表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
槍使いと、黒猫。  作者: 健康


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1055/2032

千五十四話 ペルネーテに訪問中の聖鎖騎士団と魔族殲滅機関の一桁

今日発売されたばかりの「槍使いと、黒猫。19」の発売記念のSSです。

2023年1月25日 15時05分 修正

 外套を着た男が足下に目を光らせながら第三の円卓通りから外れた静かな路地を歩く。


 その外套を着た男に「ヒュリリリィ――」という異質な声と共に大きい礫が直進していく。


 大きい礫から茶色の液体が飛び散っていた。

 外套を着た男は右手にケルト十字と似た十字架を召喚。

 それを袈裟懸けに振るい、大きい礫を斬りに掛かる。


 その袈裟斬り軌道の十字架の縦の棒は、光り輝く剣身に変化しながら大きい礫と衝突した。

 大きい礫は溶けるように真っ二つとなった。


 光り輝く十字架の剣を持つ外套の男は、その剣を上下左右に振るい、


「――また邪神の手合いですかね?」


 そう喋りながら、新たに飛来してきた礫と杭を連続的に真っ二つに処した。

 

 すると、大きい礫が飛んできた屋根の上から、


「ヒュリィィ……外れた」


 不気味な声を発して何かが現れる。

 元魔族だと思われる頭部は左右に割れていた。

 その割れた頭部から蟲の頭部が出ている怪物だった。

 胴体は大柄な魔族。

 左右の腕は二つの足と違い大きい触手と化していた。

 

「カクバクラ、声を出せば分かるに決まっているだろうが」


 そう蟲の怪物に注意を発したのは、帽子を被った男で、路地の角の壁に背を預けていた。その男は両手に大きな杭を召喚すると、壁から離れて、外套を着る男に近付いていく。


 外套を着た男は、


「ん? 貴方は聖魔呪の探知魔道具ヨペアに反応していない。では、人族ですか? 人族が、蟲に侵されず邪神の手合いと手を組むのは珍しい。あ、それとも貴方は魔族ですか?」

「ハッ、人族かもな? で、カクバクラ、あの十字架の剣は確実に教皇庁、聖鎖騎士団の関係者だ。やるぞ」

「ワカッテイル――」


 屋根の上にいた怪物カクバクラは帽子を被った男の前に着地。

 外套の男は胸の十字架のネックレスを見せるように胸元を開き、半身の姿勢となると、溜め息を吐いて、


「……これで最後の反応者だと思いたい。まだ現れるのなら、この迷宮都市は救いようがない……。しかし、これも聖女のため……人族や魔族だろうと、先ほどの邪神ヒュリオクスの眷属と等しく……滅しましょうか――」


 そう言いながら、十字架の剣から光の礫をカクバクラに飛ばしつつ前進――。


 その外套の男のリズムに合わせるように、帽子を被る男が前進し、


「<エランの岩甲>――」


 カクバクラに迫った光の礫を、足下から長方形の石と光る鋼鉄を生み出して防ぐ。

 それらは連なり地面を盛り上げながら直進し、光の礫と相殺、数で優ると外套の男に向かっていく。


「聖光ヴィーの礫を上回るとは驚きです。しかし、フッ――」


 外套の男は、そう嗤いながら光り輝く十字架の剣を小刻みに振るい、下から出現してくる岩と鋼鉄を切断しまくる。


 光り輝く十字架の剣は、岩と鋼鉄と衝突しているが、そのような音は響かず、代わりに剣と剣が触れているような微かな金属音を響かせていた。


 その剣身の表面には、新たに三つの長い光剣が生み出されていた。

 一瞬で岩と鋼鉄ごと地面の一部を斬り捨てた外套の男は、帽子の男との間合いを零とした。


 次の瞬間、外套の男は蒼眼を光らせる。


「ぬぉ!?」


 帽子の男は反応できず。

 体に四つの剣線が刻まれると、一瞬でバラバラとなった。

 

 刹那、外套の男の背後から、


「オマエ、喰ウ――」


 と口を開けたカクバクラが迫った。

 外套の男は、後ろ向きのまま光り輝く十字架の剣を背後に伸ばす。


「――!?」


 ジュッと焼け焦げた音が響く。

 そう、カクバクラの蟲の頭部の口から脳天にかけて、光り輝く十字架の剣が突き刺さっていた。


「僕を喰うのは無理そうだね」


 刹那、外套の男は横回転――。

 光り輝く十字架の剣を持っていない反対の手から閃光が放たれる。

 独自の光の波紋が生み出された。

 と、一瞬で、カクバクラの体は青白い塵となって消し飛んでいた。


「さて、と――」


 外套の男が振り向いた路地の先に、


「レングラット、ご苦労様。さすが魔族殲滅機関(ディスオルテ)の一桁メンバーね」

「ハミヤ、見ていたんだろう?」

「ふふ、当然! 今の、バなんとかを倒したことで、聖魔呪の探知魔道具の反応も消えた?」

「あぁ……最後だったようだ」

「ふふ、不機嫌にならないの! さ、聖女アメリのところに戻りましょう」

「あぁ、戻って、僕も説得に協力しよう」

「え、いいの? 普段は他の一桁と違って貴方はあまり協力してくれなかったけど」

「あぁ、こう毎日毎日争いばかりだと、さすがにね」

「ふ~ん。レングラットも色々と経験しているからこその一桁だと思ったけど」

「そりゃそうだけど、迷宮都市ペルネーテ、ここはやはり他の都市とは少し異なるよ。未知の小柄な吸血鬼(ヴァンパイア)といい、南マハハイムが異なるのかもしれないけど……」

「……<相剋ノ血剣塔>の使い手の吸血鬼(ヴァンパイア)か。他にも、邪神の使徒、魔族、モンスター、闇ギルドの人族も敵に回る時が多いし……気持ちは分かる」

「だから聖女の説得に参加するんだ」

「うん、期待してる。でも……聖女も聖女で……」

「見た目と違い頑固そうだね。そして、聖鎖騎士団団長の君の願いに加えて、パーミロ司祭様とキンライ助祭の説得も聞かないようだし、教皇庁からの銀印教皇勅書だってのに……」

「……うん、パーミロ司祭様も、だいぶ参ってるわ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] アメリはシュウヤの眷属化を断る位だから誘いに乗らないだろうな。問題は誘拐に発展したらってところですかね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ