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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1040/2032

千三十九話 <筆頭従者長>となった魔王ビュシエ・エイヴィハン!

2022年12月29日 23時50分 修正

2023年1月4日 15:16 修正

 血の錫杖の(カン)から音が鳴り響く。

 同時に、その(カン)の音とリズムを合わせるように俺の心臓の鼓動音が太鼓のように和のリズムで血の世界を駆け巡る。


 音楽に乗りながら――。

 <光魔の王笏>の血の海を操作――。

 <光闇の奔流>の意味があるように、時折光と闇が血の世界に展開された。

 が、血はあまり広げない――【吸血神ルグナドの碑石】の地下遺跡のすべては血で埋めない。濃縮させる。


 皆も、その<光魔の王笏>の血の世界の動きに合わせる。

 前後左右を飛翔して石棺に注意しながら移動していた。


 ()()(テン)は血の海の周囲を旋回するように回り始めた。血の海の外側が風を受けて波打つ。


 横へ波打つから不思議だ。

 そんな周囲を飛ぶ皆の様子を見ていて……。

 

 ふと、巨大な檻の中にいる動物たちと、今の俺とビュシエを重ねた。

 外にいる人間たちに見世物として見られている動物たちはいったいどんな気分か……。


 うんちを観客に投げつけるゴリラは見た覚えがある。

 サーカスでは暴れる象もいたなぁ。


 人間社会もある意味『トゥルーマン・ショー』なのかも知れないな。

 

 と、そんな映画を思い出す。

 

 最終的に半径にして十五メートル前後の空間が血の世界となる。血の量はどれぐらいだろうか。

 光魔ルシヴァルの血には<大真祖の宗系譜者>が内包されている。この<光魔の王笏>の血の世界を作った<血魔力>の消費量は、いつにも増して、かなりの量だ。


 前よりも明らかに輝きが強まっていた。


 この血の世界を構成する液体の中には、極めて小さいルシヴァルの紋章樹とルッシーのような血の妖精も見えていた。

 七福神の格好をした小さいルッシーたちは不思議だ。

 ヘルメの闇蒼霊手ヴェニュー的。

 ルシヴァルの紋章樹を玩具のように扱うルッシーたちは面白い。


 が、意識して見ると、パッと消えてしまう。

 この血の海に内包されている魔力の質も向上していると理解できた。

 <光魔の王笏>の操作も、前より簡単になった感覚があった。


 <血道第五・開門>を獲得したからだろう。

 が、痛みは同じか……それ以上。

 そして、内臓が捻れて千切られるような激しい痛みも味わった。

 一方ビュシエは両手と片足で八の字を血の海に描くように動かしながら立ち泳ぎを行っていた。泳ぎは達者だ。


 口から連続的に空気の泡を吐いていた。


 先ほど魔族エイヴィハンとしての肺呼吸に慣れたと思ったら、今度は<血魔力>の海の中だからな。


 魔族、魔王級だとしても空気が必要か。


 勿論、魔界の空気は、酸素、二酸化炭素、アルゴン、属性ごとの魔力など、バランスが惑星セラとは微妙に異なるだろう。


 魔族エイヴィハンだから、空気は必須ではないと予測しているが……。

 そう考えながらビュシエへ手を伸ばし――。


 『大丈夫か?』と思念を送る。

 

 伝わったか不明だが、ビュシエは頷いた。

 そのビュシエの真下には、彼女が長い間眠っていた石棺がある。


 他の石棺も光魔ルシヴァルの血の海の中だ。

 それらの石棺の真上に浮いていた血の紋章は先ほどビュシエに宵闇の指輪を使用した後に見たら消えていた。


 もし誰か吸血鬼(ヴァンパイア)が生きていたら蒸発してしまう。

 が、いないから大丈夫だ。

 

 すると、目の前で泳ぐビュシエは、泳がずとも平気なことを理解したのか両手を拡げながら動くのを止めた。


 自らの体で十字架を作っているようにも見える。

 やや遅れて金色の長髪が、撫で肩と背中の上にさらさらと靡いた。

 蒼い双眸は真剣だ。相貌には鋭敏さがある。

 ビュシエは物静かな女帝のような雰囲気を醸し出した。

 頭部に冠、額にサークレットを装着しているように見える。


 その女帝のような雰囲気を消すように、ビュシエは優し気に微笑んだ。


 綺麗な鎖骨が分かるインナー。

 と、おっぱいの大きさを物語る胸甲が素敵だ。


 そのビュシエの体から銀色の空気の泡のような魔力が放出され始めた。

 銀色の泡はビュシエを囲う子宮のような形に変化を遂げる。


 と、体から霧や霜のような魔力を発してテルミット反応のような輝きを放つと、俺の血を取り込み始めた。


 ビュシエは突然の血の取り込みを意識していなかったらしい。

 己の両手を見て横回転を行ってから急ぎ振り返って俺を見る。


 俺は『そのままなりゆきに任せるんだ』とメッセージを思念とジェスチャーでも送る。


 伝わったか不明だが、ビュシエは頷いた。


 ビュシエは光魔ルシヴァルの血の取り込み速度を速めていった。

 と、周囲の血の流れも速くなった。


 同時にビュシエが装着している戦闘装束と羽織と小さいケープが連続的に揺らめきパッパッパと煌めいた。

 光彩陸離を起こす。美しい落葉衣おちばごろもにも見えた。


 そのビュシエは苦しそうだったが、恍惚とした表情に移り変わる。 


 が、途中でハッとしたように目力を強める。

 落ち着きを取り戻すと、毅然とした強い眼差しを寄越す。

 蒼い双眸に毛細血管のような血が走るが、血は銀色の光を発して蒼を形成する色彩に変化する。光芒が美しい。


 その光芒に合わせたように、金色の長い髪が淡く煌めいた。

 

 ビュシエの体のあちこちに刻まれている魔族エイヴィハンとしての小さい印が輝く。


 エイヴィハンの家紋だろうか。

 その家紋のような模様の真上に旗のような魔力の紋様も現れた。俺の血を取り込む度に、その旗の紋様が揺れてぐにゃりと変化し輝きを強めていった。


 その輝きはエイヴィハンの光魔ルシヴァルへの抵抗を示しているようにも思えた。


 更に、ビュシエの体が煌めくと、あちこちから亀裂が走る。亀裂からビュシエの魔力が迸り、魔力が閃光のように別種の輝きを放つ。


 と、失った片足から血の剣と血の槌が交互に出現を繰り返す。


 意識してやっているのか、自然と出ているのか、ビュシエは焦ったような表情を浮かべながら頭部を振るっていた。

 失った片足から出ている血の剣と血の槌は己の意思ではないようだ。

 

 同時にその片足の太腿から骨と筋肉繊維が伸びて触腕のように蠢き始めた。


 もう再生が始まっている?


 そのビュシエの周囲を子宮の形で囲っていた銀色の泡が崩れながら点滅する。と、一瞬で、子宮だった泡がルシヴァルの紋章樹へと変化した。


 俺の頭上にある血の錫杖の(カン)から音が鳴り響く。


 ほぼ同時に、血の海の一部がビュシエの背後に集結するや否や、本物の色合いに近いルシヴァルの紋章樹が形成された。


 幻影だと思うがリアルだ。

 そのルシヴァルの紋章樹の幹とビュシエは魔線で繋がる。

 ルシヴァルの紋章樹の太い幹は肌呼吸を行うが如く隆起を繰り返した。

 隆起する度、ビュシエと俺の心臓の律動が高まった。

 

 血の錫杖の(カン)から音がリズム良く響いていく。

 和のリズムで楽しくなる。

 小さいルッシーたちも血の世界の中を踊りまくった。

 宿曜師(すくようし)の格好をしたルッシーは面白い。


 更に陛戟(へいげき)を持ち、宮殿の階段側を守る陛者(へいしゃ)のような血霊衛士の幻影たちが、ずらりと並びながら軍隊の儀仗を掲げる動作と足踏みを交互に行っていた。


 俺もタップダンスを踊りたくなる。


 ルシヴァルの紋章樹は新しい枝を左右へ伸ばしつつ銀色の葉と花を無数に誕生させる。

 ルシヴァルの紋章樹の周りに銀色の葉と花以外にも極彩色豊かな植物が咲き乱れると、ルシヴァルの紋章樹の屋根が瞬く間に出来上がった。


 樹の屋根の天辺は太陽を思わせる明るさ。まさに陽。

 樹の根の真下は、月を思わせる暗さ。まさに陰。


 葉と花から銀色の魔力の波が放出。

 波は、太陽のプロミネンス的に動き、魔力の粒子を散らす。


 太陽を想わせる樹の屋根と樹の幹に枝から迸っている魔線はビュシエと繋がっている。


 それはキッカとキサラとビーサと同じくマリオネット的だ。

 

 そのルシヴァルの紋章樹の幹と屋根には<筆頭従者長(選ばれし眷属)>の大きな円と<従者長>の小さな円が、類縁関係と派生関係などを樹の枝分かれの形に示した図、系統樹、樹状図として表されていた。

 

 非常に分かりやすい光魔ルシヴァルのデンドログラムだな。


 前にも増して高精細。

 やはり、このルシヴァルの紋章樹の幻影は、個人の資質と俺の成長で細かく変化を遂げると確信。


 そして、ルシヴァルの紋章樹の形成と共に血の海の総量が一気に減った。血の海の半径も狭まった。

 

 【吸血神ルグナドの碑石】の地下祭壇の天井も露出すると、ビュシエの足下にルシヴァルの紋章樹の根っこが絡み始めた。


 <ルシヴァル紋章樹ノ纏>と似た光景か。

 同時に<光闇の奔流>と同じ。


 ※光闇の奔流※

 ※光と闇の属性を魂に持ち、その魂の激流を表した物。光と闇の魔法が使用可能となる。光属性と闇属性の攻撃を吸収&無効化、精神耐性微上昇、状態異常耐性微上昇。しかし、光と闇の精神性に影響されやすくなる※


 これは俺の基本で根本か。光と闇、陰と陽。

 天地間の万物を造り出す二気、結局は一つ。

 人はだれしも光と闇を持つ。


 ビュシエの足下の周囲は深淵を意味するように暗い。

 対称的にルシヴァルの紋章樹の幹の樹と枝と葉は非常に明るい。


 幹の樹皮から枝と葉へと光の波が伝わる。

 その様子は栄養源が根っこから葉っぱへと行き渡っていく映像にも見えてくる。神聖な栄養を得たような葉が艶やかに光る様は非常に美しい。

 

 ビュシエの足下の暗い血の海にルシヴァルの紋章樹の幹と枝の輝きが反射していた。


 それは夜空を彩る月と星々の明かりを想わせる光景。


 ルシヴァルの紋章樹の幹と屋根は陽の輝きを意味する。


 ルシヴァルの紋章樹の根は陰の暗さを意味する。


 その太陽のような屋根と幹と、月のような根のコントラストは、とても神秘的で美しい。


 刹那、まだ残っていた血を吸い取ったビュシエ。


 そのビュシエの胸から閃光が迸ると、ルシヴァルの紋章樹とビュシエが重なり、ルシヴァルの紋章樹の幹から榊のような棒が飛び出てきた。


 キサラとビーサの時と似ている。

 その榊を掴む――掌に棒がフィットした。

 

 その榊を振るって枝と葉でビュシエの体を祓い撫でた。


 榊の枝と葉が触れた箇所は血の線が生まれる。

 血の線から無数の乱数表のような数学染みた暗号が迸り、周囲の空間に穴を空けながら散ると、空間の穴は消えた。

 

 光を帯びたビュシエは感じたように体を反らす。


「アンッ」


 ビュシエは喘ぎ声を発した。

 豊かな乳房は胸甲で見えないが、乳房は跳ねたように動いたと分かる。

 胸甲にルシヴァルの紋章樹の幻影が生まれる。


 体の魔族の印の横にルシヴァルの紋章樹の系統樹が刻まれた。


 刹那、お祓い棒のような銀色の葉と万緑の葉が付いた榊のような棒が、俺の魔力を吸うと、手から離れ、直進――。


 榊のような棒はビュシエの胸甲を通り抜け体の中へ溶けるように浸透した。すると、そのビュシエの体から光と血が宙に迸った。


 それらの光と血は、陽と陰を形成。

 陰陽太極図、電気・磁気などの陰極と陽極を意味するような陰極線の魔線を放ちながら、俺たちの周囲を旋回。

 そのまま太陽暦と太陰暦を表すように旋回を続ける。


 と、周囲の惑星に意味を見出すような記号と黄金比率を展開させながら、再びビュシエの体の中へと帰還した。


「アァ……か、体が……アンッ」


 ビュシエは強く喘ぎ声を発すると、体が跳ねるように背を反らす。ビュシエの体から血が周囲に散る。

 その血の中には、ビュシエの眷属、吸血鬼(ヴァンパイア)たちがいて、笑いながらビュシエに語りかけていた。


 ビュシエは朧気な表情を浮かべて数度頷く。

 ビュシエがそのビュシエの眷属の吸血鬼(ヴァンパイア)たちに手を伸ばすと、そのビュシエの眷属の吸血鬼(ヴァンパイア)たちはビュシエの体内に戻るように消えていく。ビュシエは発していた血を吸収しつつ体が数度震えながら双眸から血の涙を流した。


 そして、


「皆、わたしは――」


 と言って、ビュシエは倒れる。


「ビュシエ――」


 急ぎ――そのビュシエに駆け寄って抱き上げた。


「大丈夫か」

「は、はい……シュウヤ……わたしの宗主様……」


 俺の血を吸いたいような面だ。

 抱きついてきた。

 ビュシエの少し長い耳に息を吹きかけるように、


「起きられるか?」

「アンッ」


 と、ビュシエは体が震えて恍惚とした表情となった。

 唇が震えて、白い歯と唾で濡れた舌が少し見えた。


 魅惑的過ぎる。

 たまらないが、自重した。


「……俺の<筆頭従者長(選ばれし眷属)>ビュシエ、血を吸うか?」

「はい――」


 と、俺の首筋に牙を立ててきた。

 吸血鬼(ヴァンパイア)系らしく俺の血を吸っていくビュシエ。

 結構な勢いで吸ってきた。

 と、犬歯を伸ばしていたビュシエは唇を広げながら「アンッ……血が凄い……微かな量だけでも快感が……うふふ、あ、アッ」と、上唇と犬歯に残っていた血が下唇に付着した刹那、「アン――」と身を反らし痙攣してイっていた。女のフェロモンがむあんと漂ってくる。


 俺の手に支えられているビュシエは、目を開けた。

 ビュシエはうっとり顔で、俺を見て、


「……素敵な宗主様のシュウヤ、ありがとう。血が美味しかった。そして、この魔王ビュシエ・エイヴィハンは、シュウヤ様に永遠の忠誠を誓います……」


 エコーが掛かっているが、魔声の<血魔法>か?

 心臓が高鳴る。


「……あぁ、立てるか?」

「ふふ、優しい宗主……立てますとも――」


 と立ちながら己の体から<血魔力>を放出させて吸引。見事な<血魔力>の扱いで、<血道第一・開門>は完璧だ。


 すると、


「<筆頭従者長(選ばれし眷属)>ビュシエ、おめでとう! 光魔ルシヴァルの血の海とルシヴァルの紋章樹は圧巻でした!」


 外で見ていたフィナプルスがそう発言。


「あぁ、光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスと主の<ルシヴァル紋章樹ノ纏>とも関係している」

「閣下は、まさに陰陽を燮理(しょうり)することを行っている!」

「うむ!! 天と地の感応こそが肝要!!」


 ゼメタスとアドモスが『書経』に近い言葉を使うとは。

 

 フィナプルスは地下祭壇の左隅の天井に近い場所で浮遊していたが、近付いてきた。ゼメタスとアドモスとアドゥムブラリと()()(テン)も寄ってくる。


 黒猫(ロロ)も、


「にゃ~」


 と鳴いて寄ってきた。

 頭部をビュシエの足下にぶつけた。


「あ、ふふ、ロロ様、ありがとう」

「おめでとうございます!!」

「ウォォォン! 我の友の新しい番いとなったビュシエ! 嬉しいぞ!」

「おめでとうございます~」

「おめでたい! シュウヤ様の頼もしい眷属の誕生だ!」

「はい!!」


 サシィ、リューリュ、魔皇獣咆ケーゼンベルス、パパス、ツィクハルが寄ってきた。

 最初は、血の海の外でジッと待っていたケーゼンベルス。

 警戒していたようだ。

 <光魔の王笏>の大量の血を使う儀式は初めて見ただろうから当然か。


 沙が、


「ビュシエ、<筆頭従者長(選ばれし眷属)>化おめでとう。これからも器と妾たちを頼む。そして、器の<血魔力>の質の高さの表れか? ルシヴァルの紋章樹も、いつもより輝いて見えたぞ」

「そうだったか」

「器様の美しい血の海を得たビュシエが少し羨ましいです」


 羅がそう言うと、貂が、


「はい、器様の血は、常に成長し続けています。その血のシェアを受けたビュシエは、他の眷属たちには羨ましいと思われるかもですね。そして、先ほどの器様が展開させた血の速度は前にも増して速かった」

「はい、器様が<血道第五・開門>と<血霊兵装隊杖>を獲得した効果でしょう」

「一瞬で血の海でしたからね。あと、器様の血の甲冑も素敵です」

「血の錫杖も渋い。独特な音を発していましたし、血の海の中には、ルッシーちゃんが泳いでいたような、気のせいでしょうか」


 頷いた。

 そして、

「いた。血霊衛士のような軍隊も見えたんだ」


 あの時は面白かった。血霊衛士が装備していた戟は、今までと柄が少し異なった。

 

「ほぉ」

「血霊衛士の軍隊……」

「閣下の直属……ぬぬ……我らの黒獄アニメイテッド・ボーンズと赤獄アニメイテッド・ボーンズを使えれば、血霊衛士の軍隊に……」

「アドモス、嫉妬は分かるが、閣下の話は、あくまでも幻影だ。しかし、ゼガの魔コインの探索は急務である」

「ふむ、しかし、ゼガの魔コインはどこに、グルガンヌの滝壺のような場所を探索すればよいのだろうか」

「……わからぬ」

 

 アドモスとゼメタスが語り合う。

 ゼガの魔コインか、サシィに視線を向けるが、頭部を左右に振った。

 アドゥムブラリに向けると、顎先に人指し指を当て、考える仕草をとった。

 聞いたことはあるって面だ。

 

 ()()に視線を向ける。


「知らないぞ」

「はい」


 近くにきた(テン)はビュシエと握手していた。

 その貂と視線が合うと、


「【源左サシィの槍斧ヶ丘】への帰りがけに【メイジナの大街】や【サネハダ街道街】に向かいますか? 商人がいるようですから」

「ヘルメとバーソロンとの合流が先だ。【源左サシィの槍斧ヶ丘】に行ってから考えようか」

「「「はい」」」


 貂の尻尾は多いから三人の中で結構目立つ。

 その貂は上空を飛翔――。


 長着の裾回しと褄先は靡いているから、生足の太股と、ふんどしのような魅惑的なパンティが見えていた。


 貂は身を反転させるような飛翔の仕方で、天井に細長い足を突けた。

 尻尾を数本に纏めるような動きが可愛い。


 傾国の美女、妖花を思わせる美しい貂は天井でファッションショーを行うが如く、腕をモデルのように悩ましく振るいながら歩く。


 貂は笑顔を見せてくれた。

 そんな止まった貂の隣を楽しげに飛行する羅は急降下。


「器様、眷属化は痛かったと思います。お腹をさすってあげます――」


 胸から腹を擦ってくれた。

 エヴァたちがいないからな。

 その代わりを務めようと思っての行動だ。

 心が温まる。


「羅、ありがとう――」


 とハグ。


「あ、ふふ、サシィとリューリュにツィクハルも眷属に迎えるようですから、その分、器様に愛を捧げます」

「ぬぬぬ――」

「え、わたしも――」


 沙と貂も寄ってきたから皆をハグしまくる。

 パフパフを頭部に受けると、股間がムクムクと膨らんでしまうからヤヴァいがな。自重――。

 三人の愛撫から離れる。

 アドゥムブラリとツアンは、パパスと魔皇獣咆ケーゼンベルスとリューリュとツィクハルを連れて端のほうに移動しているし、空気を読むなよ。

 

 と突っ込みたくなった。

 すると、真上にいたフィナプルスが、


「ふふ」


 微笑むと、俺の手を握る。

 そのまま()()(テン)から引き離すように腕を引っ張っていく。


「フィナプルスめ、妾たちの褥タイムのチャンスを!!」


 ビュシエは黒猫(ロロ)と一緒に石棺の辺りを回りながら遊んでいた。


 黒猫(ロロ)はビュシエの出す血の魚を食べている?


 ビュシエは時折、海老とウナギのような血の玩具を出していた。


 黒猫(ロロ)は、その海老とウナギのような血の玩具に近付いた。首を傾げつつ、鼻孔を拡げ窄めて、フガフガと海老とウナギの玩具の匂いを嗅いでいる。そして、「ンン、シュパパ」と、空気を吸って舌が絡んだような可愛い音を発した黒猫(ロロ)さんは、前足を恐る恐る海老とウナギの血の玩具に当てていた。

 

 ビュシエは昔、魔猫パンと過ごしていたようだからな。使役していたのかな。

 

続きは来週を予定。

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― 新着の感想 ―
[一言] 仲間がどんどん増えてく!魔界で暴れまくってるから色んな意味で神々に狙われそうですね!セラでもやることたくさんなのに行き当たりばったり(にみえる)な旅がこの作品の個人的に好きなところの一つです…
[気になる点] アドゥムやイモリザ達は独自の繋がりもあるからいいんだけど、サシィも筆頭従者長、部下も従者長となると、バーソロンの立ち位置が…。光属性がクリティカルな弱点じゃなければルシヴァル化できると…
[一言] ビュシェはやはり血魔力に慣れてる感有りますね。
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