第一話 よくある一コマ
皆々様、お久しぶりです。ちーさんというものです。
もう一方の作品が詰まったのでもう一個初めてしまいましたww
今回はゆるーい感じでかけたらなぁと思っております。
唐突だが、不幸というとどのようなものを想像するだろうか。
財布を忘れる、頭に鳥の糞が落ちてくるといったよくあるちょっとした不幸は誰もが経験したことあるだろう。
では、何となしに入った喫茶店が突然テロリストによって爆発するとか健康診断に行ったら間違って薬を打たれ死にかけるなんていうちょっと規模の大きい不幸も経験した人はいるだろうか。
しかし、これら大きい不幸はそう頻繁に起こるものではない。普通の人ならせいぜい、人生に一度か二度起こるか起こらないかの不幸である。
俺は違った。上記に挙げた不幸なら日常茶飯事である。
学校に行こうとして居眠り運転のトラックに轢かれそうになるとか買った弁当に某国の開発した最新の毒が何故か混入しているとかいった不幸は経験済みなのだ。
だからだろうか、命を守るための反射神経や毒に対する耐性など体は丈夫だ。
しかし、この不幸も今日で終わりだ。これまでいくつも開運グッズを買ってきて効果がなかったが、今回こそは大丈夫だ。通販の番組でも驚異の効果と謳っていたし、貯金の半分も注ぎ込んだ。
この「超ウルトラDX開運ネックレス~これであなたも開運王!!~」は効きそうな気がする!
やけに豪華な箱から「開運!」と刻んである水晶を繋げたネックレスを取り出す。
首にしっかりネックレスを着けているのを確認して玄関から意気揚々と出発する。
これで不幸とはさよならだ。さよなら、不幸。こんにちは、幸運!!
「……緊急速報です。先ほど○○高校で複数の不審者が学生三人を人質にとり、立てこもる事件が起こりました。なお、不審者は拳銃を所持しており……」
どうしてこうなった。
「おらぁ!!これ以上近づいたら人質殺すぞぉ!!」
「こいつ、気が短いからなぁ~殺されたくなかったら早めに逃亡用の車と身代金一億用意したほうがいいと思うよ。」
学校に行くまでは良かった。特に何もなかったから、気分よく幼馴染の二人と合流して学校に着いた途端後ろから銃を突きつけられ人質になっていた。
今はもう外されているが目隠しをされ、どこかの教室で立てこもって今に至る。
まさか、幼馴染まで巻き込むとは……運は運でも不運を開いてしまった気がする。
くそっ、五万円もするスペシャルパックにしたのにっ!やっぱり、もう一段階上のスーパースペシャルパックにすればよかった。
過去の自分を罵りながらこの状況を打開するため周りの状況を確認する。まあ、慣れてるし普段より少し大きい不幸だと思えば問題はないだろう。
まずは現在位置だ。
備品や机などから推測するにここは二階にある理科実験室だろう。右手側には薬品棚が見える。校舎は四階建てだからな、二階で助かった。もう少し上の階だったら飛び降りれなかった。
次に不審者二人。短気な男をA、冷静な方をBと仮定しよう。
Aは結構大柄だが、Bはあんまり筋肉がついているようには見えないが、ニヤニヤと笑みを浮かべて銃をこちらに向けていることを見る限り性格は悪そうだ。
二人とも拳銃を所持している。今見えているだけでA・B合わせて拳銃は二挺だが、まだ隠し持っている可能性も捨てきれない。おまけにBに至ってはどこで手に入れたのか連射可能な短機関銃を持っている。
というか、あれ警察とか海上自衛隊とかに導入されている銃だったはず。どこで手に入れたんだ……
最後に俺たち人質メンバー。
理科室のグランド側の窓辺に警察などに見えるように縛られて座っている。
左から幼馴染①ちょっとお調子者の佐藤健介。あだ名はケン。運動神経は良いが、バカだが顔と性格が良いせいかモテる。でも凛が好きなので告白は全て断っているらしい。今は銃を向けられているせいか、いつものような元気な雰囲気は鳴りを潜めている。
真ん中幼馴染②清楚な雰囲気の長谷川凛香。みんなからはリンと呼ばれている。校内の付き合いたい彼女ランキング上位だが、好きな人がいるらしい。(ケンではないと言われた。)長い髪に隠れ詳しくはわからないが、顔は青ざめ、涙ぐんでいるようだ。
そして右の俺、月波幸男。サッチーとかサチオとか呼ばれる普通の男子高校生だ。取柄は数々の不幸を潜り抜けてきた体と後は、滅多に顔に表情が出ないこと位だな。
まあ、この無表情のせいでチンピラに絡まれたりしたことがあるから直したいが。
幼稚園から一緒だったからよく三人でいるが、今日はそれが裏目に出てしまった。
この状況ならなんとかなりそうだ。そろそろ朝礼の時間だし、早く終わらせようか。
「あの、すみません……」
困ったような表情を作りながら凛の前に立ち、Bの方に話しかける。二人からは見えないように腕を縛っていた縄は、既に袖の隠しナイフで切ってある。
「ん?どうかしたのかっっ……!!」
「オイ、てめぇ!!何してんだ!」
Bの顔面を思いきり殴る。そのまま壁にぶつかって意識を失ったようだ。
漫画のように吹っ飛んでいくBに慌てたように拳銃をこちらに向けるAだが、それより前にAに向かって薬品棚にあった塩酸のビンを投げつける。目を押さえ倒れこむAの後頭部に素早くBが持っていた短機関銃を向け、そのままAにも見えるようにゆっくりと引き金に指を掛ける。
この間約数十秒。横目で驚いている二人を見ながら警官も驚きの速さだ、と内心苦笑する。
「銃を捨て、手を後ろで組め。」
内心は苦笑しているが、表情は一ミリも笑っていない。無表情で銃を向ける高校生とは何ともシュールな絵図らだと我ながら思う。
「ふざんけんなよ!このクソガキが!!」
よっぽど悔しかったのだろう。倒れたまま俺に拳銃を向けようとするので、Aの横の床に向かって軽く短機関銃を撃つ。ヒッと小さく悲鳴をもらすA。当たると思ったのだろうか、俺はそんなへまはしないし、この程度の銃は使ったことがあるから、問題はない。
「次は当てる。」
今度は抵抗する素振りを見せずにおとなしく言うことに従う。最初からそうしていれば良かったものの、余計な手間をかけさせられた。
手早く気絶しているBと一緒にAも縛る。それで、幼馴染たちの縄を切ってやろうと後ろを向こうとすると抱き着かれた。
「さっちゃん、大丈夫?!心配したんだよ!」
「おい、サチオ無茶すんじゃねーよ!あと、リンから離れろ!」
涙目で見上げてくるリンと心配そうにこちらを見るケン。こいつらはいつも通りのようで、少しほっとした。
「俺は大丈夫だ、心配させて悪かったな。おい、ケンはこっちを持ってくれ。」
ケンにひょろいBを渡す。そんなに重くないから大丈夫だろう。Aはまた暴れるかもしれないからな、俺が持たないと。
「さあ、後は警察にこいつらを渡すだけだ。早く行こう。」
その後犯人を抱えて出てきた俺たちは警察やら報道陣やらに囲まれながら、無事校舎から脱出できたのである。
まあ、この事件のせいで学校は臨時休校になってしまったので、当初の目的は達成できなかった。
「今回も駄目だったか……」
五万円もした開運ネックレスを見ていると自然とため息がこぼれる。これでもういくつ買っただろうか。数をかぞえるのも五百を超えた時点でやめてしまった。
足取りが重いまま、いつもの帰り道を歩いていると普段と違うことに気付く。
辺りは静まり返りまだ昼前だというのに薄暗く、そしてなにより道路の真ん中にアヤシイ雰囲気の店が立っている。
それなりに車通りが激しい道なので、通りの真ん中でみせを開く何てことは不可能だ。
そんな、フラグ満載の店に入ることは普段なら絶対にありえないが、看板を見て気が変わった。
その看板にはこう書いてあったのだ。
「開運グッズあり〼」と……
どうだったでしょうか?ご指摘・感想ありましたら、宜しくお願いします。
また次話で、皆様とお会いできる日を楽しみにしています。