Part1 - 星間の女の子-
闇が喰われつつあった。
闇にではない――闇が喰われつつあった。
まるでパンをちぎって食べていくように、少しづつ闇は欠けていった。
――午後十時を回ったところだった。
夜の街というものは大きく分けて二つある。
街が闇を利用し、人々にネオンの光と楽しみを与えるものと
闇が街を包み、人々に静けさと眠りを与えるものの二種類だ。
人間にとってどちらが住みやすく、
そして、より安全な夜なのかは定かではないが
どちらかといえば後者の夜に当てはまる田んぼ道を一台の自転車が走っていた。
道はかなり狭く、人間が二人並べないぐらいの細道であり
その左右には、田んぼという泥沼がすぐそこに待ち構えている。
自転車のスピードはそれなりに出ているが、
タイヤが回転する度にガタガタという振動が自転車全体に伝わり、
カゴに入った茶色の学生カバンは、そのせいで常時浮き上がっている。
その手前にあるサドルの上では、小柄な少年がハンドルを強く握りしめ振動に耐えていた。
白い学校指定の薄いYシャツを纏っているのを差し引いても、
少年の体は線が細く、背丈もあまり無かった。
その小柄な体で上手くバランスをとりながら、跳ねて走る自転車を制御していた。
少年が自転車で走っているその道は、
農作業する人が徒歩で田んぼを行き来するために作られた細道であり
そもそもバイクおよび自転車など、走行に不安定な二輪車向けの設計になっていない。
アスファルトなどで舗装されていない代わりに
砂利、それも大小不揃いな石が道に敷き詰められており
普通のママチャリで走行するには、いささか不安定だ。
しかも昼間に農作業をするという前提のせいか、夜間用の街灯などの類は一切無い。
道を照らすのは、弱々しく光を出す自転車のライト、
少し霞みつつある月の光、
そして小さな水晶球のような光を出し舞うホタルのみ。
そんな状態で事故が起こらないわけが最初から無かったのかもしれない。
運が悪いというか、案の定というか
ママチャリは不揃いな砂利にまじっていた大きい石につまづき
「うああっ!」
という少年の声が辺りに響いた後、田んぼから派手な水しぶきが舞った。




