玄装>を再発動し強めた。
※闘気玄装※
※玄智武王院流<魔力纏>系統:仙技<闘気霊装>に分類※
※白蛇竜武王鬼流<魔力纏>系統:神仙絶技<闘把神霊装>に分類※
※三叉魔神経網系統※
※魔装天狗流技術系統:上位変身奥義系※
※義遊暗行流技術系統:上位変身系※
※怪夜王流技術系統※
※高水準の<魔闘術>と<魔力纏>技術系統と覇王ハルホンクの御魂と<経脈自在>と<光魔の王笏>と<脳魔脊髄革命>と<魔雄ノ飛動>と魔技三種に<超脳・朧水月>と<水神の呼び声>と<月狼ノ刻印者>、<魔手太陰肺経>の一部、羅仙族、仙羅族、仙王鼬族の<闘気霊装>や<瞑道霊装>系統の使い手の魔力の吸収及び体感が必須※
※普遍的に<魔闘術>系統の強度が大幅に強化され、他の魔技も相対的に上昇し体重が変化、浮力と加速を得る※
※熟練度と才能次第で、ただの魔力操作が極めて高度な<闘気玄装>に変貌を遂げることもある。また、<闘気玄装>は能力と功能と心技体の向上具合の変化を促すことに成り、体得している内観法も良い方向へ変化を遂げるだろう※
※様々な武法に<魔力纏>などのスキルを体得していると<魔手太陰肺経>と同様に<闘気玄装>は覚えにくくなるだろう※
※古代の白蛇仙人ブショウが仙剣・仙槍の秘奥譜『闘気玄装』と『玄智・明鬯組手』を開発したとされる※
更に<勁力槍>と<霊魔・開目>と<煌魔葉舞>の恒久スキルを意識し発動――。
<闇神式・練迅>も発動――。
体から闇色の粉塵染みた雷魔力が噴出。
チリチリ、バチバチと音を響かせながら駆けた。
――爆発的な加速力で二体の魔歯魔族トラガンに近付く。
床を踏み潰すような踏み込みから――。
両腕ごと前方に突き出す白蛇竜小神ゲン様の短槍と雷式ラ・ドオラのダブル<刺突>を繰り出した――。
二本の雷槍のような勢いとなった白蛇竜小神ゲン様の短槍と雷式ラ・ドオラは、クロスカウンターを行うように魔歯魔族トラガンの蛇腹剣の剣腹に乗りながら直進し――。
二体の魔歯魔族トラガンの胸を穿ち、背まで貫いた。
「「――ゲェヴァ!?」」
白蛇竜小神ゲン様の短槍と雷式ラ・ドオラと両腕に闇色の雷が紫電旋風の如く激しく行き交う。
二体の魔歯魔族トラガンの体は白蛇竜小神ゲン様の短槍と雷式ラ・ドオラの穂先からスポッと抜けて吹き飛びながら、孔を起点に体がぐわりと波打つと、幾重にも千切れながら爆ぜた。
死に様が悲惨だ。
仙大筆の<風獣・仙大筆穿>を喰らわせた時に似ている。
直ぐに両腕を引く。
ピコーン※<雷穿>※スキル獲得※
※<雷式・勁魔浸透穿>スキル獲得※
おぉ、ダブルでスキルを獲得!
そして、雷属性が必要な<闇神式・練迅>の<魔闘術>系統は鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼を装着せずとも強力だ。悪愚槍のトースン師匠と雷炎槍のシュリ師匠に感謝しよう。
と、魔軍夜行ノ槍業が少し揺れて、
『『『『『『『『我らの弟子として、魔城ルグファントの魔君主として精進するのだ』』』』』』』』
八人の合唱団のような重低音の思念が響いてきた。
『はい』
と思念を返しつつ<闇神式・練迅>を終わらせる。
ジィィンという雷属性の余韻を全身から感じつつ、両手首をスナップさせて少し突き出した。両手首の<鎖の因子>のマークから<鎖>を射出――。
シュッと音を響かせた二本の<鎖>は梵字を輝かせながら直進し、二体の魔歯魔族トラガンの頭部をぶち抜いた。
――よし!
左右斜め前にいる魔歯魔族トラガンたちの攻撃と蛇を連想させる二本の<鎖>を視界に捉えつつバックステップ――。
「ギュバ!!」
「ギュィィ――」
「「ギュッチィ!」」
魔歯魔族トラガンたちは、相変わらず体の一部を蛇腹剣のような武器に変えている。
蛇腹剣の上部から中部にかけてを徐々に分解するように伸ばしてきた。
波打つ歯牙と歯牙の節々の間を通るワイヤーのような物が蛇腹剣の胆。その歯牙と歯牙を支えるワイヤーは非常に小さい軟骨の八重鎖にも見えた。
その蛇腹剣の遠距離攻撃を横や斜め前に移動して避けたところで――。
左斜めに前進――。
蛇腹剣の鞭のような攻撃軌道を読みながら<鎖型・滅印>を意識、発動。
両手首から出たティアドロップ型の<鎖>の先端が――。
蛇腹剣を構成している歯牙の先端を貫く。
そのまま歯牙と歯牙を繋ぐワイヤーのような細い線と節の歯牙を連続して貫きながら魔歯魔族トラガンの体を破壊し続けて頭部を穿った。
天に向かう梵字が煌めく二つの<鎖>を消しながら左前に出る――。
魔歯魔族トラガンとの間合いを詰めて相対。
――<滔天魔瞳術>を発動。
「ギョバ!?」
動きを止めた魔歯魔族トラガン。
次の瞬間――左足の踏み込みから<白蛇穿>を繰り出した。
白蛇竜小神ゲン様の短槍の杭刃が、ハンマーのような両腕で防御したまま固まった魔歯魔族トラガンのエナメル質の両腕と頭部を穿った。
歯のようにも見える頭部と両腕を失った魔歯魔族トラガンは壊れた人形のように倒れていく。
――と、周囲の魔歯魔族トラガンから蛇腹剣が飛来。
<生活魔法>の水を周囲に撒き<水神の呼び声>を発動しながら――。
※水神の呼び声※
※水神アクレシスの力の一部を武具に纏わせる。武具にも相性はあるが、様々な効果を使い手に齎す※
右に跳びつつ――鞭軌道の分割された蛇腹剣の攻撃を避けて着地後――。
少しだけ前方に跳躍を行いながら<双豪閃>――。
低空から体を独楽のように回し――右にいた二体の魔歯魔族トラガンの頭部と胴体を、<血魔力>を有した白蛇竜小神ゲン様の短槍と雷式ラ・ドオラの穂先が捉え、輪切りに両断――。
着地し、両手に持つ白蛇竜小神ゲン様の短槍と雷式ラ・ドオラの持ち手を滑らせて石突で床を叩くように体を支え、二本の槍で床を突き、制動もなく前に出た――。
まだまだ多い魔歯魔族トラガンたちへと、体から水飛沫に<血魔力>を発しながら迅速に間合いを詰めた。
<闇神式・練迅>を途中から再発動――。
<光魔血仙経>と<滔天魔経>を意識し発動。
※光魔血仙経※
※光魔血仙経流:開祖※
※光魔血仙格闘技術系統※
※滔天仙流技術系統※
※戦神流命源活動技術系統:神仙技亜種※
※仙王流独自格闘術系統※
※仙王流独自<仙魔術>系統※
※<黒呪強瞑>技術系統※
※魔人格闘術技術系統※
※悪式格闘術技術系統※
※邪神独自格闘術技術系統※
※魔界セブドラ実戦幾千技法系統※
※光魔ルシヴァル血魔力時空属性系<血道第五・開門>により覚えた特殊独自スキル※
※<血道第五・開門>、<血脈冥想>、<滔天仙正理大綱>、<性命双修>、<闘気玄装>、<経脈自在>、<魔人武術の心得>、<水月血闘法>、大豊御酒、神韻縹渺希少戦闘職業、因果律超踏破希少戦闘職業、高水準の三叉魔神経網系統、魔装天狗流技術系統、義遊暗行流技術系統、九頭武龍神流<魔力纏>系統、<魔闘術>系技術、霊纏技術系統、<魔手太陰肺経>の一部、戦神イシュルルの加護が必須※
※血と水を活かした光魔血仙経流により、全般的な戦闘能力が上昇※
※眷属たちに己の生命力を譲渡する根源となる能力、<性命双修>と関係※
※使い手の内分泌、循環、神経、五臓六腑が活性化※
※己の魄と魂の氣が融合※
※生命力を眷属か関係者に譲る場合、使い手は膨大な痛みを感じることになるが、その謙譲とサクリファイスに『献身』は神々も注視するだろう※
※血仙人の証し※
※滔天魔経※
※滔天仙流:開祖※
※血仙格闘技術系統※
※玄智武王院流※
※白蛇竜武王鬼流※
※仙王流独自格闘術系統※
※仙王流独自<仙魔術>系統※
※三叉魔神経網系統※
※怪夜王流技術系統※
※魔人格闘術技術系統※
※悪式格闘術技術系統※
※邪神独自格闘術技術系統※
※魔界セブドラ実戦幾千技法系統※
※<水の神使>と<水神の呼び声>と<血脈冥想>と<滔天仙正理大綱>と<性命双修>と<闘気玄装>と<経脈自在>と<魔人武術の心得>が必須※
※血仙人の証しの<光魔血仙経>の影響を得た故の<滔天魔経>の獲得、滔天仙流系統:恒久神仙技<神仙霊纏>の恒久スキル<滔天仙正理大綱>の質が上昇し、魔力活力源の底上げと上限が上昇した。滔々と流れる大河を心に宿した存在※
※水場での戦いが極めて有利に進む※
※<滔天仙正理大綱>や<滔天神働術>と同じく滔天仙人の証し※
※<霊仙酒槍術>などの酒の功能がより上昇した※
――<闘気玄装>も強める。
水蒸気を帯びた雷鳴が轟く<血魔力>と魔力を白蛇竜小神ゲン様の短槍と雷式ラ・ドオラに集結させた。
その武器を持つ両腕で魔歯魔族トラガンの胴体を貫くように<白蛇穿>と<雷式・血雷穿>を繰り出した。
白蛇竜小神ゲン様の短槍と雷式ラ・ドオラの穂先がドッと音を響かせながら二体の魔歯魔族トラガンの両腕ごと頭部を派手にぶち抜いた。
ポーさんとアクセルマギナとムクラウエモンと相棒の位置を把握――。
体の一部から<血魔力>を放出させる。
それら<血魔力>を一瞬で波打った<血鎖の饗宴>に変化させた。
<血鎖の饗宴>で大波を作るように展開させながら直進させ三体の魔歯魔族トラガンを蒸発させるように倒した。<血鎖の饗宴>はあまり広くは展開させない。
葛飾北斎の富嶽三十六景にあるような大波の形になっていた<血鎖の饗宴>を消去。
血鎖の群れは薄まり、大気と混じるように儚く消える。
そのまま爪先回転を行いながら周囲の状況を見ていった。
俺の近くにいた魔歯魔族トラガンは倒しきったかな。
ところが、右の壁沿いの階段から、また新手の魔歯魔族トラガンたちが下りてきた。
ざっと見て百体以上か――更に増え続け踊り場はあっという間に魔歯魔族トラガンだらけ。
新手の中に、魔歯ソウメルのような魔界王子テーバロンテの眷属っぽい存在はいない。
百足高魔族ハイデアンホザーと魔歯魔族トラガンが融合したカチ・ボルなどの強い存在もいないと分かる。
しかし、【バードイン迷宮】の地上では、ミューラー隊長が教えてくれた赤業魔ガニーナの眷属らしき者たち、多腕魔王シーヌギュフナンの眷属たち、悪神デサロビアの眷属のアーグンたち、死皇パミューラの眷属らしき蒼炎髑髏の戦士たち、【死賢の絶対者】の眷属たちなどに他にも多数の魔族たちが争っていたから、その地上の混沌の争いを制した強者が、ここまで下りてくる可能性がある。
それら勢力の動機を予想すると……。
大きな鮫のレイブルハースに渡したレイブルハースの勾玉を欲する者たちなんだろうか。
レイブルハースの勾玉があればレイブルハース本人をコントロール出来るとかあるかもな。尚且つ【バードイン霊湖】の神意力か霊力のような膨大な魔力を有効活用できるかもしれない。
そして、悪神ギュラゼルバンの勢力と恐王ノクターの勢力が大々的に攻めてきているように、強かった魔界王子テーバロンテが消滅したことも大きな動機になるか。
一部の強力な眷属たちの心臓にはバビロアの蠱物が嵌め込まれていたはずだから、テーバロンテが消滅したと同時に、そのバビロアの蠱物が作動し爆死しているはずだ。
バビロアの蠱物がなくとも、大きな後ろ盾を失った眷属たちは、多分だが、スキルや恒久スキルの一部を失い、能力が落ちているだろうしな。
そんな弱った眷属が守る【バードイン迷宮】を、他の神々や諸侯の意向に沿った魔族たちが攻めるのは当然の成り行き。
更に、【バードイン迷宮】の位置的に、小~中豪族が支配するような【バードイン霊湖】が近いことも要因の一つか。と様々に予想しながら新手の魔歯魔族トラガンたちを凝視。
大半は両腕を近接のハンマーや盾に中距離用の蛇腹剣にしている。
重機関銃を彷彿とさせる筒型は少ない。
眼球お化けのアービターのようなモンスターだったら、味方ごと背後から歯の弾丸を撃ちまくっていたはず――と考えながら魔歯魔族トラガンと戦っているポーさんたちに近付いた。
大きい煙管を振るうポーさんが右に、アクセルマギナは左にいる。
「前の二体は俺がやろう」
「「はい」」
煙管を盾に退いたポーさんと、赤いブレードを持つアクセルマギナと呼吸を合わせ、タイミングを合わせた。
――前に出ながら、魔歯魔族トラガンの腹に向け――。
白蛇竜小神ゲン様の短槍を突き出す<白蛇竜異穿>を繰り出す。
右前にいた魔歯魔族トラガンの腹を白蛇竜小神ゲン様の短槍の矛が豪快にぶち抜いた。
続けざま、左前にいた魔歯魔族トラガンの頭部に向け――左手の雷式ラ・ドオラで<血穿>を繰り出した。
頭部に血の射線を描くように頭部を斜めに貫いた。
その頭部は蒸発したように消えたが、雷式ラ・ドオラの杭刃には重い手応えがある。
雷式ラ・ドオラは魔力を吸って光を強めた。
連続的な新スキル獲得といい、雷式ラ・ドオラの進化の兆しか?
神界セウロスの神の一柱の雷神ラ・ドオラ様は、雷式ラ・ドオラ越しに雷属性を得た俺のことを見てくれているのだろうか。
と、汎用戦闘型のアクセルマギナが、
「マスター、前に出ます」
「おう」
右腕から橙色のオーラ的な魔力を放つアクセルマギナが俺の左前に出て赤いブレードを袈裟懸けに振るう。
赤いブレードが魔歯魔族トラガンの肩のような部分から胸元までを斜めに切断した。
アクセルマギナの立ち居振る舞いは見事。
特に、人の指のような金属のアーマーが腰とお尻と太股の外側広筋を悩ましく覆い、間に見えている太股とお尻の膨らみが、張りを維持した状態でプルップルッと揺れていた。
非常に魅惑的で見事だ。
「主、共に戦えて光栄ですぞ――」
俺の右側から前に飛び出た強襲前衛っぽい動きが巧みなポーさんの厳つい声だ。
アクセルマギナのお尻と太股のエロ世界から、一発で現実に戻ってこられた。
その二人の動きを見ながら、両腕が筒型の魔歯魔族トラガンの射線に入ったところで爪先半回転を実行――飛来してきた歯の弾丸を避ける。
歯の弾丸を寄越した魔歯魔族トラガンをチラッと見てから――。
魔蛙ムクラウエモンと相棒の黒虎を凝視。
左後方にいるムクラウエモンは、両腕がハンマーのように変化している魔歯魔族トラガンたちに囲まれている。フォローの《連氷蛇矢》を数発発射、が、魔歯魔族トラガンには牽制程度にしか効かず。と、先ほどと同じくムクラウエモンはピンク色の舌で魔歯魔族トラガンの死体を絡めとり、それを武器にして囲みを突破。
更に相棒が近付いたから大丈夫だろう。
面積も結構広い。と、その相棒の黒虎が、
「にゃご!」
と鳴いて魔歯魔族トラガンに両前足の爪を見せるように飛び掛かった。
硬そうな四角い頭部を炎で溶かしながら噛み付き、体重を活かすように押し倒して上半身を噛み砕き、倒した。
「ンン――」
喉声を響かせながら次の獲物に向け斜めに跳ぶ――。
宙空で全身から橙色の魔力を発して、太い触手を伸ばす。
太い触手から出た骨剣はフランベルジュのような形をしていた。
その太いフランベルジュ型の触手骨剣で魔歯魔族トラガンを両断。
その太いフランベルジュ型の触手骨剣を消すように触手を収斂させる。
と、次の魔歯魔族トラガンに向け、首下から橙色の魔力を宿した小さい触手を射出。
その触手から出た骨剣が魔歯魔族トラガンの体に突き刺さる。と、その触手を収斂させた反動で魔歯魔族トラガンに飛び掛かって押し倒した。
「にゃごぉぉぉぉ~」
と可愛くもある気合い声を発した黒虎は、魔歯魔族トラガンの上に乗りながらサーフィンでも行うように床を滑りつつ突進――。
他の魔歯魔族トラガンを跳ね飛ばしながら、橙色の魔力を纏う触手骨剣を振るい回して周囲の魔歯魔族トラガンを斬り刻んでいった。
神獣ロロディーヌは相変わらずの強さだ。
魔雅大剣は必要ないか。安心感を得ながら――。
左手首の<鎖の因子>のマークから<鎖>を射出――。
<鎖>は両腕が筒状の重機関銃のような物に変化している魔歯魔族トラガンに向かい、重機関銃のような筒状の両腕から射出された歯の弾丸を幾つも貫きながら直進――。
重機関銃のような両腕をぶち抜き胴体まで貫いた。
<鎖の念導>で<鎖>を操作し、機動を上向かせ、魔歯魔族トラガンの上半身から頭部までを一気に貫いて倒した。
天井の魔法の膜が構成している【バードイン霊湖】にまで到達しそうだった<鎖>を急いで消し、前に出た――。
狙いは、アクセルマギナを横から狙う魔歯魔族トラガン。
《水流操作》で足下の水と<血魔力>の上をアーゼンのブーツの裏で滑る機動のまま――。
<黒呪強瞑>を強めて前進し、間合いを詰めた。
迅速な左足の踏み込みから――。
右手が握る白蛇竜小神ゲン様の短槍で<白蛇竜異穿>を繰り出した。
※白蛇竜異穿※
※白蛇竜小神流技術系統:極位突き~奥義小※
※水槍流技術系統:最上位突き※
※血槍魔流技術系統:最上位突き※
※白蛇竜族が愛用する<刺突>に連なる白蛇槍スキル※
※複数の白蛇竜の魂魄を宿した魔刃が穂先から出る※
※<龍神・魔力纏>、<血魔力>、<闘気玄装>と相性が良い※
※白蛇竜小神ゲンの短槍専用技※
速度が加算されたような強力な突きが魔歯魔族トラガンの胸ごと上半身を溶かすように消し飛ばす。
アクセルマギナは俺に笑顔を向け、
「マスター、ありがとう!」
と言いながら右にいた魔歯魔族トラガンの頭部を赤いブレードの切っ先で二度貫き、一閃。
そこに右前にいたポーさんが、
「前の敵はもらいますぞ」
と言いながら、大きい煙管でゴルフスイング。
前にいる魔歯魔族トラガンの片足に大きい煙管の火口と雁首を衝突させた。
ドッという重低音を響かせて片足を潰し、そのままポーさんは流れるように横移動しつつ、
「ゲェァァ」
と転倒した魔歯魔族トラガンに向け、大きい煙管を振るい下げた。
大きい煙管の火口と雁首が、床に転がっていた魔歯魔族トラガンの頭部を捉える。
魔歯魔族トラガンの頭部はゴルフボールになったが如く、遠くに吹き飛んでいた。
見事なショット。
ゴルフ場があったら旗を包んでのホールインワンか。
わいは猿や、プロゴルファー猿や。という言葉が脳裏をよぎる。
つむじ風をなぜか感じていると――。
大きなムクラウエモンも重低音を響かせた。
魔法の膜の防御層と己の体重を活かして数体の魔歯魔族トラガンを潰した?
だが、百足高魔族ハイデアンホザーと違い、魔歯魔族トラガンの防御力はかなりの物。
<血魔力>を内包した攻撃か、先ほどのような音波と煙を利用した遠距離攻撃でないと通じないはず――と、ムクラウエモンは小さくなって相棒の背後に逃げていた。
代わりに黒虎が橙色の魔力を有した触手骨剣を繰り出して、数体の魔歯魔族トラガンを蜂の巣にしていく。
――階段の左側では闇雷精霊グィヴァが躍動している。
先程百足高魔族ハイデアンホザーなどをブレる速度で振るった雷の腕剣で斬ったように、魔歯魔族トラガンを暗い雷で構成されている腕刃で斬り伏せていた。
まさに紫電一閃。
流れるような所作を連続で行う。敵を一瞬で切り刻む姿はヴィーネ的だ。
と、死体が多くなると後退に徹する。
正面を向いたまま背後に跳躍し、宙空から雷の槍のような魔法を前方に放って、死体を乗り越えてくる魔歯魔族トラガンたちにカウンターを喰らわせていた。
しかも殆どがヘッドショットというおまけ付き。
見事だな。正直、闇雷精霊グィヴァはかなり強い。そのグィヴァは大丈夫として――。
両手の武器を一旦消して右前に出た。
数十と魔歯魔族トラガンがポーさんに体ごと突っ込んできたから――。
「皆、そいつらは俺がやろう――」
体から<血魔力>を噴出させる。
血の消費は大きいから切り札に近いが――。
<血想槍>――。
――血を纏う無名無礼の魔槍。
――血を纏う聖槍アロステ。
――血を纏う霊槍ハヴィス。
――血を吸う魔槍杖バルドーク。
――血を纏う仙王槍スーウィン。
――血を纏う王牌十字槍ヴェクサード。
――血を纏う茨の凍迅魔槍ハヴァギイ。
――血を纏う夜王の傘セイヴァルト。
――血を纏う白蛇竜小神ゲン様の短槍。
――血を纏う雷式ラ・ドオラ。
――血を纏う独鈷魔槍。
――血を纏う神槍ガンジス。
それら<血想槍>で<双豪閃>を繰り出した。
一斉に二十体以上の魔歯魔族トラガンの体を分断して倒す。
続けざまに十体以上の魔歯魔族トラガンの頭部と体を両断して倒した。
更に二十体以上の魔歯魔族トラガンを連続的に屠る。
「おぉ~、なんて殲滅速度だよ! <血魔力>と<導魔術>が融合した多重の魔槍連舞か!?」
ムクラウエモンの声が響く。
「――似たようなもんだ」
と答えた。
まだ魔歯魔族トラガンはいるが、一旦<血想槍>を終了させた。
右手に白蛇竜小神ゲン様の短槍を召喚。
ポーさんは三体の魔歯魔族トラガンに向け大きい煙管を上から振るい、頭部を粉砕して倒す。アクセルマギナはポーさんの左から出て赤いブレードを突き出し、魔歯魔族トラガンの胸元を突いてから赤いブレードを下げて魔歯魔族トラガンの胸から腹を両断して倒した――すると、重低音が響く。
ムクラウエモンの巨体に吹き飛ばされた魔歯魔族トラガンたちだ。
「「「うがぁ~」」」
まだ生きている魔歯魔族トラガンと死体の群れに押し出されて移動してきた五体の魔歯魔族トラガンがハンマー型の両腕を盾にするようにアクセルマギナとポーさんに近付いた。
<鎖>で近くにいる魔歯魔族トラガンの頭部を貫いてから左手に雷式ラ・ドオラを召喚。
さて、ここの階層にいる死体も<血鎖の饗宴>か濃厚な<血魔力>で倒さないと死体は残る――。
ひょっとしたら十数時間後には【バードイン迷宮】特有の微生物に分解されて溶けるように消えるのかも知れない。
そして【バードイン霊湖】にも通じているから、死体処理専門のプランクトンのような生物もいるかも知れないな――と考えながら両手首から<鎖>を射出して一体の魔歯魔族トラガンの頭部を貫き、二体の足を連続的に貫いてポーさんとアクセルマギナをフォロー。
ポーさんは大きい煙管を横に振るう。
一体の魔歯魔族トラガンの胴体に衝突させて、体をくの字にさせて吹き飛ばす。
と、二体の魔歯魔族トラガンが突き出したハンマーのような両腕がアクセルマギナに向かった。アクセルマギナは赤いブレードでハンマーを受けて押し返した。
が、ハンマーのようなエナメル質の肌には赤いブレードで斬れない部分もある。
その皆に、
「――敵を仕留めながらだが、壇の上の戦いのことを説明しておく」
「「「はい」」」
「承知!」
背後からのムクラウエモンの声に頷きながら、目の前にいる魔歯魔族トラガンの胸元を左手の雷式ラ・ドオラの<血穿>で貫き倒す。
「【グラナダの道】や囚われていた魔族たちには悪いが、魔歯ソウメルは倒した――」
「はい、マスター――」
「――主、了解です!」
「おぉ、やっぱ倒したか!」
「――おう。で、天井の上に拡がっている液体世界なんだが、【バードイン霊湖】で間違いない」
「やはりそうでしたか――」
ポーさんとアクセルマギナとムクラウエモンは各自攻撃を行いながらそう発言。
俺は頷いて、
「――【バードイン霊湖】と【バードイン迷宮】は繋がっている」
と言いながら、魔歯魔族トラガンの頭部を白蛇竜小神ゲン様の短槍の<白蛇穿>で貫いて倒す。そして、
「位置的に【バードイン迷宮】の地下層のどこかが横に出て【バードイン霊湖】に飛び出ている地形だと予想できる――で、二匹の大きな鮫が泳いでいるんだが、その内の一体がレイブルハース。あ、今は目の前の敵に集中してくれ、無理に見なくていい――」
「「はい!」」
「なにぃ、見たぞぉ――」
「にゃご~」
ムクラウエモンと相棒のコンビは声だけでどんな状況か分かるから面白い――。
少し笑顔になったが、二体の魔歯魔族トラガンを――。
<水雅・魔連穿>で仕留めた。続いて、
「――レイブルハースは、神意力を有した思念と言葉で俺と会話していた。そのレイブルハースは、超巨大な水槽の中に閉じ込められて、その体とレイブルハースの勾玉という名の秘宝を、魔歯ソウメルに長い間利用されていた。魔界王子テーバロンテにも利用されていたのかも知れない――。しかし、次から次へと、もう戦争だな――階段の上には兵舎でもあるのか――」
と発言しながら<鎖>を射出し、魔歯魔族トラガンの頭部を穿つ。
闇雷精霊グィヴァが左側の敵を倒しきったからかなり楽になった。
その闇雷精霊グィヴァは、
「――レイブルハースに秘宝をお返しになったのですね」
「おう、喜んでくれた」
「はい、良かった。しかし、御使い様も言いましたが、一種の戦争です」
頷くと、ムクラウエモンが、
「階段の上に、魔歯魔族トラガンが生まれる巨大な魔法陣か錬成陣か、迷宮の各地と繋がる転移陣でもあるんじゃねぇか?」
と発言。あるかもな。
ポーさんは、
「転移陣などではなく、この階層に魔歯ソウメルがいたのだ。長い階段の先の空間には守りの兵士が数千、数万はいるかもしれないですぞ」
「ハッ、だからなんだ! このまま倒しまくるぜぇ」
「にゃごぉ」
「はい、倒しましょう」
「幸い右の階段から下りてくるだけ。このまま踊り場から周囲を押し込んでいけば楽になります――」
魔蛙ムクラウエモンは強きだ。
ポーさんとアクセルマギナと闇雷精霊グィヴァは冷静だ。
強気な発言を実力で示すようなムクラウエモンは、闇雷精霊グィヴァの援護を受けて魔歯魔族トラガンたちを圧倒し始めた。
俺は無難に掃除をしよう。
皆の位置に気を付けながら――。
壁として利用できる魔歯魔族トラガンの死体をわざと残し――。
<血鎖の饗宴>を発動――邪魔な死体の掃除を行った。
一瞬で血の波のような<血鎖の饗宴>が死体を飲み込んでいく。
広場の右側に空きスペースを作り出した。
皆は新手の魔歯魔族トラガンを次々に屠っていく。
そこに『もうじき到着です』というキサラの血文字が浮かぶ。
『了解』
『わたしたちも直に到着予定です。しかし、巨大な眼球魔族、悪神デサロビアの勢力と戦っていたので、少し時間が掛かってしまいました』
ヴィーネとキッカと銀灰猫とピュリンたちは悪神デサロビアの勢力と戦っていたのか。
『分かった。無理せず、着実に<分泌吸の匂手>と<霊血の泉>の匂いを辿ってくれ』
『はい』
すると、キサラとヘルメにミジャイと【グラナダの道】とロズコたちの気配を後方に察知。
「シュウヤ様!」
「閣下――」
「「「「ここは、え!」」」」
「天井が!?」
「なんで【バードイン霊湖】がここにあるんだ!」
「うあぁ、水が浮いて、あぁ、刑務所の通路の先にあった魔法の膜と同じか?」
「「あぁ」」
「メジラグたちが、え……」
「おぃぃぃ、やべぇのが二匹泳いでるぞ!」
「なんだあれはぁぁぁ」
「「でけぇぇぇ」」
「あぅ」
「ひぃ」
「巨大な鮫モンスターか……」
「皆動揺するな、あの水は落ちてこない! シュウヤ様の下に急げ」
「「うははは、俺に愛をくれたシュウヤ様を助けるぞ!!」」
「あぁ、テパ・ウゴ、シュウヤ様を怖がらせるな!」
「「「はい」」」
「――行きましょう」
「中央の檻に大柄の魔族がいるぞ!」
「ビートン、動きを止めるな、シュウヤ様たちは右の階段前を押さえようと戦っている!」
「おう」
「パデフィン、ポンガ・ポンラも、壇ではなく右側に!」
「「はい」」
先に来たヘルメとキサラに向け、
「魔歯ソウメルは中々の強者だったようだが直ぐに倒した。その際に新スキルを獲得できた。更に、広場右側を確保する戦いでも<雷式・血光穿>と<雷穿>に<雷式・勁魔浸透穿>を覚えられた。そして、右側を確保する戦いは佳境、見ての通りの状況だ。しかし、右側の階段から湯水の如く魔歯魔族トラガンが湧いてくる」
「分かりました、殲滅戦に参加します――」
「はい、グィヴァちゃんに負けていられない! ですが最初は偵察です! 上が怪しい!」
常闇の水精霊ヘルメは一瞬で体を液体化。
皆が戦っている階段前の踊り場の床を液体のままスイスイと進んでいく。
魔歯魔族トラガンは、足下をにゅるにゅると進んでいる液体状のヘルメに気付かない。
<筆頭従者長>のキサラは前進。
階段から下りてきたばかりの新手の魔歯魔族トラガンの頭部をダモアヌンの魔槍で穿っていた。そのまま前転から<血魔力>を有した踵落としを他の魔歯魔族トラガンに喰らわせて頭部を破壊し、足場にして跳躍、宙空からダモアヌンの魔槍を真横に振るう。
宙空を舞うような<豪閃>系の薙ぎ払いが決まった。
階段にいた三体の魔歯魔族トラガンの頭部と上半身の一部が消える。
最初は<烈叭槍>辺りのスキルだと思うが、キサラの攻撃は華麗だ。
キサラが階段の最初の段の魔歯魔族トラガンの掃討をしている間に液体状のヘルメは階段を上っていく。気を付けてほしいが、偵察はヘルメに任せるか。
ヘルメに遅れて、ミューラー隊長とイスラさんが近くにきた。
背後から【グラナダの道】と元囚人の魔族たちも来る。
魔鋼族ベルマランたちはやはり重い動きだ。バイバルト族のバスラートさんとモイロさんもいる。ラムーさんもいた。
ルクサード・ベルマランのヴァイスンさんとトクルさんもいる。
【グラナダの道】たちは胸元に腕を当てて金属音を鳴らす軍隊式の挨拶をして並んでくれた。特殊部隊を得たような気分になる。
やはり、皆の鋼の兜と鎧はかなり格好いい。
そんな堂堂之陣の皆に、
「広場の右の横幅が広い階段から下りてくる魔歯魔族トラガンを倒しまくりな状況だ。加勢してもいいが、硬いから無理しないでいい。それと、広場中央の踊り場にも助けた魔族の方々がいる。そこではフィナプルスが守りについている。そして……」
ボクっ娘のエトアさんに近付いて、右の鉄格子の部屋をチラッと見てから、
「ぁ……」
「そこに鉄格子の部屋があるんだが……」
と言うと、エトアさんは緊張しつつも挙手をして、
「鍵開けはお任せください!」
と元気よく発言。
「おう。しかし、何があるか分からない状況だ。ミューラー隊長やジアトニクスさんに皆と相談してからでいい。それと、中央の檻の中に閉じ込められている大柄の魔族がいたのは見たと思うが、その鍵開けも皆に頼むかもしれない」
「はいでしゅ」
「「了解」」
「シュウヤ殿、我らは踊り場の戦いのフォローをしつつ、右端の鉄格子の部屋から調べます」
「了解したが、慎重に。俺も踊り場を確保しつつ階段の上の連中を倒しにかかるから、その後鉄格子の部屋を見る」
「「「「「はい」」」」」
踊り場の戦いは――。
余裕を得たムクラウエモンに乗ったポーさんが煙管から笛の音を響かせる。と、ムクラウエモンは音波のような衝撃波を出して複数の魔歯魔族トラガンを吹き飛ばした。
「げろげろ、げろげーろ、いっさむ――」
先ほど見せていた煙が混じる泡ぶくブレスを吐いた。
泡ぶくブレスを浴びた魔歯魔族トラガンたちは一斉に固まる。
チャンス――早速その内の一体の魔歯魔族トラガンの頭部を<鎖>でぶち抜く。
更にアクセルマギナが赤いブレードで蝋人形になったように動きを止めた魔歯魔族トラガンを両断――。
闇雷精霊グィヴァも雷刀のような腕剣を振るい、魔歯魔族トラガンの胴を抜く。
イスラさんも魔剣ラガンハッシュで魔歯魔族トラガンをめった刺しにして倒していた。
続きは明日を予定。
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