第六本 主人公に休みなど無し。
一週間程あった宿泊学習も終わり、来週からの授業に向けて黒須学園の施設の紹介が行われていた。向こうでも勿論あったんだが、実際に学園内を回って紹介するとのこと。大学まである関係か、広いわ施設多いわで何人か足が痛いと悲鳴を上げ始めてる。しかもこれより大きいキャンパスがあるといわれ絶望してる、な。
……最後の場所に来たらしい。
「ここが図書館よ」
……でかい。地元の市の図書館よりでかいんだが……俺らが読書感想文の題材にする本や、大学生が使う専門書は勿論、絵本とか雑誌とかまで置いてあり、全体の1%読むだけでも人生2週くらい必要らしい。
先生がここで自由解散と言ったため、探検がてらぶらぶらと歩いていたんだが……
「……この壁、なんか変だ、な?」
誰も来なさそうな隅っこの壁に違和感を感じた。他の壁と見比べてみると、他の壁は汚れ等がまばらに付いているのに対し、この壁だけ汚れがなく、違和感を少しでも無くすためか、壁の色自体が少し違った。隅っこなだけあって薄暗いし、殆どの人は気付かんだろう、な……
壁を触っていると、スイッチのような感触があり、押すと壁の一部がせり出してきた。引き出しの様になっていて、中には1冊の古びた本が入っている。題名は……ダメだ、古過ぎて読めねえ、な。中身は……最初のページには魔法陣の様なものが書かれてるが、他のページは何も書かれてない。なんか魔力っぽいものを秘めてるが、よく分からん、な……
「あら? 西京君どうしたの」
「うおあっ、な!?」
「……びっくりした時の声でも『な』が付くのね」
唐突に泉先生が現れた。その手には光ってる絵本が……光ってる?
「それはそうと、なんで壁から引き出し出てるの? なんか見つけた?」
「なんかスイッチ見つけた押したから、な……ってそれよりその本なんで光ってるんですか、な?」
「へ? 光ってなんか……えっ?」
先生が光ってるのに気づいた瞬間、絵本と古びた本が俺等の手を離れて宙に浮かぶ。
勝手に古びた本が開き、空白だったページの一つに魔法陣が刻まれる。
そして、絵本が魔法陣に重なった瞬間、目が開けられないほどの光を放つ……!!
この事件が終わった後、先生になんで絵本を持ってたか聞いた。
「あれ? 初等部の先生から絵本おすすめ聞かれて、探してたんだけど……あの本だけ誤字脱字がやけに目立ったから報告しようと思ってて」
その誤字脱字がキーワードだったんだが、この時の俺には知る由も無かった、な。
気づくと、俺は浮遊感に見舞われていた。
目を開けると、そこは海の上だった。
「……な?」
重力に従って海へと落ちていく中、大きな鳥を見た。
「……!」
「ん……」
「大丈夫ですか!?」
「……ここは、どこだ……な?」
「よ、良かった……生きてた……」
目を開けると、砂浜にいた。横には同年代位の金髪の男性がいる。顔からしてイギリス系だろうか?
服が濡れている事から、どうやら海に落ちて気絶してたらしい。そして男性が助けてくれたと、な。
「助かった、な……赤い髪の女性を見なかったか、な!?」
「いや、見てないです……ごめんなさい」
「すまん……謝んなくて大丈夫だ、な」
眼鏡が飛ばなかったのが幸いだ、な……それにしてもここはどこだ。あの光で異世界にでも吹き飛ばされたのか、それとも……先生はいないみたいだが、一体どういう事だ?
「あの……思い人ですか?」
「ぶっ!? ……先生だ、な……自己紹介が遅れたな、俺は西京 圭だ、な」
「ケイさん、ですね」
「そうだ、な。そっちはなんていう名前なんだ、な?」
名前を聞くと、相手は固まった。
「……僕の名前、なんでしたっけ?」
「……は?」
そして衝撃の事実を口にした。
名前の無い彼には、もう一つおかしい点がありますよ。




