94.梅雨になったら、何をする?
梅雨だ。
雨が朝からずっと降っている。
六月。
俺は少し嫌いな時期だ。
「雨!!!」
中庭。
屋根のある場所で昼飯を取る同好会。
火之浦先輩はいつも通り楽しそうだ。
俺とは正反対の反応。
「梅雨の時期は、食堂もどこも空いてない。腹立つ」
「分かります~」
「雨の音、すっごくいいわよね!」
「萌揺、大丈夫?」
「頭がずっと痛いぃ」
土浦は片頭痛持ち。
天気が悪いとこうなるらしい。
「雨だと屋内に活動が限定されちゃいますね」
「私は構わないけど。そもそもインドア派だし」
「私は髪とか服が傷むので~」
「雨の中で遊ぶのも、いつもと違う感じで面白いわ!」
「部屋の中でゆっくりネットサーフィンしたい……」
んー。
「雨に濡れるのも、意外と楽しいのよね!」
若干一名。
雨でテンション上がってる人がいるね。
「美琴は昔からそう。雨でも台風でもお構いなし」
「凍里と一緒だと、雨がもっと楽しいわ!」
「それ聞くのも何度目だろうね」
「え~、雨でも活動するんですか?」
新樹先輩は活動に消極的だった。
「珍しいですね」
「なにが?」
「水無瀬先輩と新樹先輩がそんなに消極的なのが、です」
「私達のも意見を言う権利は一応あるからね」
「楽しそうなら、ちゃんとついていきますよ~」
火之浦先輩次第、なんだろう。
この二人なら、火之浦先輩が何を言っても面白がりそうだけど。
「でも、雨がこのまま続くなら考えないといけないね」
「去年は何をしてたんですか?」
「だらだらしてた」
「美琴ちゃんが部活にするために奮闘してましたよ~」
実質、活動は行っていない。
話を聞く限り、そんな感じだった。
体育祭で新樹先輩と出会い、同好会結成。
という流れだったっけ?
「じゃあ、青春同好会での梅雨は初めてですね」
「そうなんですよ~。すこ~しだけ楽しみなんです~」
「三人は、梅雨の時期とか具体的に何してたんですか?」
青春同好会の五人。
俺と新樹先輩以外の三人。
彼女たちは昔からの幼馴染。
「さっきも火之浦先輩に連れ出された、とか言ってましたけど」
多分三人の関係性は今とあまり変わっていないのだろう。
そんな三人の梅雨の過ごし方。
「一番嫌な思い出は、大雨の中の散歩」
「散歩?」
大雨とはいえ、散歩だったら。
「大雨で荒れる海が見に行きたいんだって」
「は?」
「次の日、高熱だったの思い出した……」
「私も萌揺も数日学校休んだね」
「私は梅雨でも元気よ!」
二人を巻き込んだ人がいうセリフじゃないな。
「リーダーについていけるのは、陽乃女ぐらいだよ」
「御形君いけるんじゃないですか~?」
「俺は遠慮したいです」」
やだよ。
大雨の散歩なんて。
「伊久留と雨の散歩してみたいわ!」
「あの、部屋に突撃してくるのやめてくださいね?」
「で、どうしますか~、梅雨」
「困った問題だね」
どうやら水無瀬先輩は、外での活動を避けようとしているみたいだ。
「まずはみんなで雨の陽碧市を探索よ!」
「……」
「お~」
「やだよぉ」
今までに見たことのないぐらいの統率力の無さ。
火之浦先輩のカリスマ性も、梅雨の前では無力か。
「御形、なんとかして」
気だるげに。
水無瀬先輩から無理難題を押し付けられた。
やる気の火之浦先輩を動かすための作戦考える。
それがあなたの役割でしょ?
「とは言ってもなあ……」
火之浦先輩をインドアに向ける意見。
俺もそこまでインドアに傾倒しているわけではないからな。
部屋で漫画を読むとか、ゲームするとか。
一人でも遊べるものしかしない。
時々初衣ねえが遊びに来てたけど。
他の友達と遊ぶなら、外遊びだったしな。
「インドア、インドア……ああ、そうだ」
土浦に視線を向ける。
ゲームから連想した結果、土浦に意見を求めることにした。
「……なに?」
「みんなで遊べるゲームとかないのか?」
「へえ、いいじゃん」
水無瀬先輩のお墨付き。
「萌揺、皆でできるオンラインゲームとかどう?」
「FPSとか前やってたのは?」
「すぐ終わるから、ダメ」
「私、ほのぼのしてるのがいいですね~」
「ほ、ほのぼの……?」
土浦はポケットからスマホを取り出し、検索開始。
「ゲームするの?」
「青春同好会でやったことないっしょ、ゲーム」
「萌揺が進めてきたのをやったじゃない!」
「御形がいる時には、初めてでしょ」
「それもそうね!」
水無瀬先輩の一言に、火之浦先輩はすぐに納得した。
やっぱり火之浦先輩の扱い方は上手かった。
「じゃ、じゃあ、これはどう?」
土浦が全員にスマホの画面を見せてくる。
『ミナモトノカミ』と書かれたゲームアプリだ。
「ミナモトノカミ……?」
なんか聞いたことのある名前だった。
動画サイトの広告とかだったかな?
「なにそれ知らないわ!」
火之浦先輩達も知らないらしい。
「二ヶ月前から配信開始したんだけど」
「スマホアプリ?」
「うん。パソコンだとみんなやりにくいかなって」
土浦なりの優しさのようだ。
俺もパソコンを持ってないから、ありがたい。
「やっぱり先輩達もゲームとか一緒にやってたんですか?」
「基本萌揺が誘ってくるんだけどね」
「私は萌揺ちゃんとのゲームは好きですよ~」
「萌揺が楽しそうにしてくれるから、それで十分よ!」
「こ、このゲームは現実世界と時間がリンクしてるし、色んな役職で色んなことが自由にできるから、きっと長く楽しく遊べると思う!」
「ダンジョンとか、ギルドとか、色々充実してるんだね」
「聞いてると、ちょっとやりたくなったわ!」
と、我らがリーダーも少し前向きになっていた。
「じゃあ、今日放課後になったらみんなで集まって……」
「ん?」
なにその小学校の放課後は。
「リーダーは、オンラインゲームを現実で集まってやる気なの?」
「そっちの方が楽しくない?」
楽しい、のか?
集まってやるなら、他の楽しいゲームがあると思うけど。
「オンラインで通話とかしながらやりたい!」
俺も、水無瀬先輩も、土浦の意見に賛成だった。
「私はどちらでも~」
「しょうがないわ! 今日は各自部屋でやりましょ!」
というわけで、今日の青春同好会はオンラインゲームに決定した。
ミナモトノカミ。
土浦から教えられたこのゲームを中心に。
青春同好会が引き起こす大騒動に発展することとなる。




