表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

リィナ18歳、誕生日

齢18になると大人と見なされるこの街では、領主から成人祝いが贈られる。

通行証が届けられ、城への出入りが自由になる。

驚いた事に、ここの領主は自らの居城でもある城を民に解放しているのだ。


若者たちは城で領主に謁見し、祝福を与えられる。

そこは計らずも人々の出会いの場となっており、各々伝を作り、仕事を得たりもする。


そして女たちは1年、城で客人としてたっぷりもてなされる。


城に出入りする男たちから伴侶となる者を見つけ、1年後、城から出た後に結婚する娘も多い。


見初められて領主の“花嫁”に上げられた娘もあると聞く。

当主にとっても出会いの場という訳だ。



18を迎える日、日付が変わった途端に窓から来訪した使者を、リィナは顔を綻ばせて迎えた。



「ねこちゃん!こんばんは!」



宵闇に融けそうに黒い猫がくわえて運んできたそれは、蜂蜜色のちいさな石で、街の年長者が皆アクセサリーに加工して携えている物だった。

各々のセンスが見れて、他の者の通行証をみるのも街の人々の楽しみとなっている。


「わたしの通行証!持ってきてくれたの?わぁ猫ちゃんの瞳にそっくりな色でキレイな色!あっでももちろん猫ちゃんの瞳のほうがキレイですよ!お利口ですねーお利口ですねー!ふふ!お利口ですねー!あっ!わたしの夜食の残りで悪いけど、良かったらチーズ食べる?」



石を受け取った途端、リィナはテンション高く猫を撫で回す。

猫は一声鳴いて、差し出されたチーズをくわえるとあっという間に闇に紛れてしまった。




「ありがとう!気を付けて帰ってね!」



猫が見えなくなった辺りに声をかけ、窓を閉める。

腰までストンと伸びたストロベリーブロンドを櫛で丁寧にとかして、明日着ていく服を決める。

白いブラウスに、リィナの瞳と同じ青色のロングスカートを用意した。

リィナは全体的に華奢だが、肉付きは可もなく不可もなくといったところだ。年頃の娘にしては肌を出すことを好まず、華美な服装にそんなにこだわりもない。



「あとは…」



1週間前、城から届いた案内状には「最低限必要な物だけ持参」「あとは全部用意させるから心配するな」「1年間、休暇だと思って好きに過ごせ」…要約すると、そんな事が書かれていた。


リィナは「1年間も好き勝手に絵を描いたり、本を読んだり出来るなんて!夢のような生活!」と胸を弾ませながら仕度をすすめる。



お気に入りの本、眼鏡、絵の具、動きやすいつなぎの服。

このつなぎは農夫たちが好んで着るような服で、華奢なリィナには少々余る部分もあるが、とても動きやすい為に愛用している。

これら愛用の品を鞄に詰めると、ベッドサイドに置いた。


あとは、明日朝一番の馬車に乗り遅れないように眠るだけだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ